鹿島槍ヶ岳北壁
- GPS
- 32:00
- 距離
- 14.6km
- 登り
- 2,118m
- 下り
- 2,119m
コースタイム
大谷原Co1060(7:15)→荒沢奥壁下部Co1600(10:45)→天狗尾根最低鞍部Co2360(13:45)C1
4/28
C1(4:30)→北壁基部(6:30)→八峰キレット南の稜線(10:30)→鹿島槍北峰(12:30)→鹿島槍南峰(13:30)→鎌尾根上部(14:30)→西俣出合(16:45)→大谷原(17:30)
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2003年04月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
鹿島槍北壁基部より八峰キレット南のルンゼを登攀し、鎌尾根から北俣沢を下降した。 |
感想
4/27
朝、大谷原を出て林道を歩きはじめるころはすでに初夏のような陽気だった。さすが5月の山だ。清野さんの下調べによれば、大川沢には地図上で左岸に林道がついているが実際は右岸にも伸びているらしい。その林道を辿り大川沢の渡渉は避けることができた。アラ沢へは出合をショートカットして尾根を越える。予定通り危なっかしい渡渉は無かった。
アラ沢は2、3箇所沢が口を開けているところがあったが残雪を伝って通過できた。ショートカットの尾根から仰ぎ見た荒沢奥壁は有名なキノコ雪など跡形もなくなっていた。黒々と輝いている。沢の雪崩も静まってむしろ落石が怖いくらいだ。土雑じりのデブリの雪を踏みしめ、天狗尾根を目指す。当初の計画ではアラ沢北俣奥の支稜から天狗尾根へ至り鹿島槍の北壁まで継続登攀するつもりだった。しかし、雪が消えた猛烈なブッシュを前に登攀意欲は一瞬にして萎えた。
継続登攀をあきらめ、アラ沢はそのまま北俣の右股を詰めて天狗尾根の最低鞍部を目指す。途中大滝があるらしかったが完全に雪の下だった。
天狗尾根に出る。悪い予感は当たった。鹿島槍の北壁は雪もまばらでほぼ真っ黒。
黒い北壁となっていた。五竜も夏のような土色だった。一応、目指す北壁の主稜ルートを偵察するが真っ白な北壁を期待していた我々の落胆ぶりは相当なものだった。北壁基部へのトラバースルートには最近のトレースがついていた。明日我々もこのルートで行けるだけ行ってみようと決めて天狗尾根の鞍部にツエルトを張る。今日も明日も天候には不安はない。日本列島は巨大な高気圧の真っただ中だ。
4/28
翌日、午前2時起床。夜明けを待ち4時半出発。トラバースルートは傾斜の強いクラストした斜面が続き高度感もあって緊張した。もし滑落すれば空中をダイブしてカクネ里まで吹っ飛んでいくだろう。先行のトレースはすぐに途絶える。どうやらこの北壁の状態を見て引き返した様だった。それもそうだ。中央ルンゼも正面ルンゼも全くの雪つかずだ。ここから見る限り主稜に取り付いたとしてもブッシュと草付きの登りに終始するはずだ。
トラバースルートは支尾根を2つ越えて3つ目の先のルンゼを下降する。後で下から見て分かったが、2つ目の支尾根を越えたところからルンゼを下降するのが正解だった。我々の採ったルートは、途中2カ所クレパスを越えるのに懸垂が必要だった。
北壁主稜基部には6時半に着。そこから見る主稜2p目の核心部は雪が完全に消えて草付まじりの壁となっていた。やはり主稜はあきらめよう。そのほかにここから北壁を稜線まで抜けるルートを探してみる。他のルートも絶望的だった。八峰キレット方面に上がる洞窟尾根も、途中で雪が切れて巨大なキノコ雪がなんともいやらしいバランスで乗っかっている。
唯一、洞窟尾根の右に見えるルンゼにのみ雪が詰まっていた。上部まで登攀可能な感じだ。不安なのは側面からのブロック雪崩と落石だ。スピードを優先し、ノーザイルで急なルンゼを抜けよう。ザイルピッチにして2、3ピッチ分あろうか。実際下からは見えなかったが、そのルンゼを抜けると上部が漏斗状に広くなり洞窟尾根の1本八峰キレット寄りの尾根にひょっこりと出た。八峰キレットの小屋がすぐ横に見える位置だ。そこからさらに上部の稜線まで抜けるルートを目で追いながら大休止。さらに日差しが強くなる。雪が緩み北壁の各ルンゼからブロック雪崩の音が頻繁に聞こえてくる。
大休止の地点からそのまま支稜を詰め稜線へ抜けるのは途中岩壁があり面倒だったので、ルンゼをトラバースして隣の支稜に移る。アンザイレンで出発。
1p目:急なルンゼをトラバースして隣の岩稜側部へ。40m。
2p目:日陰となって凍ったままの急な雪壁をダブルアックスで抜け、支稜上へ。45m。
3p目:支稜上の巨大キノコ雪が不安定なため再びルンゼ内へトラバースして戻る。そのままルンゼを詰めて支稜上へ。支稜上の巨大キノコを捲くような形となった。ブッシュでビレイ。45m。
4p目:支稜をそのまま登って急な雪面を越え稜線へ。50m。
稜線に出てから改めて北壁全体を眺めてみる。今の状態で上部まで雪が続いているのは我々の辿ったルートのみだった。まさに北壁基部からの脱出ルート。上部は日陰になるので雪が締まっており快調なルンゼ登りに終始した。少しだけ初登ルートの喜びに浸る。剣岳、毛勝山方面は去年の今頃よりも白く見える。白馬のほうもそう。このあたりだけ局地的に少なかったのか?
アイゼンを脱いで夏道を辿って鹿島槍の北峰へ。新潟峡彩の2人パーティと会う。
尻セードで降りるつもりだった北俣本谷はまだ時間が早く、氷化していたためあきらめる。鎌尾根を下る。鹿島槍南峰でさらにショートスキーをもった梶山さんら2人パーティと会う。鹿島槍南峰のダイレクト尾根を登りこれから鎌尾根を下るそうだ。聞けば、鎌尾根の最上部にハングした雪庇が残っているらしい。ザイルで確保しながら雪庇を切り崩し、皆で下降することにした。
鎌尾根への降り口は少し迷ったが、新潟の2人がスコップを使って雪庇を切り崩してくれた。感謝。鎌尾根にのった直後、南側の稜線からドド〜ンという轟音とともに雪庇のブロックが崩壊し、雪崩となって北俣谷へ落ちて行った。くわばらくわばら。
すっかりおじけづいた我々は尾根を忠実に下る。Co2400m付近で尾根が不明瞭となりクレバスでズタズタとなって泣けてきた。慎重に通過する。再び尾根が明瞭となるCo2350m付近では雪面に刺さったままバイルが放置されていた。回収し後から分かったことだが、そこは今月初旬に悪天を突き鎌尾根を登ったわらじの仲間のパーティが雪崩によって遭難した現場であった。
夕方、日が陰ってきた頃を見計らい、Co2300付近から南側の谷を尻セードで一気に滑り降りた。そのまま北俣谷の巨大なデブリを横目にグリセードで快調にとばす。
一緒に降りた他のパーティに別れを告げ、車をデポした大谷原へ向かう。途中の砂防堰堤にはデブリが乗り上げ、なんとも壮観な眺めだ。下山途中、西俣の出合の沢中には数パーティがテントで泊まっていた。見上げると両方の沢からのデブリが迫り、自分としては絶対泊まりたくない場所だ。林道に乗って短い林道歩きで大谷原へ戻る。
下山して大町駅前の旨い餃子の店で打ち上げ。結局北壁主稜は登れなかったが、山岳部の現役2年目の時に春山メインで鹿島槍〜槍の縦走を企てて以来、ずっと行きたかった鹿島槍の頂上を踏めたことに満足。
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