戸隠山〜伝説の天岩戸の岩稜踏破
- GPS
- 08:17
- 距離
- 10.5km
- 登り
- 902m
- 下り
- 908m
コースタイム
【実働】6時間6分
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
駐車場は広く、無料。 長野駅前から戸隠神社奥社・イースタンキャンプ場へのバスの便もある。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
【コース状況】 蟻の戸渡りまでは、岩盤・一枚岩など必要な部分には鎖がきちんと整備されている。 蟻の戸渡り・ナイフリッジ(剣の刃渡り)は全ての部分に鎖があるわけではない。 かなり危険度の高い難所なのでいやがうえにも慎重に行動し、悪天候の時は回避するのが無難。 一不動からの下りでは帯岩と滑滝に鎖が付けられており、問題はない。 キャンプ場入口と奥社参道入口を結ぶ"さかさ川遊歩道"は、キャンプ場側からは入口が工事中のため入れない。 【水場・登山ポスト】 水場は戸隠奥社と氷清水。 登山ポストは戸隠奥社社務所脇の登山口入口と戸隠牧場入場口に、また登山者カウンター装置が奥社社務所脇と戸隠牧場奥の牧柵のところにある。 【飲食店・温泉等】 戸隠キャンプ場に飲食店・売店あり。戸隠中社まで行くとそば店多数。 最寄の温泉は戸隠中社奥の"戸隠神告げ温泉"で、中社バス停から徒歩約10分。 |
写真
感想
先月数年振りに山登りを再開してから今回が3度めの山行となる。前2回は無理も危険もなく足慣らしできる山を選んでいたが、次はまだ日が長いうちにもう少し距離を伸ばしておきたかった。
戸隠山は妙高山とともに地元の北信五岳の中でまだ登ったことがない。何となく行きそびれていたのは、戸隠奥社へ参詣に行くたびに行方不明・遭難者情報の張り札を見てきたことや、有名な"蟻の戸渡り"に名前負けしていたというのが正直なところで、それが癪の種でもあった。今回は半引退状態から復帰した気分の盛り上がりが優ったといったところか。
朝7時50分、戸隠奥社参道入口駐車場に着く。両肩の五十肩は症状が出てからかれこれ半年になるが一向に良くなっておらず、リュックに腕を通そうとすると相変わらず激痛が走る。あと半年くらいは辛抱か。
杉並木の中を約30分で奥社に到着。登山道は手前の社務所脇から始まるが、まずは奥社で安全を祈願する。見上げると、遠く日向の国からアマノタヂカラオノミコトが投げ飛ばしたという"天の岩戸"が屏風のように峻立している。
登山届をポストに入れて出発。まだこの辺は紅葉前だが、道にはクルミと思わしき実がたくさん落ちている。途中、同じコースだという年配の登山者を追い抜いた際、「クルミがたくさん落ちていますね」と言われ、「そうですね」などと答えていたが、後で踏み付けて中味を出してみると、クルミではなくトチノミだった。
約40分で五十間長屋に到着する。岩壁の下をえぐり取ったようなオーバーハングは自然のものなのか、はたまた昔の修験者によるものか。前方向にはペンキでバッテンがしてあり行き止まり、道は岩壁の左端をよじ登る。間もなく百間長屋のオーバーハングの下を通過。なるほど長さは五十間長屋の倍くらいか。
この先は次々に鎖場が現れる。特に危険は感じないが、結構大きな一枚岩だったり、足掛かりが見つけにくい箇所もあったりする。こうした場所では、手にしたステッキが三点保持や鎖を掴む際に邪魔になるが、リュックに括り付けるとなるとまた肩の痛みに堪えなければならないので、余計な苦労をしながらも一つ一つクリアしていく。
10時頃、一人の登山者と行き違った。こんなに早い時間帯にもう往復してきたのかとびっくりする。それとも一不動避難小屋にでも泊まっていたのだろうか?
登山口から約1時間半、いよいよ蟻の戸渡りが眼前に現れる。見たところ、半分くらいまではすんなり立ったまま行けそうだか、その先はわからない。ちょうど上から登山者が一人下りようとしているので、待ちながら様子見する。見ていると時々岩陰に姿が見えなくなるので、場所によっては四つん這いになっているのだろう。10分ほど掛けて難関を越えてきた彼に思わず「お疲れ様でした!」と声を掛ける。彼もようやく緊張が解けた様子で「まだこんな所ありますか?」と尋ねてきた。下りではなおさら高度感があってさぞやおっかなかっただろう。なに、これほどの所はもうありませんよ。
さて、意を決して挑む。片側だけならともかく、両側スパンと切れ落ちていて、しかも歩ける部分は肩幅くらいなのだから、さすがに恐ろしい。10mくらいは立って進んだか、変に傾きのある大岩まで来て行き詰まってしまった。右側にわずかに足場があるので、鎖を頼りにエスケープし、へつった最後にまた這い上がる。するとさらにか細いナイフリッジが待っている。とても立って行ける気がしない。長さ約5mくらいのリッジを、馬乗りになる形で少しずつ尻をずらして進む。"線"の部分を乗り切って"面"といえる場所に立ち上がったときの安堵感といったら…。
雨降りだったり風があったりしてしかも下りだったりしたら、とても来る気がしない。たがもう通過できた。写真に納めて最後の一登りにかかる。
あっけなく登り着いた所が八方睨だ。戸隠山の最高点ではないが、名前の通り展望は素晴らしく、休憩に適したそこそこのスペースもある。昼食を摂るには最適な所だが、まだお腹が空いていない。この辺りまで来ると紅葉した木も多く、青空とあいまって景色はとてもカラフルだ。
ここから西に向けて本院岳・西岳へと縦走路が延びているが、事故の多くはそこで起きている。自分ごときが一人で踏み込むような所ではない。無条件で東へと向かう。
1,911m(地図上は1,904mだが…)の戸隠山頂は小さなスペースで樹木も繁っているが、高妻山や八方睨を眼前に、周囲はひとしきり見通すことができる。まあ通過点のようなピークではあるが、これで4つめの北信五岳踏破だ。
この先は小さくアップダウンを繰り返しながらの稜線歩きが続く。途中片側が切り立った所もいくつか通るが、比較の問題で恐怖感は全く感じない。屏風岩辺りは岩壁が縦縞状に切り立ってフィヨルドのように入り組み、深い陰影を刻む様が何ともグロテスクだ。この稜線歩きは景色も良く、脇にはリンドウが多く咲いており、なかなかに楽しい。
一不動への下りに入ると道は急になり、だんだん膝が笑い始め、両足付け根の筋も痛くなってくる。一不動の避難小屋に着いたら休もうと思うのだが、それがなかなか着かない。人の声が間近に聞こえてはいるのだが…。
ようやくたどり着いた時には人の声は全くしなくなっていた。足はガタついているが、腹はまだ減っていない。
避難小屋には、し尿による水場の汚染が懸念されるので宿泊はしないようにと書いてある。
涸れた沢状の石ころの道を下っていくと、10分ちょっとで氷清水の水場に着き、またまた休憩を取る。名前の通りとても冷たくてうまい。地図上ではここは"一杯清水"と記されていることも多いが、わざわざ「ここは"氷清水"なので、地図上の"一杯清水"という表記は訂正してください」という内容の札が吊るされている。地元のこだわりが感じられて面白い。
帯岩の鎖場は鎖を掴まなくとも楽にトラバースできる。不動滝を左に見てさらに10分ほど下ると滑滝の鎖場となる。ここは鎖に頼らないと難しい。急な下りが続いたので、膝のクッションはもうほとんど利かなくなっている。30分しか歩いていないが、大きくなった大洞沢を最初に渡る所が広くなっていたので、ここでも10分ほど足を休める。
だんだんと傾斜が緩くなり、沢を何回か右に左に渡るうちに、突然牧柵が現れ、牧草地に入る。ようやく平地まで下りたという安堵感に浸るが、疲れた足にはここから先も結構長かった。牛・山羊・馬などを横目にやっと牧場を抜けてキャンプ場に入る。週末を前にあちこちにテントが張られている。ようやく空腹を感じるようになっていたが、今更一人で弁当を広げるような場所はなかった…。
キャンプ場入口から奥社参道の駐車場までは"さかさ川歩道"を行くつもりだったが、工事中で通行止めだったため、休憩の後アスファルトの県道をいやいや30分ロードする。
車にたどり着いたのは16時15分、本日の実働6時間6分。足はヘロヘロになったが、ガイド地図上のコースタイム7時間5分よりは短縮できた。少しは自信も戻ってきたし、次はどこにしようか楽しみにもなってきた。
だんだん日が短くなる中、今年はあと何回山へ行けるだろうか。
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