辰野・横川渓谷
- GPS
- --:--
- 距離
- 6.1km
- 登り
- 103m
- 下り
- 103m
過去天気図(気象庁) | 2007年06月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
感想
横川渓谷
夏の間は暑い陽射しを避けて渓流に沿った涼しい道を歩こうと言うことで、辰野町の『蛇石(じゃいし)』『三級の滝』を見るべく横川渓谷を訪れる。
辰野町に近い塩尻の善知鳥峠に車を止め、峠の歴史と名前の由来を教わる。『善知鳥』は『ウトウ』で、ネットに由ると「『チドリ目ウミスズメ科に属する海鳥。体長30cmほどの大きさで背面は黒褐色、くちばしは橙色,繁殖期には顔に“白髪”があらわれると言う特徴がある」とある。
それはさておいて『善知鳥』と書いてウトウと読める人は多くはないだろうと思う。そして『善知鳥』と言えば「生前鳥獣を殺傷した罪で成仏できない猟師の霊が、かつて子鳥と親鳥を引き離したために、死後わが子に近づくこともできず、地獄の苦しみを訴えて、僧に回向を求める」という内容の能『善知鳥』でも知られ、『鵜飼』『阿漕』とともに『三卑賤』と呼ばれているのだそうだ。
R153は三州街道と呼ばれる。三州とは信州,遠州,三州(三河)で、善知鳥峠はこれらの国を結ぶ峠だった。更に遡れば、都と奥州を結ぶ東山道の重要な峠であった。そしてまた、峠は天竜川に合して太平洋へ下る水と、信濃川に合して日本海へ注ぐ水の分水嶺でもある。
そのR153の信濃川島駅入り口の交差点を右折して県道201に入る。横川川に沿って20分余り走ると集落を抜け、山道に入って横川ダムに到達する。ダムのバックウォーターから更に数分で『蛇石』と呼ばれる天然記念物の珍しい石のあるキャンプ場に着く。その駐車場の入り口には天狗の棲家のような巨大なトチノ木があった。
天然記念物の『蛇石』説明書き,
「辰野町川島,横川川の渓流の中に横たわる大蛇のような形をした岩脈を、昔から『蛇石』と呼んでいる。これは。水成岩である黒色粘板岩の成層面に沿って、火成岩である閃緑岩が併入して岩床を形成し、この岩床をペグマタイト質の石英脈が、規則正しく百数十条貫入しているものである。
蛇石は大小2脈が平行して走っており、大きい方は長さ87m,厚さ42cm,小さい方は長さ17m,厚さ30cm,この両脈に貫入している石英脈の幅は約7cmで2つの石英脈の間隔は60cmほどである。岩床の閃緑岩は緑青色を帯びているが、蛇石の部分は表面が褐色である。
白い石英脈を伴うこの梯状岩が流水の浸食に、あるところは高く、あるところは低く、川の流水のまにまに見え隠れする様は、誠に蛇腹を思わしめるものがある。
このような梯子状岩は、規模の上から言っても、成因から見ても世界的にあまり類例のないもので、岩石学や鉱床学上,甚だ貴重なものであるため、国の天然記念物に指定されている」
蛇石のあるキャンプ場のところで林道が閉鎖されていて車が入れないので、ここから歩いて三級の滝に向かう。歩けば手も顔も緑色に染まる瑞々しい若葉のトンネル・・。
サルナシの花が地面に無数に落ちているのを見つけた。見上げるとはるか高い枝に絡む蔓と白い花が見える。
林道を歩道の端に溜まった落ち葉の堆積を掘り返した跡が無数に見られる。この地域は鹿よりもイノシシの方が多いようだ。
右側に1本の沢が入っているその下に黒いアゲハ蝶が群れていた。アゲハだけでなく色んな蝶がある物体に群がっていた。
改めてその物体を見直すとはそれはイノシシの頭の骨だった。骨にはまだ頭皮や毛がついており、ひっくり返すとシデ虫がいっぱい出てきて目下死体処理中といったところ。持ち帰るにはいささか生々し過ぎた。
イノシシはこの沢の上部から転落して、この場所で重症を負って死んだものと思われた。骨があったのはこの沢の堰堤の下。かなりの急勾配で上部にも砂防堰堤が連打されている。多分雪崩と一緒に落ちたのだろう。
以前,堰堤の下で死んでいるウリボウを見たことがある。鹿の骨はよく見かけるし、去年は立派な角を拾ったりもしたが、イノシシの成獣の生々しいのは初めてだ。
1時間で三級の滝の入り口に着く。直進する林道は鎖を張って閉鎖されており『三級の滝へ,0.9km』の標識に従って橋を渡る。去年まで車が入れた林道は決壊したままだ。決壊した林道のわずかに残った縁を歩いて三級の滝の入り口に着く。枯れ枝にぷよぷよのキクラゲを見つけてゲット!
今回はここまで車で入り、ここから滝までの山道を歩くのが目的だったのだが、林道歩きの森林浴にみな満足気で、滝まで行こうと言う声は上がらず、弁当を食べてゆっくりしようと言うことになった。
横川渓谷のハイキングは渓流で竿を振る絶好の機会だと思っていたのに、前日までバタバタしていてそのことをすっかり忘れていた。好ポイントが随所に見られる横川川の渓相は竿を忘れた目にとってあまりにも毒だ。返す返すも残念至極!
帰路,何の雛だろうか,小さな潅木の細い枝に止まって微動だにせず向こうを向いている。本人は木にでもなったつもりなんだろうか・・。その雛鳥ははじめキセキレイの雛ではないかと思ったが、場所が違うような気がした。前に廻って写真を撮ろうとすると、二声ほど鳴いてポンと飛び降り、そのまま草むらに隠れてしまった。雛鳥が渡び下りたのは、目の前のほんのちゃぶ台ほどの広さの草丈もそれほどない草むらなのに、いくら探してもそれっきり見つからなかった。
ちょうどその時,その場所から20mほど下った場所でKさんがオオルリ♂の姿を捉らえていた。しきりに囀っているらしいが、例の理由で私には聴こえない。聴こえないが姿はしっかり見た。オオルリにしてはずいぶん大きな固体で、ヒヨドリではないかと訝ったほどだ。
先ほどの雛が二声ほど鳴いて叢に隠れたことと、このオオルリの囀りと、ひょっとしたら関連があるのかもしれない。
『訳があってボクちょっと移動するから,あとで来て!』と言う合図・・・? 二声と言うのが移動の距離を知らせる・・・? などと考えてみる。
この雛にとって生き延びる唯一の道は、捕食者に見つからないように隠れながら親を呼び、餌を与えてもらうことであろう。
彼らの『じっとして隠れる』と言う能力は『生死』を分けるものであるだけにスゴイ。捕食者達は人間ほどに色彩を見分けれ視力を持たないものが多いので、草木に同化してじっと動かなければ容易に見つけることは出来ないものらしい。
この雛だけでなく、保護色や擬態する生き物達にとっては、動かないことが最大の能力であり、生存の条件なのだろう。例えそれが絶望的な確率であっても、そこに巣があって直接巣に返すことができるような場合を除いて、人は手を貸すべきではないと考える。
また小さな獣の頭の骨を見つけた。大きなネズミか小型のテン,イタチの類かわからないが持ち帰る。今日は骨に縁のある。ここまできれいになっていればイノシシの頭骨も持って帰りたかったのだが・・・。
それにしても色んなものに出会った日だ。
附 謡曲・善知鳥
北国の海辺で猟師に捕らえられた雛鳥を追い求めて飛んできた親鳥は、険しい山々,激しい吹雪に力尽き、この地に果てた。土地の人はその珍鳥が善知鳥と知って手厚くと弔い、この地を『うとう山』と呼ぶようになったと言う。
謡曲ではそのあと,善知鳥は化鳥となって猟師をさいなむのである。以下,能・謡曲『善知鳥』のあらすじ。
『諸国一見の僧が陸奥の外の浜に行く途中、越中・立山に立ち寄る。山上の地獄さながらの有様を見て、その恐ろしさにおののきつつ下山すると、麓で1人の老人に出会う。
老人は「陸奥へ行くのであれば、去年の秋に死んだ外の浜の猟師の家を訪ねて、蓑笠を手向けるよう伝えてほしい」と頼む。そして証拠にと、老人は着ていた麻衣の片袖を解いて渡し、僧が立ち去るあとを見送りつつ姿を消す。
僧は外の浜の猟師の家を訪ね、妻子に老人の伝言を語る。妻は驚きつつも亡夫の形見の衣を取り出し、僧が預かった片袖を合わせてみるとぴたりと合う。
やがて僧が蓑と笠を手向けて回向していると、猟師の霊が現れる。亡霊は、後世の報いも忘れて殺生に明け暮れ過ごした在りし日を語り、諸鳥の中でも親子の愛情が深いと言われる善知鳥を殺した罪を懺悔する。
冥土で化鳥となった善知鳥に追いかけられ地獄の責め苦を受ける様を見せ、どうか自分を助けてほしいと僧に弔いを頼みつつ亡霊は消え失せる』と言うもの
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