また山に行きたくなる。山の記録を楽しく共有できる。

Yamareco

記録ID: 2755742
全員に公開
ハイキング
志賀・草津・四阿山・浅間

東篭ノ登山-池の平湿原、黒斑山 〜晩秋の空、壮大な景(ひかり)〜

2020年11月22日(日) 〜 2020年11月23日(月)
 - 拍手
体力度
5
1泊以上が適当
GPS
11:41
距離
27.8km
登り
1,670m
下り
1,669m
歩くペース
速い
0.80.9
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
4:48
休憩
0:33
合計
5:21
9:24
19
9:43
9:43
57
10:40
10:48
32
11:20
11:33
34
12:07
12:08
9
12:17
12:17
5
12:22
12:22
6
12:28
12:29
14
12:43
12:46
12
12:58
13:02
17
13:19
13:22
14
13:36
13:36
46
14:22
14:22
23
14:45
高峰マウンテンホテル
2日目
山行
5:09
休憩
1:09
合計
6:18
7:42
7
高峰マウンテンホテル
7:56
7:56
12
8:08
8:08
23
8:31
8:31
32
9:03
9:03
11
9:14
9:27
48
10:15
10:16
14
10:30
10:31
12
10:43
10:45
7
10:52
11:09
13
11:22
11:23
16
11:39
11:45
9
11:54
12:13
3
12:16
12:17
24
12:41
12:49
17
13:06
13:06
53
13:59
13:59
1
14:00
高峰高原ホテル
天候 22日 晴れ時々曇り、暴風。
23日 快晴
過去天気図(気象庁) 2020年11月の天気図
アクセス
利用交通機関:
電車 バス
22日 JR北陸新幹線「あさま601号」(トクだ値50%オフ)佐久平駅着8:16、発8:25(JRバス関東、1400円)高峰高原ホテルBS着9:20
23日 高峰高原ホテルBS発16:19、佐久平駅着17:32、発17:51 JR北陸新幹線「あさま676号」(トクだ値50%オフ)
コース状況/
危険箇所等
なんと言ってもトーミの頭からカルデラへ下りる道(草すべり)。崖を下りる感じ。前夜の雨のせいか、とにかく滑る!
その他周辺情報 日帰り入浴:高峰高原ホテル500円
高峰マウンテンホテル:昨年冬オープン。本物のリゾートホテル。非の打ち所がない。
1日2本のバスで、高峰高原ホテルへ。既にグリーンシーズンは終わり、高峰温泉までは歩かなければならない。ホテルでトイレを拝借し、車道を歩き始めた。
2
1日2本のバスで、高峰高原ホテルへ。既にグリーンシーズンは終わり、高峰温泉までは歩かなければならない。ホテルでトイレを拝借し、車道を歩き始めた。
行く手には、水ノ塔山と東篭ノ登山。天気は良いが、予報どおりの強風。
8
行く手には、水ノ塔山と東篭ノ登山。天気は良いが、予報どおりの強風。
そして振り返れば、今日の宿泊地が目に留まる。瀟洒で気品ある佇まいである。
5
そして振り返れば、今日の宿泊地が目に留まる。瀟洒で気品ある佇まいである。
高峰温泉前の登山口で準備を整える。9時45分、遅い出発だ。
2
高峰温泉前の登山口で準備を整える。9時45分、遅い出発だ。
岩がちな斜面を進むと、ぐんぐん稜線が近づく。
2
岩がちな斜面を進むと、ぐんぐん稜線が近づく。
山頂直下は意外にも、岩場。
1
山頂直下は意外にも、岩場。
10時40分、水ノ塔山に到着した。風が強い。20メートル近くはあろうか。
4
10時40分、水ノ塔山に到着した。風が強い。20メートル近くはあろうか。
アサマ2000のスキー場を望む。全く雪が無い。
5
アサマ2000のスキー場を望む。全く雪が無い。
東西篭ノ登山、その向こうに池の平湿原。今日の目的地は未だ遠い。
2
東西篭ノ登山、その向こうに池の平湿原。今日の目的地は未だ遠い。
幾重にも連なる針葉樹林帯が美しい。
2
幾重にも連なる針葉樹林帯が美しい。
水ノ塔山、思いがけず岩峰だった。
2
水ノ塔山、思いがけず岩峰だった。
東篭ノ登山が近づく。下は、冬季通行止めの湯の丸高峰林道。
3
東篭ノ登山が近づく。下は、冬季通行止めの湯の丸高峰林道。
11時24分、東篭ノ登山に到達。この強風、3年前の平標山を思い出す。
5
11時24分、東篭ノ登山に到達。この強風、3年前の平標山を思い出す。
四阿山、根子岳。右に目を向ければ本白根山、そして上越の山々。
6
四阿山、根子岳。右に目を向ければ本白根山、そして上越の山々。
西に転じれば、西篭ノ登山、湯ノ丸山、その向こう北アルプス後立山連峰。
5
西に転じれば、西篭ノ登山、湯ノ丸山、その向こう北アルプス後立山連峰。
東方向には、水ノ塔山と大きな黒斑山。
1
東方向には、水ノ塔山と大きな黒斑山。
後立山連峰がはっきりと浮かび上がった。
6
後立山連峰がはっきりと浮かび上がった。
池の平湿原を望む。目的地に近づいてきた。
1
池の平湿原を望む。目的地に近づいてきた。
兎平に到着。林道閉鎖のため、静寂に包まれている。
3
兎平に到着。林道閉鎖のため、静寂に包まれている。
池の平湿原、楽しみだ。
2
池の平湿原、楽しみだ。
雷の丘から湿原を見下ろす。俄かに雲に覆われ始めた。
2
雷の丘から湿原を見下ろす。俄かに雲に覆われ始めた。
雲上の丘。
湯ノ丸山、烏帽子岳を望む。
3
湯ノ丸山、烏帽子岳を望む。
見晴岳。
三方ヶ峰手前から湿原を見下ろす。必要以上に強き風よ、雲を吹き飛ばせ。
4
三方ヶ峰手前から湿原を見下ろす。必要以上に強き風よ、雲を吹き飛ばせ。
午後1時、三方ヶ峰。独りカップ麺の時間だが、風神様に邪魔される。
2
午後1時、三方ヶ峰。独りカップ麺の時間だが、風神様に邪魔される。
雲は吹き飛ばしてくれた。
4
雲は吹き飛ばしてくれた。
忠治の隠岩広場。
2
忠治の隠岩広場。
唯一の池塘、鏡池。標高2,000メートル。
5
唯一の池塘、鏡池。標高2,000メートル。
湿原独り占め。
その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。
3
その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。
雲が重い。
雲が低い。
林道から黒斑山。明日参ります。
1
林道から黒斑山。明日参ります。
約40分の林道歩きを経て高峰温泉に戻ってきた。
2
約40分の林道歩きを経て高峰温泉に戻ってきた。
ゲレンデを横断して直行する。
2
ゲレンデを横断して直行する。
チェックアウト時に知った。建物が我が古巣の設計であることを。
5
チェックアウト時に知った。建物が我が古巣の設計であることを。
池越しに今日の足取りを思う。
3
池越しに今日の足取りを思う。
午後2時42分、チェックインまでまだ少しある。
2
午後2時42分、チェックインまでまだ少しある。
独りで眠るには。「Go To」に感謝。
6
独りで眠るには。「Go To」に感謝。
この朝食のお蔭で、外輪山を闊歩できた。
5
この朝食のお蔭で、外輪山を闊歩できた。
11月23日午前7時40分、出発。良い滞在をありがとう。
2
11月23日午前7時40分、出発。良い滞在をありがとう。
車坂峠。今日は昼前から晴れる。ゆっくり歩こう。
1
車坂峠。今日は昼前から晴れる。ゆっくり歩こう。
小諸市方面を望む。
1
小諸市方面を望む。
高峯山と高峰高原ホテル。
1
高峯山と高峰高原ホテル。
こちらは昨日登った水塔山、篭ノ登山と高峰マウンテンホテル。
3
こちらは昨日登った水塔山、篭ノ登山と高峰マウンテンホテル。
シェルター。火口からおよそ2.5キロメートル、外輪山から逃げ込める場所。
1
シェルター。火口からおよそ2.5キロメートル、外輪山から逃げ込める場所。
槍ヶ鞘。カルデラが見えてきた。
1
槍ヶ鞘。カルデラが見えてきた。
トーミの頭。まだ前掛山は望めそうもない。
1
トーミの頭。まだ前掛山は望めそうもない。
9時18分、トーミの頭に到達。これからきっと晴れてくれる。
2
9時18分、トーミの頭に到達。これからきっと晴れてくれる。
さあどうしよう。右回りだと、眺望が得られそうもなければ外輪山のピークを踏んでから楽に引き返せるぞ。
1
さあどうしよう。右回りだと、眺望が得られそうもなければ外輪山のピークを踏んでから楽に引き返せるぞ。
カルデラを覗き込む。300メートルの落差に怯む。崖を下りるようなものだ。
1
カルデラを覗き込む。300メートルの落差に怯む。崖を下りるようなものだ。
なんだかんだ言って、計画どおり下りている。底が近づいてゆく。
2
なんだかんだ言って、計画どおり下りている。底が近づいてゆく。
もう少しで雲が退散する。
2
もう少しで雲が退散する。
Jバンドを望む。
晴れた。見えた。感動した。
8
晴れた。見えた。感動した。
想像どおり、底は気持ち良い。
2
想像どおり、底は気持ち良い。
ようやく振り返る気になった。トーミの頭、黒斑山。草すべりの名だが、裸地部分の滑りは強烈だった。
7
ようやく振り返る気になった。トーミの頭、黒斑山。草すべりの名だが、裸地部分の滑りは強烈だった。
湯の平口分岐。長い50分だった。コースタイムを超えている。
1
湯の平口分岐。長い50分だった。コースタイムを超えている。
レベル2、残念ながら前掛山へは登れない。
2
レベル2、残念ながら前掛山へは登れない。
外輪山たちを見上げる。こちらは黒斑山。
2
外輪山たちを見上げる。こちらは黒斑山。
蛇骨山。
仙人岳からJバンドへ続く稜線。
1
仙人岳からJバンドへ続く稜線。
前掛山を直下から見上げる。
4
前掛山を直下から見上げる。
Jバンドに取り付く。まだ先行者の姿は遠い。
1
Jバンドに取り付く。まだ先行者の姿は遠い。
ここで遅れを取り戻さなければ。
2
ここで遅れを取り戻さなければ。
取り付き点を見下ろす。
1
取り付き点を見下ろす。
Jバンド頂部に到達。今日は四阿山は雲の中。
1
Jバンド頂部に到達。今日は四阿山は雲の中。
北側には薄っすらと雪が。例年なら雨後、凍結していたかもしれない。
1
北側には薄っすらと雪が。例年なら雨後、凍結していたかもしれない。
トーミの頭の左には剣ヶ峰の姿。
1
トーミの頭の左には剣ヶ峰の姿。
仙人岳通過。岩場は続くが、あの草すべりに比べれば。
5
仙人岳通過。岩場は続くが、あの草すべりに比べれば。
ここからだと噴煙吹き出す本峰も見える。
2
ここからだと噴煙吹き出す本峰も見える。
11時57分、蛇骨岳に到達。予定どおり昼休憩にしたいが、満たされた朝食のお蔭で、空腹感が無い。結局、持参したバーナーは二日間ザックに眠ることとなった。
1
11時57分、蛇骨岳に到達。予定どおり昼休憩にしたいが、満たされた朝食のお蔭で、空腹感が無い。結局、持参したバーナーは二日間ザックに眠ることとなった。
噴煙が季節外れの積乱雲のように見える。
10
噴煙が季節外れの積乱雲のように見える。
今日の青空に感謝。
2
今日の青空に感謝。
今朝よりも、カルデラの森が近くに見える。
3
今朝よりも、カルデラの森が近くに見える。
外輪山最高峰の黒斑山から望む。
4
外輪山最高峰の黒斑山から望む。
壮大な景(ひかり)、見果てぬ夢。
11
壮大な景(ひかり)、見果てぬ夢。
浅間外輪山たちよ、素敵な稜線歩きをありがとう。
2
浅間外輪山たちよ、素敵な稜線歩きをありがとう。
トーミの頭。最も山頂らしい姿です。
4
トーミの頭。最も山頂らしい姿です。
剣ヶ峰さん、あなたも外輪山でしたね。
1
剣ヶ峰さん、あなたも外輪山でしたね。
八ヶ岳から噴煙を見つめ、いつか本峰に登れるよう祈っていたなあ。
1
八ヶ岳から噴煙を見つめ、いつか本峰に登れるよう祈っていたなあ。
下山は中コースを選んだ。
1
下山は中コースを選んだ。
昨日の3峰にも感謝。
1
昨日の3峰にも感謝。
午後2時、車坂峠に到着。二日間、良い山歩きができた。あとは、ゆっくりと。
1
午後2時、車坂峠に到着。二日間、良い山歩きができた。あとは、ゆっくりと。
これからバスの発車時間までお世話になります。
2
これからバスの発車時間までお世話になります。
先ずは展望風呂。
4
先ずは展望風呂。
そしてこれ。
最後の1枚は、富士山、あなたです。浅間山は負けずと雄大かつ美しかった、ですよ。
10
最後の1枚は、富士山、あなたです。浅間山は負けずと雄大かつ美しかった、ですよ。

感想

 浅間山の山域には、5月の連休に訪れる予定だったが、「宣言」により延期を余儀なくされ、さらにこの間、噴火警戒レベルが2に引き上げられたことにより前掛山へ行けなくなってしまった。
 けれども悪いことばかりではない。そこここに感じられる晩秋の趣や、「Go To」や新幹線の大幅割引などは、思いがけずプレミア感を与えてくれた。金色に輝く湿原、雄大な浅間山の姿、眼下に見下ろすカルデラ、そしてようやく叶ったリゾートホテルでの滞在、忘れられない山旅となった。

 新幹線で山に向かうのは久しぶりだが、乗車前にベックスでコーヒーを注文する「習慣」は忘れていない。車内は予想以上に空席が目立ち、静かな時間を過ごせた。高崎を過ぎた頃から車窓には青空が映り始めた。みるみる雲の量が減ってゆく。
 佐久平駅には8時16分着、バスの発車まで9分であるため、乗り換え時間、乗車人数について心配していたが、乗客は私のほかに6名、全くの杞憂であった。高峰高原ホテルのバス停には、定刻どおり9時18分着、自宅を出てから4時間足らずで辿り着くことができた。
 先ずは高峰温泉を目指して車道を歩く。前方には水ノ塔山と東篭ノ登山が待ち受けており、振り返ればゲレンデ越しに今日の宿、高峰マウンテンホテルが在った。
 登山口を発ったのは9時45分、私にしては極めて遅い出発となった。ゲレンデの最上部を横目に見ながら岩がちな道を進む。高度を上げるに連れ、強風が吹き始める。予報によれば、風速20メートルは覚悟しなければならない。瞬く間に吐息が白く見え始めた。
 水ノ塔山は、意外にも岩峰、直下には大岩が待ち構えている。風は容赦なく叩きつけ、少しでも安定を欠くと岩から滑り落ちそうだった。何とか辿り着いた山頂で、その素晴らしい眺望を堪能したのち、次なる峰を目指す。
 40分後、東篭ノ登山に立った。風は更に強く、唯一の岩陰で突風を凌ぐ。パンをかじり、隙を見て東西南北の山々を見に出る。四阿山と後立山連峰が印象的だ。繰り返しているうちに大分撓れるようになった。今日の目的地に向かって「雪洞」を出た。
 池の平湿原入口には誰もいなかった。夏場はマイカー規制されるほどの人気スポットも、この季節は閑散としている。先ずは、別名、三方ヶ峰旧火口湿原の「外輪山」を辿る。箱庭のような湿原は、低く立ち込めた雲に今にも覆い尽くされそうだった。まさか雨は降るまい。わかっていても自然に歩が速まる。
 今から思えば不思議な体験をした。雲の切れ目からわずかに射した陽の光が、金色の野を照らして行く。まるで映画のワンシーンのような光景が眼前にあった。やがて何事もなかったかのように青空は広がり、ちぎれた雲が漂う。
 昨年の入笠山大阿原湿原の時と同様、湿原の中に私一人がぽつんと存在していた。心底癒される時間と、静寂に包まれた空間を思う存分楽しんでいる。いつまでもその場にいたかった。
 冬の布団の中から抜け出る勇気で、湿原をあとにする。林道を最高速の歩みで東へ進む。高峰温泉を通過し、おもむろにゲレンデに足を踏み入れる。すり鉢の要に存在する、瀟洒な建造物、いや作品に向かって一直線に近づいて行った。
 杉板本実型枠の壁と巧みに配された窓、その美しい姿が、ゲレンデ側に擁する池に映し出される。主張をしない淑やかさで、見る者を惹きつける。チェックインまでの時間、ただただ魅せられていた。

 本物のリゾートホテル、久しぶりに五感で感じた。素晴らしい滞在だった。外観に違わないシンプルモダン・コンセプト、粋を集めた設備機器、素敵な料理と笑顔、非の打ちどころが無い。ここまで書いて気恥ずかしいが、チェックアウトの際、設計者を尋ねると、私の古巣であることが判った。足取り軽く登山口へ向かったのは言うまでもない。
 車坂峠から表コースで外輪山に向かう。予報では昼前から晴れることになっていた。珍しく朝食を取ったこともあり、いつになくゆっくりと歩を進めた。西と南に開けた場所からは、昨日訪れた山々や小諸市街を見渡せた。今日も良い一日となるだろう。
 槍ヶ鞘から霧に霞むカルデラを望む。想像以上に深く、針葉樹林帯が美しい。その場所に下りたい衝動を抑え、トーミの頭に向かう。それはまるで岬に建つ灯台のように、浅間山、カルデラ、外輪山を見守っている。晴れていなくともそれらの存在を教えてくれているようだった。
 いざその場に立つと、思わず怯んでしまった。300メートルの落差を一気に駆け下りるような急坂に、である。しかしここを下りなければカルデラの世界に入れない。意を決し、下り始めた。
 然もあらん。草すべりの個所よりもはるか手前、滑ったら止まれなくなりそうな裸地部分に悪戦苦闘する。コースタイムより多くの時間を経て、ようやく「底」に辿り着いた。いつの間にか雲は退散し、見上げれば前掛山が眼前に聳える。圧巻とはこのことを言うのだろう。
 上から覗くと神秘的な世界も、中に入れば、ごく普通の森の中。湯の平口分岐、前掛山分岐を経て、Jバンドに近づいてゆく。草木の育たない場所から望む外輪山の姿は、さながら堀から見上げる城壁、とても登れそうにない。などと他愛もない想いをしているうちに、雲はそのほとんどが消失していた。早く遅れを取り戻し、その一画でバーナーに火を灯さなければならない。
 Jバンドは見た目よりも登りやすい「壁」だった。頂部近くでトラバース路は狭まるが、高度感を覚えるほどではない。登り切って、雲に包まれた四阿山を望む。さらに続く岩場へと足を向けた。
 草すべりの道に比べれば、岩場を進むことはどれほど容易いことか。時折、噴煙立ち昇る本峰を振り返りながら、存分に楽しんだ。仙人岳を通過し、休憩予定地の蛇骨岳に到達、12時だった。遠く姥ヶ原の集落から正午を伝える放送が聞こえて来た。腰を下ろし、バーナーとカップ麺を取り出そうとして、食欲の無いことに気が付いた。あの満たされた朝食のお蔭で、気力も体力も充実、しばらく青空を眺めて今日の目的地に向かった。

 そよ風は心地よく、稜線の道は当然のように快適だった。見下ろせばカルデラの森。今朝よりも深さを感じない。浅間山は複合カルデラを有する火山。次の訪問時には、前掛山から内側を望みたい。
 岩場での巻き返しや、休憩時間を削ったために、黒斑山には予定よりも40分ほど早く到達した。浅間山の姿を目に焼き付ける。そして素敵な山野に別れを告げ、下山の途に付いた。
 中コースは樹林帯の中をひたすら下る。ほぼ同じ勾配が続くが、飽きることは無かった。ピッチを上げて下山後の楽しみに思いを馳せる。14時、登山口の車坂峠に帰着した。
 高峰高原ホテルにバスの発車時刻までの2時間半を預けた。温泉に浸かり、ソフトクリームを食し、八ヶ岳と富士山を望みながらコーヒーを味わう。雲はたなびき、晩秋の空はどこまでも高い。充足感に包まれながら機内モードを解除し、ネットで下山通知を行い、心配していない人々にスタンプと写真を送った。壮大な夢から覚める時間が近づいていた。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:729人

コメント

まだコメントはありません
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

無雪期ピークハント/縦走 志賀・草津・四阿山・浅間 [日帰り]
技術レベル
2/5
体力レベル
3/5

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら