比婆山☆雪と山毛欅の林を求めて
- GPS
- 03:16
- 距離
- 8.2km
- 登り
- 714m
- 下り
- 698m
コースタイム
- 山行
- 3:06
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 3:16
過去天気図(気象庁) | 2020年02月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
翌日の土曜日の午後に松江での仕事がが入ったので、仕事前日に道後山を登った後で、翌日に比婆山を登る予定にしていたのだが、翌日は日本列島を縦断する気圧の谷が西から移動してゆくので、午前中は降雨は間違いないようだ。しかも南西から湿った空気が吹き込むのでなけなしの雪も融けてしまいそうだ。かくなる上は午後に道後山と比婆山と二つの山を登ることを目論見る。
道後山から下山したのは丁度13時。道後山とこの比婆山の登山口はその間をつなぐ県道が冬季通行止めであり、備後落合を経由して回り道をしなければならないが、車で30分とかからずに移動することが出来る。この日、宿泊予定のひろしま県民の森に電話で宿泊をお願いしたところスタッドレスでないと無理ですと云われたが、除雪のお陰であろうが、道路には全く雪はなく、スタッドレス・タイヤの効用を発揮することなくゲレンデの駐車場までたどり着けてしまった。
ただし、スキー場は昨日から営業を開始したあって、そのオープンを待ちわびていた方々もおられるだろう、駐車場には他にもスキー客の車がちらほらと散見する。ゲレンデの横から始まる登山道は道後山よりは雪があるようだが、やはり雪は全体的に少なそうだ。スノーシューと12本爪のアイゼンは車に残し、道後山の用意のままリュックを担いで出発する。
植林地の中に入ると登山道には数多くのスノーシューのトレースがあるがツボ足のトレースはないようだ。植林地の中を登山道はジグザグと登ってゆくが、尾根筋はそれほどの傾斜でもないので、トレースのない雪の中を直登する。やがて植林地を抜けるとコナラやカエデの目立つ明るい自然林のとなる。
高度が上がるにつれて、林の中には山毛欅の大樹が目立つようになる。比婆山を登るにあたり、このコースを選択したのは他でもない、山毛欅の純林が目当てであった。斜面には個性的な枝ぶりを見せる山毛欅に圧倒されそうになり、樹々のシルエットを見上げては歩みを止める。
四国の石鎚山系、丹沢山系、近江の湖北地方、比良山系、頸城山系の火打山、そしてすぐ近くではお隣の伯耆大山などの印象的な山毛欅林を有する山々を思い出すが、地方により山毛欅の形というのはかなり個性があるものだと思う。概して太平洋側の山毛欅は樹の下の方から枝分かれして、枝ぶりが大きいのに対して日本海側では天を掴むように屹立するものが多い。この比婆山はどちらかというと両者の中間的な形であり、低いところから枝分かれするが、すっきりしたシルエットのものが多い印象だ。山毛欅の表面には苔が覆っている樹が多いのはこの地方に降雨や霧が多いためだろう。
比婆山の主稜線に出ると傾いた午後の淡い黄金色の日差しが樹林の中に差し込んでいる。尾根には存在感のある樹が現れる。門栂と名付けられてはいるが、この地方ではいちいの樹のことをとがと呼ぶらしい。
先に進むと御陵と呼ばれる場所があり、樹々に囲まれて注連縄を巻かれた石が中央に鎮座している。説明文によると烏帽子岩と呼ばれる岩らしい。幕末以降、比婆山を神陵とした神陵登拝が盛んだったらしいが、明治二十年頃、比婆山を神陵とすることが禁じられ、登拝が衰退したとのことである。
比婆山の三角点がある筈の地点には数本の山毛欅の樹々が寄り集まっているが、山名標も何も見当たらなかった。三角点の柱石は見当たらないが、勿論、雪の中だろう。
比婆山の北斜面をなだらかに下ると樹々の間からは山頂部に低木帯が広がる烏帽子山が見える。なだらかに尾根を辿ると東回りと西回りの分岐がある。西回りのルートにはトレースがないので躊躇なく西回りを選択する。
山頂の西側斜面に入ると正面にはなだらかな吾妻山のシルエットとその手前に大膳原の広々とした草原が視界に大きく飛び込んでくる。比婆山の尾根で西側の展望が開けるのは唯一、この山頂部の西側のみであった。
烏帽子山の山頂からは展望が大きく広がり、南には越えてきた比婆山、東側には午前中に登った道後山を眺望する。道後山は西側から見ると見えているのは山頂の手前のピーク、岩樋山であろうが、細かいことは気にしない。
登山道は烏帽子山の北尾根の東側をトラバース気味に降りてゆくことになっているが、尾根筋にもテープがつけられており、笹の上に程よく雪が被った状態では笹の藪漕ぎを強いられることもなく快適に下ることが出来る。比婆山の東側斜面と異なり、稜線上は存在感のある大きな山毛欅は少ないように思われたが、一際大きな山毛欅の大樹が目に留まる。
出雲峠に下ると毛無山が大きく目に入る。それまではほとんどがスノーシューの足跡ばかりであったが、スノーシューの足跡は県民の森に向かって登山路を降りているようだ。夕方まではまだ時間があるので毛無山に立ち寄ることにする。最初のピーク、ききょうヶ丘への登りに差し掛かるとスノーシューのトレースは全く見られず、代わりにワカンのトレースが登場する。南斜面になるせいか、雪は途切れがちである。これでは最早、スノーシューでも歩き難かろう。
ききょうヶ丘への上りは西側は檜の植林、東側はカエデやコナラの自然林となり、登山道はその境界を登ってゆく。山頂からは東側に大きく展望が開けて、大山とこれから辿る毛無山を展望する。
毛無山に向かうと自然林の林の樹々の樹肌を夕陽が琥珀色に染め上げている。登山道には多くの踏み跡がみられるがもはやワカンのトレースも見られない。毛無山の山頂に着くと、先ほどまでは空に見られたいく筋かの巻雲も消えて、明日の雨の予報を疑いたくなるような雲ひとつない快晴が広がっている。
山頂で夕焼けを見たいところではあるが、まだ日没の時間までは1時間近くありそうなので、さすがにそれは諦めて、本日の宿泊先の県民の森へと下ることにする。
翌朝、起きると予報通り大粒の雨が降っている。空気も生暖かいので、この雨で山の雪もかなり融けてしまうことだろう。折角、開始したスキー場の営業もどうやら昨日限り、二日で営業を終了することになるらしい。
コメント
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山猫さん、こんにちは。
中国地方では有名なお山かと思ったんですけど、ランキングでは上位には無いような?? ランキングの種類にも寄るんでしょうけどね。中級者以上のお山みたいなのでその辺りも影響しているのかも。
私の中では、広島県=比婆山なんですけどね。道後山の方が有名のようで。
道後山も登られたのですね。そそっかしい私の頭の中では、「松江で仕事」「道後山」ということで四国に行っておられるのと勘違いしてました。「松山」ですよね。あっちは。どうやって同じ日になんて思っちゃいました。
なるほど〜 ブナの木立を見ておりましたらスマートなブナだなと思っておりました。
ののさん コメント有難うございます。
私も広島県の山というと宮島の弥山は別として、まず比婆山と道後山が思いつきますが、両者の山の雰囲気は意外と異なっておりました。広島の山のランキングというのをいくつか見てみましたが、山の人気のランキングというのは全くあてにならないもので、最終的には自分で判断するしかないように思われます。
道後山は無雪期は月見ヶ丘の駐車場まで車で上がれてしまうので、後はわずかになだらな尾根を歩いて山頂に辿り着けてしまう、実にお手軽な山になります。こういう山は人のいない積雪期に登るに限ると思ってしまいます。といっても積雪期はわずかにゲレンデ歩きが加わるだけですが。
比婆山はコースの組み方によってはもっと長くなったり短くなったりといろいろとコース取りに選択の余地がありますが、なんといっても東斜面のブナ林の魅力に尽きると思います。また季節を変えて訪れてみたいところでした。
ところで道後の意味をググるとすぐに出てくると思いますが、その名の由来は興味深いですね。昔は全国の各所に道前・道後があったようで。
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