櫛形山の断層

　櫛形山は甲府盆地の西方に位置し、南北に長いクジラの背のような山で、３〜４Kmに及ぶ長い頂稜は大きなアップダウンもなく、アヤメの咲く湿地、奇木巨木の原生林、気持ちの良い草地と変化に富んでいます。また、南アルプスの前衛峰だから、白峰三山や荒川岳、赤石岳の格好の展望台となる場所もあって、好きな山の一つです。

　その櫛形山の地図を見ると、頂稜の西側に並行して尾根や谷を横切る特徴的な等高線のうねりが確認できます。恐らく、これは断層を示す地形なのでしょう。「恐らく」というのは、検索してしても関連する文献が見つからなかったからですが、櫛形山から稜線をたどり南に13Kmほど行った富士見山の活断層に関する論文がありました。 ( https://www.jstage.jst.go.jp/article/afr1985/1989/7/1989_43/_pdf ）甲府盆地はフォッサマグナで３つのプレートが交わる場所に位置しますから、こういう断層もあるのでしょう。

　櫛形山は西側より東側の方が急峻で、これは活断層によるものらしいです。富士見山も同様で、上記の文献には書かれていませんでしたが、富士見山の東側は崩れた土砂によって起伏がなだらかな地形になったようもに見えます。このことより、櫛形山も西側の断層により山体崩壊を起こす可能性があるのではないかと思うのです。
　これは素人の考察であり、今の段階ではそんなのは徴候もないのでしょうが、地質学的な時間スケールで見れば起こっても不思議ではありません。

　それで、気になるのがリニア新幹線。予定ルートでは櫛形山と富士見山の間にある十谷峠の下を通る事になっています。十谷峠の手前に南北に流れる大柳川の谷も断層に沿って出来たようにも見えます。こういう所に通して本当に大丈夫なのかと思うわけです。
　当然、国家的プロジェクトだから、その道の専門家が充分に検討し確証が得られているのでしょう。それに日本はどこもかしこも断層だらけ、それを避けるのは不可能です。
　しかし、地上を走るのであればまだしも、長いトンネルというのが気になるのです。杞憂に過ぎないのかも知れませんが、運悪くトンネルの中にいる時に地震が発生し、断層がすれて閉じ込められる事はないのか、などと考えたりするのです。

　山に限らず地図を見ていて変わった地形があると、何故そのような地形が出来たのか気になり、そこへ行ってみたくなります。地質学を専門にやった訳ではないので興味の範疇でしかないのですが、学生時代にそういうのを専攻して関連する仕事をやった方が良かった。人生の選択を間違えたのかも知れない、なんて思うのです。
　そういえば、昔の山仲間の友達に、谷川岳の一ノ倉沢を登り、岩質や岩壁の成り立ちを調べて卒論にした人がいたそうです。まあこれは単に山に行きたかったのでしょうけど、日の射さない実験室でハンダ付けの煙にむせびながら、訳の分からない電子回路を作っていた自分よりずっと楽しそうでした。
　もっとも、地質学をやったとしても、満足できるような仕事に就けたかは分かりません。なにしろ学生時代は毎年進級判定がギリギリの劣等生でしたから。


画像１(左）櫛形山の断層と思われる地形
画像２(中）富士見山の活断層
画像３(右）リニア新幹線の予定ルート

コメント

こまりく

RE: 櫛形山の断層
guchi999さん、こんばんは。

と言う事は、「ブラ、タモリ」絶対に見ているでしょうね。？

今日は、「仁徳天皇陵」の古墳の話ですが。イコモスから、世界遺産に勧告されましたから。

私も好きで、毎回楽しみに見てますから。では、また。失礼します。

guchi999

RE: 櫛形山の断層
komarikuさん、こんにちは。

はい、ブラタモリ見てます。
出てくる専門家の人の話が、素人でも解り易く纏められているのが良いですね。
行った事がある場所が出てきて
『行く前に知っていれば、もっと楽しめたのに！』
と思うことも度々あります。

仁徳天皇陵は、近くに顧客がいたので何度か行きました。
そのお客さんは子供の頃中に忍び込んだ事があり、特に何もない森だったそうです。
世界遺産になったという事で行く人も増えるのでしようけど、外から見ても堀がある森だから、一度行けば十分ですね。
昨日の夕方から出かけていたので、ブラタモリはまだ見てませんが録画してあるので、後で見ようと思っています。

いーぐる

RE: 櫛形山の断層
guchiさん、こんばんは！
　なるほどね〜！　これ面白いです。
私も地形図を眺めるのは好きですが、活断層に想いを馳せたことはないですね〜。　我家の近く、丹沢の端っこの松田山も酒匂川に面した側は急激に立ち上がっていて活断層だって言われてますね。
　リニア新幹線。ご懸念、確かにあるあるですね〜。
私の場合、寿命的にもguchiさんのご懸念に遭遇する機会はないんですが、フォッサマグナも突き抜けるわけだし色々ありそうですね〜。
　私も子供の頃は考古学を専攻したいなんて思ってましたけど、全然違って化学屋でメシを食いました。地質学でメシを食うのも同じ程度にシンドイでしょうから、guchiさんも正解を選択してたんじゃないですか。
　

guchi999

RE: 櫛形山の断層
イーグルさん、こんにちは。

櫛形山の場合、電子地図で縮尺を変えると不自然な山襞が目立ったことが発端で、検索してみると幾つかの文献がヒットしたり、少し前のブラタモリで甲府盆地の成因をやっていたから、これは面白いと思った次第です。

人生の選択については、何をやっても、それなりの苦楽はあり、正解だったか失敗だったかは、今の生活の満足度によるでしょうね。
それから言うと、そこそこの満足感はあるけど、まあ「隣の芝生」ってやつですね。