霧氷の回廊をゆく☆高台ノ尾〜赤ゾレ山〜明神岳〜薊岳〜大鏡池、大又川源流域周回
山猫
体力度について
- GPS
- 06:22
- 距離
- 17.0km
- 登り
- 1,439m
- 下り
- 1,428m
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標高グラフを拡大コースタイム
- 山行
- 5:54
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 6:21
| 天候 | 曇り時々晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2020年01月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
電車 バス
東吉野村のコミュニティ・バスで大又へ |
| コース状況／ 危険箇所等 |
高台ノ尾は登山道なし 尾根末端の植林地は金網のフェンスで囲まれており通行不能であり谷を渡って右手の尾根に乗り換える必要あり（詳しくは感想にて） |
写真
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谷をトラバースして
彼方の大峰も晴れているようだ
感想
この季節、西高東低の気圧配置では大峰や台高北部は西側からの上昇気流により山上部は雲と強風に曝されることになるが、この冬型の気圧配置が緩み高気圧が緩む時はこれらの山々でも晴天が期待される。まさにそういう天気図の予報とくれば大峰や台高の霧氷の山に心が向かうのは必然である。前日に引き続き朝に家内が車を使う予定があるため、公共交通機関を使っての山行を考えることになる。
残念ながら大普賢岳の登山口、和佐又へと向かうゆうゆうバスは年末年始は運休らしい。山上ヶ岳の登山口、洞川温泉行きのバスは朝の早い便は冬季は運行していない。仕方なく・・・という訳ではないが、年末年始でも運行してくれる東吉野町のコミュニティー・バスで大又に向かうことにする。ただ、このバスに乗るには前日の19時までに予約が必要というルールである。果たして本当に運行してくれるものかと思いながら電話をしてみると、「予約があれば運行します」と電話口では明るい声で対応して下さる。
次は大又を帰りのバスが15時35分までの6時間で可能な行程を考える。大又〜赤ゾレ山〜明神平〜薊岳というコースを考えたいが、和左羅の滝から伊勢辻山を経て赤ゾレ山に至るコースはかなり長い。一般的によく歩かれているのは林道終点の登山口から赤ゾレ山に登るルートである。しかし、大又から林道終点の登山口までは以前にも歩いがことがあるが、何台もの車に追い抜かれながら延々と舗装路を歩くのはどうも気が進まない。
地図を眺めているうちに七滝八壺から三度小屋辻に登る高台ノ尾と記された長い尾根が目に入る。ヤマレコを検索すると検索方法が悪いせいかこの尾根の記録が全く見当たらないが、この未踏の尾根に対する興味がムクムクと頭を擡げる。登りのルートはここに決まった。後半のコースは明神平に到着した時間次第だ。
榛原に8時06分に到着すると、寒々とした駅前のバス停にはリュックにMSRのスノーシューを括り付けた一人の若者がバス停を探している。「大又までですか？」と尋ねると「そうです、8時16分発の菟田野行きです」とお答えされる。「ではバス停はあそこからですね」と右手のバス乗り場を指す。出発まで駅前のコンビニで買い物をしつつ店内で温める。バスに乗り込んだのは先ほどの若者の他にはもう一人の男性の乗客がいるばかりだった。
菟田野に到着するとすぐさま東吉野村のコミュニティー・バスが到着する。一緒にバスに乗り込む先ほどの若者に「ご一緒してくれる方がいらっしゃると後ろめたさが半減します」とお伝えする。正月休みにも関わらず私一人のために運転手がわざわざこの菟田野から大又またバスを運転してくれるかと思うと心苦しいことこの上ない。バスは予約制なので途中のバス停の通過時間を気にする必要がないのであろう、大又には予定よりも30分ほど早い9時10分に到着する。この30分の時間短縮は極めて有難い。
降車時に運転手から運賃を聞いて耳を疑った。思わず運転手に聞き返してしまった。「200円！そんなに安くていいんですか？』。渡した百円玉二枚に対して「有難うございます」と丁重な対応をされる運転手に対して、私が出来る精一杯のことは「三賀日にも関わらず運転して下さり有難うございます」とお礼を申し上げることのみだった。
まずは七滝八壺の滝を訪れる。大又川に架けられた吊橋を渡るとすぐに七段もの見事な滝が現れる。高台ノ尾の尾根に取り付くには左岸の急斜面に取りつくか、滝の右岸から高巻きして落ち口を徒渉するという方法が考えられる。左岸の斜面はかなりの急傾斜ではあるが、植林地の作業道のかすかな踏み跡が目に入ったので、ここから取りつくことにした。馬酔木の藪を避けながら急斜面を50mほど登っただろうか、左手から登ってくる明瞭な踏み跡に合流した。どうやら滝の右岸を登るルートがあったようだ。
踏み跡に導かれるままに尾根を登って行くと尾根の正面は金網のフェンスが出現する。踏み跡は右側の谷筋に入ったところで消えている。金網のフェンスが谷を跨ぐところではフェンスを乗り越えることが可能なようだが、この時はそれはあまり良くない選択であるような第6感が強く働いた。谷を徒渉すると再び金網のフェンスに沿って踏み跡を見出す。踏み跡はどうやら隣の尾根筋を目指すようだ。
尾根を乗り換えて上へと辿るとフェンスは尾根から離れてゆく。尾根の取付きを登りきったたところで振り返ると先ほどの選択が正しかったことを悟る。というのも、谷筋で無理やりフェンスを越えて上に辿ったところで完全にフェンスで囲まれたこの杉の幼木の植林地から脱出することが出来なかったであろう。
地形図から予想される通り、ここからは途端になだらかな尾根が延々と続く。下生のない植林地の尾根はまるで林道を歩いているかのような快適な速度で進むことが出来る。単調な光景が続くが、樹間の広々とした植林地は登りの息苦しさを感じさせない。
所々で踏み跡は薄くなるものの尾根上には植林作業道と思われる踏み跡が続いている。稜線も近づいた頃になってようやく植林地は終わり、自然林に変わる。途端に踏み跡も跡形もなく消え失せるが、下生もなく傾斜の緩い尾根は快適に登ることが出来る。稜線に出ると和左羅の滝から登ってくる明瞭な登山道と合流しすると再び植林となり、わずかに歩いて三度小屋辻に至る。
道標のある三度小屋辻では杉林の中を北西の方向から登ってくる掘割式の古道がある。コウベェ矢塚こと玉井山に至るのようだ。伊勢辻に向けて植林の中を東に辿るとここからはいよいよ霧氷の回廊の始まりとなる。植林地の中に霧氷をみる機会はそう多くはないが、それはそれで幻想的で好きである。ここは南斜面の自然林を通って植林地の中に冷気が流れ込むから植林の中にも霧氷がつくのだろう。
伊勢辻にたどり着くとここから山毛欅の樹林となり、景色は一変する。樹々の樹高は高く、早速にも壮麗な霧氷の樹林となる。伊勢辻山は南から東にかけて展望が大きく広がり、これから巡る赤ゾレ山から明神岳へと稜線上のピークが見事な霧氷を纏って連なる様が一望のもとだ。
雲の合間から溢れ落ちる光が霧氷の稜線にスポットライトを当ててゆく様に時間をこれから辿る縦走路の長い行程を忘れてし見入ることになる。雲の合間から光が当たる場所が高速で移動してゆく様はまるで白銀の山肌が波打っているかのごとくだ。伊勢辻山からは雪の上には複数の真新しい足跡が現れる。大又林道終点の駐車場から登って来られた登山者達のものだろう。
次の赤ゾレ山も山頂部には草地に覆われた山頂部からは好展望が広がる。山頂の東側の鞍部へと下ると小さな池が現れる。曇り空を映す凍りついた水面は鈍い金属的な輝きを見せていたが、池のほとりを巡るうちに雲の合間には蒼空が現れると池のモノクロームの水面には青い光沢が広がってゆく。凍りついた水面の移りゆく色に惹かれてグルグルと池を二周することになった。
池を後にすると二重尾根となり、広い尾根には複数のトレースがあるようだが、下生のない自然林は広々とした林間を闊歩するのに不自由はない。樹林の霧氷はますます大きく成長したものとなる。台高では触れると痛そうなくらい鋭く尖った棘状の霧氷が発達することが多い。まるで新種の有棘植物のようだ。
馬駆ヶ辻のピークからは北東へ展望が、霧氷を纏った尾根の先にピークを望む。木梶山だろう。霧氷のついた尾根とその下の冬枯れの樹林のコントラストを見る度に季節の境界線を見るような気がする。
霧氷の樹林を国見山にかけてなだらかに辿ると東に大きく展望がひらけた広地が現れ、ここで初めてやはり見事な霧氷を纏った桧塚からのその奥峰にかけての吊尾根が姿を現す。三人のパーティーがランチ休憩をされておられる。明神平からここまで辿って来られる間に数組とすれ違ったとのことであったが、先行する足跡の主達であろう。
国見山へと尾根を辿ると、随所で霧氷の樹間から稜線の東側には桧塚と奥峰を眺めながら歩くことになる。彼方の桧塚でも白銀の尾根が波打つ光を放っている。国見山の山頂から水無山の間は霧氷の樹林からは展望はほとんどない。水無山から明神平への下りでようやく先行者の影を見る。
明神平に降りるとこれまでに訪れた冬の明神平では最も雪が少ない。あしび山荘の傍らには数名の登山客が休憩しておられる。あしび山荘の脇に佇んでいるのは今朝方、バスに同乗した若者であった。気の毒にリュックに括り付けてきたスノーシューの出番はないだろう。
山荘の前の四阿（あずまや）で義理の母親が用意してくれたおせち料理の弁当を広げる。立ち止まっていると途端に寒さを感じるようになる。箸を持つ手は手袋を脱いでいたら途端に指が悴み始めた。
弁当を食べ始めると明神岳の方から男の子と父親の二人組が歩いてくる。小さい男の子は山慣れした様子でダブル・ストックを器用に操っている。二人は四阿に到着すると同じテーブルでランチを食べ始めた。聞くと男の子は小6だという。「小1の頃から登山を始めて・・・」と父親が男の子のリュックを指すと多くの百名山を含む有名な山々の登山バッチが小さなリュックには勲章のように鏤められている。私自身は父親に登山バッジを買ってもらったこともダブル・ストックを操ったことはなかったが、私自身の小学生時代を思い出させた。
明神平を後にすると千石山、赤グラ山の姿を眺めに三ツ塚へと寄り道する。明神岳への尾根の展望地から眺める千石山にも霧氷は見えるが、やはり記憶の中にある千石山の冬の姿に比べると霧氷が薄いように思われた。大又からのバスの時間を考えると明神岳に立ち寄るのは自らの首を締めるような行為であるが折から日差しに輝く白銀の霧氷に魅せられて、自然と足が山頂へと向かっていた。
明神岳で折り返すとかつての明神平の前山に到着する。スキー場跡地から北に望む赤ゾレ山から国見山への稜線には早くも雲がかかり始める。この前山に来ると、ご子息を伴ったmichikusaさんと昨年の5月に偶然にもここで邂逅したことを思い出さない訳にはいかない。この前山の南斜面からは中奥川の源流域と昨年の冬に辿った白髭岳への長大な尾根を正面に望む。
薊岳にかけての尾根へと入ると霧氷の回廊はまだまだ続く。こちらの稜線んでも赤ゾレ山から国見山の尾根や明神岳ほの霧氷に全く引けを取らない。正面左手に望む薊岳の山頂にも雲がかかり始めた。前回、この稜線を辿った時には強い風雪に混ざって飛んでくる霧氷のかけらが?茲に突き刺すような痛みをもたらしたのだった。
薊岳への手前のピーク、p1334からなだらかに左手に弯曲する尾根にさしかかると霧氷を纏った鋭鋒が再びくっきりとその姿を見せる。雲が晴れてくれたお陰だろう、薊岳の山頂の手前からは赤ゾレ山から国見山、さらに右手には明神岳から笹ヶ峰を経て千石山、赤グラ山への稜線を展望することが出来る。明神岳より南はやはり山頂部分以外はほとんど霧氷も雪もついていないようだ。
薊岳山頂は南西に展望が開け、昨年の冬の縦走において登り始めた峰山と両仏を彼方に眺望する。これらの山々がなんと遠くに見えることか、どれほど長い距離を歩いたことか感慨に耽る。時間を確認すると14時10分、大又発のバスの時間まで後1時間25分。下山の時間を気にするうちに山名標の写真を撮ることをすっかり失念していた。
薊岳からは急下降から始まるがまずは前薊岳への小さな登り返しがある。その後も西側の稜線には地図には現れない小さいピークに連続する。いつしか雲空から青空が広がり始めた。
霧氷の回廊もそろそろ最終章だろうか。周囲からは雨が降るようなシャーという音が聞こえ始めた。一瞬、本当に雨が降り始めたか思ったが、青空からは燦々と陽射しが霧氷の木々に降り注いでいる。音は雨にしては乾いた音に聞こえる。陽射しに暖められたせいだろうか、雨のように絶え間なく霧氷が落下する霧氷の音であった。降りしきる霧氷に向けて何度もカメラのシャッターを切るがカメラでは捉えることの出来ない光景であった。
尾根上の小ピーク、小屋ノ尾の頭のあたりで植林が始まる。霧氷の樹々もついに終わりかと思いきや、植林の向こう側には再び霧氷が陽光に煌めいてる。霧氷の釣られるように尾根を辿るが、途端に足元の踏み跡が薄くなった。GPSを取り出して確認をすると小屋ノ尾と呼ばれる尾根に入りかけたようだ。本来の登山路はここで大きく方向を変えて、植林の中を下ってゆくことになる。
植林の中は単調ではあるが道は明瞭であり、下りやすい。登山路んは「大鏡池→」と記された道標がいくつか現れる。果たして鏡のような水を湛えた綺麗な池があるのだろうかと期待していたが、植林の中の伐採された広地に忽然と出現した池は水面は凍りついていたが、半ば枯れかけていいるようだった。最後の斜面を下っていると、伐採地からは真正面に行きに登った高台ノ尾の尾根が見える。真正面から見たせいだろうか、登っている最中は緩やかに思われた尾根も意外にも傾斜があるように思われた。
林道に出ると右手の斜面を下り、壮麗な笹野神社に登山の無事をお礼参りする。バス停に到着したのはバスの予定出発時刻の2分前であった。勿論、乗客は私一人しかいない。行きと同様、菟田野のバス停には30分ほどで到着してしまったので、榛原行きの奈良交通の時間までは30分の時間がある。R166を少し歩くとローソンがあるので、バスの時間まで店内のmachi cafeでビールを飲みながら体を温めることが出来たのはなんとも有難い。
バスが榛原に向かうと雲のない西の空に日が沈んでゆくところだった。霧氷の台高を堪能した一日であった。
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５月に偶然にもこの山でお会いしてから、もう年が変わったのですね。地図で教えていただいた広い尾根を歩いて、美しいブナ林の魅力を親子で感じた山歩きでした。この山域に再来することなく季節は過ぎてしまいましたが、白い冬の霧氷の風景に、再び心が惹かれます。冬にはこんな美しい景色が見られるのですね。
それにしても、東吉野？のコミュニティバスは親切でありがたいですね。
実は全く違う件で家内とmichikusaさんの噂をしていたところでした。
季節にかかわらず、明神平スキー場跡のある前山を通るたびに今後もmicikusaさんとばったりとお会いした時のことを思い出すことになるだろうと思います。
車で行くと大又林道の終点まで入ることが出来るのですが、京都からの車の運転を考えると東吉野村のコミュニティー・バスが楽な上に、あまりにも安いので味をしめてしまった感じです。ところでお陰様で東吉野町ではなく、村であったことに思い当たりました。村民税で運行されているかと思うとこんなに長距離を安く乗れることが心苦しくもあるのですが、でも一人でも乗客がある方がいいでしょうから。
また近々、お目にかかれる機会がありますことを楽しみにしております。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
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