十勝岳(望岳台〜山頂〜美瑛富士分岐〜望岳台)
- GPS
- --:--
- 距離
- 16.8km
- 登り
- 1,489m
- 下り
- 1,481m
コースタイム
- 山行
- 7:17
- 休憩
- 0:24
- 合計
- 7:41
日本百名山になっていることも最近まで知らずにいたのですが、今年も紅葉の時期になりつつあり、そろそろ紅葉が始まっているかも、と思い、どうせ行くならついでに登ってみようと思いました。
始めて登る山だったので事前にいろいろ調べてみたのですが、やはり道内では珍しく2千mを越える山だけあって、思っていたよりも登山に要する時間は掛かりそうな感じです。幾つかのネット上に掲載されていた登山記録を参考にすると、望岳台から山頂までおよそ3時間半くらい、下りも3時間くらいは掛かりそうな気がしました。
とは言え、実際にどれくらいの時間で登れるかは不明なので、まあ無理せずに登って、もしも時間的・体力的に余裕があったら美瑛岳まで縦走してから下ってみようと思いました。
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
十勝岳については、さすがに日本百名山になっているだけあってか、登山道は概ねきちんと整備されていて、特に危険な場所や難易度の高い場所はありません。 ただし、十勝岳から美瑛岳方面へと縦走するコースについては何か所かちょっとした難所があるため、慎重な行動が必要となります。 三点確保での登山術も必携となりますので、くれぐれも初心者の単独登山は避けた方が良いと思います。 |
写真
感想
朝、上富良野町の市街に入ると街中は霧で覆われていました。
ラジオの天気予報では、旭川市周辺は朝方は霧が掛かっている所があるが次第に晴れてくるとのことでしたので、あまり気にせずにそのまま望岳台へと向かいます。
午前8時前に望岳台の駐車場に到着すると、すでに30台近い数の車が停まっていました。こんなに登山者がいるのだろうか?と思いましたが、紅葉見物がてら周囲を散策する観光客の車も少なからずあったようです。
ちょっと心配だった空模様も、青空が広がっていて雨の心配は微塵もなさそうです。
早速、登山の準備をし、駐車場の少し下にあるレストハウス内にある登山者名簿に記入してから8時過ぎに望岳台駐車場を出発しました。
望岳台へは昨年も紅葉狩りに来ていたのですが、時期的に今年は少し早く来たせいか、紅葉はまだ見頃にはなっていないようでした。
火山灰で覆われた登山道を登って行きます。
望岳台周辺ではまだ傾斜も緩やかで、なかなか高度は上がって行きません。気温は低めでしたが、風はほとんどない状態で特に暑いとか寒いとかはなく、丁度良い感じでした。
比較的なだらかな登山道を黙々と登って行くと、雲ノ平分岐を経由して十勝岳避難小屋に到着しました。小屋は平成20年に改築されたそうですが、見た目はまだ比較的新しい感じでした。後学のため、ちょっとだけ内部を覗かせてもらったのですが、悪天候時などには大変有効な施設になりそうだなぁと思いました。
さらに登って行くと、避難小屋を過ぎた辺りに登山道の両側に(進入禁止用と思われるロープが張られていて、その中を登って行くと自然に正しい登山道に誘導されるようになっていましたが、この辺から登山道はガレ尾根となっており、ゴツゴとした大きめの火山岩で覆われていて急に傾斜が厳しくなってきました。
岩にペイントされた黄色いペンキを目印にしながら、ほとんど無風の急坂を黙々と登って行きます。
望洋台周辺でもすでにうっすらと火山特有の硫黄の匂いがしていたのですが、高度が上がるにつれて、さらに硫黄臭が強くなってきました。右手に見える前十勝の山頂付近の噴火口からは勢いよく白い噴煙が立ち上っていました。
やがて、ようやく急坂が終わり、傾斜の緩やかな広くて平坦な稜線台地に着きました。周囲にある昭和噴火口や摺鉢火口やグランド火口などから噴煙が立ち上っていて、いやでも火山を登っていることを感じさせられましたが、周囲に漂っている噴煙の正面上方にうっすらと十勝岳山頂付近のシルエットを見ることが出来ました。
締まった感じの火山礫に覆われた、平坦で歩きやすい登山道を進んで行くと、いよいよ大きな火山岩がゴロゴロとしている山頂への取りつきにたどり着きます。
山頂を目指して、急登の斜面を登って行きます。
登山道は結構滑りやすいため、注意しながら登って行きますが、距離自体はそれほど長くはありません。我慢しながらゆっくりと登って行くと、望岳台駐車場からおよそ2時間半で十勝岳山頂に到着です。
山頂には数人の登山者が思い思いにくつろいでいました。晴れていたこともあり、眺望は良く、十勝連峰や日高山脈や大雪などの周辺の山々や上富良野町の市街地を眺めることができました。
山頂で小休止しながら地図を広げ、さて、どうしようか考えました。
このまま望岳台へ下山するとおそらく12時半くらいには到着しそうです。それはいくらなんでも早過ぎるだろうと思いました。天気も安定しており、体力的にも問題がなさそうだったため、せっかくだから美瑛岳まで縦走することにします。
山頂から美瑛岳方面へと下って行きます。
このコースはあまり登山者が利用することがないのか、登山道にはほとんど踏み跡がありませんでした。それでも「十勝岳⇔美瑛岳」と書かれた標識や上部を黄色くペイントした棒が点々と立っていたので、それをたどって歩いて行きます。
間もなく新得コースとの分岐が現れましたが、そのまま美瑛岳方面へ向かって直進します。
登山道は細かい火山礫で覆われていて、意外と歩きやすい感じでした。軽快に歩いて行くと前方に不思議な形状の山が見えてきました。鋸岳でしょうか。その山頂部を東側から巻いてさらに進んで行くと間もなく、まるで富士山の須走口コースの砂走りのように細かい火山礫の厚く積った砂で出来た下り坂が現れました。斜度も結構あって、かなりすべりやすく、注意しながら下って行きます。
さらに進むとようやく前方左手方向に美瑛岳らしき山が見えてきました。まだまだ距離はありそうです。
上り下りしながら、なおも登り続けて行くと、北アルプスの山々を思わせるようなエッジ状の岩場が現れました。結構厳しそうです。
少々想定外だったので、美瑛岳への縦走ルートのことをもっとちゃんと調べておくんだった。と一瞬、後悔の念が沸き起こってきましたがあとの祭りです。三点確保を久し振りに真剣に実践してなんとか岩稜地帯を登って行きます。
この頃には標識はほとんど見当たらなくなっていて、黄色いペンキでちょこんとペイントされて点在する岩々が登山道の目印となっていました。
結構厳しい岩稜を登っていたのですが、登山道はいつしか下りとなっていました。目指す美瑛岳はもっと上の左手方向にあるはずなんだけどなぁ…と少々疑問に思いながらも、点在する黄色い目印を頼りにしながらかなりの距離(標高差300mくらい)を下って行くと、木製の分岐の標識が立っていました。
標識はかなり古いもので、木製の板に書かれた文字はほとんど読めなくなっていました。
それでも苦労しながらなんとか判読すると、それはなんと「美瑛富士分岐」の標識でした。美瑛岳との分岐を見逃して、そのまま下ってきてしまったようです。
もうさすがに登り返す気力は残っていませんでした。いっそのこと目の前にそびえ立っている美瑛富士に登ってみようかと思いましたが、登ってここに下りてくるまで1時間半ほどはかかりそうです。この「美瑛富士分岐」から望岳台までも結構な時間が掛かりそうなことを考えると、残念ながら時間切れです。そこで諦めて「美瑛富士分岐」から望岳台へと下ることにしました。
望洋台へと続く登山道は、ハイマツの樹林帯の中を通る道となっていました。登山道の両側が木々に覆われて見通しも悪かったため、それまでは付けていなかった熊除け用の鈴をリュックに下げて歩いて行きます。
途中、川(ポンピ沢)を渡る箇所もありましたが、通常、渡渉場所には板や木材や鉄板などが敷かれていたりするのですが、周囲を探しても全くそうした物は見当たりませんでした。
そもそも、川の対岸には登山道そのものが見当たりません。普通なら矢印などで表示されているはずなのですがそれも見つかりませんでした。おかしいなぁと対岸の下の方から上の方まで移動しながら探すと、かなり上の方の対岸に立っている登山道の標識をようやく発見しました。
とりあえず、川を渡ります。おそらくいつもならそれほど苦労しなくても渡れる程度の水量なのでしょうが、今日は、先週の台風やここ数日の雨で水かさが増していたようです。登山靴はゴアテックス製なのでくるぶし以下の深さなら水に濡れることはなさそうなので、周辺のできるだけ浅そうな箇所をみつけて無事に川を渡り切りました。
その後もひたすらハイマツの樹林帯を下ったり上ったりしながら進んで行きます。小休止の際に後ろを振り返ると結構きれいな紅葉が観れました。
望岳台へと向かってかなり進んだ頃、突然、火山灰の山肌が大きく深く削られて切り立った函状の渓谷が現れました。当然のことながら、登山道はそこで完全に途切れています。
登山道の先には、渓谷の下まで続いているであろうと思われる、赤錆びた鉄梯子がほぼ垂直の状態で設置されていました。
咄嗟に、他に対岸に渡れる箇所はないかと探してみましたがみつかりませんでした。どうやら、この赤錆びた鉄梯子に命を預けるしかなさそうです。
槍ヶ岳の山頂に登った時も、ほとんど垂直に架けられた数本の鉄梯子を涙目になりながら登ったものですが、少なくとも赤錆びたりしてはいませんでした。
しばしの間、どうしたら良いか悩みましたが、他に道はなさそうです。これ以上時間を無駄にするわけにもいきません。半ば諦めて、後ろ向きになって赤錆びた梯子に手を掛け、ゆっくりと一歩一歩、足がしっかりと梯子に掛かっているのを確認しながら慎重に下りてゆきます。
最後の所は、梯子に付けられていたロープを掴みながら軽く跳び降り、滑り落ちるようになりながらも無事に着地しました。
峡谷の底からの対岸の上りも結構厳しい感じでしたが、下がっているロープを頼りになんとか登り切り、あとは登山口を目指してハイマツ帯を進んで行き、ようやく十勝岳と美瑛岳の分岐に到着し、そのまま下りきって望岳台駐車場へ到着しました。
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