一つはハラーの相方のフレッツ・カスパレク著の「アイガー北壁に挑む」尾崎賢治 訳 あかね書房 1966年
この本では初登攀に関する記述は意外と詳細ではなく短い印象でした。
カスパレクは本来ゼップ・フルンフーベルと登る予定だったが、都合がつかずにハラーに白羽の矢を立てた事や、ドイツチームに追い付かれた時ステップを刻むのにかなり参っていたがハラーが前日に落石で手の指に怪我を負っていたのでトップを代わるわけに行かなかった、などの初めて知る記載がありました。
もう一つはアンデレル・ヘックマイヤー著の「アルプスの三つの壁」安川茂雄 訳 朋文堂 1963年
(この本は他に長越茂雄 訳 エーデルワイス叢書 1955年があるようです。)
古書なので漢字が古い字体で読むのに難儀しましたが、写真やイラストもあり非常に面白かったです。
ザックが20Kgもあった事、ザイルパートナーのフェルクに反対されるも強引に持って行ったオイルサーディンの缶詰で腹をこわし後悔した事。(ハラーの入れた熱いお茶で回復する、白い蜘蛛にも記載あり)
オーストリア隊に追いついた時あまりに遅いので下山を勧めるも強情なカスパレクに断られ、お人好しのフェルクの提案で4人で登る事になったくだり。
トップのヘックマイヤーが空身で登るために残りの3人で荷物を分散して登った事、下山時の様子など、「白い蜘蛛」には書かれていない事や異なる視点からから細かく書かれていました。
全体にヘックマイヤーの謙虚な性格が窺い知れるよう印象でした。
他の2人の著書もそうですが、一番の功労者であろうヘックマイヤーも4人で協力したことが成功した要因であると認めているようです。
また、以前から気になっていた、トニー・クルツの遺体がその後どうやって回収されたのかもこの本でわかりました。
アイガーとは名前は聞いた事があるものの外国の山であるし、自身の登山とは無縁の山でしたが、山の名著として紹介されていた「新編・白い蜘蛛」を読んだのがきっかけで、アイガー北壁に関する日記も3回目になりました。過去の日記は以下です。
http://www.yamareco.com/modules/diary/41125-detail-129309
http://www.yamareco.com/modules/diary/41125-detail-130367
現在、アイガー北壁の本といえばやはり「新編・白い蜘蛛」が有名なのでしょうが、著者のハラーには批判的な意見もあることも今回知りました。
その初登頂に関しても他の本も読んだほうが正しい認識に近づけると思いますが、古書でしか読めないのが残念です。
以前、1996年のエベレストでの大量遭難について書かれた「空へ」を読んだのですが、その後同じ遭難について書かれた本「デス・ゾーン」があることを知り読みました。
その時に改めて「空へ」も読み返したのですが、「空へ」中で批判的に書かれていたロシア人ガイドと「空へ」の著者に対する印象が少し変りました。
一冊の本を読んだだけで、真実を知り得るわけではないと知った最初の本でした。
「アルプスの三つの壁」についての ankota さんの日記を見つけました。
http://www.yamareco.com/modules/diary/48851-detail-66338.html
heinaiさん、こんばんは。
訳者の安川茂雄氏と長越茂雄氏は同一人(本名 長越)ですから、二冊の本は多分同一訳書と思われます。
氏は「谷川岳研究」というルート解説書を出版されておられます。
第2次RCCのメンバーでした。
私たちもルート図を書き写して、それを頼りに登りました。
懐かしい本、懐かしい人です。ren
http://www.yamareco.com/modules/diary/8042-detail-15376 レビュー日記
ainakarenさん こんばんわ。
プロフィール拝見しました。
にわか登山者の日記に、大ベテランからコメントをいただき恐縮です。
名前が同じなので?とは思いましたが、同一人でしたか。
ありがとうございました。
ヘイナイさん、またまたこんにちはです。日記の紹介ありがとございます。
安川氏の「アルプスの三つの壁」は何故か短期間で出版社が変わって発刊されています。私の持っているのは、1966年発行の二見書房のTHE MOUNTAINSのシリーズのものです。その最後の章は安川氏自身が書いた、大変興味深い当時の日本人と三大北壁のストーリーです。さらにその最後には二見書房から発刊されるにあたり、改訳訂正したとあるので出版時期によって内容が少し変わっているかもしれません。
またヘイナイさんの前回の日記のコメントで指摘された「バケツのようなステップ」は安川氏の訳本では確かにそうなってますが、ヘックマイアーの自伝の英語版「My Life」(2002年)には、その部分を"Indeed,"steps" was not the word -they were real bathtubs."と書かれています。これもドイツ語の英訳なので原著ではどう表現されているかは分かりません。また、この自伝のアイガー北壁初登攀の章も、大分加筆されているようなので、安川氏の翻訳した初版と表現は変わっていると思います。
山の本は興味が尽きないですね。若い頃は山行の費用捻出のため、あまり本は買えませんでしたが、今になって昔の読めなかった山の本を読んでいます。
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