十枚山、バラの段-大光山 〜安倍奥ふたたび〜 A18
- GPS
- 14:10
- 距離
- 29.5km
- 登り
- 3,085m
- 下り
- 3,222m
コースタイム
- 山行
- 5:49
- 休憩
- 1:11
- 合計
- 7:00
天候 | (メイストーム一過の)晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
5/4 静岡駅発8:48(しずてつジャストライン安倍線、1,300円)六郎木バス停着10:14 六郎木バス停発16:51(同、440円)安倍大滝入口バス停着17:12 5/5 黄金の湯バス停発15:47(同、1,500円)静岡駅着17:37、発18:30(駿府ライナー号、2,550円)池尻大橋着22:15(渋滞で55分延着) |
コース状況/ 危険箇所等 |
第一日 十枚山往復 ザレ場と沢の急登部分を除けば、安定した登山道。登山口からひたすら登り、そして下りる。 第二日 安倍峠〜バラの段〜大光山 登山口から安倍峠までの旧歩道は、沢沿いを安倍川源流まで遡る、爽やかな道。渡渉を繰り返すが、雨後にもかかわらず容易に。安倍峠からは急登が続く。ほぼ、稜線伝いに進むが、アップダウンが厳しい。特に留意すべきは、 [安倍峠からバラの段を経て大笹の頭までのロープ場は、箇所数多く、所々高度感も有る。最初のロープが見えたらストックを仕舞った方がいい。雨天時、強風時は通過に十分な時間を設定。] 大光山からの下山路、ひたすら樹林帯を降下してゆくが、沢まで下りてからの留意点として、 [東峰分岐を過ぎてからの渡渉。雨後増水時は慎重に足場を選択。また砂防堰堤では、右岸を降りる。] |
その他周辺情報 | 梅ヶ島温泉「よしとみ荘」一人客でも登山客でも十分なもてなし。食良し、湯良し、何より心遣いに感謝。 新田温泉「黄金の湯」広い敷地内で十分にくつろげる。登山者にとっては、1時間以内400円という料金設定が有難い。 |
写真
感想
オフィスから晴天を恨めしく眺めていた連休前半戦、フォローしている人たちは何故かこぞって丹沢を訪問していた。おヒル前に登っておこうということだろうか。私はと言えば、後半戦の雨天予報に怯えながら、昨年同様、安倍奥の静けさを頼ることにした。
マークシティの高速バス発着所、強風に目を開けていられない。メイストーム、明日、吹き荒れるのだろうか。静岡には渋滞のため30分ほど延着、駅ビルで夕食を済ませてから宿へ。天気図にはこれでもかというほど密な等圧線。見飽きたので明日の暴風雨に備え、市内の映画館で観るべきプログラムを探した。
深夜の暴風雨が嘘のような晴天。雲一つなく、上出来過ぎる絶好の登山日和に少しだけ不安が過ぎる。一番バスの運転士から「相渕折り返しとなります」、耳を疑う予想外の言葉、されど数か月前にも聞いたような言葉に茫然とする。「昨晩の雨で規制が解除されないのです。行ってあげたいけど」。同情するなら会社に黙って私を山奥へ誘なって。
やはり悪い予感は当たってしまった。途方に暮れて、駅前の店で計画をし直す。出発前にあらゆる場面を想定し、あらゆるコースを検討していたのに、この状況は思いもよらなかった。二番バスは大丈夫だろう。案内所で規制解除を尋ねるも、所轄営業所には未だ連絡ないとのこと。業を煮やし、土木事務所へ問合せ、とっくに規制解除されていることを知る。すぐさま、かの営業所に連絡すると、「わかりました。運転士に伝えておきます」。
乗車し、念のため運転士に確認すると果たして「相渕折り返しなんですよ」の応え。いいから確認してくださいな。そしてようやく「このバスは終点までまいります」のアナウンス。私にとっては「当機はこれよりエアフォースワン…」より感動的だった。
なんだかんだで1時間半遅くバスを降りた。さあ、1,300メートル上方の頂を往復しよう。「不本意ながらピストン」これも最近用いた覚えあるが気にせず、強風のみを気にしながら歩き始める。ほどなく轟音を発す濁流を目の当たりにする。眠っている間に相当量の降雨があったことを思い知った。日差しが強い。茶畑の幾何学的な美しさに見とれながら高度を上げてゆく。やがて登山口。計画変更し、家族への「置手紙」と異なる行程となったため、真新しいポストに(珍しく)登山届を入れた。
気持ちの良い緩やかな樹林帯の道。少し汗ばんでも、微風の力を借りて原状を維持する。やがて分岐。峠コースは足場不安定のため、直登コースを辿るよう促す注意書き。ただでさえ時間が無いのだ。迷わず進む。ほどなくして直登の意味を知る。ロープ場、急勾配の沢、なかなか楽しませてくれる。
などと気を良くしていると、然もあらん、急速に体力を失っていた。山頂直下のロープ場では、照り付ける日差しと予想に反して力の無い風によって、夢中になる必要があった。ようやく見えた山頂標識は、凛として佇む女性(ひと)のごとく。「夏に向けてもっと鍛えなさい」。
それにしてもこの青空と心地よい風。メイストーム一転、五月晴れ。関東でも風雨弱まっているだろうか。富士の姿を望み、ゼリーを流し込み、腰を下ろすことなく来た道を引き返す。分岐まで慎重に降下、そこからはいつもの快速いや今日は特別快速下山。美しい茶畑と若葉の眩惑に一層奮起する。結局、六郎木のバス停には、30分早く到着した。6時間ぶりに腰を下ろす。山中のみならず、周囲にも人影はない。静かで穏やかな時間(とき)が、今朝の失望や焦りを流してくれた。
清々しい気持ちで今日の宿の戸を開ける。清潔感のある玄関で名を告げ、2階に案内された。これ以上何も望むまい。沢音心地よく、爽やかな風が吹き抜ける部屋。そして名湯を味わい、箸を休むことなく浸った時間。記録と反省は明日にしよう。
鶯の声に釣られて自然に目が覚めた。午前5時45分、寝静まった宿を後にする。今日は予定どおりの行程となろう。見上げれば青空、そして無風。昨年同様、梅ヶ島温泉から八絋嶺登山口へ。道を分け、安倍峠を目指す。旧歩道は期待以上に優れた道。沢は次第に細く、音も消えゆく。安倍川源流に到達、唐突に水が消え、辺りは静けさを取り戻した、広く緩やかな峠道。安倍峠、甲駿国境、金が通った道。
古の刻(とき)に思いを馳せている場合ではない。俄かに現れる急登。最初のロープ場から集中力を試される。侮ってはならない。やせ尾根と相まって、高度感も十分に有った。が、それだけにバラの段から望む富士山、御坂山地の雄大さ、期待以上の光景に息を呑む。この瞬間(とき)に感謝。
そののちも急登は続くが、ワサビ沢の頭を過ぎると笹原が広がり巨木たちに迎えられる。変化に富んだ道は疲れを忘れさせてくれる。奥光山で、早めの昼食をとった。宿で持たせてくれた弁当、山でおにぎりとお茶、嬉しくてコーヒーの出番はなかった。
少しくらい風が吹いてもよいのだよ、挑発的な言葉が口を衝いて出るほど、あまりにも気持ちの良い稜線の道。時折、聖や荒川三山が顔を覗かせる。下方には終着地の温泉。前方には昨日の十枚山。そろそろ下山のとき。草木までの道は長く感じるはず。飽きず焦らず下りることにしよう。
木漏れ日や足元の緑、そして小鳥の囀り。名残惜しくも旅は終わる。若葉たちが研鑽を重ね、やがて凌駕する時代(とき)を想う。されど負けてはいられない。まだまだ鍛錬ですね、山上の女神どの。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
klmichin2様
こんにちは。
バスの行き先、ルート変更トラブルを乗り越えられ、無事下山、本当にお疲れ様でした。
直登に近い急登お写真迫力ありました。
新緑と青空のコントラストがなんとも気持ちのよい季節になりました。
やはり富士山はいいですね!
今日久しぶりに本仁田山に行きましたが、富士山が見えて、たまらなくうれしかったです。
くれぐれもお怪我なさらぬよう充分お気をつけください。
次回も、楽しいお山歩きになりますように!!
こんにちは。
粘った甲斐ありました。あのまま諦めていたらあの天気の下、本当に映画を観てから温泉行きのバスに乗ることになるところでした。
それにしても標高差1,000mを超えると、厳しいですね。本仁田山も鳩ノ巣から登ると1,000mありますよね。大変なこと、二度登りましたからよくわかります。
これから虫が多くなること以外、登山に最適な季節。思う存分楽しまれますように。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する