この映画を撮るにあたってケン・ローチは同じ境遇の人たちを数多く取材し、その階層の人たちの中から役者やエキストラを選び、台本は撮影の直前まで知らせず、リアリティーを出す手法で進めたという。役者と監督の間の、深い信頼関係が必要な方法だ。イギリス社会では英語を聞けば階層がわかってしまうので、普通の役者は使わなかったという。
イギリスは19世紀ヴィクトリア朝時代の産業革命期に、行き過ぎた搾取社会を経験して、その反省から現代みんなが恩恵を受けている社会保障制度や労働者の最低限の権利などを長い時間かけて発達させてきた国なのに。これまで連綿と築いてきた人類の資産を、イギリスも日本も、ここに来てなんでぶち壊しにかかるのか。
イギリスの伝統食が伝統的にまずい評判なのも、19世紀に家庭料理が絶えてしまうほど過酷な労働環境だったせいだと聞いたことがある。
ケン・ローチと是枝監督、ふたりとも3年に一本ペースで、社会の隅の苦しんでいる人に取材した映画を作り続けている。世界の片隅を描くテーマはどこにもある。見る目があるかどうかだ。
家族は永遠ではない。一緒にいられるのは子供が巣立つまでの少しの間だ。一時一時が宝の時間だとおもう。
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