2015年物ボルドー名酒ブラインドテイスティング
コースタイム
- 山行
- 2:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 2:30
天候 | 小雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2018年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
交差点の横断に注意 |
その他周辺情報 | お店はたくさんあります |
装備
備考 | 偉大なワインに敬意を表してネクタイ締めて行きました |
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感想
(最近ヤマレコがサケレコになってます)
■プロローグ:高いワインがわかるか?
10月のピークハントの成功を受けてさらにビッグクライムに挑むことにした。
もしも全部瓶で買ったら、自分の月給(手取り)約半年分(といったら会社に失礼か)に相当するワインの試飲に行って来た。試飲なので瓶で買う値段の2,30分の1の費用で済むのだが、それでもかなり高価なクリスマスプレゼントになった。
約1年前、エキスパートの資格を目指して予備校に通い始めたころ、講師の先生にテイスティングの力をつけるために、高いワインを飲むべきかと問うたら、「テイスティングの力をつけてから飲んだほうがいいですよ。今日のドンペリ(新年会で行ったレストランでドンペリが量販店価格だった)もシャンパーニュについて勉強していなかったら、その良さがあまりわからないでしょう?」と言われたことを思い出した。晴れて資格を獲得した今ならわかるのだろうかという力試しをすることにしたのだ。
全部、ブラインドでテイスティングした。ほとんど飲んだことのない名酒ばかり、しかも2015年のヴィンテージ(当たり年とされている)はひとつも飲んだことがない。頼りになるのは文献やネットで調べた味の評判とぶどう品種だ。
1年間資格の勉強をした効果のひとつは飲んだワインに教科書的な意味でのコメントがつけられるようになったことと、逆に教科書的な本に書かれたコメントからワインを想像できるようになったことだ。他人のコメントから逆にワインを想像し、どこまで近づくことができるか。
特に参考にした本は「ボルドー・バブル崩壊」(山本昭彦)だ。後述のプロフィールも同書に負うところが大きい。
この本のメインの内容は、ボルドーワインが飲み物ではなくて投機の対象となっていたのが、リーマンショックでバブルがはじけた(その結果、成長が著しい中国に市場の中心がさらにシフトした)という、ビジネスとしてのボルドーワインのレポートなのだが、巻末に「飲まずに死ねない10大シャトー」として、筆者が絶賛する10箇所のシャトー(醸造所、酒造会社)とヴィンテージ(収穫年)が紹介されている。
奇しくも今回のテイスティングのラインナップ9杯は、この10大シャトーのうち実に8種類をカバーしている。なお、収穫年が変わると味も変わるから同じシャトーだから「飲まずに死ねない」ワインというわけでもない。ちなみにこの本の出版年は2009年で、今回試飲したワインの収穫年の6年前である。
■ラインナップとプロフィール(収穫年はいずれも2015年、プロフィールは先述の山本昭彦の本を参考にする))
1.ジロンド川左岸のワイン:カベルネ・ソーヴィニオン主体
・シャトー・ラフィット・ロスチャイルド
ピュアな果実味と素晴しいバランス、カシミアのようなタンニン
優雅で繊細、どこまでも細く長く続く余韻
・シャトー・ムートン・ロスチャイルド
グラスが見通せないほどの黒味がかったダークチェリーレッド
とてつもない凝縮感、濃厚な果実味
・シャトー・マルゴー
女性的と称されながらも決して線は細くない。途方もない凝縮感と高貴さを兼ね備える。
・シャトー・オーブリオン
こくがあり、優雅なたたずまい。40%のメルロが早くから柔らかさをもたらす。暫く置くとスモーキーな香りが立ちはじめる。
・シャトー・ラ・ミッション・オーブリオン
シャトー・オーブリオンと畑は道1本隔てた向かいだが、こちらのほうが古典的で、タンニンのしっかりしたしっかりした感じのワイン
2.ジロンド川右岸のワイン:メルロー、カベルネ・フラン主体
・シャトー・オーゾンヌ
55%がカベルネ・フラン、残りがメルロ
深いコク、気品ある香りと、非常に目の詰まった果実味
・シャトー・シュヴァル・ブラン
60%がカベルネ・フラン、残りがメルロ
果実味、スミレ、旨みの混じった華やかな香りが立つ、香りの芳醇さはピノ・ノワールに似ている。
・ペトリュス(シャトー・ペトリュス)
メルロ100%
豊満だが、抑制の効いた静かな美しさ、ぶどうのピュアなエキスをすくいあげたような透明感、官能。色はどちらかというと淡い。完璧な球体感を持つ神品。
3.ソーテルヌ、貴腐ワイン
・シャトー・デュケム
杏のジャムやカラメルのような甘い香りと曇りのない果実味
酸味があって甘口なのに重くない。
■惨敗
結局ピークを踏めたのは消去法で残った1銘柄のみだった。
ソーテルヌは甘白なので一目でわかるから、最後のデザートにいただくことにして、まず赤8杯を一度にブラインドで出してもらった。グラスには1番から8番目までのシールが貼ってあり、ソムリエさんの手元にあるワインリスト(支払いと引き換えにもらえて、普段はついでもらうたびにソムリエさんの印鑑が押される)にその番号が書き込んである。
まず、色をとった。いずれも紫がかったダークチェリーレッドではあるが濃淡では
1<2、3<2、3<4、5<4<6、8<7<6(もっと順番つけておけばよかった)
1、5、8が淡い目
2、3、4、5、6が濃い目
7は濃い目と淡い目の中間。
だった。8番目は一目見て微かに淡く美しかったから、これがペトリュスだろうと思った。
全部の見立てをつけてから、正解を見せていただいた。各番号ごとのテイスティングの結果は以下のとおり惨敗だった。
1.
見立て:オーゾンヌ
理由:香りの第一印象が深いコクと凝縮された果実味
正解:マルゴー
2.
見立て:ムートン
理由:一口味わったときの強い果実味とスモーキーな香りと味わい
正解:オーゾンヌ
3.
見立て:シュヴァル・ブラン
理由:酸味がきれいで、味わいがスモーキー
正解:ラフィット・ロスチャイルド
4.
見立て:ラ・ミッション・オーブリオン
理由:いわゆるフルボディーなワインであるが、他に比べると若干控えめの凝縮感
正解:ラ・ミッション・オーブリオン
5.
見立て:マルゴー
理由:スパイシーで若干控えめで穏やかだけれど、時間とともに凝縮感が開花する。
正解:オーブリオン
6.
見立て:オーブリオン
理由:ドライフルーツっぽさを感じつつも控えめな香りの第一印象。一口目の印象もやさしく控えめ。以前テイスティングしたとき(ただし収穫年は2012年)の味と似ている気がした。
正解:ムートン
7.
見立て:ラフィット・ロスチャイルド
理由:複雑なハーバルな香りはカベルネ・ソーヴィニオン由来ではないか。甘く、スモーキーな余韻が長く続く。
正解:ペトリュス
8.
見立て:ペトリュス
理由:色が一番淡く、きれいだった。テイスティングしたあとの余韻が特に長かった。
正解:シュヴァル・ブラン
以上、事実上の全敗であった。皮肉にもはめ込みようのないラ・ミッション・オーブリオンを消去法で最後に残したのだが、それだけが正解であった。つまり4番を積極的にラ・ミッション・オーブリオンと決めたわけではないのだ。
むしろ、外れてはいるけれども、8をペトリュスと同じ右岸に分類したこと、7の豊満だが抑制された美しさをもつ完全な球体とも言うべきペトリュスを、優雅で繊細、どこまでも長く続く余韻のあるラフィットと判定したところに「良い間違え」を感じた。
6番の色がひときわ濃かったところからムートンを引き出せても良かったはず。このあたり事前情報を活用し切れていないという反省もある。出来るならば生産品種が大きく異なる右岸と左岸は完全に区別したかったし、ペトリュスは別格とされているから当てたかった。
色と香りの第一印象で、カベルネソーヴィニオン(左岸)、メルロー(右岸)に並べ替えても良かったかもしれない。トリの番号(8番)に完璧なペトリュスを持ってくるのではないかというテイスティングとは関係のない心理が働かなければ、色の淡さと口に含んだときのコクからシュヴァル・ブランを見抜けたかもしれない。
6の
とはいえ、ブラインドテイスティングで名酒を味わう客はあまりいないので、ソムリエさんも結果にはかなり興味を持ってもらえた。さらに他のお客さんとの雑談のきっかけにもなったし、場を盛り上げるダシになったことはいいことだったと思う。
■最後にもっとも強烈な印象のデュケム
答え合わせをしてから、疲れた頭に甘口のソーテルヌを出してもらった。テイスティングということを考えずに一口飲んで、甘口ワインだけれどもフレッシュな酸味が残っていて絶妙なバランスを取っていることに、思わず「おいしい」って声が出てしまった。赤はどちらかというと理屈っぽいワインだが、このソーテルヌはわかりやすく美味しかった。
■エピローグ
頂上(ビンのラベル)の写真を撮ってこなかったことが痛恨の極みであったが、味見の余韻は今でも時々口の中によみがえる。
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