◆ ２０１３年１２月、京都市の男性（55歳）が、富士山の頂上直下で滑落し、５合目付近まで落下した。
男性はホバーリング中の、静岡市の救助ヘリで救助される際、つり上げ用具が外れ、落下した。日没も迫っていたため、静岡県警が翌日救出したが、男性は死亡した。
◆ 男姓の遺族は、つり上げ用具の選択を誤り、適切な再救助もせず、死に至らしめたとして、市に９１７０万円の損害賠償を請求していた。
これに対して、京都地裁の裁判長は、山岳での救助について、
� ゝぞ歉�況や、2次遭難の可能性等の制約がある。
�◆‘辰防弦發旅發そ蠅任蓮�救出方法の選択等は、隊員の合理的裁量に属す。
との判断を示した。その上、日没まで30分程でしかない中で、迅速に救助できる用具を選択した等、救助活動全般に過失は無かった、として原告の訴えを退けた。
◆ 以上が、一審の判決だ。
私は依然から、山の遭難事件で救助要請によって、救助隊や救助ヘリが出動した場合は、有料にした方が良いと思っている。
従って、この判決もこれで良いと思う者だが、これによく似た事件が、2009年1月に北海道の積丹山（1255ｍ）で起きている。
富士山の事件と同じく、救助についての不手際を遺族が提訴して、過失相殺はあったが、損害賠償を1審、2審、そして最高裁も認めたものだ。
「積丹山の事件の概要」
◆ 2009年１月、男性（38歳）は友人と二人で積丹山にスノボーのために、滑降禁止区域に入山。午後に友人とはぐれ、道に迷い山頂付近にビバーク。
翌2月1日より捜索開始。正午頃、道警山岳救助隊は意識盲聾とした男性を発見。隊員が交代で男性を抱えて下山中、雪庇を踏み抜き、男性と隊員3名が200ｍ滑落。救助隊は男性を発見し、上に引き上げようと、作業交代のため、ストレッチャーを這松に固定したところ、這松が折れてストレッチャーと共に男性は再び不明となった。
◆ 悪天候により、当日の捜索を断念。翌2日、崖下の標高1000ｍ付近で、ストレッチャーに固定された男性を発見。ヘリで搬送するも死亡。死因は凍死。
◆ 男性の両親は道に対し、8600万円の賠償を求めて提訴。男性の死亡は救助活動の過失によるものと訴えた。
◆ 争点
� ゝ濬�活動は適切だったか？
�◆｜棒�の死亡原因は、救助活動と関係があるか？
�� 登山者としての男性に過失は無かったか？
◆ 判決・1審。札幌地裁。2011/11/19.
男性に80％の過失を認めるが、救助活動の過失が、男性の死亡を誘発したと認定。
（不注意による雪庇の踏む抜き等、救助隊が合理的方法を取らなかった。よって男性の死亡との因果関係を認定。）
北海道に1200万円の支払いを命じた。
◆ 男性側の過失。
� ‥澣┐寮冀阿療係�が変わり易いのを知りながら、天気予報を十分確認していない。
�◆．咼弌璽�に適さない山頂付近でビバークした。
�� 下山方向を間違えた。
�ぁ．張┘襯箸�破れていた為、低体温症になった。
�ァ＼稟澆龍瓩�でビバークして、救助隊員の踏み抜きを誘発した。
◆ 以上の理由で、男性の過失割合を80％とし、8600万円の損害額を1200万円に減額した。
その後、控訴され、2015年3月、札幌高裁では過失割合を70％と減らして、賠償額を1800万円に増額した。
それに、高裁判決では、「山岳遭難で登山者の救助は、警察の責務」だと明言している。
2016年11月、最高裁は道の上告を棄却。1800万円の損害賠償が決定した。
◆ 富士山の前に、この判例があるので、京都の遺族は控訴すると思われる。2審でどうなるか、見守るしかない。（私には、白鵬のような事は言へない。）
元来、日本人は裁判を好まない。しかし、私は議論の積み重ね、その手続きが大切で、こんな議論に慣れる必要があると思っている。
特に、札幌高裁の「山岳遭難救助は警察の責務」と明言してるのは、例え遊びだとは云へ、国民の生命を守るのは国家だと、政府に言っているのだ。これこそ民主国家の真髄だ。
◆ 来年からは、埼玉県はヘリによる救助を有料にする。燃料代に相当する、5分当たり5000円、1時間当たり6万円らしい。平均の救助時間が1時間だそうだ。
金を請求にするからには、積丹岳の様なヘマはできないだろう。私は、両者とも真面目になって良いと思っている。
山梨県でも、この話があったそうだが、問題が多すぎると見送られたそうだ。どんな問題かは聞いてない。
mesnerさん、こんにちは。
2例の事件で共通しているのは、立ち入り禁止期間と区域です。特に富士山での遭難は地元消防から、訓練の中止が再三あったと聞いています。
判決文でも気象状況が悪化してホバリングの保持の困難さで二次遭難の可能性があり、消防隊の適正な判断との事の様ですね。
積丹山の道警の過失は確か2点と聞いております。
雪庇を踏み200ｍ程滑落したのと、隊員の知識不足なのか隊員が交代で要救助者を引き上げる際、ストレッチャーをハイマツに固定したが、それが強度不足で折れストレッチャーごと滑落、翌日に発見するも死亡。
一方は地裁での判決段階で、もう一方は道警が最高裁に上告しましたが、棄却され道警側の3割の過失が決定しました。
＞特に、札幌高裁の「山岳遭難救助は警察の責務」・・・
＊私見ですが、立ち入り禁止区域とは危害の恐れが大である、そんなところへ最善の装備でも救助が困難な場合は、隊員が命を懸けて救助に向かうのも、いささか疑問ですね。
登山者の関係者が裁判を起こすのは、民主国家として当然の権利かもしれませんが、最低限度の法律や条例等は遵守してもらいたいですね。何かあれば国家賠償での求償、性格上私には合わないですね。
pace さん、今日は。
一般国民の意見としても、paces さんの考えに近いと思います。
私も有料が良いと、以前から思ってます。
でも、どちらの判決も、立ち入り禁止区域に入った事に言及していません。それは、ちゃんとした条令や法律ではないからです。立ち入り禁止と誰が言ってるのかが問題です。
以前から色々と議論はありますが、来年からの埼玉県の条例が、やっと有料になります。山梨県が見送ったのも、それには色々と問題があるからです。
埼玉県の条例がこの先どんな結果になるのか、面白いと思います。
それに、最初に「自己責任」と云ふ言葉が出て来たのも、登山ではなく中東の内紛に関するものでした。報道写真家やヨットでの太平洋の横断なんかも、自己責任と云ふ言葉が当てはまるかも知れませんが、これらを国は見殺しにするのか？ と云ふ問題です。
私は、明らかな法律違反でない限り、国家は国民の生命・財産を守る義務があると思います。国民を見殺しにした戦前の国家より、今の国家がうんとマシだと思います。
それ位の費用は、ノーパンしゃぶしゃぶや、文部省の違法な天下りに比べれば、うんと僅かな費用だと思います。
今から４年ほど前に、富士登山に関して開設期間以外は、原則禁止とする「富士登山における安全確保のガイドライン」を制定した。mesnerさんの言う様に法や条例では無いので、何の罰則や強制力もありません。しかし、関係者（山梨・静岡）が夏山以外で余りにも遭難や事故が多いので、不用意な登山を少しでも減らすのを目的としています。但し、このラインも登山者に甘いのか、十分な登山準備をしていて登山計画書を提出すれば、知識があり装備不足でない限り、装備や日程についての助言があるそうです。
余談ですが、公園等でよく見かける看板に、「犬の散歩は御遠慮願います」がありますが、これも、私が思うのには、禁止と表示すればいいのですが、そうすれば、市民の反感を買うのでトーンダウンしているのでは。
法で束縛されていなくても、原則禁止の区域は災害の可能性が高い。そんな時季に登山をして不幸にして遭難するのは、「自己責任」以外は考えられません。
犯罪捜査等で殉職される場合もありますが、それと山での救助とは少し違う様に思います。警察や消防、そして、自衛隊等の公職に関わる人もひとりの人間です。命を大切にして頂きたいものです。
有料化にして、登山者のモラルがアップすればいいのですが・・。
pace さん、今晩は。
誰も、二次災害の危険を冒してまで、命がけで救助せよなんて言ってませんよ。判決にもそう書いているではありませんか。
それ位の判断が出来なければ、救助隊員にならなければ良いだけでしょう。
自己責任の定義や、それに対する対処方法等を、国民的に合意するのが条令や法律と云ふものです。
一個人の思い込みとは、関係ありませんよ。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する