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更新日:2020年10月10日 訪問者数:217
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日本の山々の地質;第4部 南アルプス、4−2章 南アルプスの地質概要
bergheil
南アルプスの地質構造区分図
1)(南アルプスの中央部の大部分);四万十帯(白亜紀、古第三紀の付加体)

2)(南アルプスの北西部、2つの帯状の地帯);三波川帯(より西側、高圧変成岩)と、秩父帯(より東側、ジュラ紀付加体)

3)(南アルプスの西の端、伊那谷に沿った帯状地帯);領家帯(領家変成岩と、領家花崗岩)

4)(南アルプス北部の楕円状の小区画);「甲斐駒・鳳凰花崗岩体」(新第三紀 中新世)

5)(南アルプスの東側にそって伸びる帯状地帯);巨摩山地、身延山地(主に玄武岩からなる地帯)


※ 産総研 「シームレス地質図」を元に、筆者加筆
 南アルプスの、個々の山の説明の前に、全体像のレビューとして、南アルプスの地質の概要を、この章では説明します。

  第3章で説明した中央アルプスは、山麓部を除くほとんどが花崗岩類(深成岩の一種)でできた、単純な地質構造でしたが、南アルプスは複数の地質体(帯)より構成された、やや複雑な地質構造を持っています。
 ただし、北アルプスのように、山々ごとに全く異なる地質でできている、ということはなく、以下の区分のうち、「ゾーン4」以外は、帯状の整然とした分布をしています。

南アルプスの地質構造は、以下のように、大きく分けて5つのゾーンに区分できます。
(1)ゾーン1;「四万十帯」
 「南アルプス」中央部から南部にかけては、地体(地帯)構造区分で言うと、「四万十帯(しまんとたい)の地質により構成されています。白根山脈や、赤石山脈(狭義)のほぼ全ての山が、この「四万十帯」の地質で出来ています。
 「四万十帯」とはなにか?というと、海洋プレートの沈み込み帯で形成された、いわゆる「付加体」型の地質です。

 この四万十帯を構成する地質(岩石)は、すべて堆積岩で、主に砂岩、泥岩でできており、そのほかに海洋起源の、チャート、石灰岩が主な構成要素です。

 「四万十帯」は、白亜紀(約145Ma〜約66Ma)から、古第三紀(約66Ma〜約23Ma)にかけての長い期間、海洋プレートが、現在の日本列島に相当する場所(当時は中国大陸の縁にあった)に沈み込んでいて、その際に、沈み込み帯に沿って形成された堆積層(付加体)です。

 「四万十帯」はその名前が示すように、四国の四万十川が名前の由来です。四万十帯は、西は九州南部(主に宮崎県、一部鹿児島県)から、四国南部(主に高知県)、紀伊半島南部、そしてこの南アルプスに分布しており、東西に約1000km続く地質体(地帯)です。
 さらにその東方延長は、いわゆるフォッサマグナ地帯を飛び越えて、関東山地にも一部、分布しています。(なお、関東平野の地下深くにも分布していると想定されています)。

 なお、南アルプスで、この四万十帯が分布するゾーンの東の境界は、南アルプスの内部を走っている、糸魚川―静岡境界線です。それよりも東側は、ゾーン5の「巨摩山地」、「身延山地」の地帯になります。(文献1)。
(2)ゾーン2;「秩父帯」、「三波川帯」
 北端は南アルプスの北にある入笠山(1955m)あたりから始まり、その付近から東西 約10〜15kmの幅で、南南西の方向へと細い帯状に延びる、2列の地質体(帯)があります。
 場所的には赤石山脈(狭義)の西側の、山麓から中腹にあたり、入笠山以外には目立った山は含まれていません。

 このゾーンは、西側が「三波川帯」と呼ばれる地帯で、高圧変成岩の一種である、結晶片岩類でできています。
 「三波川帯」の東側は、「秩父帯」と呼ばれる地帯で、ジュラ紀に形成された「付加体」(地質的には、砂岩、泥岩、石灰岩が主な構成要素)でできています。

「秩父帯」の東側は、ゾーン1の四万十帯が分布しており、その境界線は「仏像構造線」と呼ばれています。なお、仏像構造線は南アルプスにおいては、活断層ではありません。

 三波川帯、秩父帯、四万十帯は、日本列島の西側である「西南日本」をさらに中央構造線で2分したうちの一つである、「西南日本外帯」の主要構成地帯であり、四国地方では、東西方向に整然と並んだ、明瞭な帯状分布を示しています。

 この南アルプスでは、前述の四万十帯も含めて、走向が東北東―南南西方向へと向きが大きく変わっています。いずれにしろ、三波川帯、秩父帯とも、四国付近から、この南アルプス地域まで、四万十帯と並走している地帯です。(文献1)
(3)ゾーン3;「領家帯」
 (2)項で述べた三波川帯の分布域の西側に沿って、中央構造線がほぼ南北走向に走っており、地形的にも構造谷として直線状の谷状地形を示しています。

 そのさらに西側には、伊那山脈が、中央構造線と並行して直線的に延びています。伊那山脈は、地体構造区分上は(中央アルプスと同じく)、「領家帯」に属します。

 現在の日本列島のうち、糸静線より西の「西南日本」は、さらに中央構造線により二分され、中央構造線より北側(アジア大陸側)が、「西南日本内帯」、南側(太平洋側)が「西南日本外帯」と呼ばれます。

 「領家帯」は、「西南日本内帯」のうち最も外側(西南日本外帯とは、中央構造線で接する)にある地質帯であり、構成するものは、「領家変成岩類」と呼ばれる高温型変成岩類(片麻岩など)と、「領家花崗岩類」と呼ばれる花崗岩類です。

 領家変成岩類の源岩は、ジュラ紀の付加体(丹波・美濃帯)と推定されており、(熱)変成時期は白亜紀です。また領家花崗岩類は、白亜紀末に、地下深くにてマグマだまりのマグマが冷えて固化してできた岩石です。

 伊那山脈の場合、山脈の本体は、ほとんどが領家花崗岩類でできています。領家変成岩類は、伊那谷に近い山麓部に、部分的に露出しています。(文献1)
(4)ゾーン4;「甲斐駒・鳳凰花崗岩体」
 南アルプスのうち、甲斐駒山脈の一部、甲斐駒ヶ岳から鳳凰三山にかけては、南北 約20km、東西幅 約10kmの長楕円形状に、花崗岩類(花崗岩、花崗閃緑岩)が分布しています。
 これは地質学的には「甲斐駒・鳳凰花崗岩体」と呼ばれており(文献2)、上記のゾーン1、2,3までの地質の帯状構造とは、不調和的に現れています。

 この花崗岩体の形成時期は、新第三紀 中新世中期(約16Ma〜約12Ma)であり、上記(1)〜(3)よりも相当新しい時代に形成された地質体です。

 この時期はちょうど、日本海拡大/日本列島移動イベント(約20Ma〜約15Ma)とほぼ重なることから、この大きなイベント(地質学的事変)と関連して、地下でマグマが生じて四万十帯の地層に貫入し、その後、冷えて花崗岩類となった、と考えられています(文献2)。

 なお、甲府盆地を挟んだ北東側の、関東山地の西部にも、同時期の花崗岩体(地質学的には「甲府花崗岩体」、もしくは「昇仙峡型花崗岩体」と呼ばれている;(文献2))があり、金峰山、瑞牆山などを形成しています。これも「甲斐駒・鳳凰花崗岩体」と同時期に形成されたものです。
(5)ゾーン5;巨摩山地、身延山地
 日本列島を南北に縦断し、「南西日本」と「東北日本」という2つの大区分に分割している地質境界線として、「糸魚川―静岡構造線」があります(以下、「糸静線」と略します)。
 糸静線の地質学的な定義は、「西南日本」の帯状地質構造が途切れる、その東端部です。またこの一部は断層(系)でもあります(文献3)。

 糸静線は、中部地方を南北に縦断しており、北端は新潟県の糸魚川市(姫川河口付近)から始まり、北アルプスの東の山麓をとおり、松本盆地へ続きます。その先は諏訪湖付近で南東方向に走向を変え、JR中央東線沿いに南アルプス北部の山麓部を走っています。しかし、その先は、南アルプスの内部に入り、また南北走向へと方向を変え、最終的には安部川の流路に沿った形で、静岡市付近へ至っています。

 このように、南アルプスでは糸静線がその内側を走っている部分があり、糸静線より東側の山地は、それ以外の部分と地質構造が異なります。
 具体的には、甲府盆地に面した巨摩山地と呼ばれる一帯、およびその南側に細長く伸びる身延山地と呼ばれる一帯が、この「ゾーン5」になります。

 地質的には、主に海洋性の玄武岩質溶岩および堆積岩(主に泥岩)からなっており、約1500万年以降に起こった、伊豆―小笠原弧の日本列島への衝突事件と関係した地質(体)と考えられています。
(参考文献)
文献1)
 「日本地方地質誌 第5巻 中部地方」日本地質学会 編 (2006)
     のうち、
    総論 第1章 中部地方の基本枠組を構成する付加体の帯状構造、
    各論 第6章 領家変成岩帯、 第7章 三波川変成帯、
       第8章 秩父帯と四万十帯、 第16章 南部フォッサマグナ
    の各章。

文献2)
   「日本地方地質誌 第5巻 中部地方」日本地質学会 編 (2006)
   のうち、第15章「甲府付近の深成岩と、東濃・三河の中新統」の項。

文献3)
    ウイキペディア 「糸魚川静岡構造線」の項、2020-10月 閲覧
  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B3%B8%E9%AD%9A%E5%B7%9D%E9%9D%99%E5%B2%A1%E6%A7%8B%E9%80%A0%E7%B7%9A

      
注釈) 本文中にある、“ Ma ” は、百万年前を意味する単位 
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