事故当時現場にいた他パーティの方々、長野県警察、静岡県警察と諏訪地区遭対協の皆様には救助活動で大変お世話になりました。
また、諏訪中央病院の皆様には長い入院生活でお世話になり、おかげ様で順調な回復経過となりました。心より御礼申し上げます。
後遺症については経過観察中ですが、既にプレート等の固定具は全て除去した状態となっており、体力的にも山に登れる程度には回復しました。
また、先日山岳保険の受け取りも終わり、今回の山岳遭難についてまとめられる情報が揃いましたので、この場をお借りして今回の事故について、事故発生から救助、入院と治療経過、掛かった費用と山岳保険について報告したいと思います。
<事故の状況>
2020年2月14日11時過ぎ、摩利支天大滝リード中5〜6m墜落。最初の支点を取る前の墜落だった為、そのまま足からグラウンドフォールしました。
11時半過ぎ、骨折しており自力下山不能の為、110番通報し救助要請。
14時頃ビバーク準備、風を避ける為右岸岩壁側に10m程移動。
15時前、長野県警察山岳遭難救助隊と諏訪地区遭対協が現場着。静岡県警ヘリにて救助。
16時頃、諏訪中央病院へ搬送。
<事故の原因>
良く言われている事ですが最大の原因は「油断」でした。
2020シーズンのアイスは技術的に今までに無く好調だった事で慢心があり、1ピン目を取るまで上がり過ぎた事、打ち込みでは無くフッキングでスクリューイン姿勢に入った事、その結果アックスが外れ、そのまま墜落しました。
<診断>
・左足首、左脛骨天涯骨折。
(距骨が下から突き上げた為、脛骨と腓骨が耐えきれずに弾け粉砕骨折)
・右膝、右脛骨高原骨折、ACL付着部剥離骨折疑い。
(大腿骨が上から脛骨にめり込み、脛骨の関節部分が潰れるように骨折)
<処置>
左足首が上方にめり込んでいる為、当日に左足首創外固定手術を行い、足の位置を戻し固定。そのまま諏訪中央病院へ入院となりました。
<入院経過>
2/18
・右膝右脛骨高原骨折手術。(関節鏡下関節内骨折観血的手術)
2/20
・リハビリ、動かせる部分から可動開始。
2/28
・左足首左脛骨天涯骨折手術。(関節内骨折観血的整復固定術)
・右膝右脛骨高原骨折手術後の抜鉤。
3/3
・PTB装具製作の為、左足の採寸と型取り。
3/5
・左足首、創外固定ピン抜去部分の抜鉤。
3/9
・左足首左脛骨天涯骨折手術の抜鉤。
3/10
・PTB装具納品とフィッティング調整。
3/16
・リハビリ、左足PTB装具装着し免荷状態での立ち上がり練習開始。
3/24
・リハビリ、左足PTB装具装着し10kg荷重、右足1/3荷重で歩行練習開始。
3/31
・リハビリ荷重変更、左足PTB装具装着し20kg荷重、右足2/3荷重で歩行練習となる。
4/1
・左足首皮膚に炎症が発生し血液検査の結果、細菌感染疑いの為5日間抗生剤の点滴を受ける。
4/6
・左足首皮膚の炎症がほぼ無くなる。念の為抗生剤の飲み薬3日分が処方される。
4/7
・リハビリ荷重変更、左足PTB装具装着し20kg荷重、右足全荷重で松葉杖歩行練習となる。
4/14
・リハビリ荷重変更、左足PTB装具装着し30kg荷重、右足全荷重で歩行練習となる。
4/20
・左足首皮膚に炎症が再発し始めた為、血液検査を受けるが異常無く経過観察となる。
4/21
・リハビリ荷重変更、左足PTB装具装着し40kg荷重、右足全荷重で歩行練習となる。
4/26
・リハビリ荷重変更、左足PTB装具の干渉による左足首皮膚の炎症が疑われる為、左足装具を外し40kg荷重、右足全荷重で歩行練習となる。
4/28
・リハビリ荷重変更、両足全荷重で歩行練習となる。
5/1
・左足首の炎症は細菌感染の疑いが有る為プレート除去手術。(脛骨内異物除去術)
・プレート除去に伴いリハビリ荷重変更、左足30kg荷重に変更となる。
・術後対応と細菌感染疑いの為26日間抗生剤の点滴を受ける。
5/4
・左足首手術後のドレン抜去。
5/11
・左足首手術後の抜鉤。
5/12
・リハビリ荷重変更、左足40kg荷重に変更となる。
5/19
・リハビリ荷重変更、左足全荷重に変更となる。
5/27
・抗生剤の飲み薬8日分が処方される。
6/4
・退院。退院後用に抗生剤の飲み薬1ヵ月分が処方される。コロナの影響で将来的に他県からの患者の受け入れが出来ない可能性が有る為、できる内にプレート等を抜く手術を来月行う見通しとなる。
・退院後は家の回りで歩行訓練を行ったり、ジムでのクライミングや地元の低山にてリハビリを行う。
<退院後外来>
6/25
・外来通院。レントゲンで骨の状態を確認、血液検査の結果、感染の予後も良好な為抗生剤の飲み薬を終了。予定通り1週間後手術の為再入院が決定。
<再入院経過>
7/2
・プレート除去手術の為再入院。
7/3
・左足首と右膝のプレート除去手術。(脛骨内異物除去術)
・既に日常生活レベルの活動はできる為、入院中のリハビリ指導は無し。空いた時間は院内の階段の登り降りや筋トレ等の自主トレを行う。
7/13
・左足首と右膝手術後の抜鉤。
7/14
・退院。外科的な治療終了。
<後遺症について>
骨折箇所の可動域が減少している為、歩行時本人が思っている程関節が曲がっていない事で躓き易くなったように思えます。今後日常生活での使用やリハビリで可動域が広がり改善するよう努め、経過を観察します。
また、後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)が粉砕した脛骨に窪みを作った状態で骨が成長し、腱が短絡化している為、長期的に見ると腱の緩みによる内転が起こり、土踏まずのアーチ低下や足底筋膜の痛みが起こる可能性が有るそうです。
<救助、治療に要した費用金額>
・救助費用
長野県警察、静岡県警察 ¥ 0
諏訪地区遭対協 ¥ 83,220
・医療費(手術5回、入院125日、通院1日)
諏訪中央病院2月分 ¥153,853
諏訪中央病院3月分 ¥128,595
諏訪中央病院4月分 ¥126,375
諏訪中央病院5月分 ¥ 86,260
諏訪中央病院6月分 ¥ 44,150
諏訪中央病院7月分 ¥ 67,706
CSセット ¥ 6,160
PTB装具 ¥ 135,061
--------------------------------
救助+医療費用合計 ¥ 831,380
<支払いを受けた保険金額>
・モンベル山岳保険
救助者費用保険金 ¥ 15,370
捜索遭難費用保険金 ¥ 83,220
障害医療保険金 ¥ 658,861
・全国健康保険協会 ¥ 91,154
--------------------------------
保険金額合計 ¥ 848,605
差額 +¥ 17,225
<費用について>
上記掛かった費用には、地元から長野まで嫁さんの見舞い移動費用や、入院生活で新たに用意した生活雑貨や衣類の費用は含まれていません。
仕事を約半年休職した為、その間の収入はゼロですが、傷病手当金が毎月給与の6割程度支給されました。
山岳保険は基本的には全ての費用を支払い、全体の金額が確定してから請求するため、月々で清算する医療費や社会保険料等は貯金や上記の傷病手当金で回しました。
また、差額ベッド代、食費、CSセット(寝巻やタオルのレンタルサービス)等は保険の対象外となります。
今回発生した費用は、捜索救助費用よりも救助後の医療費に多く掛かった為、保険に入っていた事が大変役に立ちました。自分が加入している山岳保険は以下の通りです。
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モンベル山岳保険(運動等危険補償特約付障害総合保険)
加入プラン スタンダードプランE105 24時間補償(B)コース
救助者費用等補償 500万円
遭難捜索費用補償 100万円
遭難捜索追加費用補償 30万円
個人賠償責任 1億円
死亡 200万円
後遺障害 200万円
障害医療費用 100万円
入院日額 無し
手術(入院中) 無し
手術(入院中以外) 無し
通院日額 無し
携行品損害 無し
保険料(3年間) ¥50,590
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以上です。
このような記録は恥以外の何物でも有りませんが、登山、クライミングをされる方々の何かの参考になれば幸いです。
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2021年1月30日、追記。
後遺障害11級の認定となった為、後遺障害保険金の支払いを受けました。(局部に頑固な神経症状を残すもの、併合11級)
それにより、救助、治療による収支を以下のように更新しました。
(※部分が追記箇所です)
半年近い休職中の収入減は有りましたが、救助、治療に関しての収支は大幅なプラスになっているので、保険は本当に大事だったと思います。
<救助、治療に要した費用金額>
・救助費用
長野県警察、静岡県警察 ¥ 0
諏訪地区遭対協 ¥ 83,220
・医療費(手術5回、入院125日、通院1日)
諏訪中央病院2月分 ¥153,853
諏訪中央病院3月分 ¥128,595
諏訪中央病院4月分 ¥126,375
諏訪中央病院5月分 ¥ 86,260
諏訪中央病院6月分 ¥ 44,150
諏訪中央病院7月分 ¥ 67,706
CSセット ¥ 6,160
PTB装具 ¥ 135,061
--------------------------------
救助+医療費用合計 ¥ 831,380
<支払いを受けた保険金額>
・モンベル山岳保険
救助者費用保険金 ¥ 15,370
捜索遭難費用保険金 ¥ 83,220
障害医療保険金 ¥ 658,861
※ 後遺障害保険金 ¥ 300,000
・全国健康保険協会 ¥ 91,154
--------------------------------
保険金額合計 ¥ 848,605
差額 +¥ 317,225
以上です。
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