取立山から赤兎山
- GPS
- 56:00
- 距離
- 22.8km
- 登り
- 1,875m
- 下り
- 1,989m
コースタイム
天候 | 雨、曇り |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
|
写真
感想
春、白山に登ると牛首川を隔て西に春とはいえ尾根の上部が白く輝いている一六〇〇メートル程の山並みが遠望できる。
息子が大きくなって荷物を持てるようになれば、一緒に雪の残っている山を縦走しよう、その時はこの尾根から白山を見ながら幾日か歩いてみたいと願ってきた。長男が小学六年になったので、五月の連休に計画を実行することにした、まだ人の気配のない春の尾根を雪の上に地図を広げ、これから歩くルートを二人で話をしながら山を歩く、なんて爽快だろう。
四月二七日
朝一番の電車で野洲駅を出発、福井から勝山まで電車を乗り継ぎ、勝山駅からはタクシーで谷トンネルの手前に十時三十分に着いた、周辺はガスの中、今年は雪が多く道路には雪が残っている。
スパッツをつけいよいよ登山開始である、道路横の階段を登り山道に出る。歩き出すとすぐに雨が降ってきた、山全体はガスが出て見通しはきかない山道も残雪に隠れているので雪の多く残っている谷筋を選んで登る。
春の雪は比較的堅く歩きやすい、尾根に近づくに従って雨と風が強くなってきた、一時間ほど歩き護摩堂山の頂上手前でブナの大木の横に雪の穴を見つけ風を避け昼にする。
護摩堂山から取立山の避難小屋近くまでは、ずっと尾根を歩く。長年の思いとはうらはらに周囲は真っ白なガスの中、厳しい山となった、風が強いとき、子供は飛ばされそうになる、雨と風がさらに強くなってきた、二人でピッケルにしがみついて風が通りすぎるのを待ち風が緩んだ時にまたすすむ。こんなことを幾度か繰り返し一時間三十分かって避難小屋を見つける、小屋の屋根は出ていたが入口は雪でふさがっていた窓から中に入ったのが十四時二十分、小屋の中は薄暗い土間を真ん中に板の間が周囲を取り囲んでいる。
二人だけなので板の間の真ん中にシートを広げ温かいスープを作り飲む、体が温まるとやっと一息ついた、外は変らず風雨が強く小屋をたたいている、春の山は時として荒々しい顔になる、小学校六年の子供にとって今日の天気はきついなと思いながら歩いてきた、一日風と雨に打たれ体が冷え食欲がない、少し心配だ。明日からの行程を地図で確認し外が暗くなったらすぐに寝袋に入る。夜中鼠がいるのかごそごそ音がする、大事な明日からの食べ物だから食料を梁からつるす。
四月二八日
次の朝も風雨が強く吹いている、避難小屋を出ようか迷っていたが天気は少しずつ回復に向かっているような気がした。一晩寝たら淳一も元気が戻ってきた様子。今日はここから尾根に出て天気が回復しなければ引返すつもりで小屋を出発した。
外に出ると少し明るくなっていたが歩き出したら再び雨が降ってきた。
迷っていることが伝わったのか、淳一の「頑張って歩こう」の一言で再び尾根に登りだす。二〇分ほど登ると尾根に出た。尾根の東側には雪が多く残っていて、白一色の荒涼たる乳白色の風景である、唯一南西側に熊笹が所々残雪を割って葉を出しているのが春の山を思わせる。
風は相変わらず強いが雨は小降りになり視界も少し広がってきた、地図と磁石でルートの確認をしながら鉢伏山を目指す。鉢伏山の下で油断をした、息子が足を滑らしそのまま谷に滑り出した、すぐに斜面で止まったがピッケルの使い方を練習していなかった、急な斜面ではザイルを結んでおこう。
このあたりはブナの大木が多い、標高が高くなり雪も増えてきた、ブナの幹周辺は雪が解けて大きな穴が開いている、根元の大きな穴に入り昼にする、視界も次第に良くなって気分的に余裕が出てきた、この縦走路で最も高い大長山一六七一mの登りにかかる、大長山の最後の登りは熊笹の中、急斜面を三〇分かけて登りきる、頂上は真っ白である。
大長山は何年か前に白山から三ノ峰を経由して春に縦走したことがある、その時あった航空標識用の櫓は雪の下になっているのか確認できない。ここから白山まで牛首川を隔て遮るものがない、白山から別山に至る稜線には雲が残っている。
誰もいない真っ白な頂上でこの景色を見ながら夏に家族で登った白山の話をする、昨日からここまで厳しい状況だったが視界が開けてきたこともあり気持ちに余裕が出てきた。
いったん避難小屋にむかうが雪で小屋に入ることが出来なかった、一四時三五分、時間もまだ早いので鳩ヶ湯に下りながら途中でテントを張る事にした。赤兎山から最初は急な下りであったがすぐに広いブナの林に入った、経ヶ岳に続く尾根が次第に高くなる、鳩ヶ湯までは初めて歩くので地形を確認しながら、たんどう谷に下る支谷に入る。
斜面は雪の重みで曲がった木の枝と熊笹に乗った雪が崩れ雪と一緒に谷に滑っていく、そんなことを繰り返しているうちに谷の底に出た、どこから尾根に戻ろうかと考えながら下っていたが斜面のトラバースも難しいので雪がつまった谷の底を下る。たんどう谷の流れが見えるところまで下ったが急な岩場と雪渓にクレバスがでてきた、下部で滝に出た。滝の右岸に残っていたスノーブリッジをたどりうまく滝の下に出たのでたんどう谷の右岸に出ることが出来た、次はたんどう谷左岸の夏ルートに入るため上流に向かい渡渉できそうなところまで雪の斜面をへつる事にした。
たんどう谷は雪解けの水量が多くゴーゴーと渦巻いて流れている、雪が谷を埋めているところが見えたが不安定な雪渓の急斜面の通過は足場が悪く谷の濁流を見ながらのハードなトラバースだった、三十分ほどだったが緊張した時間であった。ゴーゴーと流れる谷の音を聞きながら左岸につながる雪渓を渡り夏ルートを探す。 少々疲れてはいたがいいテント場も見つからないので下っていたが薄暗くなってきた、林道に出たのが十七時四十分、すこし暗くなってきた。
今日はよく歩いた一日だった、淳一もよく頑張って歩いた、鳩が湯鉱泉に着いたのが十八時二十分、小屋を目の前にして泊めてもらおうと訪ねた。小屋はまだ営業していない様子だったが、小屋の人に声を掛けると泊めてもられえることになった、それに夕食も出してもらった、感謝の一言である。風呂に入りビールを飲んだら今日のつかれがどっと出た。
次の日、この時期はバスが運行していないという事でバスが走っているところまで送ってもらう。子供ずれで今の時期に赤兎山を越えて来る人もいないのだろう、ずいぶん親切な計らいを受けたと思う。
爽快な登山とはいかなかったが充実した魅力ある奥越の縦走であった、息子にはハードな春の山だったと思うが何か心に残ることがあることを祈ります。
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