渚骨岳
- GPS
- 07:23
- 距離
- 11.3km
- 登り
- 1,104m
- 下り
- 1,104m
コースタイム
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山ポスト無し。 積雪1m50cm程度。 気温はプラス。 晴れ:温度があがったため、雪がやわらか。 スノーシューでも埋まりました。 明確な道は雪で無し。 |
写真
感想
最初は1泊でのルートを検討していた。
だが、夏場でのテント泊の縦走も経験していない僕が、
果たして真冬の北海道のテント泊をしていいのか不安があった。
-20℃テント泊も練習したが、所詮、家の軒先。
山とは違う。
滝西の仲間達は
「夏場でも道がはっきりしないからやめたほうがいいよ。」
「春先は雪が緩んで雪崩れるから、おすすめしないよ。」
ありがたい忠告をくれる。
でも、登りたい。
ネットの情報をむさぼる。
あった、あった、渚骨岳の日帰りルート。
2010年に5,6人のパーティーで5時間で山頂についている。
丁度、3月上旬だ。時期も近い。
きっと、フルマラソンを走れる僕ならもっと早く行けるに違いない。
(後で自分の過信を思い知る)
25000分の1の地図で確認しても、
尾根筋をひたすら登るコースで、
迷う心配もなさそうだ。
朝、6時に起きる。既に30分遅刻。
ごはんを炊いて、おにぎりを3つ握る。
おかずはすべて梅干し。
ユニクロの化繊の肌着上下、
森の仲間に借りた防寒つなぎの上に
スキーウェアを羽織る。
途中であつくなるかもしれないが、寒いよりはいいだろう。
なんたって、ここはウラジオストクより北の国。
北の国からの富良野より北の国。
車にのって国道273号を浮島峠方面へ向かう。
始めて入る山特有の高揚感を胸に抱えながら、
あわてないように、慎重になるように自分に言い聞かせる。
ゆっくりと車を脇によせる。
バックパックを背負い。スノーシューを掴む。
いよいよだ。
圧雪車が作った国道脇の小山を乗り越える。
林道に入る。静かだ。まだ温度も低い。
スノーシューをつける。固くとめる。
歩き始める。一歩。雪に足が埋まる。くるぶしまで。ばふっ。
また一歩。胸が高鳴る。まだ、頭は冷気でキンキンだ。
一歩一歩を重ねるとだんだん体中に血が巡りはじめる。
僕は生きている。
5区35線川と地図が記す小さな川を林道の橋が超える。
人がいないと川に名前もつかない。番号だ。
きちんと間伐されたエゾマツを横目に見ながら、
しばらく歩くと出てきた、尾根の取りつきだ。
雪がやわらかい。
斜面の雪が崩れて登りにくい。
エゾマツの若木につかまりながら登る。
スノーシューを斜面に突き刺しながら登る。
100mもあがると、暑くてしょうがない。
防寒つなぎをぬぐことにした。
やわらかい雪の中、ふらつきながら、防寒つなぎを脱ぐ。
化繊の肌着一枚の僕に、零下の風が吹き付ける。
さすがに冷たい。
コガラが僕をバカにするように、
2羽、小枝の間を跳ねている。
彼らが主で、僕は訪問者だ。
水を少し口に含み、
バックパックにかさばる防寒つなぎを押し込み、
100円均一の手袋の上に、バートンのスノボ用の手袋を重ね。
前の小山を見上げる。頂上は見えない。
見えるのは、左手に見える名もない934m峰だ。
この峰の形を地形図で確認しながら、
自分の高度と照らし合わせ自分の位置を確かめるのが、
もっとも良さそうだ。
道はもちろんない。
500mまでは赤テープが2枚あったが、
それ以降はまったく登山者の痕跡はない。
750m地点だ。景色がいい。
「ホーッ、ホーィー」
わけのわからない雄たけびをあげる。
キモチガイイ。オルガスムってやつだ。
急な斜面が続く。
まだ800m地点なのに、
1000m地点と勘違いした。
自分の位置がわからなくなり、少しあせる。
予想していた時間より、だいぶ、遅れているからだ。
朝、起きるのが遅いのもあるが、
それにしても想定より遅い歩みだ。
雪が急にやわらかくなり、足がかなりとられる。
一歩一歩が重いのだ。
なんとか990m地点まできた。
ここまで来ると、斜面も少しゆるくなり、
雪も固くなる。
だいぶ楽だ。
でも想定の時間より1時間近くも遅れている。
頂上は見えてきた。
どうしよう。頂上まで行きたい。
でも、帰りの時間は守らないと家族に心配をかけてしまう。
頂上での休憩を1時間とってある。
行こう。頂上が見たい。頂上から見える景色が見たい。
渚骨岳のさらに向こうに見える高い山は、
天塩岳ではないかしら、あれにも、いつか登りたい。
もうすぐ1200m。
ダケカンバの林が続く。鳥の気配が少ない。
人里から離れると鳥も少なくなるんだろうか。
風が強いのか、木の間が離れている。
斜面には木が少なくなってきた。
頂上だ。頂上が近付いてきた。
ふっ、ふっ、ふっ。
3歩、歩いては立ち止る。
斜面はそれほど、急には見えないが、
掴まる木が生えていない。
風ももろにふきつける。
ストックももっていない。
足を振り上げ、
スノーシューを斜面に突き刺し、
雪原に自分で階段をつくりながら登る。
雪崩の跡はまったくない。大丈夫だ。
ガスが少し出てきた。大雪山の方だ。
あっちが見えないのはとても残念だ。
もう少しで頂上。
2本、大雪山の方にかたむいた背の低い
風にねじまげられた枝を持つ木が僕を待っていた。
そこまで行くと、
見えたのは白い雪原だった。
やわらからくまるい。雪見大福のような雪原。
そこから頼りなく生えている木。
強い風雪に煽られつづけて、枝も背も短い。
でも、生きている。
この山に根を張って生きている。
この広い雪原に山小屋を建てる妄想をした。
もう1時を超えている。
予定では、ちょうど頂上を発つ時間だ。
冷え切ったおにぎりにがぶりつき、
凍りかけた元お湯を流し込み、
カメラで一応頂上からの風景を撮って、
僕は国道へと駆け下りた。
駆け下りる途中で、
熊の小便の強烈な匂いがした。
僕、熊を起こしちゃったかな。
登り6時間、下り2時間半。
全8時間半の行程であった。
この日の夜、
滝西の仲間と麻雀をした。
ボロ負けしたのは言うまでもあるまい。
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