番鳥森 秋田県中央部の藪山へ
- GPS
- --:--
- 距離
- 7.7km
- 登り
- 769m
- 下り
- 770m
コースタイム
- 山行
- 6:40
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 7:00
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
登山道の無い尾根の往復です。危険個所はありません。 |
写真
感想
二万五千図の「太平山」の東隣りは「番鳥森」。この地図には、北西に白子森、南東に丹波森という顕著な山があるだけで、街や集落は入っていない。秋田県中央部の山深さを表している地図である。
番鳥森(ばんどりもり 1,029.7m)という山名がこの地図の表題に選ばれたのは、ただ中央付近にある山だからであろう。この山は、秋田市と北秋田市・仙北市との市界を成す稜線からは南西側へ枝分かれした尾根上にあるピークの一つであり、その先には、さらに長々と尾根が伸びている。この山域を代表する白子森や、あるいは大仏岳や大石岳のような存在感はなく、秋田市南部から眺めても、まったく目立たない山である。
それでも私は、どうしても一度は登ってみたかった。この地図を眺めれば眺めるほど、奥深くにひっそりと立ち、登山道も無く、しかし地図の表題にされたこの山に、興味が湧いてきたのだ。いつもの、「ここから眺めたあの山に登りたい」とか、「あの稜線を登りたい」とかという動機とは違うが、地図だけ見てのピークハントも、たまにはいい。
登るのに一番適しているのは、やっぱり残雪期だろう。秋田市と北秋田市・仙北市との市界稜線に加え、大仏岳に至る稜線も加えれば、色々とルートを組めそうだ。ところが問題は、尾根に取り付くまでの林道の長さである。どの方面から入っても、半端なく長い林道歩きを強いられることになる。やっぱり日帰りでは無理か・・
林道の雪が消えた時期であれば、西側の上院瀬沢沿いの林道を最奥まで入り、沢を詰めるか、尾根を辿ればいいのかもしれない。しかしこれも荒れていれば長い林道歩きを強いられるし、番鳥森への登りが短くて面白味に欠ける。南の大又川沿い林道の状況は昨年通ってわかったので、この林道を入って大又川を渡渉し、番鳥沢の左岸の尾根に取りついてダイレクトに三角点を目指すルートをとることにした。
大又川林道から大又川に下りる箇所や番鳥沢左岸沿いには、はっきりとした踏み跡があった。そして尾根の途中までは微かな踏み跡を感じる所もあったし、樹皮に文字が刻まれているのも見かけた。しかし標高700m前後からは、ネマガリダケが覆いかぶさる藪。忍耐の登りが続いた。
登り切った所はいかにも三角点のありそうな場所だったが、どこを探しても三角点は見つからない。あちこち歩き回り、やっぱりここしかないだろうと改めて足元をよく見ると、三角点は落ち葉に埋もれていた。脇に生えていた笹を切り、落ち葉を除けて三角点を出したが、月日が経つとまた埋もれてしまうことだろう。
三角点に別れを告げて下山にかかる。それにしても藪の尾根の下りは難しいと、改めて思う。自分が登ってきた尾根なのに、そして地図を見ても短くて簡単そうに見えるのに。尾根が比較的はっきりしているから大丈夫だろうと思い、登りの際に付けたリボンは一ヶ所だけだった(下山時に回収)。しかし尾根の中心線は微妙にズレるのが普通だし、幅広い斜面となることもある。残雪期なら、多少違う尾根を下り始めても、気付いてからの修正はそれ程大変ではないが、ネマガリダケに覆われた斜面を登り返したり、トラバースしたりするのは、なかなか難儀なことだ。それでも沢を下ることになるのは避けたかったので、慎重にルートを探った。進む方向に疑問を感じ、50mほど横にトラバースしたところ、下るべき尾根を斜めから見る形になって、判断ができたこともあった。
林道(歩道状態)に立った時はやれやれという感じで、まだ日も高いのに、生あくびを連発しながらとぼとぼと歩いた。太平山や白子森も見えなかったけれど、この山はブナやナラなどの広葉樹に加え、マツやヒノキなども見事だった。何度も手袋を取って、それら大木に両手をつけ、静かな時間を共有した。人知れず立っているこれらの木々が、これからも人の手にかかることなく命を全うしてほしいと願う。
コメント
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ばんどり(ムササビ)森ですね。
私はまだ未踏で、今秋、同じルートで登頂を予定していますが、薮が凄いですね。
三角点発見、ありがとうございます
今年はkamadamさん情報に助けられっぱなしです。
kamadam様 万歳!
藪漕ぎのプロフェッショナル 、mountrexさんの少しでも参考になるようなら、大変光栄です。
こういう藪漕ぎ山行を普段されているmountrexさんのすごさを、肌で感じながら歩いてました。
そうですか、同じルートをお考えでしたか
上院瀬沢から入るのがいいのかな・・とも思いましたが、今回のルートは登り切った地点が三角点の場所なので、かえってわかり易いのかもしれませんね。落ち葉に埋もれていたのには参りましたが
三角点を運び上げる時はこの尾根を登ったのでは? ということも感じました。明瞭な尾根の最高点ということで。少し北側には、三角点よりも若干高い所もあります。
mountrexさんは今年秋の予定とのことですが、私の方は向いの丹波森を考えておりました。
丹波沢を詰めて三角点に達した記録をHPにアップされてますね。
大きな滝もなさそうなので、自分でも登れるかも・・と思いますが、三角点に最短で達するには、ルーファイがとても難しそうです。こちらはじっくり取り組みたいと思っています
こんにちわ
藪山ピストンお疲れさまでした。
荒れた長い林道歩き、徒渉の急斜取り付き、”潜伏体勢”の密薮踏破・・・辛いアプローチですが、これぞ藪山の真骨頂、山と”同化”する大切なプロセスでもありますね。
そして遂に山頂、三角点を探し出し・・・その至福の瞬間の喜びは如何ばかりかと。(私なら万歳絶叫?かも)
「特別な存在感もない枝尾根のワンピークに過ぎない」・・・故にロマンがあり私などは無性に登りたくなってしまいます。(笑)
秋田中央部の藪山紀行、今回も存分に楽しませて戴きました。ありがとうございました。
コメントありがとうございます。
あと一息で山頂というところでは気持ちも高ぶったのですが、当然というべきか、山頂に立っても藪ばかりで、白子森も見えない・・
やっぱり残雪の上をサクサク登って山頂に立ち、大展望を楽しむというのが最高ですね。
展望を楽しむことができたら、私の場合、三角点はこだわりません。
でも今回は展望無しなので、せめて三角点を拝みたいと思って、探し回りました
tonkaraさんおっしゃる、「山と同化」という意味では、登りで無心で藪を漕ぐ時がそうだったかもしれません。
山歩きの面白味としては、むしろ下山にありました。
地図をご覧いただけれはわかりますが、とても単純で明瞭で短い尾根なのです。
それでも、背丈以上の藪の尾根を下る難しさを感じました。
今、図書館で見つけた「地図の読み方」 平塚晶人著 小学館 という本を読んでいます。
実践的で、なかなか面白い本です。
ところで、今はGPSを持って山へ行くのが当たり前になっているのかもしれませんね。
でもこれは、山を歩く楽しみのうち、多くの部分を失ってしまうことになるんじゃないか・・と個人的に思っています。持っていない者のひがみかもしれませんが
自分が今立っている場所は、地図上のどの地点だろうか・・
自分が進んでいる方向は正しいのか・・
感覚を研ぎ澄ませて、それを探る。そのことこそ、山を歩く面白さの大きな要素だと、私は思っています。その楽しみを味わうことができるのが積雪期ですし、今回の藪山でもそれを感じました。
もちろん、安全第一ですから、多少間違っても大ごとにはならないフィールド、天候の元で楽しむことが大前提ですが。
会越というフィールドは、秋田の優しさのあるフィールドとは違って手強いです。
tonkaraさんの凄さを、今回も感じました。
kamadam さん、こんばんは。
コメント遅くなりました。
そうですね。確かに・・・二万五千図「番鳥森」・・・
中央にありますね。地図の表題は「白子森」でも良かったのかもしれませんね。
この界隈は昔・・・渓流調査で歩いていますが・・・
ピークに登ってはいません。未踏です。
地図を眺めていて・・・登ってみたくなる気持ち・・・
よくわかります。私も地図を眺めて地形を想像したり、アプローチを想像したりしています。
しかし・・・ネマガリダケの密林???を粘り強く登られた努力・・・
私にはできそうもありません。
ネマガリダケの芽??の魅力に負けてしまいます。
そうですね。このような環境をいつまでも・・・
人の手にかかることなく、残したいものですね。
大変、ご苦労さまでした。
750RSさん、こんばんは。いつもコメントありがとうございます。
番鳥森周辺は、秋田県の自然環境保全地域の特別地区になっているようです。範囲など、詳しいことはわかりませんが・・
松など針葉樹も含め、とても太い木が多かったですね。
番鳥というのはムササビのことのようですが、きっと野生動物も多いでしょう。
750RSさんがよく渓流釣りに入ったことがあるという大又川ですが・・やっぱり林道は長いですね。一年前の夜によく歩いたもんだなと、思い出してました バカな失敗です
でも白子森もそうですが、番鳥森もいい山でしたよ。林道整備にお金がかかるでしょうが、きちんと整備すれば、登山者も増えると思います。
週末には太平山の旭又駐車場がいっぱいになる時代、他の山にも登ってみたいという登山者は多いと思います。
私も少しずつですが、この山域を歩きたいと思っています。それにしても林道が長いですが・・・
お疲れさまです。http://yamareco.info/uploads/smil3dbd4d4e4c4f2.gif
素敵な山旅、有り難うございます。、
岩見三内のダム側の奥の丸舞川方面は昔、中学時代の友人とよくキャンプや舞茸取り、釣りに行ってましたが、今回にkamadamさんのルートは凄いですね。秋田の緑も癒しですよ。kamadamさんも相変わらずタフですね。私は薮漕ぎは見ているだけでOKです。十分伝わりますから。急斜面でコケたら骨折しそうような山。うん。久々の見るヤマレコ楽しませて頂きました。ありがとうございました。
kmmyさん、コメントありがとうございます。
こちらの林道はどれも長いですね。私は山菜・キノコ採りも釣りもやりませんので、林道に入るのは山を登る時だけなのですが、林業関係も含め、人が入っているのはよくわかります。番鳥森でも、樹木に文字が彫られているのを見かけました。
kmmyさんは太平山系に80回以上登られているとのこと、3年前に登られた丸舞コースの荒れ様は少し残念ですね。沢にかけられた橋が傾いていることはともかく、上部に行くほど藪が伸びて足元が見え辛く、登山道の判別が難しくなっています。もう初めてこのコースを歩く人には無理な状況です。奥岳山頂へダイレクトに達する素晴らしいコース、整備してもらいたいものですね。
秋田市にずっと住んでいて登山もしていましたが、番鳥森の存在を最近知りました。
番鳥森、奥深くて惹かれるものがあります。自分で行くのは無理ですが…
感想/記録を拝読して、行ったこともないのに、最後の3行で泣いてしまいました。
レコを改めて読み返してみて、登った時の状況や気持ちが蘇ってきました。
地味ながら奥深く、木々の豊かさが感じられるいい山でした。
秋田で登山と言えば鳥海・駒などですが、それ以外にもいい山はたくさんありますね。
ぜひ登る方策をお考えになって下さい。
ありがとうございました。
ヤマップはやっていますがヤマレコやっていなくて、怪しくて申し訳ないです。ヤマレコもやってみようと思います。
残雪期など登る方策を考えて、いつか行けたら本望です。奥深さを私も感じたいです。
ありがとうございます。
私もヤマップは知り合いがやっているので登録だけして、たまにチェックするだけです。
残雪期いいですね。ただ雪崩にはお気をつけて。
自分が強く心に望む山、そんな山に登れたら、ヤマレコにしてもヤマップにしてもその人の個性的なものになって、見る人の心も揺り動かすことがあるのだと思っています。
自分が強く心に望む山
北アルプスでもなく鳥海山でもなく、自分にとっては、白子森や番鳥森かもしれません。
kamadamさんの記録を拝見して、やっと気付いた気がします。ありがとうございます。
世間的にはマイナーな山でも、登ってみると色んな魅力がありますね。
自分なりにそんな魅力を見つけたりするとうれしくなります。
私も自分なりの山歩きを続けていきたいと思っています。
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