取材山行 1-5 「山の団十郎・甲斐駒ヶ岳」に登る!

2017年9月25日

第1話:仙丈ヶ岳とラムネ
第2話:南アの女王を極める
第3話:仙丈からこもれび山荘へ
第4話:山小屋に泊まる”楽しさ”がみつかる「こもれび山荘」

甲斐駒ヶ岳への登路
今日はいよいよ甲斐駒ヶ岳へ登る日ですが、まずは出発前にルート取りのお話から進めたいと思います。
地図を眺めると北沢峠から甲斐駒ヶ岳への登路は2つ。
山と高原地図 北岳・甲斐駒 2017 (登山地図)
ひとつは双児山経由で駒津峰に登り甲斐駒ヶ岳へ。
もうひとつは仙水峠から駒津峰に登り山頂へ至るルート。
さて、どっちがいいのかな。
一見すると双児山経由のほうが距離が短く早そうだけど・・・。

実は過去十数回の経験から、反時計回りの方が圧倒的に楽しく時間的にも早いということを知っています。
北沢峠から双児山への登りは、長く急で変化に乏しく・・・正直あまり面白くないのです。
しかも双児山を越えてからいったん下るのも何だか微妙。
であれば、沢あり苔の森あり、そしてホルンフェンスの中を登る仙水峠経由のほうが断然に楽しい!
仙水峠まではきつい登りもないので、いいウォーミングアップにもなります。
それと、今日は下山日でもあるので13時までには北沢峠に戻りたいのです。
そうなると、コースタイムが30分ほど短くなる反時計回りを選ぶのは必然だと思います。

出発!
この日は4時頃に起床、小屋で朝食を食べてから出発することとします。

こもれび山荘の朝食はお弁当形式。
非常に食べやすく、簡単に済ませることができるので出発までの時間短縮につながります。
そして今日も不必要な荷物は小屋へ置いていきます。出発時に小屋のスタッフさんから指示があると思うので、それに従って荷物を棚に収納していきましょう。

午前5時。
外に出ればひんやりとした空気が心地よい空間。
北アルプスにはない、南アルプス特有の湿り具合と樹々の香り。
こんな朝のひととき、まずは林道を緩く下り仙水峠への分岐へと向かいます。
分岐からわずかに進めば長衛小屋を通過、ほどなく沢沿いの登山道を進むようになります。
特に問題になる箇所はありませんが、途中に一箇所だけロープが設置された岩場があるので注意しましょう。

ここを通過すれば沢の左岸に移り、短い急登を終えると仙水小屋に到着します。
ここは小屋前の広場に「予約者以外立ち入り禁止」のロープが張られており、休む場所がないのでそのまま通過。
南アルプスらしい苔の森へと進んでいきます。

「山容水態」という言葉がぴったりの雰囲気。
そして樹林帯を抜けると、そこにはまた違った雰囲気の世界が広がります。

ここは周氷河環境によるホルンフェンスが堆積しています。
ちょっと説明すると・・・。
堆積岩(頁岩)に甲斐駒ヶ岳方面から貫入してきた深成岩の熱影響を受けて、接触変成岩(ホルンフェンス)に変化・・・ということです。それが周氷河環境(凍結・融解を繰り返す環境)により破砕して、このような変わった風景を作り出しているのです。
そしてこのホルンフェンスは時の移ろいの中で、今でもわずかに移動しているため樹々の植生が阻害されています。
だから木が無い!
そういうことなのです。
余談ですが・・・ここをよく探すと柘榴石が落ちてますよ。

背後に昨日登った仙丈ヶ岳を従えながら、緩やかな凹状地形を登ればまもなく仙水峠に到着します。
ここは解放感ある広場になっているので、一休みするには最適な場所。
これから始まる急登の前に行動食でも摂って備えましょう。
因みに峠を右に進むとサントリーのCMで一躍有名になった栗沢山へ登ることができます。
サントリー 南アルプスの天然水(2L×6本)×2箱



ここからは急登だ
仙水峠から甲斐駒ヶ岳方面に進むと、ほどなく駒津峰への急登が始まります。
ここから駒津峰まではなかなかきつい登りが続きます。
下部は展望の利かない樹林帯ですが、中間部からは背の低いハイマツと石楠花に変わるので展望が開けてきます。

振り返れば・・・。
日本人の「心」とも言える富士山が早川尾根を隔ててそびえています。

よく考えてみると・・・ここからの展望は日本の最高峰となる1.2.3位が揃い踏みなんですね。
左から富士山(3,776m)
北岳(3,193m)
間ノ岳(3,190m)

さらに右手に圧倒的な迫力で迫る甲斐駒ヶ岳を望みながら登れば、ハイマツ帯を進むようになり傾斜も緩んできます。
最後につづら折れを登れば、仙水峠から1時間半ほどで駒津峰に到着だ!

正面奥の「尖がり」は南アルプスでも屈指の難易度を誇る鋸岳です。
さらにその奥には北アルプスの山々が広がっています。
そして向かう先には。

大きくそびえる甲斐駒ヶ岳。
右手には摩利支天も見えています。

いよいよクライマックス
駒津峰からはいったん大きく下りますが、岩場も多く痩せた部分もあるので転落には注意したいところです。また、細かなアップダウンもあるのでゆっくり慌てずに歩きたいものです。
六方石を通過すれば、すぐに直登ルートと一般ルートの分岐に到着。
赤ペンキの「直登」に導かれて登ると、いきなりの核心部。
スラブ状の岩場ですが、ホールドが細かいので左手のクラックに身体を寄せて登っていきます。
岩場に慣れていないと登れない可能性もあるので注意が必要です。

分岐から最初の10分ほどを終えれば、後は難しいところもなく快適な岩稜の登りとなります。
この岩稜は花崗岩でフリクション(摩擦)が非常によいのが特徴。
腕力で引き付けるよりも足で立ちこむ感覚で登っていくと楽だと思いますよ。

山頂!
岩稜が終わると山頂の下を右手へトラバースしながら砂礫の道を進みます。
やがて一般ルートのトラバースルートと合流、あとは山頂までわずかな距離を残すのみです。

巨岩が累々と重なる道をたどれば、まもなく甲斐駒ヶ岳の山頂に到着となります。
この日は北沢峠(こもれび山荘)から休憩込みで4時間半の歩程でした。

白亜の頂。
威風堂々としたその姿。
まさに宇野浩二が1922年に発表した小説「山恋ひ」で書かれた一文。
「駒ケ岳はあたかも舞台に出ている団十郎のように見えた。外の諸諸の山は悉く彼の影に消されて、ひとり彼だけが、駒ケ岳だけが観客の目を引付けるのであろうか。が、何はともあれ、駒ケ岳は外の山よりも私たちの最も目近に、その怪異な姿を丸出しにして突立っていることも事実であった」
これ以上の表現はないのではないかと思わせる。
そんな山の頂でした。
宇野浩二全集第3巻(1972年)

次回はいよいよ最終回
次回は甲斐駒ヶ岳を辞して北沢峠に下山。
そして以外にも「別の山」に登る?ことになったお話です。
その他にも登山中に使ったアイテムなどのレビューも盛り沢山。
ぜひ次回をもお楽しみに!

《今回の出費》
0円

《使用機材》
PENTAX K-3II
PENTAX DA18-135mm F3.5-5.6ED AL[IF] DC WR

2 Comments

  1. High Mountain より:

    28日に仙水小屋泊で甲斐駒ケ岳に登ります。
    詳細なコース説明、写真をありがとうございました。
    是非富士山、北岳、間ノ岳のそろい踏みを観たいです‼️

  2. しぞーかのまりも より:

    仙水峠~駒津峰 で 相前後した ソロ男です
    (仙水峠の写真 足とザックだけ写っていました!)

    駒津峰 での写真(まずは後姿?)で ハット気づきました
    まさか取材山行だったとはね・・・

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