あんにんご

　新潟の細い谷筋の山間を訪ねた帰りに、農協の直売所に寄って、土地の作物や山菜を見に行きました。
　そこで目に止まったのが、「あんにんご」。それは、木に咲く花の小さな、まだふくらみかけてもいない花芽を、柔らかい茎の部分から折り取った、ものでした。
　どうやって使うんだろう？　香りを確かめると、強い芳香がします。どこかで嗅いだことがあるような、香り・・・。

　近所の人風の親父さんを見つけて、「ちょっと教えてください」とたずねてみました。
　
　「名前がついていないパックなんですけど、これはどうやって食べるんですか？」
　「ああ、それはあんにんご。塩漬けにして、酒の肴にすると、うまい。ご飯にのせて食べてもいい。」
　「あんにん、て、そういえば杏仁豆腐のような香りがするんですけど、それでですか？」
　「んだ、んだ。」

　小さな花芽が、小さなパックに２０本ほど入って８０円。香りがいいので、試してみることにしました。

　関越道で家に帰って、調べてみると、「あんにんご」は、塩漬けや天ぷらにするとのこと。東北で食べられるが、魚沼地方はとくに花芽を食べる。

　杏仁というから、杏子と関係があるのかと思ったら、ウワミズザクラの花芽らしい。香りが似ているから、杏仁の名前が使われた。

　ここでようやく、いろんな疑問がつながって、問題が見えてきた。
　私のサイト、ウワミズザクラ。
http://trace.kinokoyama.net/flower/3bara-ka/uwazumi-zakura.htm
　私のヤマレコ日記。杏子の種から杏仁豆腐を作る。
http://www.yamareco.com/modules/diary/990-detail-10110

　杏仁は、杏子の種子の白い胚乳（はいにゅう）のところ。その香りに、ウワミズザクラの花芽と実が、似ている匂いのせいで注目された様子。
　でも杏子もウワミズザクラも、同じバラ科だから、通じるところがあったのかも。

　さて、魚沼の「あんにんご」をどうするか。
　試しなので、テンプラにして見た。（写真）
　薄く衣をつけて、揚げて、頬張ってみると、なかなか繊細・上品な味わい。

　そして、酒の肴やご飯にいいというので、塩漬けも作ってみた。

　奥多摩でもウワミズザクラが５月上旬に花を咲かせるところがあるが、若い花芽を得るのは、今年はもう遅すぎるかもしれない。
　麓ではの残雪がやっと消えてきた魚沼で、もう、「あんにんご」の短い旬になっているのだから。

　

　

コメント

miee

RE: あんにんご
こんばんは。

私の親分は、あんにんごはビールに突っ込んで飲むと良いのだ！と良く言ってます。

私はビールは大好きですが、まだ試したことはありません

mantenmomo

RE: あんにんご
こんばんは

『しその穂』によく似てますね。
我が家はしその穂のテンプラが大好きで、毎年、『道の駅』で買ったりご近所でもらったりしてテンプラにして食べてます。

あんにんごのテンプラのお味は紫蘇の穂とは違うんでしょうね。

tanigawa

RE: あんにんご
　mantenmomoさん、なるほど姿はシソの穂に似てますね。
　私も、子どものころ、母が漬け込んだシソの穂を、よく食べさせられました。ちょっとごわごわして、あまり、子どもにはうけなかったと思います。
　香りはシソだけに良かった記憶あり。
　天ぷらですか。
　実が歯ごたえがあって、合いそうですね。

　あんにんご、は、味より不思議な香りですね。
　天ぷらでは、油であげているため、香りがソフトで、呑み込んでから口と鼻が、あんにんご、香りに包まれます。

tanigawa

RE: あんにんご
　bunacoさん、農協の直売所の親父さんも、酒にそのまま浸しておくと、酒にうまみと香りが移り、酒がうまくなると言ってました。

　今回は入手した量がわずかなので、天ぷらと塩漬けでしか試せません。

　それにしても、杏子の種子を割って（これがたいへん）その中身（胚乳）をとりだしたり、春の一瞬のウワミズザクラの花芽を摘んで香りをあじわったりと、人間はいろんな場所で、季節の楽しみを見いだしてきたんだなあ、と思いました。