白山系の谷は、これまで流域を分けて入渓してきた経緯があるが、今回入渓した雄谷(おだに)は、本流清水谷までの部分を遡行したきりであり、支流は手つかずのままだった。その理由として、雄谷は入渓までのアプローチが長く、また年によっては林道が工事中ということもあって(今回も工事中で林道からの入輪は不可だった)、ついつい入渓が後回しとなっていた。今回はきちんと計画を立て、万が一林道が封鎖されていても別ルートで入れるようにアプローチルート計画を施し出発した。そして案の定、林道は法面工事で通行不可で、中宮発電所からのルートに切り換えて入渓することになる。発電所からほぼ1時間で雄谷の支流高尾谷に到着。ここまでの上り下りのアルバイトに二人ともヘロヘロ。このアプローチ1時間はかなりこたえた。高尾谷出合には予想通り直瀑(F1)がかかっていた。その下に座ってしばし腰を下ろして休憩。おにぎりを頬ばりながら、登攀ルートを考えた。15分ほど休憩して空荷で登攀開始。このF1は二段滝であり、下段13m、上段5mという構成になっている。ザッキーが右クラック状から登る。見た目とは違って案外フリクションが良く、しっかりとしたホールドがあって比較的容易だった。が、上段は出口がいやらしい感じだったので、この先のことも考えて右から小さく捲くことにする。しかしこの選択が、後に後悔することとなった。高尾谷は中流域に小滝はあるが、顕著な瀑がほとんど無い。一部の滝では(画像のトイ状滝)際どい登攀も混じるが、総じて容易な谷であった。ツメの藪もかなり早めに現れ、朝のアプローチに加えてこの藪漕ぎもかなりこたえた。空は雲一つない快晴だったが、幸い藪の中までは日差しは届かないので助かった。あえいで登ると中宮山から大瓢箪山への道に飛び出した。そこから中宮山の山頂までは一足投の距離だった。中宮山の山頂は、白山側方面が大きく伐採されて、眺望が届くようになっていた。時間もあることから、ここで久々の大休止。しかし今日は先週と大違いで暑くてたまらなかった。さて、帰路は登山道で稜線を大瓢箪山方面に進み、雄谷上流の無名支流を下降するのだが、この周辺は地図でもわかる通り、大きく平坦な地形で、おまけに周囲の藪も手伝って視界もゼロ。登山道の上とは言え、位置確認が非常に難しかった。仕方なくGPSにお助けしてもらい下降点を見つけ出し、一気に下降を始める。しかしこの無名谷の半分以上が渇水して水が流れておらず、まるで藪漕ぎ下降の様相になってくる。そして二人が完全に干上がる寸前にようやく水が流れ出し、ようやく一息。今日は何かと辛いことばかりで参ってしまった。遡行の谷も下降の谷も、どちらも大味な谷。唯一、遡行の高尾谷出合にかかるF1が今回の遡行上でのいちばんのハイライトであり、その上段を、谷のその先を予測して捲いてまったことがなにより心残りだった。このような谷は再度遡行対象となる可能性が低く、そういう意味においては実にもったいない選択をしてしまったと、今さらだが悔やんでしまった。雄谷本流で火照ったからだを冷やし、あとは頭上に見える巡視道に這い上がるのみ。そして下流に進むにつれて、だんだんと高みを増してゆく巡視道から望む雄谷の流れを横にしながら、さっそく次の遡行計画について花を咲かせるのだった。
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