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更新日:2020年10月17日 訪問者数:195
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日本の山々の地質;第4部 南アルプス、4−3章 南アルプスの隆起について
bergheil
富士山山頂から望む南アルプス北部
・左側の山並みが南アルプス北部(甲斐駒ヶ岳、仙丈ケ岳など)。

・中央部は甲府盆地(もやに覆われている)

甲府盆地からもやの海を突き抜けて、南アルプス北部の山々が高くそびえているのが良く解る。

なお、右手奥は八ヶ岳、地平線上には北アルプスの山並みがかすかに見えている。

(筆者撮影)
富士山山頂から望む、南アルプス中核部
・中央に並ぶ山並みが南アルプスの中核部
(古い写真で、解像度が悪いため、山の同定が難しい)

・手前は、標高2000m弱の、天守山地。
 南アルプスは、天守山地よりもさらに大きく隆起していることが解る。

(筆者撮影)
日本列島中央部の上下変動量(壇原論文)
・赤色部分が隆起、青色部分が沈降、単位はmm/年

・南アルプス、中央アルプス付近が最大+4mmの隆起であることを示している。

・データは、1885年〜1965年までの70年間の水準点の上下変動値から。

出典;壇原 毅 「日本における最近70年間の総括的上下変動」 測地学会誌、第17巻 p100-106 (1971) のうち、fig.4
(1)日本アルプス、それぞれの隆起
 「日本アルプス」を構成する、北アルプス、中央アルプス、南アルプスの3つの山地は、いずれも新第三紀末から第四紀にかけて隆起した、比較的新しい山地です。

 このうち北アルプスは、第2部の始めで説明したように、断層によって持ち上げられた山地ではなく、地下の比較的浅い場所へのマグマの貫入によって浮力が生じて上昇したのち、中部地方に働いている広域的な東西方向の圧縮応力によって、座屈変形を起こして隆起したもの、と考えられています。

 また中央アルプスは、第3部の始めで説明したように、東側にある伊那谷断層系(西上がりの逆断層)の活動により隆起した、逆断層山地です(加えて、西側の木曽谷側の断層系の運動も関与)。これも中部地方に働いている広域的な東西方向の圧縮応力に起因するものです。

 さて、南アルプスはどういった隆起メカニズムで山地を形成したのでしょうか?
(2)南アルプスの隆起メカニズム
 南アルプスは、(文献1)によると、中央アルプスの隆起メカニズムと類似しており、糸魚川―静岡構造線(以下「糸静線」と略)が、西側隆起の逆断層として活動し、その西側にあたる南アルプス主要部が隆起して形成された、と考えられています。

 その際、糸静線は、地殻深部(マントルとの境界=モホ面)まで届く深い断層として活動し、南アルプス直下の地殻は全体として上に持ち上がり、その下のマントル上部も持ち上がっていると、重力異常の測定(文献2)によって、推定されています。
(3)南アルプスの隆起開始時期について
 南アルプスの隆起はいつごろから始まったのか? については、あまり詳しく解っていません。

 南アルプスの東側、富士川周辺の堆積層中の礫層や、南アルプスの西側、伊那盆地の堆積層中の礫層の研究からは、早くても 新第三紀 鮮新世(約530万年前〜約180万年前;注1))の末からと考えられています。
 また、静岡〜浜松付近の遠州平野に南アルプス起源の大量の砂礫が供給されだしたのが、約200万年前からということが判明しています。
 ということで、本格的な南アルプスの隆起は、第四紀初期(約180万年前〜 ;注1)と推定されます(文献3)。

 なお隆起量は、南アルプス全体で見ると、糸静線に近い東側の方が西側よりも隆起量が大きく、また南北方向で見ると、北側のほうが、南側よりも隆起量が大きい傾向にあります(文献3)。

ーーー
注1)(文献3)は、2006年に出版された書籍ですが、2009年の「第四紀」の定義変更の前であるので、「新第三紀 鮮新世」と「第四紀」との境は、約180万年前とされていました。ということでその点を考慮して記載しています。 なお、2009年の定義変更以降、「新第三紀 鮮新世」と「第四紀」との境は、259万年前となりました。
(4)現在の南アルプスの動き
 ところで、南アルプスは現在でも隆起しているのでしょうか?

 (文献4)によると、南アルプス付近では、約70年間の水準点の垂直変動量に基づき、約+4mm/年という大きな値(隆起量)が得られています。

 また近年では、GPSによる測定も行われており、(文献5)には、日本全体のGPSによる垂直変位度合いの測定、開析結果(1996-2003年までの7年間)が示されています。ただし、南アルプスを含む中部地方は沈降傾向という結果となっています。7年間という短期間の測定結果なので、まだ精度が十分でないものと思われます。
 
 一方、南アルプスを隆起させた主役の一つである糸静線のうち、甲斐駒ヶ岳、鳳凰三山の山麓では、糸静線は活断層系(釜無山断層群、白州断層、鳳凰山断層)として活動しています。

 (文献6)によると、小淵沢に近い南アルプス山麓部に、糸静線系活断層の露頭があり、そこでの調査によると、活動センスは主に左横ずれ断層ですが、縦ずれ(南アルプス側が隆起側)の活動センスもあり、左横ずれ:縦ずれの比率は約15:1と見積もられています。
 また左横ずれの平均変位速度は、1.5m/千年、と見積もられています。

 このことから見ると、少なくとも南アルプス北部では現在でも、糸静線活断層系の活動により、南アルプス側が隆起する活動が続いていると考えられます。

 なお、糸静線活断層系については、(文献7)に、主に地震活動の観点から、構成する各断層の名称、活動センス、最近の動きなど、詳細が説明されています(ここでは内容説明は省略しますが、興味のある方はご覧ください)。
(参考文献)
 文献1)米倉、貝塚、野上、鎮西 編
     「日本の地形 第1巻 総説」 東京大学出版会 刊 (2001)
      のうち、4-4章 「地殻変動の役割」の項。

 文献2)Yamamoto, A., Nozaki, K., Fukao, Y., Furumoto, M., Shich, R.,
      and Ezawa, T.
  “ Gravity survey in the central ranges, Honsyu, Japan “
   Jour. Phys. Earth , Vol. 30 , P201-243 (1982)

 文献3)町田、松田、海津、小泉 編
     「日本の地形 第5巻 中部」 東京大学出版会 刊(2006)
      のうち、4−1章「赤石山地」の項。

 文献4)壇原
     「日本における最近70年間の総括的上下変動」
      測地学会誌、 第17巻 p100-108 (1971)
     (※ なおこの文献のデータ(fig.4)は、いろいろな地理学、地質学
        の文献、書籍に多数引用されている)

 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sokuchi1954/17/3/17_3_100/_pdf

 文献5)村上、小沢
     「GPS連続測定による日本列島上下地殻変動とその意義」
      地震(誌) 、第2巻 p209-231 (2004)
        
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/zisin1948/57/2/57_2_209/_pdf

 文献6)「日本地方地質誌 第5巻 中部地方」
      日本地質学会 編  朝倉書店 刊 (2006)
       のうち、
      19―7章 「活断層としての糸魚川―静岡構造線」の項。

 文献7)地震調査研究推進本部 地震調査委員 会 作成
      「糸魚川−静岡構造線断層帯の長期評価(第二版)」(2017)

  https://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/41_42_44_itoigawa-shizuoka_2.pdf
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