平ヶ岳ーススヶ峰・至仏山BC 夜明けのクマと大斜面滑走
- GPS
- 80:00
- 距離
- 39.3km
- 登り
- 2,231m
- 下り
- 2,242m
コースタイム
- 山行
- 0:350
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 0:00
- 山行
- 0:620
- 休憩
- 0:100
- 合計
- 0:00
天候 | 2017/5/3 〜 5/5 ほぼ晴れ〜快晴無風の山日和。 日中は半袖Tシャツ1枚ですが、明け方は両日ともテントの外張りに霜が付く寒さでした。 |
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過去天気図(気象庁) | 2017年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
JR上越線 水上行 新前橋06:32 - 沼田07:08 ¥583 関越交通 鎌田線 沼田07:20 - 鳩待峠行バス連絡所08:43 ¥2,050 関越交通 乗合バス 鳩待峠行バス連絡所08:55 - 鳩待峠09:30 ¥980 --- 山中2泊3日 --- ※5/5 鳩待山荘泊。 片品観光タクシー 鳩待峠行バス連絡所08:40 - 戸倉第一駐車場09:15 ¥980 高崎駅まで同室だった山スキーヤーの自家用車に乗せて戴きました。感謝。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
尾瀬ヶ原から北へ延びる上越国境稜線を平ガ岳まで往復する、残雪期のバリエーションです。[ ] 内のGPS座標を電子国土Webにコピペで地図表示できます。http://maps.gsi.go.jp >鳩待峠〜山の鼻(尾瀬ヶ原、標高1410m) 一般登山道。5/3入山時は十分雪があったのでシール歩行で楽ちん。5/5下山時には木橋と木の枝が露出し始めていて、途中で一回板を外しました。 >山の鼻〜猫又川二俣 [36.934474,139.179665] シール歩行。猫又川の右岸に終始し、明るい疎林で平坦な地形。出だしの尾瀬ヶ原は溝や穴だらけですが終盤落ち着きます。途中に小さな高巻きが一箇所あり。 >猫又川二俣〜等高線1760m [36.954745,139.185233] 〜JP シール歩行。猫又川が左右の沢に分岐する二俣にかかっていたスノーブリッジ(5/3時点の話)からその中間尾根に取り付きました。等高線1640mの西面には崩壊地があり近寄らないこと。等高線1760mより大白沢山の南西斜面をトラバースしてJPへ。JPは片品村とみなかみ町、新潟県の境に位置するピークで標高1910m。 >JP〜白沢山 〜平ヶ岳最高点2141m シール歩行。稜線歩きで前半は東側に雪庇が発達、クラックが入り出しており注意。白沢山までは途中西側の栂林に入ったり、雪庇自体が波のようにうねっている箇所あり。白沢山を下りきった後半は広大な緩斜面で、平ヶ岳直下は中斜面。 >平ヶ岳最高点2141m〜白沢山〜JP 滑走+担ぎ。白沢山の登り返し地点までは小ピークを巻くことで板を担ぐ事なく滑走でき(多少スケーティングあり)その先は担いで履いての繰り返し。平ヶ岳からの滑りだしが最高。 >JP〜ススヶ峰〜1800m平坦地 [36.947234,139.167681] 〜 猫又左俣沢の二俣 [36.938024,139.177830] JPからススヶ峰山頂へは急登あり。その先は出だしに少し手漕ぎがあるものの、終始滑走できました。1800m平坦地は稜線から猫又左俣沢へ至る尾根の下降開始地点なので、見逃さないこと。尾根は末端のみ急斜面で、他は緩斜面〜中斜面が続きます。下部のブナ林は波状雪で凸凹あり。 >猫又左俣沢の二俣〜猫又川二俣〜山の鼻 雪たっぷりの広い谷をひたすらシール歩行します。ここでバテました。 >山ノ鼻〜至仏山往復 一般登山道。足跡の凸凹で広く荒れた急登。高天ヶ原から先は木道が露出しているため担ぎます。滑走は北尾根を使ってムジナ沢へ(5/5山頂から直には滑走不可)。 <幕営の適地> 猫又川二俣の中間尾根 [36.949978,139.183624] にワル沢の水を確保できる平坦地があります。次にJP頂上付近の栂の疎林 [36.963540,139.181585] もテント適地で数張あり。自分はそこに張りました。その他多くの入山者が猫又川二俣の先の左俣沢からススヶ峰へ登り(本レコの逆ルート)途中に張っている模様。 |
その他周辺情報 | 鳩待山荘は原則要予約。 |
写真
感想
その昔Rossignolが出してたフリートレックというショートスキーの後継板。昨年末に上州武尊と川場で試走した時、残雪期に兼用靴なら行けるかもと思った。奥地や秘境が好きな性分なので、平ヶ岳は前から気になっていた山。そこで電車&バス利用テント2泊の行程を組んで、GWは初めての単独スキーツアーに挑戦してみることにした。
仕事を終えてスキーを括りつけたザックを背負って、そのまま埼京線で赤羽に向かう。満員電車では周囲の視線が痛い。20kgの重りが両肩に食い込む。迷わずスワローあかぎの指定席特急券を買った。1時間半座れて1000円は良心的だと思う。
翌朝、上越線始発で沼田駅へ。鳩待峠に上がると雪の壁が高い。たっぷりの残雪に安心して板を履いて滑り出すが、沢は割れていて夏道は登り返しが疲れる。途中でシール歩行に切り替えて山ノ鼻を通過、雪原をひたすら北へ行く。最初波状に一面凸凹していた残雪も、上流に進むにつれて落ち着いてきた。尾瀬ヶ原はもう雪解けが近い。
猫又川は本当に静かな谷だ。ただ唯一、雪面にしっかり残るトレースがGWであることを物語っていた。二俣でスノーブリッジを渡り中間尾根に取り付いても、無数の足跡とシートラが先へと続いている。それらを当てにしてこの山域に入るのは論外だが、それでも人の痕跡を見つけると有難く感じる。ワル沢の水が取れる尾根上の平坦地にはテントが3張あった。もう少し登ることにし、途中から大白沢山の岩壁から派生する南西尾根に乗って広い雪斜面をトラバースする。斜陽が照らし、まばらに生える栂の大木と至仏山、ススヶ峰の風情が素晴らしい。いよいよ奥地に来た。会津駒ケ岳を正面に望む平坦地を整地し、3シーズン用のテントを張った。中は冷えたがサーマレストとウイスキーが効果を発揮し、21時前には眠りに落ちた。
翌朝3時15分。
仕事の夢を見た。ゆっくり目を開けてみる。
恐らく空が白みかけており、テント内の様子も薄っすら確認できる。
まばたきする時にまつ毛がシュラフカバーをこする音。そして…ズ, ズ, ズズ...
耳元で何かかじるような音がする。何だ?
最初に閃いたのは、ネズミがテント内の食料を齧っていることだった。
先月旅行中、某国の安宿で痛い目にあったばかりだからだ。
だがネズミがテントの前室ジッパーを開けて、さらに本体の二重ジッパーまで突破して
この氷点下の中、入ってこれるだろうか。
次の瞬間、全身の毛が逆立つ出来事が起きた。
ググッ…ググッ……グググッ…ググッ…
頭の真後ろから、重くゆっくりとした足音。雪はカチカチにクラストしている。
同時に足元からも
ググッ……グググッ…グッ…
それは、人間より大きなサイズの忍び足が
大粒のざら目雪に食い込む時に生じる、鈍い音だった。
鼻息のような音もする。
身体は金縛りにあってしまい、動かない。
2頭はその間、テントの周囲をぐるぐる徘徊し始めた。
恐怖が頭を支配する中、カモシカであって欲しいと必死で願う。
勇気を振り絞って震える手を伸ばす。指先が触れた冷たい金属を掴んで
さっと枕元に引き寄せる。が、それはコンパクトカメラだった。
その時だった。
ナイロン生地を擦る音とともに、テントの布が内側にせり出した。
同時にもう1頭が爪で雪を掘り出したと思われ、ザクザクと大きな連続音が響く。
必死で息を殺そうとしたが、力んだ途端に全身が勝手にガタガタと
激しく震えだしてしまった。
止まらない。
何を考えていたのか、コンデジのシャッターボタンを押した。。。
赤いオートフォーカス補助光が光る。
…ザクザク掘る音が止まった。
様子を伺っているのだろうか。無音の中、背筋が凍りつく。
やがて、ググッ…という鈍い音が始まったが、それらは一歩ずつ耳元から遠ざかっていった。
それと連動するように、自分の心拍数が下がっていくのが分かる。
その後40分、シュラフの中でじっと動かずに考えごとをしていた。昨日夕食を作るとき、ご飯粒を落とさなかっただろうか。なぜか冬眠から覚めた動物の気持ちになっていた。山を汚さないって基本中の基本だけど、自分の命を守ることにも繋がるんだと思った。テントのジッパーを恐るおそる開けて見ると、足跡は昨夕の自分のブーツ以外残っていない。ペグが不自然に1本抜けていたのと、微かな獣臭が残っていた以外は普通だった。やがて、テント正面から朝日が差し込んでくる。
最終的にテントはデポする決断をしたが、食料は全部ザックに詰め込んだ。JPに登ると大きな平ヶ岳が顔を出した。そしてススヶ峰から来た登山者達に会った。嬉しい。目の前に広がる残雪の大斜面に向かって、シールを付けたまま滑り出す。時々雪庇にクラックが入っており、栂の森に迂回するがショートスキーなので取り回しが楽だ。重心の取り方さえ慣れてしまえば安定性も悪くはない。
やがて登山者たちが立ち止まっている場所に着くとそこは朝日が当たり緩んだ雪で、ひと目でそれと分かるツキノワグマの新しい足跡が残されていた。2頭、仲良く稜線を平ヶ岳に向かって歩いている。まだ近くにいそうな雰囲気だ。午前3時半の訪問者が彼らだったのか確証はない。ただこんな見晴らしの良い稜線を歩きたいのは、目的は違うにせよクマも一緒なんだなと、何とも言えない親近感と恐怖心が同時に湧いた。
平ヶ岳の頂上は百名山の標識も何もなく、観測用のアンテナが1本立っているだけの雪原だった。秘境の山に相応しいと思った。三角点が埋まった丘も往復し、板からシールを剥がして滑走開始。時間帯が良かったせいで大展望の中、最高のターンが出来た。緩斜面になるとスピードはそれほど出ないが、それだけ長く滑走を楽しめる。白沢山コルまで下りきった後はアップダウンを繰り返し、JPで無事だったテントを回収。
ススヶ峰の登りは板を担いだが、着いた頂上からの景色と稜線の滑走はやはり素晴らしかった。猫又川左俣に落ちる尾根を目視とGPSで確認し、谷底まで滑りきって大満足。シール歩行を再開し、山ノ鼻まで行く予定だったが疲労でスピードがまったく上がらない。途中に顔を出した池の真ん中にあった 雪の浮島に惹かれ、その畔にテントを張った。すぐに夜の帳が降り、半月が雪面を明るく照らす。
その夜、テントに訪問者は誰も来なかった。
安心感からか翌朝は寝坊してしまった。テントは置いたまま山ノ鼻から至仏山を登り、植生保護区域や残雪の消えたエリアを避けるため、北尾根を下ってから大きなカール状のムジナ沢へ滑り込んだ。荷物をまとめて鳩待峠に向かい、山荘に1泊素泊まりでお世話になり、最後は普通電車で帰宅。こうして人生初のテン泊スキーは幕を閉じた。
コメント
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taksizmさん、恐怖の3:15、何事もなくよかったですね。
それにしても、いますぐそこにある恐怖、それを経験した人でないとわからないのだと思いますが、藁をもつかむ思いでつかんだカメラ、その赤外線が効果があったのですね。頭の片隅に入れておきたいと思います。
harehareyamaさま
コメントありがとうございます!
単独だと余計に怖いですね。たまたまAF補助光だけで、もしAUTOでフラッシュONなら逆に刺激してオワッてたかも
ただ「クマ 赤外線」で検索してみたら、目元のクマ対策(美容)しか出て来ないですね ちゃんとした撃退法、これを機に私もしっかり調べたいと思ってます。
ええ、taksizmさんの文章を読みながら、補助光でなく、フラッシュ光だったらどうだったのだろう、と思いました。検索したら、やはり、フラッシュは熊をビックリさせるので危険と、と出てきました。今回のAF補助光程度が、熊に適度な注意喚起になって、熊自ら冷静にリスク回避してくれた。なんか府に落ちる気がします。
「クマ 赤外線」の検索で目元のクマ対策(美容)しか出てこなかったのですね。余計な手間暇をかけさせてしまい申し訳ありません。
とにもかくにも、無事帰還、何よりでした。
情報有り難うございます!やっぱりフラッシュNGなんですね。
あの時の状況を思い出すと、シャッター押下はカメラを強く掴みすぎて意図せずでした。ただ前夜に露光撮影(発光禁止)した記憶はあったかも。無意識的にどこまで先読みが働くか、自分でも全く検討がつきません 汗
何より遭遇率が低い設営地を選ぶのが一番です。バリルートのテン泊は気をつけたいと思います
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