新たに置きかえられた、この裸の大地をうろうろとさまよい、自分だけのいい土地を探検する旅。〜この地域一帯に自分だけのいい土地を見つけ、どんどんひろげて、ネットワーク化する。獲物がとれそうな土地を見つけ、その土地事情に依存して旅をすることで、私自身がその土地に組み込まれてしまう、そういう抜き差しならない関係にある土地を増やす。大地全体に組みこまれてしまうことで、私は、この地球の最北の地域一帯を庭のように自由に旅できるかもしれない。そして、この大地への帰属意識を持つかもしれない。百年前のエスキモーのように。
すべてが吹き飛んでしまった。この旅のつぎにやろうとひそかに練っていたべつの旅の予定も、そのつぎの探検計画も、この時どこかに消えた。新しい地域に行き、一回だけその地をおとずれて、そのあとはまたべつの場所に行って、とつぎつぎに自分が足跡をしるした場所の数だけ増やしていく・・・そんな探検コレクターみたいな旅はもうやるまい、そう思った。
『狩りと漂白』角幡唯介著
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