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記録ID: 791947 全員に公開 無雪期ピークハント/縦走関東

奥久慈男体山 座禅小僧−座禅岩ー山頂

日程 2016年01月04日(月) [日帰り]
メンバー takahashisun
天候快晴 気温高め
アクセス
利用交通機関

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地図/標高グラフ


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コースタイム [注]

8:30  西金駅駐車場
9:20  大円地駐車場
9:40  滝倉分岐にてヘルメットほか用意
9:55  取り付き(ヘルメット付き標識)
10:20  座禅小僧頂上
11:00  座禅岩頂上
11:20  座禅岩のコル
12:30  やせ尾根通過
12:40  男体山山頂で装備をしまい、健脚コースへ下山開始
13:50  一般コース、健脚コース分岐点
14:40  西金駅駐車場



コース状況/
危険箇所等
(注意1)
本ルートは一般ルートではありません。健脚コースから鎖とトレースを取り除いて、斜度を少し上げて足場をかなり悪くしたようなコースです。命を落とす可能性もありますのでその前提でお読みください。

(注意2)
本山行記録に登場する「座禅岩」、「座禅小僧」、「座禅岩のコル」は筆者が勝手に命名したものです。正しい呼び名をご存知の方はぜひお知らせください。

(注意3)
奥久慈の岩は礫岩質のためホールドはたくさんあるのですが外れやすいので体重をかける前に強度を確かめる必要があります。

「座禅岩」と「座禅小僧」は谷を挟んで奥久慈男体山健脚コースと向かい合っている岩稜です。「座禅小僧」は「座禅岩の」前にある小岩峰です。いかにも弘法大師様がこの岩の上に座って修行したというような雰囲気の前衛峰なのでこう勝手に命名しました。なお小僧とはいっても登頂に対する難度は座禅小僧のほうが高いと判断しております。

枯葉が厚く積もった土の急斜面が何箇所かあります。本来の使い方ではありませんが、ピッケルを用意すると安心です。ダブルアックスだったらもっと楽だったのにと思った箇所もありました。

取り付きは健脚コース途中にある割れたヘルメットの乗っている標識です。標識の裏に回って巨岩がごろごろした涸れ沢を登って行きます。座禅小僧を狙う場合は沢はほとんど詰めずに、右へ折れます。筆者は座禅小僧の根元にある土付きの急斜面を登りました。座禅小僧の裏側のコルにたどり着けます。

座禅小僧から座禅岩まではまず岩の裾野を若干トラバースし、座禅岩頂上直下の割れ目を登りました。登りきったところにちょっと休めるスペースがあり、そこから座禅岩コルの方向にトレースがあります。それを藪こぎ気味にたどれば座禅岩の裏側へ出ます。あとはひと歩きで頂上です。

座禅岩から正面壁を見ますと、はっきりとやせ尾根の筋が見て取れますので、座禅岩のコルに降りた後に登り返していけば頂上近くへ出ます。一般コース側は絶壁ですが、危険を感じた場合は正面壁側の藪に逃げ込めば、藪こぎしながらの登はんがいやらしいものの、いくらか危険が緩和されます。危険と登はんの容易さを天秤にかけながらひたすら直登します。尾根筋の岩稜を登はんしているときの露出感は明山北東尾根を上回ります。

やせ尾根の最後が崩落しています。ホールドの木の根をつかむたびに土をざっとかぶって難儀しました。この崩落部分を過ぎると斜度のゆるい登りとなって一般コースに合流します。当初はスカイツリー尾根と勝手に命名しようかと考えておりましたが、スカイツリーの高度を示した看板よりは10mくらい低い鉄柵の手前(大円地越側)が合流点です。

なんと、このルートのやせ尾根には古いトラロープがフィックスされており、テープによるマーキングも見て取れました。みんな考えること(ルート取り)は同じなのだなと苦笑しました。
過去天気図(気象庁) 2016年01月の天気図 [pdf]

装備

備考 ・ピッケルなしでは越えられなかった箇所がいくつかありました。
・ヘルメットはかぶるべきです。
・撤退時は懸垂下降を考えていたので登はん具一式(ザイル30mを含む)を持ちました。取り付く前にハーネスも装着して撤退時にどたばたしないように心がけましたが、幸運にも登りきれたので出番はありませんでした。

写真

西金から大円地を目指してアプローチをすると湯沢峡の岩稜が迎えてくれる。この徒歩のアプローチも気持ちの切り替えと山里の風情を味わう上で大切なひと時。そしてもちろんトレーニングにもなる。
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西金から大円地を目指してアプローチをすると湯沢峡の岩稜が迎えてくれる。この徒歩のアプローチも気持ちの切り替えと山里の風情を味わう上で大切なひと時。そしてもちろんトレーニングにもなる。
次いで盟主奥久慈男体山が迎えてくれる。堂々たる山容は気持ちを一段と高揚させてくれる。この冬の晴天時の岩肌のいかめしさに登はん意欲も掻き立てられる。
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次いで盟主奥久慈男体山が迎えてくれる。堂々たる山容は気持ちを一段と高揚させてくれる。この冬の晴天時の岩肌のいかめしさに登はん意欲も掻き立てられる。
3
本日の登はんルートは写真中央から右上へ延びる岩尾根だ。
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本日の登はんルートは写真中央から右上へ延びる岩尾根だ。
2
巨人の三兄弟
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巨人の三兄弟
滝倉分岐を過ぎて座禅小僧基部から尖塔を見上げる。今日はまずこのピークを背後から登る。さすがにこの岩壁の直登は無理だ。
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滝倉分岐を過ぎて座禅小僧基部から尖塔を見上げる。今日はまずこのピークを背後から登る。さすがにこの岩壁の直登は無理だ。
健脚コースは標識を左へルートを取り、鎖場を登る。しかし今回は鎖のない右の涸れ沢へ入る
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健脚コースは標識を左へルートを取り、鎖場を登る。しかし今回は鎖のない右の涸れ沢へ入る
巨大な木の根?倒木?脇の急斜面をピッケルを使いながら登る。
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巨大な木の根?倒木?脇の急斜面をピッケルを使いながら登る。
座禅小僧がほとんど目の高さになった。憧れの尖塔にまもなく立てるのだ。ここでいのししと思しき大動物が座禅岩方面へ駆けていく気配を感じた。最初は先行者がいたのかと思った。
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座禅小僧がほとんど目の高さになった。憧れの尖塔にまもなく立てるのだ。ここでいのししと思しき大動物が座禅岩方面へ駆けていく気配を感じた。最初は先行者がいたのかと思った。
背後に回り、短い登はんを残すのみだ。
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背後に回り、短い登はんを残すのみだ。
頂上まであと数歩。登りきってやったーと叫び声を上げた。
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頂上まであと数歩。登りきってやったーと叫び声を上げた。
頂上で、座禅小僧に兄弟がいることを発見。垂直の壁に囲まれていて自分のレベルは超えていそうだ。
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座禅小僧先端から健脚コース方面を見下ろした。
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座禅小僧から座禅岩へのルートを探る。危険な岩壁の登はんをなるべく避け、なおかつ完全な巻き道にならないようなルートを探した。
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座禅小僧から座禅岩へのルートを探る。危険な岩壁の登はんをなるべく避け、なおかつ完全な巻き道にならないようなルートを探した。
試行錯誤、四苦八苦の末、土付きの岩溝を登り切った。
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試行錯誤、四苦八苦の末、土付きの岩溝を登り切った。
登りきるとちょっとしたスペースがあり、座禅岩裏へ巻くトレースを発見した。
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座禅岩先頭に登頂し、そのやや前傾して危なげな先端から座禅小僧方面を眺めた。
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そして、本日の核心部分のやせ尾根を目指す。
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そして、本日の核心部分のやせ尾根を目指す。
3
まずは先回使用したルートを逆にたどって座禅岩のコルまで下り、そこからやせ尾根へ取り付くべく藪をこいだ。
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まずは先回使用したルートを逆にたどって座禅岩のコルまで下り、そこからやせ尾根へ取り付くべく藪をこいだ。
やせ尾根にまもなくたどり着こうとしているところ。高度感はかなりある。
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尾根筋に出てからの様子。危険度と登はんの楽さを天秤にかけつつ、左手の藪と岩稜を使い分けて高度を稼いだ。
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尾根筋に出てからの様子。危険度と登はんの楽さを天秤にかけつつ、左手の藪と岩稜を使い分けて高度を稼いだ。
驚くべきことに岩稜の登はんを開始して暫くすると固定ロープを発見した。ロープはやせ尾根の終点まで続いており、ちょっとくやしかったし、ちょっと新発見であった。
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驚くべきことに岩稜の登はんを開始して暫くすると固定ロープを発見した。ロープはやせ尾根の終点まで続いており、ちょっとくやしかったし、ちょっと新発見であった。
木の枝のテープマークも何箇所か発見した。健脚コースの旧道なのか。
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木の枝のテープマークも何箇所か発見した。健脚コースの旧道なのか。
一般コース側は断崖になっている。
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一般コース側は断崖になっている。
ホールドは欠けやすいがいわゆる浮石が少ないのがこのルートの特徴なのだが、まれにこんなでかい浮石もあった。手をかけている直径50cmくらいの塊がぐらぐらだった。
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ホールドは欠けやすいがいわゆる浮石が少ないのがこのルートの特徴なのだが、まれにこんなでかい浮石もあった。手をかけている直径50cmくらいの塊がぐらぐらだった。
固定ロープはやせ尾根の藪側にずっと続いていた。古いロープなのでつかまろうという気にはならなかった。
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固定ロープはやせ尾根の藪側にずっと続いていた。古いロープなのでつかまろうという気にはならなかった。
一般コースのある主稜線が近づいてきた。
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一般コースのある主稜線が近づいてきた。
そして最後の急斜面を迎えた。潅木をうまくつかみながら登り、さらにこの先の崩落箇所を通過した。
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そして最後の急斜面を迎えた。潅木をうまくつかみながら登り、さらにこの先の崩落箇所を通過した。
危険箇所を何とか乗り切った。これで今回も死なないで済みそうだと安心したところ。
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危険箇所を何とか乗り切った。これで今回も死なないで済みそうだと安心したところ。
小さなピークを踏み、まもなく登はん終了だ。
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小さなピークを踏み、まもなく登はん終了だ。
写真では道を認めにくいが、筆者の影の部分が一般コースだ。
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登はんの終了後、写真の鉄柵の手前、コナラの木の前あたりに飛び出した。
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登はんの終了後、写真の鉄柵の手前、コナラの木の前あたりに飛び出した。
一般コースから男体山頂上を踏み、ヘルメットやハーネス、ピッケルなどをしまった後は、健脚コースの急斜面を下山した。
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一般コースから男体山頂上を踏み、ヘルメットやハーネス、ピッケルなどをしまった後は、健脚コースの急斜面を下山した。
下山途中、本日の登はんルートを何度も振り返り、余韻を楽しんだ。
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下山途中、本日の登はんルートを何度も振り返り、余韻を楽しんだ。
大円地駐車場から再度奥久慈男体山に頭を下げ、真冬にしては暖かい日差しの中、西金駅まで一気に下山した。
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大円地駐車場から再度奥久慈男体山に頭を下げ、真冬にしては暖かい日差しの中、西金駅まで一気に下山した。

感想/記録

最近休日に茨城にいられることが少ない。今年も初日の出を見た後は所用で3日まで留守にしていたが、4日は茨城でのんびりできそうなことがわかったため、前回の男体山座禅岩(筆者勝手に命名)行きの際に気になっていたところの、頂上付近へ続くやせ尾根、そしてかねてからの憧れの尖塔であった座禅小僧に挑戦することにした。もっとも当初の予定では別々に登るつもりであった。座禅小僧とやせ尾根との間には座禅岩という岩峰が通せんぼしているからだ。座禅小僧を登れたとしたらそれだけでもうれしいことではないか。

凍結しかかった山越えの道を慎重に運転し、西金駅にいつものように車を止めた。今回はプチボッカでもないし、メインディッシュは登はんなのだから、いきなり大円地の駐車場まで乗り入れてもいいのであるが、いつのまにかこのアプローチの過程を楽しいと感じるようになってきたのだ。民家の薪ストーブの煙、畑、そしてやがて現れて来る湯沢峡の岩稜たち、これらが少しずつ登山気分を盛り上げてくれるのだ。

滝倉分岐がちょうど座禅小僧の岩峰の根元になる。歩き続けて暑くなってきたので、タイミングがいいだろうということで、ジャケットを脱ぎ、ハーネスを着け、ヘルメットをかぶり、ピッケルを用意した。そういえばゴルジュハンマーが出発前にどうしても見つからなかった。今年の課題は道具の整理整頓だなと反省しつつ、取り付き場所へ向かった。

前回の座禅岩登頂の際と同様、割れたヘルメットの乗っている標識を、健脚コース方面ではなく標識裏の涸れ沢に進んでいく。ただし今回はまず右側の岩壁に見える倒木?木の根?を目安に、そこから急斜面を登はんして座禅小僧を目指すのだ。男体山を歩き始めた2012年ごろ、初めて座禅小僧を目指したときには土の斜面が登れなかった。今回も同じ土の急斜面に挑んだ。つま先を土の斜面に蹴りこむとドスンと低い音が響き、ピッケルのピックを斜面に打ち込むとジャリッという手ごたえがあった。立ち上がると目の前に地面が見える程度の急な斜面を、ドスン、ジャリッ、ドスン、ドスン、ジャリッ、ドスンと高度を上げていく。これでアイゼンはいていたら雪山登山と変わらないな。ダブルアックスだったらもっとペースが上がるのにと考えながら高度を稼いでいった。

硬い靴底の重登山靴とピッケルの威力は絶大で、著しい困難も無く、座禅小僧の裏側に回ることができた。すると、近くでがさごそと気配が。もう先行者が登っているのかと考えたが、その先行者は斜面を人間とは思えないスピードで駆け上っていった。正体を目にすることはできなかったが、おそらくいのししだろう。それも音の大きさから察するに少し大きめだったのではないか。登山中にしばしば目にしたトレースの主に違いない。

少し驚いたが、気を取り直して憧れの座禅小僧の頂上に立った。「やったー」と達成感に絶叫した。岩の上に立っている自分を見られないのが残念である。

もうひとつ驚いたことは、座禅小僧には横に兄弟とも言うべき小岩峰が立っていたことである。しかもこれは四方を垂直の壁で守られていて手ごわそうである。これは自分の力では無理であろう。

登山はまだ続く。後ろには座禅岩がそびえている。いったいどのようにしたらこの岩峰の上に立てるのか。むろん沢に下りて座禅のコルまで登れば容易ではあるが、尾根をなるべくつないで男体山山頂に立つにはどうすればいいか。多少巻きながらクラックを使って登ることにした。比較的潅木などの頼りがいのあるホールドがあったからだ。

ところが途中で使えそうなホールドがない。自分がまだクライミングになれていないので、小さいホールドにうまく立ち込むことを苦手としているからだ。また忘れてはならないのは、この山のホールドは少し無理をかけるとポロリと行くことがあること、それでも残りの2点が安定していればまだ何とかなるが、たとえば右足のホールドがすっぽ抜けたときの衝撃で両手に瞬間大きな力がかかり、手のホールドも欠けるというようなことも起こり得るし、起こりやすい場所なのだ。そう思うとこのスタイルの登はんは確保なしではあまりやりたくない。そうかといってあまり不自然な姿勢を長くしていると筋力が落ちてくる。力が落ちてくると、注意力が落ち、危ないホールドに簡単に体を預けようとする。

これって死ぬパターンじゃないか。何とか安全の確保はできないか。あと1m登れれば木の幹をつかむことができる。最終的にはクラックに詰まっている土、その土に張り巡らされている草の根に頼ることにし、クラックの土にピッケルを打ち込み、それで体を引き上げながら、何とか安全なフットホールドに乗ることができた。その後は比較的容易な登りでちょっとしたスペースまでたどり着いた。

よく見ると座禅岩のコルの方面に獣道らしき踏み跡がある。これをたどれば座禅岩の裏側に出るだろうという予想通り、昨年おおみそかにたどったルートに合流し、座禅岩の頂上に達した。今回は少し怖いが前傾している座禅岩の先端まで歩を進めた。そこまで進むことで、ようやく座禅岩からは座禅小僧の姿を拝むことができた。あそこからここまで曲がりなりにも登ってきたのかと満足してから振り返り、山頂へのやせ尾根を目指した。

座禅岩からやせ尾根までは前回の座禅岩登頂の際に使った座禅岩のコルからの道を逆にたどり、コルから藪をこぎ、適宜岩を攀じながら尾根筋をたどればよい。美しいくらいに尾根筋は明瞭なので道迷いはなかった。また座禅岩から見るやせ尾根はとても恐ろしく見えるのであるが、実際に尾根筋に出てみると必ずしもそうでもない。ただし尾根筋での一般コース側の絶壁は明山北東尾根よりも高い。

夢中になって攀じていった。振り返ると取り付きにはあれだけ高く見えていた座禅岩がどんどん低くなっていった。座禅岩基部では一歩一歩に相当苦労したので、やせ尾根の登はんは比較的快適であった。

比較的快適とはいえ人の歩かない登はんルートである。傾斜の急な難所もいくつかあるが、そんなところのひとつでびっくりするものを見つけた。こぶをつけたトラロープである。明らかに何度も昇り降りすることを想定して張られた固定ロープである。ということはこのルートは今でこそバリエーションルートかもしれないが、かつては認知されたルートだったのではないか。道が明瞭で固定ロープが張られていれば、少なくとも座禅岩のコルからの登はんは現在の健脚コースと比べてもそれほど高難度でもない。かつて奥久慈男体山では山火事があった。今でも登はん中に炭化した倒木を見ることができるのだが、もしかしたら山火事前、あるいは山火事からの復旧中の仮ルートとしてこのルートが使われたのではないか。などと思いをはせながら登はんを続けた。

岩稜にはいくつものプラスチックの環が落ちていた。伝書鳩につけるものと思しき識別標である。おそらく飛行中に猛禽の餌食となり。ここで食べられてしまったのであろう。登はん中に、今まで利いたことのないような鋭い鳴き声を何回か耳にしたものだ。

登はんの終盤、健脚コース側の斜面が崩落している箇所を乗り越えていかなければならなかった。墜落しかかっている大木の根に乗っかって越していくのであるが、大木と一緒に落ちるのではないかという臆病な気持ちにさせられる。ホールドをつかむと土がぱらぱらと体や顔にかかって閉口したが、慎重に、しっかりした潅木を選びながら通過した。

崩落箇所を通過すると、傾斜は一気にゆるくなり、軽い草藪となった。どうやらこれで死なないですみそうだ。今回は絶叫ではなくて安堵感のため息となってしまった。

小ピークを踏むと、その反対側は一般コースであった。期待していたスカイツリーの高さの標識はここからさらにひと歩きであった。もうひと歩きして男体山山頂に到着。ヘルメットにハーネス、ピッケルの格好は山頂で休憩していた方々には奇異に感じたことであろう。祠の前でヘルメットをはずし、無事の登はんの感謝と下山の安全を祈願した。

下山は恐ろしい健脚コース。座禅岩側から健脚コースを観察すると、改めてその斜度の高さを実感する。今回歩いたやせ尾根よりもきついところもあるかもしれない。

一方下山中には今回登はんしたルートを何回も眺めなおした。健脚コースから眺めていると他の稜線などとかぶって、ここにやせ尾根のルートがあることには気がつきにくい。今回健脚コース以外の直登ルートがあることを発見したこと、そして憧れの座禅小僧、座禅岩からそのやせ尾根コースをつないで男体山山頂に到達したことは大きな収穫だ。そしてもうひとつの大きな発見、そして驚きは、このやせ尾根ルートにフィックスロープが張られ、かつて少なからぬ登山者が行き来していたに違いないことだ。

無事大円地まで下山し、駐車場前で一礼してから、西金へ向かって下山。途中ヤマカガシの赤ちゃんの死骸を発見した。春と勘違いして這い出して、車にひかれたのであろうか。確かに朝は冷え込んでいたが日中はぽかぽか陽気であった。

西金駅まで歩き切り、駅近くのよろず屋さんで飲み物を購入して一人乾杯し、今回の登山を終えた。




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