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2018年08月11日 12:34トレイルランニング全体に公開

【総 活】九州縦断ウルトラトレイル2018の旅を終えて(別府〜湯布院〜白水鉱泉〜坊ガツル〜牧ノ戸峠〜瀬の本〜大観峰〜阿蘇駅〜南阿蘇〜白川水源)

第一章【はじめに】

走行距離 137.2km 累積獲得標高 9987m 走行時間 46時間。

自分の脚だけを信じて進んだ…壮絶な旅。

九州縦断ウルトラトレイル2018の旅を終えた今、正直なところ、ほっとしている。

8月に入っても、日本列島各地の猛暑は勢いが止まらず、九州地方も毎日のように猛暑日が続いた。

旅の行程の約半分くらいは、山間部のロードで、アスファルトの反射熱を浴びながら進んだ。

酷暑と疲労から、意識が朦朧としてしまい、幻聴・幻覚を繰り返し、投げ出したくなる場面も多々あった。

山登りの連続で、道中、ミスルートを繰り返してしまい、一瞬、死を覚悟したこともあった。

そんな時、常に冷静になって考えることだけは忘れずに、落ち着いて考えることを心掛けた。

この旅のテーマは3つある。それは、「雄大な自然、名水、癒しの湯」を訪ねる旅だ。

別府駅をスタートして南阿蘇に至るまで、それらは全ての場所に共通してあった。

また、旅を支えてくれた重要なものとして、人との出会いがあった。

振り返ると、人との出会いが無ければ、きっと南阿蘇までたどり着けなかっただろう。

第二章【旅の計画】

この旅を企画したのは他ならぬ自分自身だが、九州縦断のコースは実は三番目の候補だった。

元々4泊5日のスケジュールでロングトレイルの旅に出ることは決めていたのだが、8月に入ってもなかなかコースが決まらなかった。

日本ロングトレイル協会のホームページから情報を得て、「八ヶ岳スーパートレイル」「塩の道トレイル」「みちのく潮風トレイル」などを旅の有力候補として挙げていた。

ところが、8月に入って、候補地の天気予報を毎日チェックしていると、8月第2週目の関東、甲信越地方、東北地方の山間部がよろしくない!

仕方なく、予定を変更して天候が安定している九州に帰省して山旅をすることにした。

九州地方の山旅と言っても色々ありそうだが、迷わず阿蘇をコースに編入した。

阿蘇はドライブに行ったことはあったが、本格的な山登りをしたことがないエリアだった。

では、どういう山旅にするか?

迷わずロングトレイルだった。

ロングトレイルと言った場合、色々定義はあるだろうが、自分としては最低でも100km超のトレイルをつなぐコースをイメージしていた。

そして、コースは、自分自身で行きたいところをつないで走る、誰も走破したことのないオリジナルコース
とした。

山と渓谷社の阿蘇の登山地図を俯瞰したとき、目に付いたのは、南阿蘇だった。

南阿蘇をフィニッシュ地点として100マイルのトレイルコースは出来ないか?

スタート地点として、別府駅がすぐに目に飛び込んできた。

なぜか?

別府駅は、九州地方におけるトレイルランニングレースの先駆けとなる「べっぷ鶴見岳一気登山大会」の起点となるポイントであり、一度、この大会のコースを自分の脚で歩いて、大会の難易度や大会の雰囲気を想像してみたかったからである。

早速、別府駅と南阿蘇を一本の道で繋いでみた。

コース取りにもよるだろうが、100マイルのトレイルが
なんとなく一本の道で繋なげそうである。

別府駅をスタートして鶴見岳から由布岳を経由して湯布院の街に下るのは、メジャーな縦走コースとしてすでに登山地図にも示されているので分かりやすい。

問題は、湯布院からのコース取りだ。

ロードだけで進む場合は、道迷いの心配は殆ど無いと考えた。

しかし、ロードだけの場合は、目的地の白水鉱泉を大きく迂回することになり、距離が伸びることになる。

一方、由布市内の花牟礼山のピークを超えて目的地を目指すコース取りをする場合は、距離を大幅に短縮することができる。

この2日目のルートは現地に入ってから花牟礼山の登山経験者の意見を聴いてから決めようと考えた。

それ以外のコースは何とかなるのではないか?と超楽観的な計画な考えでいた。

第三章【旅を楽しむ】

出発前、4泊5日の旅のイメージはある程度持ってはいた。

毎日朝5時には起床して、宿の朝食はしっかりといただき、昼食は、宿で準備いただいた弁当を山で食べる。

そして、遅くとも17時までには下山し、18時には宿に入る…の繰り返し。

旅の間は体調管理に努め、毎日温泉で疲れを癒し、早寝早起き、アルコールはほどほどにし、三食を摂る規則正しい生活を心掛けるようにした。

一日当たりの走行距離は30km〜40kmを想定。毎朝出発時刻を6時として、休憩時間を除いた一日行動時間は10時間が限度と考えた。

走行可能区間は、ロードのフラット、下りぐらいをイメージした。

特に山中でのランニングは、道迷いの原因と、膝の負担増になるため、また長旅の体力温存の為にも、早歩き程度にすることにした。

時間的、精神的に少し余裕を持った旅の行程とすることで、自然を愛で、土地の歴史を実感し、動植物の気配を感じながら、一歩一歩前に進むことが可能になり、旅を楽しめると思っていた。

第四章【出発】
《第一日目》

旅のスタートは別府駅からだった。

別府駅で昼の弁当を買い、店員と最近の猛暑について世間話をする。

これからスタートする旅の概略について話をしたあと
大分弁で温かく見送りを受けた。

朝8時、別府駅をスタート。同時にヤマレコの記録を開始。ガーミンのウォッチもとりあえずスタートさせた。

当初のコース取りはラクテンチ南側のトレイルを経由する予定だった。

しかし、登山道に詳しい記述もなく、ミスコースによるロスタイムを避けるために、スタート30分後には鶴見岳一気登山道との合流地点を目指して歩くことにした。

朝9時過ぎというのに暑い。別府の老舗旅館杉乃井ホテルまでの緩やかな勾配を経て、本格的な登りのロードが更に続く。

いつの間にか鶴見岳一気登山道の合流地点に着いた。

さすがは、歴史を感じる立派な標識だった。

一気登山道のルートに合わせて、あとは何も考えずに、登りのトレイルを進んだ。

トレイルに入る途中、一気登山道を下山するハイカーに出会った。

鶴見岳山頂まで行って折り返しているのかと思いきや、この先の朝見川の源流まで行って折り返し、帰る最中なのだという。

朝見川の源流には、きっと美味しい水場があるに違いない!と考えて、意気揚々と一気登山道の登りを進むことにした。

旧太宰府官道との分岐点を通過して間も無く、スタートしてから約一時間、朝見川源流に到着した。

たこ焼き10個を並べたような置石を横切るように朝見川は交差して流れ、立ち止まって、手に取って飲んでみた。

澄んでいて、美味しい!

この旅、初めての水場に癒された瞬間だった。

早くも空になりかけていた1本目のペットボトルに源流の水を掬って満たした後、次の神社の水場ポイントを目指して進んだ。

別府ロープウェイ乗り場の横を通過して、直射日光を浴びながら、一気登山道をひたすら登る。

アスファルトの上を走るロード区間よりも脚に優しい柔らかい土の上を走るトレイルランが自分は好きだ。

スタートして約2時間経過、御岳権現社の水場ポイントに到着した。

水場に到着するや否や、うな垂れるようにして、その場に倒れ、ザックからハイドレーションシステムのパックと携帯コップを取り出すと、溢れ出てくる御神水をがぶ飲みした。

猛暑のせいもあるだろうが、これほどまでに水が美味しく感じた瞬間はなかった。

そこに一人、20代のランナーが勢いよく水場目掛けて山から下ってきた。

息づかいが荒々しく、漸く水場まで辿り着いたことに安堵している様子だ。

声をかけてみると、大分市からやってきた青年で、夏場は、ランニングの練習として最近、トレイルランを始めたという。

そして今日、鶴見岳からの下りで道に迷い、なかなかコースの軌道修正が出来ずに、一時、遭難しかけたという。

お互いの健闘を称え合ったあと、私は頂上を目指して進んだ。

登山地図を改めて確認すると、神社を過ぎたとあとは、登り一辺倒のトレイルのようだ。
おそらくは、一気登山道レースでもここからが、レースの山場に違いない。

殆どフラットなトレイルがないので、つづら折の登りをひたすら暑さと耐えながら進む。

唯一、このトレイルは標高地点が50M毎に示されているため、自分のペースが50M毎に把握でき、確実に頂上に近づいている実感が得られることが、精神的な支えになっている。

まもなく、巨岩を乗り越えると、視界が開け、山頂広場に躍り出た。

眼下には、別府ロープウェイの山頂駅が見える。

鶴見岳の山頂到着が、ちょうど12時ごろだったため、頂上付近で昼食をとった。

暑さのあまり、食欲も十分ではなかったが、荷物の軽量化と午後からの山行に備えて別府駅で購入した弁当を間食した。

昼食後、由布岳への縦走ルートを探した。

やや分かりにくかったが、地元の夫婦連れの登山者に聞いてルートの確認はできた。

しかしである。

その夫婦は、「この先の縦走路は、夏草が生い茂っていて、下山は厳しいと思う。」と言う。

そのため、夫婦は由布岳への縦走を断念したようであった。

私は1分間、登山地図と由布岳方面に生い茂っている木々を確認したあと、殆ど躊躇することなく、下山することにした。

夫婦の忠告にも関わらず、下山しようとする私の行動は夫婦からすれば無謀に思えたのかもしれない。

夫婦には、お礼を言い、「夏草で前進不可能なら戻ってきます!」とだけ言い残して元気良く下山した。

私には、下山できる自信があったからだ。

確信まではないものの、GPSを駆使すれば、ルートから外れることはまずないし、下れば下るほど、トレイルは開けて、夏草の量は減っていることを4年前の由布岳登山のときに確認していたからである。

実際に下ってみると、鶴見岳山頂付近では、夏草のためトレイルの見分けがつきにくかった。

しかし、登山ルートを確実に確認しながら高度を下げていくと、あっという間に夏草と格闘することはなくなった。

気づいたら、由布岳東登山口に到着していた。

ここまでは初日前半。

ホッとしたのも束の間で、後半の由布岳のトレイルで思わぬ展開が待っていた。

ミスコースである。

由布岳東登山口まで到着した時点で、完全に安堵し切っていた。

そして、その安堵感が油断に変わった瞬間だったことに自分自身気が付いていなかったのである。

油断した理由として、時間の都合上から、由布岳登頂をせずに、山腹をトラバースすることに計画を変更していたからである。

より確実に下山するための計画変更で、気持ちのどこかに油断が生じたのだろう。

由布岳山腹のトレイルは、実は、非常にわかりにくいトレイルだった。

岩だらけのトレイルの上、岩に表示された黄色いペンキの○印表示も消えかかっているものが多かった。

GPSで確認しながら進むものの、途中で、分岐点のような箇所が多数あり、そのつどGPSと方位磁石で正しいルートを判別しながら進むのは困難を極めた。

用心深く進んでいたその時、事件は起きた。

進行方向の目印となるはずのトレイルの痕跡がないのだ。

トレイルと言っても岩場なので、ペンキのマーカーや標識くらいしか頼るものがないのだが、そのペンキマーカーが見当たらないのだ。

ペンキマーカーは黄色だが、マーカーしてからかなり年数が経過しているせいか白っぽく変色し、岩肌の灰色と見分けがつきにくい。

なおさら、山中は薄暗く、肉眼で10m以上先の見通しが効かない状態だった。

当たりは巨岩だらけ。

見通しが効くトレイルならば足跡が残るが、岩場はそもそも足跡が残りにくい上に、苔生して滑りやすい。

体全身から、脂汗が流れていくのを感じた。

周りは物音が一切なく、静寂の世界に一人佇んでいた。

時刻は15時近くになろうとしていた。

誰の助けを求めることが出来る訳もなく、辺りの静寂と迫る日没にさらに不安は増した。

日没に備えてハンドライトは用意していたが、やはり夜間走行は避けたかった。ペンキマーカーがより一層見えにくくなることが想定されたからである。

落ち着け!

そう自分に言い聞かせた。

GPSを見た。

GPSの現在地は、少し本来の登山道から南側を指していた。

磁石で登山道の方向を確認して元来た道まで引き返すことにした。

が、辺りの岩肌の灰色が全て、ペンキマーカーに見えてきた。

ペンキマーカーを頼りに進むと更にミスコースをしてしまうような不安に駆られた。

もう一度、GPSで自分の現在地を確認した。

トレイルの方向は、山の斜面方向を指していた。

一か八かの勝負で、トレイルまで直登しよう!と決断した。

トレイルを目指して獣道を駆け上がった。

登り始めて約5分。標識のある登山道に再び出た。涙が出るほど嬉しかった。

ようやく正面登山道出口に着いた。

しかし、このコースを選択すると、ロード区間が長くなり、宿の到着が20時を過ぎる可能性があった。

引き返して、西口登山道出口を目指すことにした。

西口登山道までの道は見覚えのあるトレイルだった。

再び安堵感で、道迷いをするが、なんとか林道のある最後の登山道まで辿り着いた。
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