記録ID: 30141
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ハイキング
十和田湖・八甲田
トホレコ（日本縦断徒歩旅行の記録）12・まさかりの上をゆく。
2006年07月18日(火) 〜
2006年07月21日(金)
nezzrow
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標高グラフを拡大| 過去天気図（気象庁） | 2006年07月の天気図 |
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| コース状況／ 危険箇所等 |
7/18 靴というのは、踵が変に擦り減ってしまうと何とも履きにくくなるものである。僕の靴は、歩き初めてまだひと月そこそこだというのに、早くも使いものにならなくなってしまった。15分も歩くと踵が痛くてしょうがない。結構高かったのに、ノースフェースなのにぃ、と嘆いたところで始まらない。Joneyama邸を後にした僕は松風町のアーケード街に向かった。しかしあんなワビサビでちゃったアーケードで気に入った靴が見付けられるか不安である。ボーニ・モリヤやワコー（どちらも函館駅前のデパート）に頑丈なウォーキング・シューズがあるようには思えない。 アーケードを冷やかして歩くうちに、ちょっといい感じの帽子屋を発見。その名も「赤帽子」。後でJone氏に聞いたところによると函館随一の老舗なんだそうで。僕は１０年ほど前、ハバロフスクを訪れて以来、帽子はハンチングと決めている。ハバロフスクの人達は、春の訪れとともに、頭に乗せたフカフカのロシア帽を一斉にハンチングに変えるのだ。そういう条例でもあるんじゃないかと思うくらいに、町ゆく男衆の９割方が大人も子供もハンチングなのである。「大の大人がハンチングを被らないなんて、パンツを履かずに歩くやうなものだ。」とでも言いたげな風情は、ちょっとした見物である。僕はその圧巻の光景を目の当りにして以来、帽子はハンチングと決めたのだ。しかし当時東アジアにおいてはハンチングに対する理解は極めて乏しいと言わざるをえず、台湾においてですら、「ソノ帽子ハ、やくざダヨ」などとからかわれる憂き目を見続けていた。最近でこそ、ちょっとお洒落なデザイナー風の野郎共がハンチングを被って悦に入っているやうだが、ああいうのは気にくわないね。ハンチングは「おしゃれ」じゃねえ、「らいふすたいる」なんだよぉ。そこへいくと「赤帽子」はいいよね。まとめ買いしたい誘惑を抑えて厳選した一着を購入。ご主人曰く、赤帽子オリジナルの一点ものだとか。なるほど、タグをよく見ると「ROSSO」の文字が輝いている。我ながらよいブツを選んだものよ。 赤帽子の近所にウォーキング・シューズ屋を発見。４割引きの値札のさがったブツを試してみる。ちょっとデカ過ぎるやうだが、安さに負けて購入。この店には「シュー・フィッター」なるひとがいるらしが、怒られそうだよね。「靴はらいふすたいるなんだ。」とかって。 そうこうするうちに、いい時間になってしまった。本州亜大陸に上陸する前に例の「リンクルミリオン」の東北版を購入しておきたかったのだが、松風町をさ迷うのはもういやになってしまった。こういった雑事はJone氏の家に滞在しているうちに済ませておくべきだったんだろうね。まあ、地図くらい何処ででも売ってるだろうということで、さっさとフェリー・ターミナルへ。時刻表を調べてみると次の便が最終である。あぶねえなあ、地図なんて探してないで良かった。 大間港行きの船に乗船。大間は下北半島の北端にある漁港で、本マグロの一本釣りで有名なところである。函館山を左舷に見やりつつ、船は厳かに函館港を置き去りにしていく。やっぱ船はいいよなあ。盛り上がるもんなぁ。さようなら、どっく。函館の町に名残を惜しむ意味合いを込めてラッキーピエロのハンバーガーなんて食べてみた。ラッキーピエロはハセガワストアーのヤキトリ弁当と並んで函館を代表するB級グルメである。 船がまさに大間港に入ろうか、という絶妙のタイミングで雨。それもかなりのドシャ降りである。こういう間の悪さを前にすると、雨男としての自覚も増そうかというもの。手荒い祝福だぜ。今夜の寝床はターミナルの軒下をあてにしていたのだが、ちっぽけな建物で寝れそうな感じではない。雨さえ降らなきゃ、その辺にテント張ってもいいんだが、既にあたりは水浸しである。どうしたものかと思い悩んでいるうちに、早くも船が折り返し出航していく。ターミナルを追い出されてしまった。あたりは真っ暗である。地図もないしどっちへ行っていいのか見当もつかない。幸い雨は小降りになったので、あてもなくそこらをうろついてみる。わびしいにも程があるぞ、大間港。ビジネスホテルのネオンに誘われるままに、一泊お願いすることに。どうせなら味のある民宿にでも泊りたかったけど、しょうがない。これはこれでわびしいなぁ。 7/19 早朝、さっさと宿をあとに。南の方へ向かって適当に歩いていく。仏ヶ浦を通って脇野沢まで、まさかりの刃の上をたどってみるつもりだ。ドカドカと賑やかな音を立てて行き過ぎてゆくトラクターのじいさんが、すれ違いざま何か声を掛けていく。「ええ、札幌から来ました。」とかってテキトーに答えておいたが、そんなこと聞かれていたのかは不明。 このあたりはちょっと前にNHKの朝のドラマのロケ地になったところだそうで、海岸にその旨を伝える看板がポツ然と立っていたりする。たしかにきれいなとこである。昨日さっさと函館を立っていれば、このへんで気持ちよく寝れたかも。別に興味ないけどね、朝の連ドラとか。 佐井港に入るちょっと手前で温泉の看板を発見。「千金温泉」という有り難い感じの名前である。なんかよくわからんけど、こういうのには入っとくべきだろう。山側へ少し行ったところに千金温泉はある。こじんまりとしていて、なんか公民館のお風呂を借りてる感じだ。湯はわりといい。たぶんかけ流し。湯上がり、地元のおっちゃんと話したりしながら、まったりしてから出発。 佐井港に寄ってみる。ここから仏ヶ浦を通って青森まで行く観光船みたいなのも出ているようだった。ようやく商店を見付けて地図を購入。「リンクルミリオン」じゃなかったけどこの際なんでもいいか。 佐井港を過ぎると海岸線は徐々に嶮しい地形になってくる。ちょっとした港をつなぐのにいちいち山道をこえて行かねばならない。登ったと思ったらすぐ下る。結構しんどい。 長後という小さい港の端っこの方で野営。久々に焚火。 7/20 長後の港を過ぎると道はいよいよ嶮しくなる。急な坂道が山の中へと続いていく。海なんてちっとも見えない。車の通りもほとんどない。もの静かな道をトコトコと辿っていると、ガードレールのすぐ向こうに何やらケモノが佇んでいるのに遭遇。このへんは地図におサルマークが並んでいることからも分かるように、おサル危険地帯である。僕は何故かおサルが苦手である。それは、一匹のおサルとして野山を駆け回った前世の因縁であるのかもしれない。あるいは「モンチッチ」よばわりされた、忌まわしい幼少時代のトラウマであるのかもしれない。なんでもおサルが嫌いなのだ。意味もなく襲われるやうな気がするので。 そんなわけで、件のケモノもおサルであると早合点してしまった。それにしちゃでかい。 「いくらなんでもデカ過ぎる?超巨大ボスザルだ・・・。」 などと思わず声をあげてしまった。その声に驚いたのか、ケモノがふと振り向いた。おサルかと思ったのは、実は鹿なので。僕は鹿なら大好きだ。あれは何時ぞやのトムラウシからの下降の折である。二人パーティで雪渓を下っていたところ二頭の若い熊とニアミスしたことがあった。我々は沢筋を下るのを諦め、薮をこぎ、小規模な沢型に入った。そこは鹿の通り道であったと覚しく、一筋の鹿道が神々しいばかりに続いていた・・・。あれ以来僕は鹿のファンになってしまったのだ。かっこいいよね、鹿。おサルは嫌い。 鹿の方でも多分油断していたのであろう。振り返った時、しばらくキョトンとしていた。車さえほとんど通らない道である。歩いている人間なんて相当珍しいのだろう。やがてハタと気づいたやうにして、鹿は一目散で斜面を駆け降りていった。触ろうと思えば触れる位の至近距離であった。さすが、下北。 ここからしばらく行くと今度はおサル登場。法面の上に結構な数、群れている。道端にはおサルのウンコが点々と続いている。何かのオブジェみたいに屹立してたりして。勘弁してほしい。おサルってのはなんか、奥ゆかしさに欠けるよね。人影を見たら、「あっ,人間だ！」って感じで、ぴゃ〜っと逃げ出してもいいと思うよ、野生動物らしく。おサルときたら別にうろたえるでもなく、安全そうなところからこちらの様子を窺っている。かわい気ねえな。「ええい、おサルめ。」とか言いつつ、とりあえず写真は撮っておいた。 福浦に入ったところで小休止。ビスケットを貪り喰う。僕の昼食は主にビスケットである。道は再び山の方へ続いていく。縫道石山への林道の分岐あたりにちょっといい感じの食堂が暖簾をはためかせている。その名も「ぬいどう食堂」。ちらっと覗いたところウニ丼がやけに安い。正確な数字は忘れたが、確か千円しないくらい。このへんはウニ漁が盛んなところらしく、お昼頃になると街角のスピーカーから「本日のウニ取り引き速報」みたいのが流れてくる。地元の味をちょっと試してもいいところだ。しかし千円弱というのはウニ丼としては格安だが、ランチとしてはちょっとお高い部類に入る。さっきビスケットを貪り喰ったばかりで別に腹が減ってるわけでもないしなぁ。迷った挙げ句、断念することに。食堂の屋根をかすめるやうにして急な坂道を辿るうちに、とたんに惜しいことをしたと後悔しはじめる。別にケチることなかったよなぁ。ぶぅぶぅと悪態をたれつつ歩いているとそのうち縫道石山が見えてくる。登山道から簡単に登れるらしいが、ずいぶん立派な岩峰に見える。 仏ヶ浦を見物。海岸まで急な道を結構下らねばならない。道端に荷物をデポしていく。仏ヶ浦は白っぽい岩峰が林立していて楽しいところ。おみやげ屋さんの姿も見えるが、適当に枯れていていい感じである。 荷物を回収してさらに先を急ぐ。牛滝の漁村に目をくれて、道は海を離れ山の中へわけいっていく。牛滝ってとこは、あんなところにヒトが・・・って思わせる様なわびしげなたたずまいだった。 今日は何かって言うと坂道を登ったり降りたりしていたのでいい加減嫌になってしまった。一日の終盤にさしかかってこの登りである。イライラしてくる。 「我々は、たかだかウニ丼一杯も食べさせて貰えぬまま、斯様に苛酷な労働に従事させられているのです。このやうな暴挙が許されていいのでせうか？！たかだか一杯千円のウニ丼も食べさせて貰えぬまま・・・。」 などと大声で盛んにアジりながら歩く。夕暮れの道には通る車もなかったので。 野平という牧場のあるあたりまで登ったところで寝床を探しはじめる。近所の犬がしきりとわんわん吠えかかってくる。犬が人命を救った、みたいな美談ってよく耳にするけど、犬って絶対そんなことしないと思うよ。沢の水を汲んでみたが、牧場を流れてきた水はやはり飲むのに相当なガッツがいる。困ったな、犬はうるせし・・・。そうするうちにも陽はどんどん傾いていく。いっそ、かわうち湖の道の駅まで歩くか？ってことに相談が決まって、さらに内陸へと重い足を運ぶ。明日向かうつもりの脇野沢への道とは方向違いだが、まあ仕方あるまい。しばらく行くと湖畔におよろすぃ感じの公園を発見。辺りには人影もなく、俺様の為だけに作っておいてくれたやうな施設である。歩いて旅をしていると、こうした「なんのためにあるのかわからん施設」をあちこちで目にする。せっかくなんで遠慮なくテント設営。ラッパだって吹いちゃうよ。 7/21 昨日の道を引返してR338に入る。一応通行止めになっているが、時折車も通るし、まあ行けるでせう。実際行ってみると、何故通行止めなのか分からないようなちゃんとした道である。難を言えば、稜線近くを通っているので水場がなくてこまるってくらいか。途中一ヶ所パーキングがあってトイレも設置されているのだが、水はタンクに汲み置きのもので、当然飲用水ではない。一見透明でキレイな水なので、飲みたい誘惑に駆られて悶絶した。道路工事などしている急な道を下って無事に脇野沢へ。 脇野沢は林業の盛んなところとみえて、堂々たる植林の森がひろがっている。製材所帰りと覚しきおばちゃんたちがワラワラと森の小路から出てくる。みんな口々にわぁわぁと何か言っているのだが、何を言ってるのか今一つよく聞きとれない。例によって「ええ、札幌からです。」などとテキトーに答えておく。それで一応納得したらしく、みんな口々にわぁわぁと何か言いながら何処かへ消えていった。 脇野沢の道の駅には恐ろしいことに「野猿公苑」なんてものがあって、おサルどもがフェンスにしがみついて、しきりにわぁわぁと騒いでいる。道の駅ってところはあれば寄ってみるんだが、大概何の用もないんだよなぁ。でも、あれば素通りはしないね、不思議と。 道の駅からちょっといったところに温泉がある。その名も「脇野沢保養センター」。入浴料は大人200円くらい。相当に枯れた感じの施設である。こういうものを見かけたら取り敢えず入っとくべきである。ぬらっとした感じで悪くない湯である。第一静かでいいよ。スパ・リゾート風の今日びの温泉にはない、イノセントな風情がここには横溢している。この温泉は1/20万の道路地図には載っていないので、拾い物をしたやうな、ちょっと得した気分である。 港に出て今夜の寝床を探す。漁港は何かと賑やかそうなのでちょっと離れたところにある神社の脇の四阿にて野営。神社ってところはちゃんと拝んでおきさえすれば悪いことは起きないものである、と勝手に思い込んでいる。多分、そんなに間違ってないハズよ。 |
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Haru_1964 さん
ああ奇遇だ。きょうそこをとおって、1000円のウニ丼、パスして悔やんだ。縫道石山、いい山だった。
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