石巻山〜湖西アルプス縦走
- GPS
- 06:53
- 距離
- 21.6km
- 登り
- 1,091m
- 下り
- 1,070m
コースタイム
- 山行
- 5:14
- 休憩
- 1:46
- 合計
- 7:00
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
下山は新所原駅に |
コース状況/ 危険箇所等 |
特に問題なし |
写真
感想
湖西アルプスとは愛知県と静岡県の県境をなす湖西連峰のことであり、標高300m〜400mの稜線が南北に連なっている。この日、当初は沼津アルプスの縦走を目論んでいたのであうが、天気予報では東海地方は静岡から東はほぼ一日雨の予報である。不思議なことに濃尾平野から浜松にかけての一帯だけが晴れの予報となっている。それならば急遽、予定をこの湖西アルプスへと変更したのだった。ちなみに京都に住んでいると湖西というと琵琶湖の西側の一帯を想起してしまうのだが、琵琶湖の西側を「こせい」と呼ぶのに対して、浜名湖の西は「こさい」と発音する。
この山地にアプローチするのにまずは山地の西に位置する石巻山からアプローチすることにする。新幹線を豊橋で降りて仕事の道具をコインロッカーに預けると、石巻登山口に向かう豊鉄バスに乗り込む。通勤通学の時間帯なのでバスが満員であるのは驚くに値しないが、ほとんどが二十歳(はたち)前後と思われる若い女性である。豊橋創造大学で彼女らが降りていくと車内は途端に静まり返り、残されたのは我々の他に二人の女性がいるばかりだ。他の乗客達も間もなくバスを降りてゆき、我々が最後の乗客となった。
長閑な田園風景の中、川沿いの土手に沿って歩きはじめる。土手にはタンポポが咲いており、すっかり春めいている。小さな橋の下を潜り、左手に曲がるとすぐに登山口にたどり着いた。林の中に入ると、雨上がりのためだろう、土と樹木の濃厚な匂いの中に包み込まれる。朝の木漏れ日に照らされた樹々からは湯気のように白い水蒸気が立ち上ってゆく。登山道は掘割式の古道の趣であり、なだらかな道を快適に辿る。道の脇には樹齢の高そうな大樹が目立つ。石巻神社への参道として古来より往還してきた道だからだろうか。
石巻神社が近づいたあたりで驚いたことにコンクリートの土台とその上に近代的な住居が忽然と左手に出現した。舗装された車道がここまで上がってきているらしい。車道の手前では登山道脇では数多くのエゾエンゴサクの群落にお目にかかる。今年初めて遭遇したスプリング・エフェメラルである。
まずは石巻神社へ参拝する。長い石段の参道を登ってゆくと古い趣のある社殿の神社があった。それまで登山道が南側の山腹をトラバースしていたために気が付かなかったのだが、尾根の上では風鳴りの音が強い。北風が吹いているのであろう。
石巻城址を経て石巻山の山頂へと向かう。説明文によると尾根上にはかつての4段の連郭と帯状腰曲輪があるというが、なんのことやらさっぱり判らなかった。石巻山の山上は石灰岩の山地であるらしく、雨に浸蝕された奇妙な形状の石灰岩が目立つ。山の上に至ると登山道には藪椿の花が散り、足の踏み場かないほどだ。
花を踏まないように慎重に歩を進めるうちに尾根上に巨大な石灰岩の岩が登場する。岩を取り巻くように踏み跡がついているので辿ってみると、上の方からガサゴソと音がする。動物にしては変だ・・・と思っているうちに、岩陰から突然、一本のトレッキング・ポールをついた初老の男性が姿を顕した。この岩に登れるようになっているのだろうか。男性が姿を顕した岩陰に回ってみる。私は三点支持の要領で岩の上に攀じ登ってみるが、容易ではないだろう。Chimachuは難しいといって登攀を諦めるが、先の初老の男性は相当に登山経験を積んでおられる方のようだ。
岩の上からは当然ながら背後に聳える岩を覗いてはほぼ360度の絶景である。春の陽光を反射する豊橋市街が眩しく見える。その彼方に渥美半島を挟んで空と同じ色の渥美湾と遠州灘を望む。慎重に岩から降りて登山道に戻ると、鎖や鉄梯子が出現し、岩場を登ってゆく。辿り着いた先は再び眺望の良い岩場の上であるが、そこはなんと先程苦労して攀じ登った大岩のすぐ背後の岩場であった。すぐ目の前の大岩の上と同様の好展望であるが、ここでこれだけの良い眺望が得られると知っていたら危険を冒してまで岩に攀じ登ったのは全くの時間の無駄であった。
山頂の東側にある岩の上に立ってみる。地図ではこの山から東にむかう登山道がなく、大知波峠への尾根を東に向かうには一度、石巻神社まで戻る必要があるのだが、この岩の上に立ってみてようやくその理由がわかった。尾根上には巨岩が連なり、縦走できるようなところではないからだ。岩の上には小さな円空仏がおられた。強風が吹けば飛んでいってしまいそうで心配であるが、いつまでもこの山頂におられることを願うばかりだ。
再び神社に戻り長い石段を下ると、東に向かう林道に出る。石巻山観光道路というらしく、神社の少し先までは舗装路が続いている。1/25,000では尾根上にも破線がついているようなので、尾根の鞍部が近づいたところで、林道の法面を無理やり登ると、微かな踏み跡とピンクテープが目に入った。整備された登山路ではないので道は倒木と藪で荒れ放題である。何とか通れる時期も今のうちであり、もうしばらくすると蜘蛛の巣だらけになることだろう。鬱蒼とした林が続く尾根を緩やかに登ると突然、伐採されて開かれた小さなピークに飛び出す。
ピークからは尾根を東に辿ると小さな広場に出る。東に向かう踏み跡には樹の枝で通行止めがされており、その先は藪がかなり濃厚になっている。この踏み跡を辿らなくてはならない理由はないのでピンクテープに導かれるままに再び林道に出る。再び林道を東に進むと林道が二股に分岐する。左手の林道にはフェンスが設けられ、車が侵入出来ないようになっているが、その脇から林道に入る。
やがて峠に飛び出すと浜名湖の美しい眺望が突然視界に飛び込んできた。どうやら大知波峠らしい。。浜名湖を上から眺めるのは初めてであるが、複雑に入り組んだ入江がイギリスの湖水地方のような美しい景観を生み出している。峠の東面は廃寺跡らしく、いくつもの段が形成されている。峠の芝生の上には可愛らしい小さな焼き物の像が浜名湖を眺めている。
ここからは湖西アルプスのなだらかな尾根を北に辿る。半時間ほど歩くと、送電線の鉄塔と巨岩のある広場に出る。富士見岩らしい。ここからは先の大知波峠廃寺跡よりもさらに眺望が開けている。景色の中を横断する送電線を気にしなければの話であるが。
送電線に沿って尾根を北上する。次のピークは本坂峠三角点と呼ばれる三角点ピークであった。ピークを越えると、坊ヶ峰が本坂峠の彼方に見える。ここへ来てようやく坊ヶ峰まで往復するという計画の無謀さに気がつく。坊ヶ峰にはここから往復でゆうに1時間以上はかかるだろう。湖西アルプスを縦走して新所原の駅までたどり着くにはここで引き返すべきだという判断に至る。
再び富士見岩に戻ると、先程は数人のハイカーが休憩しておられたこともあり足早に通過したが、今度は誰もいない。富士見岩の上に登ってみる。浜名湖の彼方の浜名湖大橋のあたりは霞んでいることもあり、浜名湖が遠州灘から続く巨大な湾のように見える。富士見岩というからには本来、晴れていれば富士山が綺麗に見える場所なのであろう。この晴天はどこまでも広がっているように思われるのだが、生憎、富士山があると思しき方向は雲の中だ。
再び辿ってきた道を大知波峠へと戻る。尾根上は常緑の照葉樹が多く、その中でも目立つのがやぶ椿だ。丁度、花のさかりを過ぎたところなのだろう。ここでも多くの花が登山路の上に散っている。相変わらず、頭上では風鳴りの音が強いのだが、同時に風に吹かれて送電線が立てる重低音が通奏低音のように絶え間なく鳴り響いている。樹林の切れ目からは今度は豊橋方面の眺望が開ける。濃尾平野はどこまでも晴天が広がっているようだ。
多米峠を過ぎると中尾根パラダイスへの案内がある。中尾根を大岩の方へ1.3km程下ったところにある好展望地らしい。中尾根を下ると樹林の中に「パラダイス入口」と案内標が懸けられている。登山路から右手に延びる踏み跡を辿るとすぐに目の前に広大な展望が開ける。一際高い高層ビルが見えるのは浜松のアクトタワービルだが、その彼方は白い緞帳を下ろしたかのように雨雲で霞んでいるように思われる。やはり晴れているのはこのあたりだけなのだろうか。
尾根に戻り、縦走路を南下すると再び好展望の大岩に出る。岩に登ってみると眼の前に神石山のピークが見える。この巨岩の下には雨を避けることが出来るので雨宿り岩と命名されているらしい。
神石山を過ぎると登山路は広くなり、なだらかな快適な尾根道が続く。道端には多数の粘土の焼き物が置かれている。何かと思ったが、岡崎小平成七年卒業と彫られたものがあったので小学生の卒業制作だったようだ。この粘土の焼き物を作った当時の小学生も今や30代半ばの大人ということになる。
仏岩は大きな露岩が三尊仏を想起させるためにそう名付けられたのであろう。ここでchimachuはスタミナ切れのようで、先に行って下さいというので、梅田峠で待ち合わせることにして、最後のピークである嵩山(すやま)には私一人で向かう。嵩山は東側に好展望が開けているのだが、中尾根や神石山からの眺望を見た後では低い地点からの眺望は感動薄い。嵩山から戻ると梅田峠の近くで向こうからやってくるchimachuに出遭う。ネットで調べると眺望が素晴らしいと紹介されていたから、どうしても訪れたくなったという。仕方がないので梅田峠で彼が往復するのを待つ。分岐のところではピンク色の花が咲いているのが目についた。近づいてみると驚いたことに三つ葉躑躅の花であった。
梅田峠からは緩やかに林道を下って登山口のある新池に出る。デンソーの巨大な工場の脇を通って新所原の駅にたどり着く。
この新所原の駅ではうなぎの弁当を楽しみにしていたのだが、なんと驚いたことにうなぎ弁当の店があるのは遠州三河鉄道の駅舎の中であった。新所原の駅は遠州三河鉄道の始発駅でもある。JRの近代的な大きな駅舎と隣接した遠州三河鉄道のレトロな駅舎は何とも対照的だ。
うなぎ弁当を注文すると出来上がるまでのおよそ10分の間に豊橋行きの電車を見送ることになる。この電車を見送らなければ出張先に辿り着くため新幹線を一本、すなわち30分遅らせることになってしまうのだが、このうなぎ弁当を逃す訳にはいかない。うなぎ弁当が出来上がり、ホームに降りると、やはり強い北風が吹いている。ホームで次の列車を待つ高校生達が口々に「寒〜」と悲鳴を上げているのだった。
豊橋駅から新幹線に乗り込み、静岡を過ぎて三島のあたりに来るとやはり雨である。後で天気を確かめると、この日は天気予報が正しかったようで、静岡の東の方は日がな雨だったらしい。
※湖西市の観光案内と湖西連峰のハイキング・マップのページです
http://www.kosaicity.com/map.html
岩の上に円空仏はびっくりです。
誰かの落としもの?
誰かが持ち去るまえにyamanekoさんに保護され警察に、なんて外野の勝手な野次馬根性ですね。スミマセン💦(さすがに本物なわけないか)
膝の方も順調に回復しているようで安心しました。👍
岩の上に立つyamanekoさんはモンキーパンチの漫画に出てくるキャラクターみたいだなと思いました😊
確かに驚きました。
本物ではないとは思いますが、少なくとも相当年季の入ったものであったのは確かです。そして、よく出来たものでした。どれほど前からあったのかはわかりませんが、このまま頂上に鎮座して下さることを願うばかりです。
>膝の方も・・・
横山岳に登った時に比べると大部よくなって来ました。でも骨折を負った膝に違和感なく登ることが出来るようになるまではまだまだ時間がかかりそうです。
「こさいアルプス」のご説明ありがとうございます。ご想像の通りタイトルを見た時に「どこかな??」って思ったものですから。
出張先にて良く山にあがられておられるんですね。なんか羨ましいです。
浜名湖を見ながら歩ける快適稜線ルートのよう。知り合いが青春18キップにて浜名湖行って鰻を食べてきたと言っていたことと、天竜浜名湖鉄道・遠州鉄道も面白そうだなと山以外で地図を眺めていたことを思い出しました。残念ながら18キップ対象外路線なんですけどね。
富士見岩では、富士山が見えず残念でしたね。冬季の空気が澄んでいるときは綺麗に見えるものかと。
7日木曜日は京都も雨で、朝に愛宕山を見ると白くなっておりました。浜名湖辺りは青空だったんですね。
話は変わりますが、昨日は毎年恒例の人間ドック行きだったんです。帰りに家電量販店へ寄った時、yamanekoさんがお使いのOM-D E-M5 Mark IIが売ってあったので見ておりました。この機種の標準ズームって14-150mm II のようですがお使いですか? My山用品購入リストに、このズームレンズが上位に入っております。
ダブルズームセットの40-150mmを交換レンズとして山に中々持って行けなくて、いつも35mm換算の84mmまでしか使えておりませんので、防塵・防滴の14-150mm II がいいな〜って眺めておりました。
ののさん コメント有難うございます。
>出張先にて良く山にあがられておられるんですね。なんか羨ましいです。
そう思われるかもしれませんが、同時に自分の自由になる週末がなかなかないということを意味します。
>浜名湖を見ながら歩ける快適稜線ルートのよう
アップダウンも緩く、場所によっては豊橋方面の眺望も見えますし、なかなかいいところでした。
湖西連峰のパンフのサイトを載せておきましたので、行かれることがあればどうぞ
>天竜浜名湖鉄道・遠州鉄道も面白そう・・・
そうですね。今回は諦めましたが、浜名湖の北には湖北連峰というのもあるようで、この鉄道と組み合わせて登ってみたいと思いました。
>7日木曜日は京都も雨・・
静岡から東では一日雨だったようです。濃尾平野から浜松にかけての一帯だけ晴れという不思議な天気予報、本当かなと思って半信半疑で出かけたのですが、実際、天気予報が当たっておりました。
この日の朝は比叡山も珍しく、綺麗に雪化粧していたようですね。
>この機種の標準ズーム・・・
私のは12-40mm F2.8です(35mm判換算で24-80mm)。たまたまですが、私も40-150mm IIが欲しいな〜と思って、ののさんにレンズをお伺いしようと思っていたところでした。もうすぐmark iiiが出るという噂ですが、そうなるとmark iiもさらに値下がりすることでしょう 。
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