雨乞岳 〜年末三日連続富士見2017 雪の章〜 A30
- GPS
- 08:09
- 距離
- 18.8km
- 上り
- 1,486m
- 下り
- 1,498m
コースタイム
- 山行
- 7:34
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 8:01
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー
甲府駅発5:50(JR中央本線、670円)小淵沢駅着6:45、発6:50(小淵沢タクシー、2,440円)雨乞岳登山口着7:05 塩沢温泉(フォッサマグナの湯)発15:20(小淵沢タクシー、3,160円)小淵沢駅着15:35、発16:22(JR中央本線、970円)山梨市駅着17:27 、発17:50(山梨市営バス、400円)乾徳山登山口BS着18:22 |
コース状況/ 危険箇所等 |
水晶ナギ分岐から山頂までの急登は、聞きしに勝る。ノートレースの積雪も手伝い、幾度もルートに悩んだ。 山頂からヴィレッジ白州まで、30cmほどの積雪、広い尾根のため、2度、コースから外れた。うち1度は、GPSが無ければ長時間彷徨っていたかもしれない。 道迷いさえしなければ、危険箇所も無く、素敵なコースだと思う。 |
その他周辺情報 | 下山後の湯、塩沢温泉(フォッサマグナの湯)。(入浴しなかったので詳細不明)。 |
写真
感想
予て、西上州縦断のために、バス便、宿泊地などを徹底的に調べた。と同時に、大雪や俄かに岩場歩行に不安を覚えたときのために、例年どおり山梨の山々を訪ねる準備も行った。果たして、日増しに西上州は遠のき、中央本線沿いの山々に立つ姿がはっきりと見えるようになった。
かくして、3年連続で年末三日間富士見山行を敢行することとなった訳だが、今回は大して悩むことなく、これまで強く意識しながらも訪れることのなかった2峰と足休めの1峰を選ぶことができた。
初日は南アルプス前衛の雨乞岳。アプローチに時間を要し、アクセスもタクシー利用を余儀なくされることから、日帰りは困難、金銭的にも思いきりが必要な山。ヤマレコを始めウェブでの紹介、記録も少なく、情報収集もままならない山、二の足を踏んでいた。
前夜、甲府入りをし、もはや定宿となったホテルで、ゆっくりと仕事の記憶を薄めてゆく。期待どおり快適な睡眠を経て、小淵沢まで辿り着く始発列車に乗車する。新装成った駅前には、予約していたタクシーが待っていた。名を告げると、「石尊神社ですね」の応え。滑らかで、疑いようのない確かな始まりだった。
車は、石尊神社の少し先、登山口まで入って行った。「帰りは塩沢温泉に15時半でよろしいですね」。大きく頷き、感謝の言葉と共に、見送った。午前7時、吐く息の白さは想像以上で、自ずと心身共に引き締まった。いつものようにストレッチ後、ストック、熊鈴、スパッツの用意、そしてネックゲーターを頭に巻いた。
緩やかな、渓床状の道を登ってゆく。登山者の往来がほとんど無い道ゆえ、落ち葉の堆積は凄まじく、何度も足を取られた。時間のロスを嫌い、あえて足運びを速める。当然のごとく、それはボディブローのように体力消耗に効いてくる。道が雪に覆われる頃には、早くも疲労を感じ始めていた。標高差1,200メートル、水平距離18キロメートル、8時間歩行、体力温存は必須である。
アイゼン装着のタイミングは絶妙だった。道は勾配を増し、積雪は10センチメートルほどになっていた。凍結個所も増え、それまでとは打って変わった景色に、早くも2,000メートル超の冬山の厳しさを知らされるようだった。小鳥の囀りも、木の葉のそよぎすら聞こえてこない。ただ雪を踏みしめる音だけが響いていた。
明瞭な道だが、ベンチマークに乏しく、道上の変化で気を紛らわすしかなかった。出発から2時間半、ようやく中間地点、ホクギノ平に着いた。まあまあ順調ではある。このまま進められれば、山頂での30分休憩も可能であろう。天候に恵まれたこと、人と出会わない快さが、豊かさを増してくれていた。
やがて、水晶ナギへの分岐点に到達、眼前には雨乞岳の「壁」が立ちはだかっていた。想定外の急坂が250メートルを一気に登らせる。積雪と相まって、10歩に1度立ち止まらされた。山頂直下は30センチ以上、どこを歩いても同じ、直登する。振り返れば富士山の姿はあったが、甲斐駒も鋸山も雲に包まれてしまっていた。
12時、雨乞岳山頂に立つ。出発から5時間、30分の遅れは取り戻せなかった。山頂は南に開け、東の八ヶ岳は望むことができない。日向山、黒戸尾根、遠くに富士山、短時間に目に焼き付け、腰も下ろさず出発する。午後6時半までに、乾徳山登山口の民宿に辿り着かなければならない。バス、列車、タクシーの乗車時間などを考慮すると、今、出発する必要があった。
下山路は容易いものと考えていた。車で1,150メートルまで上がり、そこから往復するコースが最近では「主流」と聞いていたからだ。これまで同様トレースは全く無かったが、不安も全く無かった。いつしか現れた、長靴とカモシカとは明らかに異なる動物の足跡を不思議に思いながらも快適に、そして無心で高度を下げていた。
広い尾根、ピンク色のテープが途絶えた。外した。無意識にトレースを追ってしまっていた。この時は、ほどなく復帰できたが、次に外した時にようやく気付いた。うかつにもハンターと猟犬の跡を追っていたのだ。恐らく、無積雪期には明瞭な道なのだろう。テープはどこを探しても無かった。そもそもそれすら見えない場所まで来てしまっているのかもしれない。俄かに不安に掻き立てられ、GPSで位置を確認する。進むべき方向とは大きく逸れてしまっていた。トレースに別れを告げ、「道」を目指す。(下山後、「みんなの足跡」を確認したところ、オレンジ色が大きく広がっていた。要注意個所だった)
ようやく登山道に戻ると、ほどなく階段状の道が現れ始めた。ここからは迷うことなく進めるだろう。「ロスタイム」を取り戻すべく、速度を増す。然もあらん、1度派手に転んだ。やがてヴィレッジ白州の遊歩道と合流し、その先で分けると、林道雨乞尾白川線の登山口に到着した。いつになく、安堵の気持ちが広がった。ここからは5キロの林道歩き、凍結さえしてなければ予定時間に到着できるはずだ。いつものペースで歩き始めた。
塩沢温泉の福祉会館に着き、荷物をまとめていると、ほどなく車がやってきた。「30分のお客さんだね」。小さく頷くと、「列車の時間が迫っているなら急ぎますよ」が返ってきた。1本遅らせ、山梨市駅よりも小淵沢駅での待ち合わせ時間を選んだ。ゆっくりと会話を楽しめた。
山梨市営バスで乾徳山登山口へ向かう。乗客は私独り、すっかり暗くなった道を北に向けてひた走る。予想以上の疲労感にいつしか眠ってしまった。運転手の声に目を覚まされ、目的地に着いたことを知る。今日の宿は、目の前にあった。 (つづく)
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する