北アルプスの山納め 上高地より徳本峠を越えて
- GPS
- --:--
- 距離
- 24.4km
- 登り
- 875m
- 下り
- 1,647m
コースタイム
- 山行
- 6:45
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 7:35
このまま帰って翌日は上映中のジャ・ジャンクー監督二本立てを観に行こうと思ったが、
せっかくの晴天に映画館に篭るのが勿体なく、反射的に松本行きの電車に乗った。
天候 | 晴天 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
復路 アルピコ交通バス 安曇支所⇒上高地線 新島々駅⇒松本駅⇒中央高速バス新宿行き |
写真
感想
11月3日(木)
韮崎駅を出発した電車は20時頃に、松本駅に到着。
前回行った居酒屋に、ひとり分の席を見つけたが迷っているうちに席は埋まった。
居酒屋探しはやめ、ビールとつまみを購入して駅前のネットカフェに投宿。
缶ビールを2本空けただけで、いつの間にか眠ってしまった。
11月4日(金)
2時頃目覚め、インターネットを駆使してこの日行く山域を検討する。
といっても上高地か乗鞍か迷っただけで、行ったことの無い乗鞍に決めかけるが
よくよく調べると登山口まで行くシャトルバスは10月いっぱいで終了。
自然と上高地行きに決定、この時点では前穂まで行ければいいなと考えていた。
5時半のバスに乗るべく5時10分頃ネットカフェを退出しコンビニで食料を購入。
バスターミナルに向かう途中、タクシーの運転手さんに声をかけられる。
上高地なら既に二人客がいるのでバス代程度の運賃ですぐ発車できる、という提案。
バスより到着が早いというメリットもあるので、乗せてもらうことにした。
車に乗り込みふと荷物を確認するとモンキチくん(ぬいぐるみ)が無いのに気づく。
退出したネットカフェに寄ってもらい、問い合わせるが忘れ物は無かったとの事。
念のため使用したブースを見せてもらうが、確かにモンキチくんの姿は無かった。
意気消沈してタクシーに戻り、もう一度荷物の中を探し無いことを確認した。
車内では前日の行動を反芻し、落としたと思われる場所を脳内探索する。
甲斐駒黒戸尾根下山中の刀利天狗でジーンズの前ポケットにいたのが最後の記憶。
思えば五年前の富士登山以来、数々の山で苦楽を共にした唯一無二のパートナー、
そんな事を考えると自然に胸に込み上げてくるものがあった(注:盛ってます)。
以下妄想劇場
数年後、厳冬期のK2アタック中に猛吹雪に巻き込まれ、通りがかりのヒマラヤ山脈
全山縦走中の女子大生アルピニストと一緒に雪洞を掘り、ビバークする事になる。
眠ってしまわぬようにお互いの身の上話をし彼女の番が来た。
「昔、南アルプスで滑落したときもこんな吹雪で、動くこともできず、もう駄目だ、
と諦めかけたの。そのとき拾ったこのぬいぐるみに励まされて今の私がいるの…」
そういって彼女が差し出したのは…
タクシーは順調に進んで6時半頃に上高地に到着、バスより30分以上早い。
前穂を含めた3000m級の峰々は真っ白で、自分の軽装備では歯が立たなそうに思えた。
計画を蝶ヶ岳か徳本峠越えに練り直し、登山計画書には徳本峠越えの方を記した。
前日に南アルプスを訪れたので北アルプス納めは翌週の休みに行こうと思っていた。
が、こうなると今シーズン来る可能性はないので少し大回りして徳本口を目指す。
大回りといっても岳沢湿原を通るだけで小梨平経由よりは20分程長いくらい。
昨晩も降ったのか、木道にはうっすら雪が積もり初冬の上高地を感じる事ができた。
先月訪れたときにはまだ黄葉が残っていた焼岳もすっかり雪化粧に包まれていた。
岳沢登山口で前穂が無理でも紀美子平までなら行けるかな、と考える。
しかし格別紀美子平に行きたいわけでもないので登山計画書通り徳本口を目指す。
途中穂高神社に寄り、「もう一度モンキチくんと会えますように」と祈祷する。
嘉門次小屋はまだ営業しているようだったが、明神館は今年の営業を終了していた。
徳本口から徳本峠へ向けて高度を上げるごとに白く輝く穂高連峰が姿を現していく。
10時前に徳本峠に到着、ここから45秒のてんぼう台へは自分の足で約1分間かかった。
徳本小屋の前で昨日飲まなかったウィスキーとつまみを出してひとりミニ宴会。
本格的に酔っぱらうわけにいかないので適当なところで切り上げ島々谷へ向けて下る。
南斜面のせいか雪はほとんど融けて無くなり夏と変わらぬ快適な下山道。
途中猿に道を塞がれるが、通ろうとすると一旦避けて再び道に戻り腰を降ろした。
沢沿いを歩き続けると岩魚留小屋に到着、小屋手前で先人が一人休憩していた。
軒下を借りてひとりミニ宴会の続き、こちらも適当なところで切り上げ先を目指す。
しばらくすると二俣に到着、ここから先は少し駆け足を交えて歩を進めていく。
電波が入らないので時刻表を検索できないが14時台の松本行の電車には乗りたい。
前日の山以外でモンキチくんを落とした可能性があるとすれば電車内と目星をつけ
松本駅に存在するであろう遺失物預り所に一刻も早く寄りたいと思っていた。
正直届いてるとは思えないが、届けを怠ると後で後悔するだろうことは間違いない。
いわばモンキチくんとの決別の儀式ともいえるものなのである。
発電所のあたりで電波が入り、検索すると安曇支所前バス停通過は10分後。
そこからマジ走りして予定時間の3分前にバス停に到着、バスは2分ほど遅れて到着。
新島々駅近くのコンビニでビールを買い14時45分発の松本行き上高地線に乗車。
30分ほどで終点の松本に到着し、兎にも角にも遺失物預り所の場所を確認する。
改札からそれほど遠くないところに預り所はあり早速問い合わせてみる。
「落としたものは?」と聞かれ「ぬいぐるみです」と答えると怪訝な顔をされる。
乗車していた電車について説明してたら、別の係員に「何のぬいぐるみ?」と尋ねられる。
「サルです」、「服の色は?」、「グリーン」、「大きさは?」、「20cmくらい」
そうしたやりとりの後、手渡してくれたのは見紛うことのないモンキチくんの姿。
君のくれた日々が積み重なり 過ぎ去った日々ふたり歩いた『軌跡』
僕らの出逢いがもし偶然ならば 運命ならば 君に巡り逢えた それって『奇跡』
頭の中はニューシネマパラダイスのラスト、溢れる涙が止まらない(注:特盛です)。
こうして無事モンキチくんを引き取り係員に丁重にお礼を言いその場を後にする。
祝杯を挙げるため前日行き損なった居酒屋が開くまで、近くの銭湯で時間をつぶす。
湯上りに松本城を眺めながら缶ビールを飲んで過ごし、開店と同時にお店に到着。
予約で全部埋まっているというので、別のお店で祝杯を挙げた。
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