山伏-大谷崩 〜彼方からの風〜 A33
- GPS
- 10:28
- 距離
- 17.5km
- 登り
- 1,467m
- 下り
- 1,642m
コースタイム
- 山行
- 8:58
- 休憩
- 1:23
- 合計
- 10:21
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
(当日)新田温泉黄金の湯BS発17:59(しずてつバス、1500円)静岡駅前BS着19:37 |
コース状況/ 危険箇所等 |
山伏の伸びやかな山頂。 大谷崩の急傾斜ザレ場。 |
その他周辺情報 | ペンション「くさぎ里」 囲炉裏端の食事、貸切温泉、登山口への送迎。感謝。 |
写真
感想
今年も静岡の山々に焦点を絞り、3日間静かな山歩きをしよう、2月に暴風雨のため諦めた山伏を中心に組み立てた。宿もバスも押えた4月のある日、学生時代の後輩Iからメールが届いた。連休にどこかへ行くなら同行させてほしい、しばらく登っていないが足手まといにならぬよう気をつける。1日考えて応諾した。
3日朝の予想天気図は、これ以上悪い絵は無いだろうと思えるほどひどい。初日は移動日とした。バス、普通列車をつなぎ、低廉移動で静岡駅に立つ。豪雨の後の安倍線、2年前の「相渕折り返し」という言葉が頭を過ぎった。駅前の蕎麦屋で桜えびを味わいながらバスを待つ。バス停へ移動し、先頭で並んでいると、相棒が現れた。日帰りか、目を見張るほど小さなザックを背負っていた。
バスは定刻どおりに発車し、定刻どおりに到着した。周りには何も無い。その宿のためだけに設けられたバス停だった。5分で目的地に到着、部屋に通され荷を解く。(中略)
昨晩、囲炉裏を囲み様々な話を聞かせてくれたご主人は、御年81歳、しなやかな動作にただただ驚いていた。そんなご主人が登山口駐車場まで運んでくれたお蔭で、私たちは6時すぎに出発することができた。林道を横断する沢の勢いは強く、昨日の降雨を推し量れる。ほどなく現れる登山口から蓬峠までは、序盤に適した緩やかな道が続いていた。
Iは、早くも峠のベンチに座り込んでしまった。2年のブランク克服に手間取っているようだったが、標高差1,100メートル、それなりの急登は甘受しなければならない。その後の約1時間半で、体力消耗が著しいことを知り、稜線手前のなだらかな場所で多めの休憩時間を取った。すでに1時間の優位は20分ほどに縮まっていた。
山伏の山頂には、強い北風が吹いていた。標柱に括り付けられていた温度計は気温3度を示していたから、体感温度はマイナスだったはず。幸い陽射しは強く、私たちは風を避けられる南面の草原に腰を下ろした。先ほどまで、もう帰りたいという表情をしていた人は、嘘のように張り切ってコーヒーを淹れている。朝食の替わりに宿で包んでくれたおにぎりは、とてもおいしく、短時間に3個を平らげた。
富士山を眺めながら、この先稜線を歩き続けるか、往路を戻るか、思案していた。コースタイムに従えば、周回しても、温泉に浸かり最終バスに乗れる。問題は9時間の歩行時間に耐えられるかどうか。問いかけると、このまま予定どおり進もうと言う。その元気な姿を目の当たりにし、縦走を続けることにした。
先ほどまでとは異なり、心地よい風が稜線の道を吹き抜けていた。Iは、登り返しの不安を紛らわすかのように話し続けている。地図を見ているのは私だけだったから、大平沢ノ頭の存在は告げずにいた。果たして、気力が充実していたからか、そのピークを難なく通過し、大谷崩を視界に収める時が来た。
砂の急斜面に圧倒されながら、ザレ場を慎重に下りる。下に誰もいないことがわかっていても、落石に細心の注意を払い、時折後ろを見上げた。別に落石が怖いわけじゃない、そう言うと、白出沢を思い出す、の応え。過ぎ去った時間に思いを馳せ、何だか心が躍っている気がしていた。
やがてザレ場はガレ場へと移り、崩壊地末端の、扇の要と呼ばれる場所に着いた。これから始まる林道歩きに備え、一呼吸を入れる。ローカットを履くIは、小石を笑いながら取り出していた。けれどもこののち笑えない状況が続く。
覚悟していたとはいえ、舗装路の2時間歩きはやはりきつかった。林道の長時間歩行に慣れているつもりの私でも、7時間の後の2時間は堪える。隣を見ると、それまでの饒舌ぶりが嘘のように無言で脇目も振らず歩いていた。確か夏合宿で、積丹半島を歩いていた時もこんなだったよな、言いかけてやめた。
新田温泉に着いてからようやく口を開いた。お腹が空きました。閉館1時間前に入り、辛うじて汗を流せたが、食事処はすでに閉めていた。休憩所でアイスクリームを食べ、バスを待つ。宿のご主人に下山の報告をした。
バスは、夜のしじまの中、隣の寝息と共に南下を続ける。長く、楽しく、厳しい時間だった。街の灯りに車窓が明るくなる頃、ようやく目を覚ました。静岡駅はもう近くに迫っている。何、食べようか。
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