(はじめに)
白馬岳とその周辺の地質、地形的なことをこれまで2つの章で説明してきましたが、この章では、白馬大池を中心とする、「白馬大池火山」について説明します。
白馬岳への主な登山ルートは、猿倉登山口から白馬大雪渓を登るルートの他、栂池までゴンドラとロープウエーを使って高度を稼ぎ、そこから登るルートがあります。
このルートの途中に、白馬乗鞍岳という小ピーク及び、白馬大池という高山湖があります。この付近が白馬大池火山の領域です。
白馬岳への主な登山ルートは、猿倉登山口から白馬大雪渓を登るルートの他、栂池までゴンドラとロープウエーを使って高度を稼ぎ、そこから登るルートがあります。
このルートの途中に、白馬乗鞍岳という小ピーク及び、白馬大池という高山湖があります。この付近が白馬大池火山の領域です。
1)白馬大池火山の活動史
ここでは、(文献1)に基づいて、白馬大池火山の活動史を見ていきます。
白馬大池火山の活動は、大きく分けて、約80〜50万年前の「旧期活動期」と、約20万年前以降の「新期活動期」に分かれます。
「旧期活動期」で出来た火山は、すでに大きく開析され、火山の原型はとどめておらず、噴火位置も不明ですが、白馬大池より東側の領域のあちこちに、その時期の溶岩が残存しています。
「新期活動期」では、正確な噴出地点は不明ですが、主に現在の白馬乗鞍岳の付近から溶岩が噴出した、と考えられています。また風吹大池付近(風吹岳)からも、7万年ほど前に噴火(溶岩ドーム形成)が起きたようです。
なお、「白馬大池火山」という名前がついていますが、白馬大池自体は火口ではなく、溶岩などによるせき止め湖です。
また新期活動期に火口から流れ出た溶岩流は、この山域の東側にかなり広く広がっており、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、栂池スキー場や、やや北東の風吹大池付近なども、この溶岩流で覆われています。
また、風吹大池自体も、火口跡ではなく、溶岩流によってできた、せき止め湖です。
なお、「白馬大池火山」に関する、さらに詳細な研究は、(文献2)に詳しく書いてあります。
白馬大池火山の活動は、大きく分けて、約80〜50万年前の「旧期活動期」と、約20万年前以降の「新期活動期」に分かれます。
「旧期活動期」で出来た火山は、すでに大きく開析され、火山の原型はとどめておらず、噴火位置も不明ですが、白馬大池より東側の領域のあちこちに、その時期の溶岩が残存しています。
「新期活動期」では、正確な噴出地点は不明ですが、主に現在の白馬乗鞍岳の付近から溶岩が噴出した、と考えられています。また風吹大池付近(風吹岳)からも、7万年ほど前に噴火(溶岩ドーム形成)が起きたようです。
なお、「白馬大池火山」という名前がついていますが、白馬大池自体は火口ではなく、溶岩などによるせき止め湖です。
また新期活動期に火口から流れ出た溶岩流は、この山域の東側にかなり広く広がっており、産総研「シームレス地質図v2」で確認すると、栂池スキー場や、やや北東の風吹大池付近なども、この溶岩流で覆われています。
また、風吹大池自体も、火口跡ではなく、溶岩流によってできた、せき止め湖です。
なお、「白馬大池火山」に関する、さらに詳細な研究は、(文献2)に詳しく書いてあります。
2)白馬乗鞍岳付近の地形的な特徴
白馬乗鞍岳を歩かれた方は解ると思いますが、この山は、見た目上は平坦そうな山頂部を持っていますが、歩いてみると、巨岩がゴロゴロして非常に歩きにくい場所です。
こういう、数mサイズの巨岩がゴロゴロと転がっている平坦な場所を、地形学用語では、「岩石原」と言います。他に、蓼科山の山頂部や、北海道 トムラウシ山の山頂付近も、同じような巨岩がごろごろした景観を作っています。
この巨岩は、氷期の寒冷な気候のもとで、溶岩層の間の割れ目に入った雪が、解けたり凍ったりすることを繰り返しつつ、どんどんと溶岩層を割っていき、巨岩の堆積状態になったものと考えられています。
また、こういう巨岩が、山頂部ではなく山の斜面にゴロゴロと転がっている状態は、地形学用語で「岩塊斜面」(がんかいしゃめん)と言い、日本アルプスや東北、北海道の山々の各地に存在します。
いずれも、氷期の寒冷な状況下でできた地形で、地形学用語でいう「周氷河地形」の一種です。(文献3、4)
こういう、数mサイズの巨岩がゴロゴロと転がっている平坦な場所を、地形学用語では、「岩石原」と言います。他に、蓼科山の山頂部や、北海道 トムラウシ山の山頂付近も、同じような巨岩がごろごろした景観を作っています。
この巨岩は、氷期の寒冷な気候のもとで、溶岩層の間の割れ目に入った雪が、解けたり凍ったりすることを繰り返しつつ、どんどんと溶岩層を割っていき、巨岩の堆積状態になったものと考えられています。
また、こういう巨岩が、山頂部ではなく山の斜面にゴロゴロと転がっている状態は、地形学用語で「岩塊斜面」(がんかいしゃめん)と言い、日本アルプスや東北、北海道の山々の各地に存在します。
いずれも、氷期の寒冷な状況下でできた地形で、地形学用語でいう「周氷河地形」の一種です。(文献3、4)
(参考文献)
(文献1)中野、竹内、吉川、長森、刈谷、奥村、田口
地域地質研究報告 金沢(10)第25号 NJ-53-5-4
「白馬岳地域の地質」のうち、「白馬大池火山噴出物」の項。
(独)産業技術総合研究所 地質調査総合センター 刊 (2002)
https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_10025_2002_D.pdf
(文献2)柵山(さくやま)
「白馬大池火山の地質」地質学雑誌、第86巻 p265-274(1980)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/86/4/86_4_265/_article/-char/ja/
(文献3)小畔(こあぜ)* 「山を読む」 岩波書店 刊 (1991)
*「あぜ」の漢字は、本当はもっと画角の多い難しい漢字だが、
パソコンでは出てこない(外字)なので、簡易体で表記。
(文献4)米倉、貝塚、野上、鎮西 編
「日本の地形 1 総説」のうち、5−3章「氷河地形・周氷河地形」
東京大学出版会 刊 (2001)
地域地質研究報告 金沢(10)第25号 NJ-53-5-4
「白馬岳地域の地質」のうち、「白馬大池火山噴出物」の項。
(独)産業技術総合研究所 地質調査総合センター 刊 (2002)
https://www.gsj.jp/data/50KGM/PDF/GSJ_MAP_G050_10025_2002_D.pdf
(文献2)柵山(さくやま)
「白馬大池火山の地質」地質学雑誌、第86巻 p265-274(1980)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/86/4/86_4_265/_article/-char/ja/
(文献3)小畔(こあぜ)* 「山を読む」 岩波書店 刊 (1991)
*「あぜ」の漢字は、本当はもっと画角の多い難しい漢字だが、
パソコンでは出てこない(外字)なので、簡易体で表記。
(文献4)米倉、貝塚、野上、鎮西 編
「日本の地形 1 総説」のうち、5−3章「氷河地形・周氷河地形」
東京大学出版会 刊 (2001)
産総研 地質調査総合センター 刊 (2002)
柵山 (1980)
(J-stage のサイトにつながる)
(J-stage のサイトにつながる)
このリンク先の、2−1章の文末には、第2部「北アルプス」の各章へのリンク、及び、「序章―1」へのリンク(序章―1には、本連載の各部へのリンクあり)を付けています。
第2部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
第2部の他の章や、他の部をご覧になりたい方は、どうぞご利用ください。
【書記事項】
初版リリース;2020年8月26日
△改訂1;文章見直し、一部加筆修正。
山のデータ追加。2−1章へのリンクを追加。
書記事項の項新設、記載。
△改訂1;文章見直し、一部加筆修正。
山のデータ追加。2−1章へのリンクを追加。
書記事項の項新設、記載。
お気に入りした人
人
拍手で応援
拍手した人
拍手
ベルクハイルさんの記事一覧
- 日本の山々の地質;第7部 東北地方の山々の地質;7−9章 奥羽山脈(3)奥羽山脈の非火山の山々、及び奥羽山脈の隆起について 10 更新日:2024年01月27日
- 日本の山々の地質;第7部 東北地方の山々の地質、7−8章 奥羽山脈(2) 奥羽山脈南半分の火山群 11 更新日:2024年01月15日
- 日本の山々の地質 第1部 四国地方の山々の地質、 1−10章 香川県の山々;讃岐山地、香川県の山々の地質と地形 19 更新日:2023年03月18日
※この記事はヤマレコの「ヤマノート」機能を利用して作られています。
どなたでも、山に関する知識や技術などのノウハウを簡単に残して共有できます。
ぜひご協力ください!
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する