錫杖岳 前衛壁 注文の多い料理店(その1)
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
4時過ぎ 笠ヶ岳登山口-5:08クリヤ谷渡渉-5:45錫杖沢出合(メパンナさん沢ポチャ)-7:06注文の多い料理店取付き-8時過ぎ登攀開始-12時過ぎ登攀終了(5P)-懸垂下降-休憩-下山-16:23笠ヶ岳登山口 ※5ピッチ目(左方カンテと合流するテラスの下のピッチ)の途中に50cm四方の四角い浮き石がありました。ただ乗っているだけなので要注意。 ※文中に記したグレードは、日本の岩場から引用したもの。自分の体感グレードも参考に記しました。 ※錫杖沢出合から注文の多い料理店の取りつきまでは、北沢をずっと詰めるより、出合からすぐに左岸の踏みあとに入った方が楽。 この踏みあとは何回か北沢に出るが、踏みあと通りまた左岸に戻る。 左方カンテ取りつきの直前で踏みあとが二手に分かれており、左に進むと北沢に出るので、そこから詰めると左方カンテの左面にある注文の多い料理店の取りつきに辿り着く。 |
写真
感想
マルチピッチを始めて間もない頃に登った左方カンテ。
次はその左面にある看板ルート、注文の多い料理店を登りたいと思っていました。
ところが肘を故障して、1年ほどフリークライミングができなくなってしまい、復帰してからも一緒に行ってくれる人がいないので、なかなか機会がありませんでした。
このたびメパンナさんがご一緒してくださり、ようやく念願が叶いました。
とんだご迷惑をおかけしてしまったのですが…。
今回出かけるにあたって最も自信がなかったのがアプローチで、腰痛にどこまで耐えられるかということでした。
そして次に、山に行けないため落ちてしまった体力。
結果的にその二点は何とかなりましたが、一日が限度で、二日連続で本チャンルートを登るのはかなり厳しいということが分かりました。
さて注文の多い料理店ですが、結果から言ってしまうと、残置無視、フリーで登ることができました。
残置無視については迷いもあったのですが、メパンナさんがどちらでもいいですよと言ってくれたので、そうすることにしました。
迷いというのは、このルートで残置無視することにどれほどの意味があるのかということ。
既存の有名ルートでトポも見ているので、初登の追体験にはほど遠い。
ラインは明瞭だし、決まったルートを登りに来ているのであって、好きなところを自由に登るわけでもない。
あとは用意された支点を使わず、自力で登るということに意味があるだけで、言ってみれば自分で自分に限定を課すようなもの。
残置がなければ登れていなかったとしたら自力とは言えないけれど、そうでないのであれば、どれほどの意味があるのか…。
今回は残置無視で登ったことにより、用意された支点がなくても登れることが分かったので、そういった意味ではよかったと思います。
逆に言えば、その点に十分な自信と裏づけがあれば、毎回拘るようなものでもないと思いました。
もちろん講習で教えてもらったことがその礎になっているという前提があってのことですが。
そもそもこのルートには中間支点としての残置はほとんどないので、残置無視といってもハンガーボルトの終了点を使わないということが主になります(とはいえ、そのために時間がかかるのですが)。
そうした既存の終了点がなければ、一々悩むこともないのでしょうが、下降のことを考えるとやはり必要なのでしょう。
海外などでは下降用の支点はルートを外れたところに別に用意されているという話も聞いたことがありますが、このルートの場合、ほとんどそれが重なってしまうのだろうと思います(左方カンテにはしっかりした立木があるし、トップアウトしたら注文の多い料理店の支点を使って下りればいいので、不要だと思いますが)。
この日は猛暑日で山も暑かったからでしょうか、土曜日なのにルートは貸し切りでした。
左方カンテから登って来る人もいませんでした。
登っている途中で人の声が聞こえたので、どこか登っている人がいたのかもしれませんが。
下山時に通った錫杖沢出合にも、テントを張っている人は見当たりませんでした。
もう少し涼しくなってからの方が快適に登れるのでしょう。
朝は少し寒さも感じましたが、登り始めると途端に暑くなり、熱中症になるかと思うほどでした。
登攀については、奇数ピッチを私、偶数ピッチをメパンナさんが担当しました。
1ピッチ目(4級-体感4級)は水平テラスを目指して、適当なところを登ります。
弱点をついていくと、思いの外カムでランナーを取ることができるので、特に問題はないのですが、久しぶりだったので一瞬怖くなりました。
2ピッチ目は左上クラック(5.8-体感5.8+)。
広いクラックからフェイスに出るところや最後にトラバースするところなど、グレード以上にいやらしいピッチでした。
ルート全般に言えることですが、難しいムーブがあるわけではないけれど、いやらしいところが多いという印象を受けました。
アプローチは短いけれど、ゲレンデでなく本チャンルートの緊張感を味わいました。
ちなみにここから最終ピッチまでほとんどクラックを辿っていくのですが、幅が広くてジャミングはほとんどできません。
ラージカムを使ってプロテクションを取り、フェイスクライミングをするような感じでした。
ラージカムはキャメロット4番を2つと5番を1つ持って行きましたが、5番が2つあるとランナウトを最小限にして、ずらす頻度も少なくて済むと思います。
3ピッチ目(5.8-体感5.9+)と4ピッチ目(5.8-体感5.8+)はこのルートのハイライト。
力のあるパーティなら繋げて登れるのでしょう(新しく出版された日本の岩場では、ここは40m1ピッチで表示されています)。
力のない私は、3ピッチ目の出だしで大苦戦してしまいました。
頭を押さえつけられるハングを右から越えるのですが、どこもかしこもびしょ濡れで、ジャミングはすっぽ抜けそうだし、スタンスは滑りそうだし、ムーブにも迷って墜ちるかと思いました。
何とかハングを越えた後も結構いやらしくてランナウトするので、ようやくピッチを切ったときには燃え尽きていました。
ハンガーボルトのある地蔵テラスのクラックはワイドで、5番を中間支点として使ってしまっており、自前の終了点を作ることができなかったので、直下のクラックでピッチを切りました。
ハンギングビレイになってしまい、レッジtoレッジは諦めざるを得ませんでしたが、致し方ありません。
フォローのメパンナさんはサクサク登ってきたので、自分の登攀力がないだけなのでしょうが、かなり厳しいピッチでした。
4ピッチ目はメパンナさんリードで、2つ目のハングを越えます。
こちらはハングを越えるときに、右サイドにいいスタンスがあるので、簡単なんじゃない?なんて言いましたが、ハングを越えてからがむしろいやらしかった。
ハンギングビレイしているときに腰がとても痛くなってきたので、速く登ってくれ〜と密かに祈っていましたが、フォローで登ってみると終了点直下の右に移動するところが怖すぎ。
ちなみにこのピッチ、開拓者の記録を読むとラージカムなどなく、ハングを越えるために肩までクラックにもぐり込んで、クラック内のリスにナイフブレードを叩き込むという重労働をしたそうです。凄いことだ…。
5ピッチ目(5.8-体感5.7)は傾斜が緩くなりほっとしましたが、いいプロテクションがあまり取れないので、思ったよりたいへんでした。
最後の方はプロテクションの取れないスラブと藪っぽい草つきの選択を迫られ、迷わず草つきを選択。
松の木でランナーを取りながら登りました。
草で足を滑らせて一瞬冷やっとしたので、小まめにランナーを取っておいてよかったと思いました。
そして、最後のスラブにハンガーボルトが見えました。
恐らく以前左方カンテを登ったときに無視した残置支点で、そこからは見えない奥の面を登ったのだと思います。
そんなことを思い出しながら、ようやく左方カンテと合流するテラスに到着。
左方カンテを登ったときは、ここで自前の終了点を作ることができず、ハンガーボルトを使ったのですが、今回は何とか自分で構築しました。
一つは頼りない小さな松の木。
揺すると根本がぐらぐらしていたので、テラスの奥の微妙な割れ目にカムでバックアップ支点を取りました。
奥は完全に広がっていたので、手前の僅かな岩の隙間にピンポイントでセットしました。
少しでもずれたら完全に抜けてしまうような支点ですが、松の木との併せ技、ピッチの難易度、メパンナさんの登攀力を総合的に判断してOKとしました。
次のスラブも登って頂上らしきところまで抜ける予定でしたが、ここまでで4時間ほどかかっており、あまりにも暑くて熱中症になりそうだったので終了。
ルートは実質ここまでということで満足し、懸垂下降3ピッチで取りつきに戻りました。
注文の多い料理店は、岩が濡れていたことを差し引いても、想像していたより難しかった。
新しく出版された日本の岩場では5.8にグレーディングされており、言われてみればそうなのかもしれませんが、グレードだけでは言い表せない難しさを感じました。
さて、あとは休憩して下山するだけだったのですが、下りはじめてすぐ北沢の岩場で、痛恨の怪我をしてしまいました。
長く辛い時間の始まりです…(つづく)。
まだ続きがあるの?
ケガ?!たいしたことないといいのですが、「長く辛い」となるとそうでもないのかしらん。ヤマレコ書いてるから最悪骨折ぐらいだと思いますけど大丈夫?
錫杖岳はワタシがクライミングを始めようと思った動機の山のひとつで、マルチが卒業できたらまずはここにと思ってるのですが、金曜日受けた2回目の講習のありさまではいったいいつになるやら
ご心配いただいて、ありがとうございます。
詳しいことはその2に書きますので、お楽しみに!
錫杖はちょいと敷居が高いので、講習を卒業したら、まず二子山中央稜や三つ峠、小川山などで経験を積んでからにした方がよいと思いますよ〜。
レコ楽しみにしております〜。
まずは、おめでとうございます!
残置無視の話は、全く同感です。
無いと登れない(ビレイ点を作る技術、ギアの重量、時間)、というのはクライマーとして問題な気もするけど、大人気ルートをトポを見て登る場合は初登攀的な楽しさとか意義は無い、という葛藤ですね。
その他、細かい葛藤もよく分かります(笑)。
答えが人によって変わる典型的なパターンかと思いますが、熟慮している人とは答えが違っても話が合う、という気がします。
登りも、下山も、本チャン的な厳しさが骨身に染みたようで、何よりでした。
錫杖は、小川山のマルチより、登りそのものも色々と怖いですよね。
肋骨は、僕も沢登り中に転んで折ったことがあります。腰に下げていたハンマーが、肋骨を強く圧迫してしまったのです。やはり、下山が大変でした。レントゲンには、写りませんでした。お医者さんは「その感じなら、たぶん折れてますよ。ただ、他の骨が天然のギプスだから安静にしていれば大丈夫ですよ。」という趣旨の話をいただきました。
ではでは、お大事に!
マルチ講習を受けているときから、いつかは行きたいと思っていたルートなので、完登できて嬉しいです。
自力下山できなかったら、それもふいになってしまうところだったので、そういう意味でもほっとしました。
残置無視の迷いについてご理解いただいて、ありがとうございます。
何が正解ということもないのでしょうが、迷いが生じるのは、経験不足が一つの要因であるように思います。
私の場合、それなりに経験を積んだと言える頃には丁度引退ということになりそうですが。
塾長も肋骨やってましたかー!
某優秀医師(専門外)によると、折れていてもいなくても、やることは同じ(安静)だそうなので、痛みがなくなるまで大人しくしています。
お気遣いありがとうございます。
とりあえず、その後大事にはいたっていないようで…(寝てる間に寝返りで骨が肺を突き破らなくてw)よかったです!
過去3回の骨折経験がありますが、肋骨はまだありません。いやいや、コワイコワイ、怪我はやだやだーー(T_T)
治ったらまた行きましょうね!!
って、元気ですね。
何とか最悪の事態(折れた骨が肺を突き破って呼吸困難)だけは免れることができました。
肋骨には様々な日常の動作が響くようで、痛くて鼻もかめないんですよ。キリッ
8月中には治る予定なので、よろしくお願いします‼
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する