甲斐駒ヶ岳(黒戸尾根より)
- GPS
- 07:39
- 距離
- 19.6km
- 登り
- 2,608m
- 下り
- 2,615m
コースタイム
- 山行
- 7:20
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 7:40
天候 | 曇り一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー
|
コース状況/ 危険箇所等 |
一般登山道 |
予約できる山小屋 |
七丈小屋
|
写真
感想
翌日の東京への出張の移動の途上で寄り道することを考える。甲斐駒ヶ岳というのは私にとって極めて特別な山だ。母方の唯一の親戚が小淵沢にあったので、幼少の頃より毎年夏の時期になると親戚の家で長期間、過ごすのが慣習となっていた。その親戚の家の前からは真正面に大きくこの甲斐駒ヶ岳を望む。私にとって山といえば真っ先に思い浮かぶのがこの甲斐駒ヶ岳のイメージなのである。
京都を始発ののぞみで出発し、中央線を特急しなの号からあずさ号に乗り継いで小淵沢駅に到着するのは10時前に到着する。小淵沢の駅に降り立つと、正面に望む甲斐駒ヶ岳の上の方はすっかり雲に覆われている。
当初は七丈小屋で宿泊して、翌日の早朝に下山することを考えていたが、どうやら好天は期待できそうもないし、汗をかいた躰のまま東京に慌ただしく向かわねばならない。普段の単独行のコースタイムであれば、18時前後には下山できるであろうと踏んで、日帰り登山を決め込む。
タクシーで登山口となる尾白川渓谷の入り口に到着すると平日だというのに相当な数の車が停められている。道の駅から歩いて来られたと思われる外国人の男性と出遭う。テン泊の予定だそうだ。
駒ケ岳神社に向かう林道に入ると、下山して来られた20人程のパーティーにすれ違う。七丈小屋を早朝に出発すると今頃に下山するタイミングになるのだろう。荘厳な雰囲気の漂う駒ケ岳神社への参道を歩いてゆくと木漏れ陽が参道を照らす。立派な社殿に参拝をすると、尾白川の吊橋を渡って、登山道に入る。天気が良くなることを期待したが、結局、陽が差したのはこの一瞬のみであった。
梢の高い林の中にこだまするヒグラシの鳴き声を聞きながら、尾根を目指してつづら折りを登ってゆく。登山路の脇ではコアジサイが出迎えてくれる。関西に比べれば遥かに冷涼な天気ではあるが、それでも湿度が高いせいだろうか。早速にも大粒の汗が流れ始める。いや、昨夜の仕事のあとの打ち上げで多量にビールを流しこんでしまったせいかもしれない。
つづら折りを登りきり、主尾根に登ると草が登山路の周りを鮮やかな緑色で彩るようになる。林には樹高の高い山毛欅や樅の樹が目立つ。やがて林床は一面、丈の低いクマザサで覆われる。林の中にはところどころに霧が立ち込めるが、私が近づくと逃げ水のように霧が遠ざかってゆく。
コメツガの樹林へと変わると、林床はいつしかクマザサの代わりに苔が覆うようになる。黒戸山のあたりに差し掛かると長く平坦なトラバース道が続く。
黒戸山からの下りでは数名のパーティーを追い越す。登り返しになると多くの梯子を登ってゆくことになる。3組のペアを追い越すが、一組は男女であったが、残りはいずれも女性である。
七丈小屋が近づいたあたりでエネルギーが枯渇しはじめたようだ。早朝に名古屋駅で小さなコンビニ弁当一つを食べただけでは少なかった。なんとか七丈小屋まで辿り着き、おにぎりを二つ、口に放り込む。ここまで2時間40分程であるが、予想通りのペースである。
しかし、七丈小屋を出発すると明らかに速度が落ちている。おにぎりを口に放り込んでもすぐには体力が快復するわけではないのだろう。
登山路には溶け残った雪が現れる箇所があるが、いずれもチェーン・スパイクを必要とする程ではない。眼の前の樹に青い鳥が止まる。ルリビタキの雄のようだ。
八合目を越えて鎖場を登っていると上から単独行の中年の男性が降りて来られた。少し登ると今度は単独行の若い女性とすれ違う。薄いサングラスをかけているが、こんなところを一人で歩いているのが勿体無いような美人に思われる。
山頂に辿り着くと、丁度、反対側の北沢峠から女性二人を含む3人組のパーティーが登って来られたところであった。3人組はこれから鋸岳まで行かれるらしい。丁度、3人組の写真を撮っている最中、一瞬、雲が切れ、摩利支天が姿を見せる。しかし、すぐにも雲が再びあたりの景色を覆い尽くす。雲中の一瞬の幻影のようだった。
山頂を辞しいよいよ下山の途につく。山頂ではパーティーの方々とお話ししているうちに、山名標の写真をすっかり失念していたことに気がつく。小屋に到着された方々が山頂に登ってこられるかと思ったが、出遭ったのは最初に登山口で出遭った外国人の単独行の男性のみであった。テン泊の重装備でこの時間にここまで辿り着いているのは相当な快足だろう。
七丈小屋に辿り着くと先程、すれ違った男性が出発されるところだった。先に行かせて頂くが、男性の歩行速度を見る限り、果たして明るいうちに無事下山出来るのだろうかと心配になる。
五合目を過ぎると雨が激しく降り始めた。雨具をつけて、歩き始めるが、黒戸山の斜面をトラバースする平坦には水溜まりが多く出現し、みるみるうちにトレラン・シューズの中まで水浸しになってゆく。上空からはゴロゴロという雷の音が聞こえてくる。樹林帯の中でよかった。
黒戸山の下りに差し掛かると、先程の単独行の女性に追いつく。彼女も日帰りの予定らしい。しばらく前の山行で膝の靭帯を損傷したとのことで膝をかばいながら歩いておられるとのことではあったが、それにしても相当に山慣れしておられる様子。山が好きで浜松から信州に移住してこられたというだけあって、どうやら半端ではないようだ。
いつしか雨があがったようだ。蟻の戸渡りに差し掛かると、先程は雲の中で何も見えなかったが、雲の下の周囲の山々が雲の下から姿を見せる。笹が林床を覆う林の中にはところどころに霧が立ち込め、林相の美しさを際立たせる。
女性に失礼をして先を急がせて頂く。雨で下りの速度が鈍ったせいだろうか、自分ではそれなりの速度で下っているつもりなのだが、登りと下りでコースタイムがほとんど変わらないようだ。この日は走らないと心に決めていたので、歩行の範囲内で速度を上げる。
登山路の周りを草が覆うあたりになる霧はさらに深くなり、周囲の樹々は霧の中に沈んでゆく。九十九折に差し掛かると、九十九折の間をショートカットしながら、時間を稼ぐ。コアジサイの花を見かけるようになると、ようやく下山口が近づいたことを知る。
ところで、今回の山行では意外な花に出遭ったのだった。登山道の近くの岩壁に目を向けると、岩肌に可憐なピンク色の花が咲いている。近づいてよく見てみると、一瞬、我が目を疑ったが、どう見てもイワザクラに見える。通常、花期は4月の半ばだが、今頃に花が咲くのは標高が高いせいだろうか。この花に出遭える場所は全国的にも極めて限られている筈だが・・・後に、この花はコイワザクラの亜種クモイコザクラであることを知る。ルリビタキやこのクモイコザクラに出遭えた歓びが、森林の美しさと共に眺望に恵まれない山行の無念を慰めてくれるのだった。
歩きたいルートのひとつ、黒戸尾根。日帰りでは考えたことは無いですけどね。
眺望には恵まれなかったとのことですが、ガスの中から一瞬見えた摩利支天など良い感じです。
私は、仙水峠経由で上がりましたが、途中「9回来ても全部雨だな」と凄い零れ話がすれ違った登山グループから聞こえて来た時は、動揺を隠せなかった記憶が… ガスが切れるのを待って摩利支天をフレームに収められてよかったです。
笹の平分岐辺りでしょうか、緑が綺麗ないい感じの尾根道ですね。
それにしても凄い行動力というか、体力、脚力ですね。6月だけでも1/3は山におられるような。
ののさん コメント有難うございます。
林の風景が好きな方なら、この黒戸尾根は実に魅力的なところだと思います。美しい熊笹の林は笹の平分岐から刃渡りの手前、1800mのあたりまで続きます。そこから上は苔が林床を覆うコメツガの林です。感想では書きませんでしたが、樅も大樹が目立ちます。
近いうちに早川尾根を縦走するつもりなので、また甲斐駒ケ岳にも再訪したいと思っております(実は今回も、早川尾根縦走を前日まで悩んでおりました)。
ついに今週から関西も梅雨入りでしょうかね。遠方への出張が続くので、梅雨にもめげず出張ついでの登山は続く予定です。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する