記録ID: 37351
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ハイキング
北陸
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)31・冨山へ。
2006年09月22日(金) 〜
2006年09月26日(火)
- GPS
- --:--
- 距離
- ---km
- 登り
- ---m
- 下り
- ---m
コースタイム
9/22 姫川河口ー親不知ー市振ー宮崎海岸
9/23 宮崎海岸ー黒部川ー生地
9/24 生地ー片貝川ー魚津ー早月川ー常願寺川
9/25 常願寺川ー冨山
9/26 冨山散策
9/23 宮崎海岸ー黒部川ー生地
9/24 生地ー片貝川ー魚津ー早月川ー常願寺川
9/25 常願寺川ー冨山
9/26 冨山散策
過去天気図(気象庁) | 2006年09月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
9/22 9時頃、人がやって来る。またお巡りか?なんて思いつつテントから顔を出してみると、作業服を着た冴えない感じのおじさんが二人立っている。河川事業の人だそうで。「増水に気を付けて下さい」などとトンチンカンなことを言い残して去っていった。ご苦労さまです。11時頃になってようやく出発。まだ雨飾山乗っ越しのダメージが相当残っている。というより昨日よりむしろ痛みは酷い。年を取ると筋肉痛が遅れてやって来るって奴か。ちょっとした段差も慎重に下りないと、肉離れでも起こしそうだ。バリアフリーの必要性をヒシヒシと太股のあたりに感じる。 青海を過ぎてしばらく行くと、いよいよ日本海岸最大の難所、親不知に突入。北アルプスの嶮しい山脈が北のどん詰まりで日本海に躍り込んだ急嵯な海岸線である。道を付けるのも容易ではない。山側へ迂回するわけにもいかないので、道はやや強引に海岸線の崖に沿って続いている。旅の途中で会った関西人の旅行好きのおっちゃんが言っていたことを思い出す。 「日本海側の道は大抵しっかりしとるけど、親不知は歩かん方が身のためやで。」 まだ今回の旅行を始めて間もない頃、北海道の黒松内というところの道の駅で野宿していた時のことである。大阪から日本中旅行してまわってるやうな人で、徒歩旅行なんかも経験があるという話だった。「ここはこっちへ行った方がええんとちゃうか?」などと言いながら、自分のことの様に楽しげに地図を見ていた。日本海岸を行く限り道はしっかりしてるし、特に難所はないよ、などと言い残して一度立ち去ったあと、慌てて引返して来たかと思うとこんなことを言った。 「あかんわ、親不知を忘れとった。あっこは危ないから歩かん方がええで。」 「つっても、あそこを通れないとなると先へ進めませんよ?」 「せやなあ。せやけど多少遠回りしてでも、親不知は避けたほうがええわ。 あっこは歩いたらあかん。忘れとった。わし、忘れとったんや。」 まさか日本の国道はそこまで危険ってこともあるまいと思って、忠告を無視してこのルートを選んだわけだが、ちょっと緊張だ。 覆道の続く狭い道を右手に海を見ながら歩いていく。眼下の海岸線にも護岸工事が施されていて、コンクリートブロックの上を歩いて行けそうにも見える。ま、どうやってそこまで降りるかが問題だらうね。しばらくで「親不知ピアパーク」という道の駅に着く。この周辺は狭いながらも、民家の影もチラホラ見えて、道の駅はカップルや家族連れの姿が多い。のんびりした雰囲気に、もう難所は通り過ぎたものと勘違いしてしまった。なんでえ、たいしたことねえじゃん。あのおっちゃん、ちょっと大袈裟だったんとちゃうか?ところが、核心はここから先なので。 崖の間を縫うようにしてつけられた道は、先ほどよりさらに狭くなって、グネグネと曲がりくねって続いている。勿論歩道などあろうはずもない。特にカーブの内側に入ってしまった時などは、死角に入ってしまうので、何時撥ねられたって不思議はない。かといって、簡単に横断出来るやうな所じゃないし。ヤバい。おっちゃん、ここはヤバいでぇ。と、今更気付いても遅い。もうこうなったら行くしかないのだ。ひたすら疾翔大力様の御名を唱えつつ合掌して歩く。するとすぐ目の前でパトカーが止まった。げっ、何だよ。こんなとこで職質か?窓から顔を出したのは、まだ若い巡査である。 「ここは危ないですから気を付けてくださいね。」 だってさ。知ってんだよ、そんなことは。威かすんじゃねえや。そんなこんなで、無事市振に到着。ここまで来てしまえば、今度こそだいぜうぶだ。ありがたや、疾翔大力様。そしてうまいこと避けて走って下さったドライバーのみなさん、ありがとう。 「越後市振の関」という道の駅で大休止。なんかもう疲れ果てた。ここはなんか、道の駅ってよりはコンビニと食堂のあるサービスエリアって感じだな。コロッケパンとドクターペッパーで鋭気を養うことにする。ドクターペッパーって地域によっては知らない人もいるんじゃないだらうか。はっきりした分布はよく分からないが、関東から上越を結ぶライン上に多く棲息しているやうに思う。札幌なんかに住んでいると、とんと御目に掛かれない。そんな訳で見掛けると思わず買ってしまうのだが、決して美味いものではない。どちらかというと不味い。そのくせ一部に熱狂的な愛好家を持っている不思議な飲物である。どんなに疲れ果てて喉が渇いていようとも、不味いモノは不味い。分かっていても飲んでしまう。こういうのを“まずうま”とでも言うのだらうか?ジャジャ麺に通じるおかしみを感じる。 ボチボチ日も暮れはじめる。正面にまばゆい夕陽を浴びながら歩いていく。やはり、日本海といえば夕陽だね。これから数日間、日本海岸を歩いている間は、幾らでも美しい夕陽を眺めることが出来るのだらうか?宮崎海岸まで行って野営することに決める。距離的にも丁度いいだろう。やがて日も沈んで、残照の道は急速に宵闇へと姿を変えていく。このあたりは温泉が出るらしく、道端に幾つか入浴施設がみえる。名物なのか「鱈汁」の看板を掲げた店も多い。宮崎海岸まで我慢して歩いて、温泉入って、美味いモノ食って・・・などと思っていたのだが、宮崎海岸にはしょぼい商店が一軒あるきり。温泉も美味いモノも諦めて、商店で塩豆とタラの乾物を購入。海岸に出て野営。暗闇の中、ヘッドラムプを頼りにせっせと薪を集める。暗いこともあって大して集まらなかった。まあ炊事くらいは出来るかな。風が出てきたのでよく燃えるが、薪が少ないのであまり元気に燃えてもらっても困る。 タラの乾物など焼きながらお酒なんて飲んでいると、急に背後から声をかけられてかなりびっくりした。こうも易々と俺様の背後を取るとは、さてはお巡りか?と思ったら、立っていたのは地元のおっちゃん。変なのが来て焚き火なんてしてるから様子を見に来たのかもしれない。あんまり威かさないで欲しいものだ。 9/23 またしても3時頃、忽然と目覚めてしまった。老人か?俺は。薪はとっくに燃えつきてしまっているので、さみしくラジヲ聴いたりラッパ吹いたりして夜明けを待つ。そんなわけで今朝もお陽さまが昇ってから二度寝。人の気配で目を覚ましてみると、くゎんこう客と覚しい人たちが波打ち際を逍遥している。どうやらこの海岸は景勝地のようだ。しかも今日は秋分の日。世間では連休ってやつなんだそうで。完全におじゃま虫だな、俺ってば。 昨夜にも増して風が強い。台風14号が日本の南海上を通過中で、北東風が吹き込んでいるのだ。山側には低い雲が垂れこめている。さざ波が落ち着きなく群れ騒ぐ海面は異様な色に光っている。作り物の食品サンプルみたいで嘘臭い。おまえら、さては、ほんたうの海じゃないな?風のせいでテントの撤収に手間取る。 9時頃、朝飯も喰わずに出発。泊まで歩いて、駅前のスーパーでパン買ってたべる。海沿いの道に出てみるが、護岸工事で死に絶えた海岸が続いている。なんでこんなになっちゃうのかね。サイクリングロードみたいなのを歩いてみたが、大して面白くもないので内陸の方へ戻って来る。だからといってこちらが面白いかというと、そういう訳でもなく、何処かぼんやりしたやうな道が田んぼの中に続いている。どの辺を歩いているのかも今一つはっきりしない。そのうち黒部川に出る。憧れの黒部川を渡る時にはどんな気持ちがするだらう?なんて思っていたものだが、別にたいした感銘も受けない。山の方を見上げると、低い雲が垂れ込めていた。どうも頭がぼんやりしている。野菜不足だらうか。 生地の町にさしかかると、あちこちに水が湧き出しているのが目に付く。“黒部扇状地湧水群”という奴である。町中、至るところからどぱーっと元気良く吹き出している。主要な所にはちゃんと小屋が掛けてあって、住人が生活用水として使えるようになっている。飲んでみる。美味い・・・気がする。正直な話、僕は水の味なんて良く分からない。ブラインド・テイストなんて試みたら、惨敗しそうだ。でも水が湧いているのを見るのは何か好き。あちこちの軒下にドパドパと湧いているこの町の風情は悪くない。 やがて魚の駅とかいう所に着く。ここで焼き魚定食でも食べてみるか?と思ったのだが、財布にお金が入ってないのに気付く。何処か近所にお金を下ろせるところがないものか。店の人に訊いてみたが、どうも判然としない。最近ではコンビニでもお金がおろせるやうになったので、近所にあったローソンに行ってみる。しかしここにもATMは無いみたいだ。一応近くにATMがないか訊いてみる。しかし此処のバイトのおねえちゃんに至っては、ATMを知らないみたいだ。 「このへんにATMってないですかね?」 「はぁ、ATM・・・。それは一体どのやうなモノでせうか?」 ど、どのやうなって言われても・・・。ATMはATMだろ?田舎だからなのか、単にこの娘がおバカなのか、丸っきり話が通じない。脱力した。すっかりやる気なくしてしまった。お金を下ろすのは諦めて手持ちの金でなんとかすることにする。スーパーでかき揚げとウドンとグレープフルーツ買って、生地第一温泉とやらに入ったら所持金は620円となりにけり。この温泉は連休だというのに閑散としちゃっている。なんてことない、ナトリウム泉の循環沸かし直しの湯だった。 6時頃生地の漁港に到着。海岸に沿って釣り師が集まって来ている。なんか楽しげな雰囲気の所だ。折しも夕陽が能登と覚しき島陰に消えた。適当に波打ち際のコンクリートブロックの上にテント立てて、グレープフルーツ食べながら釣りに興じる人達を見物。釣りってそんなに面白いんだらうか? かなり夜も更けてから釣り師のおっちゃんがやって来て、そこは波が被るから危ないよ、なんて教えてくれる。俺も確かに、海に近過ぎるとは思ったんだ。 「もう5分も行ったところにイノセントな公園があるから、そこの四阿で寝たらいいよ。」 まあ、そういうことなら移動してみようか。ということで、荷物をまとめて行ってみると、なんと工事中だかで立入禁止になっている。なんてことだ。おっちゃんに悪気はないんだろうけど、そりゃあんまりだ。泣きながら別の寝床を探す。やたら暗い堤防の上みたいな所で寝る。 9/24 今日中に冨山の町に到着出来ない事も無かったが、あまり遅い時間に都会に入るのもダルいので、一日刻むことにする。神通川か常願寺川の河口で寝ればよろしかろ。というわけで、のんびり海沿いを歩いてみる。途中から道が無くなるがかまわず行く。片貝川と覚しき川の河口で行き止まり。橋はかなり上流の方に付いている。あそこまで迂回するのも何か悔しい。河口付近なので水が砂浜に吸い込まれて、川幅が狭くなっている。なんとか渡れそうな気がする。という訳で、靴を脱いで渡渉を試みる。たかだか5メートル程であるが、ズボンを濡らしてしまった。パンツの中の大事なモノまでビショビショだ。むーん、眠気すっきり。 魚津の町までは快適なサイクリング・ロードをいく。風がさはやかに吹抜けていく。途中、バイクに乗った怪しげな若者に話しかけられる。アジアンテイストなシャツにレゲエ風なモジャモジャ頭。見るからにロクデナシだ。聞けば、札幌暮らしが長かったとかで、なるほど、バイクのナンバープレートは“札幌”になっている。与那国島で出会った女の子の実家が冨山のこの辺だとかで、こちらに住み始めたんだそうだ。なんと彼の出身は千葉。しかも松戸の牧之原。「ランラ、ランラランラ、牧之原」だろ?(牧之原小学校の校歌。)ものすごい近所じゃん。本人曰く、「ドラクエのやうにフラフラしている」とのこと。キミはいいね、気楽そうで。ヒトの事は言えないか。へんな長い竹筒みたいなものを持っていたが、何に使うかは敢えて訊かなかった。楽器のやうの気がした。それにしても広いのか狭いのか分からん世の中だ。もちろんこの時点では、まさか自分が与那国でキビ刈りなんてすることになろうとは知る由もないのであった。 銀行を探すべく魚津の町に突入。しかし閑散としちゃってるな、この町は。アーケードの寝静まりっぷりがハンパねぇ。日曜日だからなのか? 魚津の町を抜けてから、またしても懲りずに海沿いを行く。案の定、早月川で行き止まる。学習しないやつだね、俺も。なんか転石伝いに渡れそうな気も。面倒なので今度は靴を脱がずにトライ。あっけなく失敗。じゅぽじゅぽ言わせながら歩くハメに。 滑川の町に突入。海沿いの街並みは仲々のブルース感だ。無理矢理防波堤の上を歩こうとして、ヒトの家の裏庭みたいなところをさ迷うはめに。路地裏マニア垂涎のスポットである。晩飯の買い出しをしようと思ったのだが、大きなスーパーを見付けられず小さな商店でレトルトのカレーとハンバーグを購入。水橋へ向かう途中、白人の女三人組を見掛けた。こんな所で珍しい。なにやってるんだろ。くゎんこうか? 常願寺川を渡って人気のないあたりまで行ったところで野営。車で入ってこれない所なので至って静か。こーこーせいのバカそうなカップルがいちゃついてる位で、釣り師の姿とてない。 夜、またしても目覚めてしまう。なんなんだらうね。さひわひマキはふんだんにある。夜通し焚き火して遊ぶ。 9/25 テントが暑くて寝ていられなくなったので、仕方無く10時頃起床。無駄にラッパなど吹いて遊んで、お昼ごろ出発。どうせ冨山の町はすぐそこだ。海沿いのサイクリングロードみたいなところを神通川まで。河口近くの岩瀬浜という砂浜には結構人が集まっている。パラセーリングやウィンドサーフィンなどに現を抜かしているやうだった。漁港には寄らずに、30号線を町へと向かう。途中、川が見たくなって土手に上がってみる。大抵土手の上って遊歩道になってたりするもんだけど、ここは狭い車道が付いていて、しかも、近道をしようといういぢきたない車が結構通る。川を眺めながら歩けたらよかったんだけど、危なすぎる。本流脇の運河に沿って歩いてみる。神通川は、かつてはかなりの暴れ川だったようで、治水事業に相当苦労したやうだ。現在の流れは人為的にかなり変えたものなんだとか。その歴史が古い水門の案内板に綴られていた。 やがて冨山市街に突入。駅裏にはやたら高校生がウロついている。みんな見事にバカそうだ。ちゃんと勉強しなさいよ。徒歩旅行をしてると思うのだが、高校生って都市にしかいないものだ。田舎道では高校生てものを殆ど見掛けない。たぶん、家と学校を往復する以外は街中しかウロつかないんだらう。田舎道を散策なんて無駄な事はしないお年頃なのだ。 駅のコインロッカーに荷物をおいて町を散策してみる。初めての町なので勝手が分からない。市電が走っていたので取り敢えず乗ってみる。目抜き通りと覚しきあたりでテキトーに降りて、アーケード街を冷やかしてみる。なんて寂寞とした界隈なんだらう。再開発の途上らしく、シャッターの降りた店が多く目につく。この寂寥感は札幌のアーケード「狸小路」の比ではないな。カワイのお店があったので客を装ってピアノなどいぢって遊んでみる。店の人が新製品の説明などしてくれる。 「こちらの商品は反響板がカクカクシカジカで・・・。」 「ほほう、道理で。それにタッチも?」 「グランドピアノのハンマー構造を採用しています。」 「なるほど・・・。」 などと小一時間やってみたが、勿論買うつもりはない。 「住所をお教え頂ければ案内をお送りしますが?」 などと言われたが、そんなものを教える訳にはいかない。現住所は札幌だからね。 適当に路地裏をさ迷いつつ駅前に戻ってきたが、ネットカフェやサウナなんて見当たらなかった。止むなく駅前のシチーホテルに部屋をとる。 9/26 まるでやる気が起きず、なし崩し的に連泊することにしてしまう。折角倹約していても、こんな所で無駄使いしてちゃだめだよな。と言いつつ、夜は桜木町という繁華街に繰り出してみる。おねえちゃんのいる店で飲んでみましたよ。なんか今一つ盛り上がらず、無限のサウダージを感じつつ戻って来る。駅前のシネマ横町という麗しい一角で飲み直す。店のおばちゃんが親切に刺身や牛スジの煮込みなんかをサービスしてくれる。 「ぼかぁ、そんな、親切にあたいしないやうな、ロクデナシなんですよぉ。」 などと情けないことを宣ったりしてみる。居酒屋で弱音を吐いてみるってのも、たまには良いもんだ。 |
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初めまして nobouです。日本海海岸線を歩き始めました。2年目なれど通算まだ7日間でこの先どうなるかまったく未知数ですが、ポツポツと出来る範囲でやって行こうと思っています。
徒歩レコの富山の部分を読ませて頂きました。ほぼ同じコースかと思いますが、親不知のトンネルではやはり恐い思いをされたようで情景が目に浮かびます。
またお邪魔させて頂きます。
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