記録ID: 37589
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ハイキング
北陸
トホレコ(日本縦断徒歩旅行の記録)33・奥飛騨慕情(後編)
2006年10月01日(日) 〜
2006年10月05日(木)
- GPS
- --:--
- 距離
- ---km
- 登り
- ---m
- 下り
- ---m
コースタイム
10/1 一の宮ー位山峠ー山之口
10/2 山之口ー荻原ー下呂
10/3 下呂ー中山七里ー金山
10/4 金山にて停滞
10/5 金山ー平成ー各務原
10/2 山之口ー荻原ー下呂
10/3 下呂ー中山七里ー金山
10/4 金山にて停滞
10/5 金山ー平成ー各務原
過去天気図(気象庁) | 2006年10月の天気図 |
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アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
10/1 たうたう10月になりにけり。だいぜうぶなんだらうか。ちゃんと年末までに鹿児島まで辿りつくんだらうか。日数が減るにつれ心細くなってくる。つってもまだ3ヶ月ある。紙の上では余裕がある計算。普通、人が歩き続けるやうな日数ではない。人の心配を他所に、セミの野郎は何をとち狂ったか未だにミンミンやってやがる。空耳じゃないよな、確かにセミだ。どうしちゃったんだらうね。「秋深し・・・」などと一句読んでみやうにも、一向に気分が出ない。 位山峠を目指してえっちらと急な坂道を登っていく。たいした苦労もなく、「モンデウス飛騨位山」の道の駅に到着。ここはスキー場に隣接しているので冬場は賑わうのかもしれない。今は完全にオフシーズンという感じ。閑散としちゃっている。だだっぴろい駐車場ではいい大人がラジコン遊びに興じている。ラジコンってもののほんたうの面白さが分かるのは、ある程度金の自由になる大人になってからなのかもしれない。休憩室で缶コーヒーなど飲んで、黄昏てみる。スキー場の斜面を牛が歩いている。牛?オフシーズンには牧場になるのか、このスキー場は。 ここから位山峠まではもう一山越えなければならない。幅員が狭いせいか大型車両通行止めになっている。峠の手前には久々野ダムってのがあって、隣接してキャンプ場もある。四阿でぼんやりしてみたが、風が強くて寒々しい。それにどうやら冷たいものも混じっているやうだ。確かに午後から雨の予報ではあったが、いくらなんでも早過ぎやしないか? 峠を越えて急な坂道を下って行くと、道端におよろすい感じの四阿を発見。山之口の集落まではまだ少しありそうだ。どうやら位山への登山道の入り口のやうである。とりあえず一休みのつもりだったが、雨は一向に止みそうな気配もなく、むしろ雨足は強くなっているやうだ。なし崩し的にここでテント張って泊まってしまう事にする。まだ2時をちょっと過ぎたくらいの時間だが、まあいいや。もう風があるので雨の中歩いてるとわびしくなってくる。丁度良く近くに湧水もある。下の集落の水源になってるとのこと。インスタント・コーヒーとアンパンでランチと洒落る。あとはひたすらお酒飲んで、ラッパ吹いてすごす。しかし腰を据えてみると、案外車が通るものだ。道のすぐ脇なので、なんとなく気恥ずかしい。 10/2 雨の降り始めが早かったので一晩で止むかと思ったのだが、目が覚めても相変わらずの雨音。むしろ昨日より雨足は強くなったやうな。まったくうそ寒い天気だ。やる気は何処からも湧いて来ないが、仕方ないので歩きだす。食糧が底をついてしまったので、嫌でもどこかの町まで歩かざるをえない。 少し下ると山之口の集落。ちょっといい感じの所。雨の日はカメラを出すのが億劫だが、がんばって撮影に勤しんでみる。しかし謎に下痢だ。ろくなもの食べてないのになんで下痢なんかするんだらう?とっても侘びしい気分だ。 荻原の町を前にして、通行止めに行く手を阻まれる。なんかの工事をやってるみたいだった。素直に迂回路をまわったが、これが結構な山道。相当登らされた。 無事飛騨川沿いに出て88号線に合流。昨日の峠越えで神通川から飛騨川水系に入ったのだ。丁度いい四阿があったが、さすがに寝るにはまだ早い。今日は何とかして下呂温泉までは足を伸ばすのだ。この天気だ。鼻先に温泉でもチラつかせないとやっとれん。A-coopがあったので買いもの。コロッケなど噛じってみる。しかしじっとしてると寒くて消耗だな。対岸に41号線の賑やかな往来を見やりつつ88号線を行く。パトカーがウロウロしている。何をしてるのかしらんが、気分が滅入ってくるから不思議だ。 夕方無事下呂温泉に到着。仲々大きな温泉街である。町のあちこちに源泉タンクが立っている。これだけの数の旅館の湯を賄うんだから、余程の湯量なんだらう。なんでも日本三大名湯のひとつなんだとか。あとの二つが何処かというと、忘れた。共同浴場を探して乱入。泉質はアルカリ単純泉とのことだが、無味無臭でなんかパッとしない湯。三大名湯ってほどの事もないかな。 湯を上がるとすっかり暗くなっている。さひわひ雨は上がった。さて、今夜の泊りは?飛騨川のほとりに無料の露天風呂がある。広い河原のど真中に湯舟が設えられているのだ。その周りにテントを張って寝れなくもないが、橋の上からまる見えだな。あんな所で湯を使う人の心境ってのは如何なものなのだらうか。そうまでして解放感に浸らなくても良さそうなものだが。 くゎんこうマップを片手に、夜の町をさ迷ってみる。郊外の方に「合掌村」っつーのがあるみたいなので行ってみる。合掌造りの民家を移転してきて展示しているやうだ。施設の端っこの方で寝れるだらうと思っていたが、入口が閉まっている。もっと公園みたいなのをイメージしてたのだが、テーマパークみたいな所のやうで。ちゃんと入場料もとられる。 第二案として「縄文公園」とかいう所を目指す。公園ってくらいだから今度はちゃんと公園なんだらう。地図で見ると合掌村のすぐそばなのだが、実際には結構な高台の上にあって、急な坂道を登るはめに。眼下に下呂の温泉街の夜景が。 晩飯の支度などしていると車の音。き、き、キター!お巡りだ。最近では野宿にお巡りは付き物と半ば諦めている。 「すいませーん、すぐ移動しますんで。おーい、バイト君、撤収!」 などと一人で盛り上がっていると、別にそういうことではないらしい。寝てる分には構わないとのこと。ただ、身分証だけはきっちり確認された。 「こんなところで寝てて、恐くないのかい?寂しくないのかい?」 などと質問された。別に恐くも寂しくもないが、ちょっと恥ずかしいです。 今夜はケイチャンを肴に荻原の地酒など舐めてみる。ケイチャンってのは鶏肉を使った、このへんの名物料理なのだが、どんな味だったかは忘れてしまった。 10/3 下呂をあとに金山を目指す。道の駅に寝ればよろしかろ。温泉もあるみたいだし。小川という所で257号線の分岐を過ぎると、飛騨川の流れは急に渓谷チックになる。このあたりは「中山七里」と呼ばれる景勝地なのだ。今日は晴れ間も見えて、透明な水が美しく輝いている。 昨日靴が雨に濡れたままになっていたせいか、不覚にも靴擦れになってしまった。この痛み、久し振りだ。今日の昼ごはんはビスケットのみ。ウレシイネ。天蓋の中をまさぐっていると、Miya君の所で貰った梅干しが出てきた。なんかペースト状になってしまっている。丁度いいのでビスケットに塗って食べてみる。子供の頃、縁日なんかで食べたやうな味覚。真っ赤な梅ジャムをのせた薄っぺらい煎餅。なんて言ったかな。ぱんだせんべい? そうこうするうちに金山の町に突入。急に拓けて来る。こういう感じってなんかステキ。A-coopで買いものして、コロッケ食べながら道の駅へ。道の駅には温泉が二つ、道を挟んで対峙している。どっちかが道の駅の温泉で、もう一つはまた別系統の施設のやうだ。なにか狙いでもあるんだらうか。どっちかがどっちかに喧嘩売ってるとか?まあどうでもいいか。どっちかの温泉に入ったが、どっちだったか忘れた。紛らわしいんだ。 岐阜のMacchanに電話してみる。Macchanとは日高や台湾で数々の沢旅をともにした仲である。四国・九州をヒッチハイクで周りながら二ヶ月ほど遡渓を試みたこともあった。かつての札幌での同居人でもある。Macchanは岐阜の片田舎でインチキ臭い学習塾を営みながら沢登り現を抜かしていたやうだが、最近結婚したのである。あんな甲斐性無しでも結婚出来るのかと呆気にとられたものだが、今では子供までいる始末。岐阜に抜けたらしばらく逗留させてもらうつもりだ。八雲でkinta氏のところに預けてきたシュラフなんかもそろそろ取り寄せたい。しかしここ数日音信不通。嫁さんの実家がある栃木に行くとかって話だったが、まだ帰ってないのか?折角来たのにそりゃねえよな。 グランドの脇に野営。夜遅い時間になってから雨。また雨?もう来たのか。濡れて歩くのもうやだな。サボっちゃおうか?それとも少しだけでも進んでおこうか。明日朝起きてから考えよう。 10/4 結局サボってしまった。朝寝坊して、起きたら9時を回ってたのでもうめんどくさくなった。どうせ岐阜に行ってもMacchanいねえし。ラーメンで朝食、タバコ一服。ラジヲつけるとゲストで波多陽区が出ている。下積み時代はインスタントラーメンを半分にして朝と晩に分けて食べていたとかって貧乏臭い話をしている。ギター侍も最近あまりテレビでは見なくなったが、どこかでがんばっているのだろう。テレビでバカやるだけが芸人じゃあるまい。 テントで寝転がっていると、電線に疾翔大力様が集まっているのが見える。誰かが合図すると、みんな一斉に空に飛び立っていく。 「さぁ、行こう。飛ぼう、飛ぼう!」 空の高い所で疾翔大力様のお姿はまるで小さな虫みたいに黒い点々になって、右へ左へと忙しなく舞い回っている。やがて再び元の電線の上に集まってくる。空に残るのは二羽、三羽・・・。その最後の一羽がようやく電線に戻って来たかと思うと、また誰かが合図する。 「よし、行こう。さぁもう一度。飛ぼう、飛ぼう!」 そうやって、集まっては散って、散っては集まってと、疾翔大力様は飽かず繰り返しておられる。その貴いお姿をしばし眺め続ける。空は曇ったが、晴れ間も見える。陽射しがあるとテントの中は少々暑い。休養にしてしまうには惜しい一日だったかな。雨はまだ降り出しそうにもない。 温水プールがあるので、昼から暇つぶしに泳いでみることにする。原ノ町でも水泳を試みたやうに、僕は市営プールみたいなところがわりと好きなのだ。インドのプールでも泳いだ。彼の地では泳げない子供の腰にロープを結わえ付けて水の中に投げ入れていた。斯様に市営プールというのは面白いところなのである。ところが、行ってみるとなんと休館日である。じゃ、仕方ないから温泉に浸かって、休憩室でゴロゴロするかな、と思ったら温泉も休み。ぬぬぬ、何よ。何なのよ。道の駅の温泉は営業していたが、へそを曲げて入らなかった。裏手の河原に行ってラッパなど吹いてみる。ふと気づくと背後に釣り師のおっちゃんが立っててビビッた。まったく、釣り師ってやつぁ。 テントに戻って来ると、グランドでは若者が一人、サッカーボールと戯れている。ウォークマンを聴きながら仲々没頭しいている様子。巧いんだか、下手なんだか、びみょーな動きだ。ま、下手かな。 一度荷物をまとめて買い出しに行く。同じ所に寝てるとお巡りに襲撃されそうだから、さっきの河原にテントを移動。あとはラッパ吹いて、酒飲んで。 10/5 5時半頃起床。昨日意味もなくサボったので、今日はやる気満々である。朝食にラーメン作ってると、釣り師が川に仕掛けを回収しに来た。何も捕れなかったみたい。雲は低いがまだ降り出しそうにはない。7時頃元気に出発。道の駅の傍の裏道を入る。このまま国道には戻らず、県道58号線とやらを行ってみるつもり。かなり急な登り坂をしばらく行くと、長洞峠とかいう地味な峠を越える。ここからしばらく下っていくと、道はT字路に突き当たる。はて、どっちへ行ったものか。ボロっちい標識が自信なさ気に左手の方を指している。俺もそうなんじゃないかと思うよ。というわけで左手の方へ進んで行くと、これまた地味な感じの農村に入っていく。何処からかそこはかとなくいい香りが漂っているやうだ。なんの匂いだらう・・・花かな?よく分からなかったが、一応キンポウゲってことにしておく。ちなみにキンポウゲがどんな花なのかも僕は知らない。たぶん、薄い黄色で5センチくらいの秋に咲く花。 さて、そうこうするうちに無事58号線に合流。ボロい標識を信用して良かった。この後、さらに二つほど地味な峠を越えて行ったハズだが、細かいことは忘れてしまった。まあ、なんてことない田舎道である。飛騨川沿いを行くのとどちらが良かっただろうか。どっちも一緒か。 夕暮れ前に「平成」の道の駅に着く。これで「へなり」と読むそうだ。このへんは『地球で一番素敵な田舎町』を標榜しているらしい。たしかにいい感じの所ではあるが、そこまでのことも無いと思うよ。せめて「二番目」にしとくぐらいの謙虚さが必要なんじゃないか?などと思った。それはそうと、この村は元号が変わった時には結構フィーバーしたようである。同じ「平成」だとかって。古い新聞の切り抜きなんかが貼られていた。でも、アンタの読み方「へなり」ですから、残念。などと波田陽区風に突っ込んでおく。この道の駅には足湯がある。ただ足を漬けてるだけでも結構疲れが取れるものだ。ナイス、足湯。物産展も冷やかしてみる。吉岡美穂お薦めの“しいたけスナック”なるものが売られている。しかしお値段ちょっとお高め。購入する決心がつかず、油揚を一枚買ってお茶を濁しておく。 Macchanに電話してみると、今度は繋がった。昨日、夜になって岐阜に戻って来たんだとか。危ない、危ない。 道の駅に併設されたゲートボール場は、屋根つきの立派なもので野営にうってつけのやうに見える。道の駅が閉まって人気がなくなってからテント設営することにして、それまで足湯に浸かってウダウダしてることにする。予報では明日こそ雨で、かなり激しく降るとのこと。ま、明日の寝床は既に確保されているから、どんなに濡れたっていいんだ。いっそ土砂降りの方が盛り上がるぜ?宵闇を待ちつつまったりしていると、背後から妖しい女の声が。 「足湯、ご一緒してもよろすいですか?」 またしても易々と背後を取られた。それにしても俺様を見初めるとは只者ではないな?などと思いつつ振り返ると、果してそこに立っていたのはEkkachinであった。Macchanの奥さんである。なんか明日大雨だと言うんで心配して迎えに来てくれたんだそうで。ぬええい、折角盛り上がっていたのに余計なことを。徒歩旅行なんて興味無い人達からすればどーでもいいんだろうね、俺のやってることなんか。まあ、俺にしたところで「いや、折角だけど歩くのが俺の存在理由ですから。」などとい言って無碍に断ってしまうやうな、生真面目な求道者って訳でもない。どうせここまでも全て徒歩で繋がってるって訳でもないしな。迎えに来ちまったもんはしかたあるまい。あんまりずぶ濡れで乱入されても困ると思ったのかも。うまいことまだテントは立ててねえし。 そんな訳でめでたく(?)岐阜県は各務原へ。途中、関市に寄って鰻など御馳走になる。Macchan宅には、手筈通りKinta氏からシュラフも届いている。何日か前にMacchanのところに送って貰うやうに頼んでおいたのだ。差入れで芋焼酎なんかも入っている。さすがお医者さん。一晩であっさり空けてしまった。 |
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