残雪の越後駒ケ岳、中ノ岳縦走〜水無川から十字峡へ〜
- GPS
- 19:57
- 距離
- 21.3km
- 登り
- 2,535m
- 下り
- 2,433m
コースタイム
- 山行
- 8:58
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 9:27
天候 | 快晴。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
(復路)十字峡(k建設yさん車)-六日町駅 |
コース状況/ 危険箇所等 |
十二平登山道まで:越後三山森林キャンプ場までは車で入れました。そこから登山道までですが、残雪の状態が悪いと通れないこともあります。(8月あたまに行ったときときは雪渓が悪くだめでした)スノーブリッジの雪が完全に消えれば問題ないのですが、中途半端に残っていると行けません。この時期なら問題ないと思います。 十二平から越後駒ヶ岳(残雪期):この時期に入る人はほとんどいません。小屋の管理人さんは今シーズン小屋開け後、上がってきたのは私が初めてだったとのこと。迷うことはないと思われますが、やはり問題は中途半端に残る雪。樹林帯では這ったり、藪を漕いだり。半袖なら傷だらけです。 越後駒ケ岳から中ノ岳:今回、踏み抜いたりすることはありませんでしたが、5月後半ならわかりません。ただ夏道が出ていれば、そちらに逃げればいいと思います。雪渓と夏道の狭間に隙間(ベルグシュルント)は崩れやすく、注意が必要です。深さ2メートル以上のシュルントもあるので注意です。雪庇も絶対に5mは間隔を開けて歩きたいです。 中ノ岳から十字峡:中ノ岳から日向山への分岐は急斜面。ここを降りても稜線には雪庇があったのでやや北側斜面をトラバース気味に歩きました。日向山からはまた急登。1合目と2合目の間に鎖場があり、疲れているとけっこういやらしいところです。 十字峡から中野バス停:十字峡は電波が通じずタクシーは呼べません。30分くらい里へ下ると繋がるそうです。林道はこのとき、左岸が整備中(残雪)で通行止め。日当たりの良い右岸はこの時期なら問題ないそうです。 |
その他周辺情報 | 湯らりあ:六日町温泉公衆浴場。大人400円。(シャンプー等は別料金)地元の方が多いです。駅から徒歩5分内。汗を流すには十分です。 |
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
予備手袋
防寒着
雨具
ゲイター
ネックウォーマー
毛帽子
着替え
靴
ザック
ザックカバー
サブザック
アイゼン
ピッケル
昼ご飯
行動食
非常食
調理用食材
調味料
飲料
水筒(保温性)
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
調理器具
ライター
地図(地形図)
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予備電池
GPS
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日焼け止め
ロールペーパー
保険証
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サングラス
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ナイフ
カメラ
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テント
テントマット
シェラフ
スマホ
小説
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感想
前夜、新潟19時。その日20時間の夜勤の仕事が終わり、そのまま、まとめてあった荷物を持って浦佐駅へ。予約したタクシーの運転手さんは「行けるところまで行きます」とのこと。目的の水無川の林道の工事が長引いているようで、今現在、どこまで入れるか分からない。HPの最新情報は4月から更新されていなかった。それでも細い道を縫うように奥まで入っていくと目的の駐車場まで入ることができた。2年前はタクシー代をケチり、バス停から1時間以上歩き、結果的に残雪が悪くスタートから林道を30分歩いたところで敗退。自分史上最速の敗退だった。
今回はどうか。駐車場でテントを張り、仮眠。肌寒さで起きると外はもう明るい。5時。テントから顔を出すと渓流釣りの若い男性が駐車場へ入ってきた。小声で挨拶を交わすが、明らかに変人を見るような目である。テントをたたみ出発。前回敗退した問題の雪渓まで来る。問題ない。アイゼンを履き、乗り越えると、魚留の滝で釣師が釣をしているのが見えた。十二平登山口を入る。快晴。ここに来れただけでもうれしい。なんせ、前回は登山口すらたどり着くことができなかったのだ。急登も足元に咲くイワウチワのかわいらしい花。ツツジやシャクナゲも咲いていた。途中、カモシカの白骨化した遺体が登山道の真ん中にあり合掌し跨いだ。熊か。いや餓死か病気だ。そういうことにしておいた。真っ青な空にはさきほどから大きな猛禽類が旋回している。まさか私を獲物だと思っているのか。数回旋回すると谷のほうに消えていった。きっと不味そうだと思ったのだろう。良かった。
グシガハナ直下の樹林帯では中途半端に雪が残っており、腕まくりした右腕にいくつも擦り傷を作った。ただ、そこを抜けて広がった光景はまさに期待通りの上越の雪山の姿だった。数メートルはゆうに積もっていると見られる中ノ岳の神々しい山容。そこへ平ヶ岳、または巻機山へと続く稜線。積雪期にしか歩くことのできない道に果てしない想像を掻き立てられる。ほんとうにすごい。山はどこの山と比べたりするものではないが、ここの稜線の美しさでは決してどこの山と比べても引けをとらないと思う。中ノ岳分岐に差し掛かり歩いてきた雪庇の残る稜線を振り返ると、黒っぽい大きな動物がのっそり歩いていた。熊だ、と思った。距離はあったので怖くはないが、自分のトレースを追ってきたらどうしようと本気で思った。(小屋で画像を拡大したらなんだカモシカだった)
山頂に到着すると、特に何も感じるものはなかった。それまで見てきた景色のせいだと思った。1分も滞在せず、さっさと駒ノ小屋へ降りた。管理人の親父さんがずっと下で見守っていてくれていた。「どこから来たん!?」十二平からです。と答えると、驚いた様子でそうか!よく来たな。と暖かく迎えてくれた。なんだかすごくうれしかった。両親が津南の人間なんですと話をすると、6割は分からない言語で急に話し始めた。いや僕はこっちの生まれじゃないんですけどね、というとああ、そうか!と笑った。(様々な理由で)小屋泊はなるべく避けたいので、小屋の裏にテントを張ろうと思ったが、昨日泊まった客はみな降りて、今日は誰もいないとのこと。それはいい。とあっさり2千円を払い、2階を広々と使わせてもらった。珈琲を淹れ、料理を作り、本を読む。今日初めてリラックスできたような気がした。親父さんに明日、中ノ岳へ行きたいというと、今日のルートで来たんなら大丈夫だろうとのこと。お宅ならそのまま十字峡まで降りられるよ、とのことだった。実は当初、3連休をフルに楽しもうと中ノ岳避難小屋で一泊するつもりでいたが、明後日の天気予報が良くなく、その言葉を聞き、下山することを決めた。
夕陽を見に再度山頂へ登り、一人で六日町の灯りを眺めた。上信越の山並みが次第に暗くなっていく。奥只見の山並みはそれでも圧倒的な存在感があった。
翌朝小屋の窓から奥只見から登る朝陽を眺め、5時過ぎに出発する。今日も雲一つない。最高の朝だ。分岐を降り、中ノ岳へ向かう。雪は締まっていた。そしてそこにはスキーのトレースの跡と複数の登山者のトレースが見て取れた。しかし安心したのもつかの間、そこから先は夏道と雪渓の間に深い溝が覗いている箇所がいくつもあった。一度、熊笹を掴みながら夏道に逃げようとしたところで痛めていた右ふくらはぎを伸ばしてしまい悪化させてしまった。それでもダブルストックで歩けば歩行に支障はなかった。雪渓と夏道を交互に。アイゼンをつけたり外したり、一番慎重な方法を考えて登る。山頂まで緊張感は続いた。雪で半分埋もれた避難小屋が見えると、頂上は近かった。小さな祠がたつ山頂からは、振り返れば八海山、越後駒ケ岳。前方には奥只見へと続く荒沢岳。そして平ヶ岳、巻機山へと続く稜線がどこまでも続いていた。足の痛みを忘れるくらいに。ほんとうにきれいだった。
十字峡への分岐を降りると、2人のスノーボーダーに会った。今回初めて会う登山者だった。ひとりのボーダーが「今日、ほんとに中ノ岳に着くかな」と笑っていた。日向山から更に下る。急斜面で右足がまた痛み出した。嫌な急な鎖場を降り1合目の新緑のブナの枝に腰掛、脹脛を伸ばした。登山道に塩レモン水のペットボトルが一本落ちていた。少し迷ったが拾って持って帰ることにした。ブナ林の周囲にはカタクリやイワウチワ、タムシバが見事に咲いている。そんな場所に塩レモン水のペットボトルが一本落ちていることが単純に嫌だった。
登山口の十字峡登山センターへ着くとまずスマホの電波を確認した。圏外。そりゃそだなと思った。ダブルストックで電波の繋がるところまで歩くしかない。はじめから歩くつもりだ。しかし、暑い。すでに4合目で半袖シャツ一枚。それほどこの日、新潟は暑かった。沢の水を1,5ℓ入れて明るい右岸の道を歩き始めた。痛い。そんなとき一台の車が左岸上から走ってきて、止まった。神様は本当にいると思った。
仕事を終え、六日町市役所に向かおうとしていた地元K建設のYさんは年ごろも同じくらい。ご両親は地元六日町の人間で、夫婦で100名山を終え200名山に挑んでいるという。だからかと思ったが、乗せたのは本当にたまたまで、Yさんは山を登る人の気が知れないという。不思議とすぐに打ち解け会話は好きな日本酒の話に。一番好きな酒の銘柄を言うと、「同じ!俺もそれが一番好き」と言って2人で笑った。最後に今魚沼でしか手にはいらない日本酒がおいしいと教えてくれた。温泉に入り、その酒を買って帰ろうと思った。そして自分は本当にこの山や人が好きだなと思った。Yさんは何事もないようにザックを降ろしてくれ「お疲れ様でした」と言って去って行った。(おしまい。「魚沼で候」を呑みながら)
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