芦谷山〜庄部谷山☆知られざる湿原と壮麗なブナの森
- GPS
- 09:32
- 距離
- 20.3km
- 登り
- 1,224m
- 下り
- 1,206m
コースタイム
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
一般登山路なし |
写真
感想
湿原へ行きたいyamanekoさんと、芦谷山〜庄部谷山を歩きたい私。では両方行きましょうということになり、このルートに決めました。しかし行ってみれば、湿原からはとんでもない急登でしかも低木の藪。ルート選びは失敗でした。庄部谷山への稜線も歩きやすくはなかった。しかしその後の下山ルートはなだらかですばらしいブナ林が続き、来た甲斐がありました。次回は冬に庄部谷南尾根を周回してみたいと思いました。
あとで軌跡を見たら21.7kmも歩いておりビックリ。yamaneko奥さん、よく着いてきたなと関心したのでした。しかも連チャン。主婦は強い!
芦谷山、地図にも山名が記載されていない山なので、この山を知る人は少ないだろう。高島トレイルの北の盟主、三国岳から野坂岳にかけて南北に縦断する長い尾根のほぼ中間地点にあるの866mの標高点があるのがこの山だ。庄部谷山は芦谷山よりさらに知名度の低い山であり、芦谷山の南のピークから北西へ伸びる尾根を辿った先にある855.9mのピークである。しばらく前、上記の尾根を縦走する前夜、flatwellさんのバンガローにお邪魔させて頂いた際にお互いに興味ある山行の話となり、flatwellさんからこの山のことを教えて頂いたのだった。ヤマレコのマップでは山名の登録がないので、今回、登録させて頂いた。一方、私は野坂山地の中には訪れたい湿原があった。
上述の三国岳から野坂岳へと続く稜線を辿る山行の際、地図を見ていると芦谷山の東の山腹に小さな湿原があることに気がついた。南北に約300m、幅50mほど、それなりに大きな湿原である。しかし、この湿原湿原に関する記載はネットでもほとんど見当たらず、どうやらその呼称すらはっきりしない。知られざる湿原・・・山ではないが、訪ねてみたいという好奇心・冒険心が掻き立てられるところだ。flatwellさんにこの湿原の話をしたところ、この湿原と庄部谷山を周回する山行を計画することとなった。
湿原に辿り着くルートであるが、黒河川に沿って走る黒河林道からすぐ右手に分岐して芦谷山の山腹を縫うように進む林道が湿原の近くをこの通過しているので、当初、この林道を北から南下して湿原に至るということを目論む。しかし、flatwellさんの知人からこの林道は湿原の手前で大きく崩壊しているとの情報が入る。そこで、新庄の奥、折戸谷から峠を越えて、この林道に至るというコースをflatwellさんが考えて下さる。
朽木でflatwellさんと合流したのは6時であったが、粟柄河合谷林道の起点のあたりに車を停めて、折戸谷林道を歩きはじめたのは7時半過ぎであった。歩き始めると間もなく二台ほど車がほぼ立て続けに我々を追い越してゆく。赤坂山の登山口に辿り着くと、後から来た福井ナンバーの車が停まっており、車の主が身支度を整えておられるところであった。赤坂山に登られるようだ。ここを過ぎると林道には堆積する落葉の量が増える。最初に追い越していかれた大阪ナンバーの車がなかなか見当たらない。果たしてどこまでの行かれたのだろうかと怪訝に思いながら林道を進んでいくと、忽然と広い平地に出る。その向こうで大阪ナンバーの車の主が山行の準備を整えられておられた。
やがて前方に小さな小屋跡が見えてくると林道の終点が近い。林道上は苔に覆われ、モス・グリーンが美しい林道はその終点の手前で大きく崩落している。後ろから先ほどの男性の方が追いついて来られる。この折戸谷から芦谷山に向かって伸びている沢に沿って登っていかれるらしい。こんなところで同じ山を目指す人に遭遇すること自体が大きな驚きだ。後にやぶこぎネットを主催されている山日和さんであることを知るのであった。我々がこれから目指す三国山と芦谷山の間の鞍部が新庄乗越と呼ばれる地点であることを教えて頂く。
新庄乗越へと至る谷筋を見つけるまでルート・ファインディングに苦慮したが、やがて目当ての谷に入ると沢沿いに薄いが明瞭な踏み跡を辿ることが出来る。新庄乗越を過ぎると途端に赤テープが頻繁に現れる。踏み跡も明瞭であり、道を塞ぐ倒木もほとんどない。ほどなく黒河川側の林道に出ると、ここからは林道歩きとなるので快足に進むだろう・・・と思ったのは大きな間違いであった。快適な林道歩きが出来たのは最初の数10mほどであった。すぐに林道には法面からほぼ水平に伸びる樹が目立ちはじめる。冬の豪雪のせいでこうなるのであろう。それにしても意外なほど立派に成長した樹々が多い。果たしてどのくらい放置したらこのようになるのだろう。樹の成長ぶりからすると、どうやら数年という単位ではなさそうだ。
小さな谷を越えるところで、忽然と林道が消えている。そんな馬鹿なと思うのだが、先に林道が見当たらない・・・谷を渡る橋がもともとあったのが流されたか崩落したかで消失したのだろう。谷から先は林道が藪化しているのだった。多くの下草は既に落葉しているからいいものの、葉をつけた状態であれば半端ない藪こぎとなったに違いない。林道を下り、歩きやすくなったかと思うとようやく黒河林道から周回する林道に辿り着く。
今度は黒河川の源流に沿って林道は進んでゆく。こちらは先ほどの林道と異なり、ところどころに舗装された箇所もあり、どうやら保全が行き届いているようだ。湿原の南にかけて林道は緩やかな上り坂となっている。林道脇には多くのススキの穂が満開である。逆光にみると、透き通った青空から降り注ぐ陽光に照らされて、風にそよぐ穂先が銀色に輝く。
そろそろ湿原も近くなっただろうかというあたりで、林道は突然、大きく崩落している。崩落した林道の端を辿ってなんとか通過することは出来る。崩落地を越えて林道を辿ると前方から大勢の人の声がする。およそ10名ほどのパーティーが林道の先におられるのが目に入る。リンリンと熊鈴を鳴らしながら林道を登る我々に先方も気がついて驚かれたようだ。果たして一体どこから来たのかと疑問に思われるのも無理はない。先方はなんと我々が目指す湿原を訪れたということ。ここまでの林道は何箇所か崩落地点はあったものの問題なく通過することが可能であったとのことであった。ここからは我々が辿って来た林道を南下し、黒河林道を周回されるという。それにしても、滅多に訪れる人のいないであろうこの知られざる湿原で2つのパーティーがお互いこうして出遭うとは、目に見えない量子力学的なエネルギーが働いていたのかもしれない。
丁度、先のパーティーと遭遇した場所が湿原の南端部へと下る尾根の下降点であった。尾根からは新鮮な踏み跡がついている。今しがた、パーティーが通過した跡だろう。さて湿原に降り立ってみると、足元は泥濘状であり靴は容易にズブズブと沈みこんでいく。乾燥化が進んで草地になっているのではないかと心配されたが、それなりに立派な湿原である。湿原の中の動物の踏み跡を辿ってみると、動物はやはり歩きやすいところを選んで通っているのだろう。踏み跡を外さなければあまり沈まずに湿原の中に少し入ることが出来た。今回はここまででかなりの時間を要してしまっているので、もう少し奥まで訪れるべく捲土重来したいという探検意欲を残したまま、この湿原の南端のみで引き上げることにする。
湿原から上がると、ここからがいよいよ今回の山行におけるハードル、芦谷山への登りである。まずはその東にある792m峰を目指す。湿原から上がった尾根は斜度は急ではあるが、下草の少なそうなブナ林が見えている。後になって考えれば、急登を厭わずにこの尾根に取り付いていたら良かったのかもしれない。少し林道を北上したところで次の尾根が見える。尾根に取り付くべく林の中に突入したところ、猛烈な灌木の藪である。先程の林道でもそうであったように樹々は斜面から水平方向に生えているので、通常の藪漕ぎの感覚とは異なる。尾根を登るにつれて灌木の樹高が低くなると、心配していた事態が生じる。蔓性のイバラが多いのである。
尾根芯には一本、古いビニールテープが巻きつけられた樹を目にする。尾根は一旦、なだらかになるが、再び斜度がきつくとブナが多くなり、藪は少しましになる。しかし、尾根の上部ではブナも少なくなり、再び灌木の藪となる。藪こぎには難儀するが、低木が多いので尾根から振り返ると絶好の見晴らしである。南東の方角には芦原岳から乗鞍岳へと至る高島トレイルの上には伊吹山が顔を覗かせる。東には金糞岳、横山岳、北西にはすぐ近くに岩籠山と大展望が開ける。その彼方にはなんと、白山まで見えるのだった。
藪と格闘するうちに792m峰のピークが近づく。ブナの樹が多くなり、斜面もなだらかになり、ようやく歩きやすくなった。792m峰からは芦谷山にかけて微かな踏み跡がある。おそらく他の尾根から792m峰に登られる方がおられるのだろう。北の斜面からはすぐ北に野坂岳を望むことが出来る。「ヤッホー」という声が聞こえるのは、どうやら野坂岳の山頂からのようだ。
芦谷山の山頂に辿り着くとランチ休憩とする。山頂は樹林の中ではあるが、南側の斜面に出ると樹の間からは周囲の山々の眺望が得られる。前回、縦走した際にも芦谷山で昼食をとったのだが、このあたりからはガスの中だったので展望の良さを知る由もなかった。
この芦谷山の周囲は樹高の高いブナの林が見事であり、随所に幹の太い大樹が散見する。前回訪れたときから丁度2ヶ月前が経過しているのだが、ブナは落葉して森林の景観が全く異なる。壮麗な森の雰囲気は相変わらずであるが、落葉による茶色いカーペットを敷き詰めた中の明るい林はそれはそれで綺麗である。この頃になると先程までの青空が一変して、乳液を溶かしたかのような薄曇りの空になる。雲の彼方から太陽の鈍い光がブナの林に届くと、景色の中に美しい樹影が浮かび上がるようだ。
芦谷山からなだらかな稜線を南に下ると、樹間からは右手に伸びる稜線とその先にこれから赴く庄部谷山を望むことが出来る。庄部谷山への稜線に入るとアップダウンを繰り返しながら進む。踏み跡は不明瞭であるが、ブナの林の尾根筋は藪は少ないので、ルート・ファインディングに苦慮することはない。
庄部谷山の手前のピークで先程のソロの男性と再びお遭いする。「庄部谷山から西側の斜面を下る尾根は支尾根が多いので、道迷いの可能性がある。南に下る尾根にはどちらも道がついているが、車を停めたあたりまで下ることの出来る長い尾根に入るにはピークを下ったところに広い平地があるので、そこを大きく右手に曲がる必要がある」・・・と教えて頂く。驚くほどこのマイナーな山域にお詳しい・・・後でやぶこぎネットのサイトを覗いて、道理で・・・と合点するのであったが。
さて、庄部谷山からは今回の山行の最終章に相応しいとても美しい光景が待っていた。南になだらかな尾根を下ると、教えて頂いたようにすぐに広い平地に出る。この平地を右に大きく曲がると目指す尾根に入ることが出来た。教えて頂いた情報がなければ迷いやすいポイントであったと思われる。この尾根は左手の黒谷に沿って南下しており、他のレコで黒谷右岸尾根とされていることを後で知る。落葉のカーペットの中で美しいブナ林が延々と続く。
やがて送電線鉄塔が二本連続する場所に出るのだが、その向こうには草地で覆われたピークが目に入る。三角点ピークの583m峰のようだ。ピークに辿り着くとあたりは一面のすすきの原であり、東には三国山から赤坂岳、大谷山を経て大御影山、西には雲谷山と360度の展望である。ここからは南に下る尾根が複数本見えるが、ススキの斜面を下ると斜面を左方向にすすむ踏み跡とそのさきにピンクテープが目に入る。踏み跡を辿ってみるとすぐに、ほとんど地面には埋没はしているものの、見覚えがある黒いプラスチック製の階段が目に入る。薄い踏み跡を辿ると最後の送電線鉄塔に出る。鉄塔からは送電線巡視路は左手の斜面をトラバースしていく。踏み跡のお陰で急斜面を通過出来るが、積雪時は通過が困難なことが予想される。最後は巡視路を見失うが川まではあと僅かだったので斜面をそのまま下ると、斜面の左手に登っていく黒い階段を見つけるのだった。川にかけられた巡視路用の橋は無残にも落ちているが、水量がすくないせいか困難なく渡渉が可能であった。明るいうちに林道にたどり着いて一安心である。車を停めた場所まで歩くうちにあたりは急速に暗くなっていくのであった。
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