こんにちは!
ヤマレコ代表のmatoyanです!
Appleの開発者向けのイベント(WWDC22)に参加できることになったので、出張でアメリカに行ってきました。
単にイベントに出るだけではなく、せっかくの機会なので海外対応を検討してきました。
今回はその出張の話を簡単にしたいと思います。
出張の際に見学をしたApple Developer Center
みなさんは「アプリの海外対応」といわれたときに、何が必要になると思いますか?
少なくとも海外対応といったときには
- 海外の人が日本で使う
- 日本の人が海外で使う
- 海外の人が海外で使う
という3パターンを考える必要があります。
道のりは長いのですが、最終的には3までチャレンジしたいと考えています。
これらを想定したときに、一般的に「多言語対応」と呼ばれるような、アプリのボタンや文字を英語などの文字にするだけでは対応としては実は不十分です。
例えば、らくルートのような計画の機能に対応するには、海外山のルートに関する情報が必要になります。
また国によっては長さや重さの単位が違ったりします。
つまり、
- アプリや画面の多言語対応
- 海外の山の情報への対応
- 海外の文化への対応
などを段階的に行っていく必要があります。
せっかくアメリカに行くので、海外対応を前提として問題点を洗い出しておきたい、ということで、渡米の前にわかる範囲でできるだけ対応をして、アメリカで山を登って来ました。
1.多言語対応
今回はiPhoneとApple Watchでテストを行うことにしました。
まずはアプリの画面を英語に翻訳するところからです。
文章ごとに日本語と英語の文章をどちらも用意していくので、気の遠くなるような作業になります。
あくまでもテストなので、登山中の画面を中心に英語でも表示できるように改修しました。
下記のような言語ファイルを英語版と日本語版の両方で用意すると、iPhoneの言語設定にもとづいて言語を出し分けられるようになります。
言語ファイル
このあたりは事前に実装できるので、渡米前にある程度動くようになりました。
英語化をしたアプリの画面(一部)
2.海外の山の情報(地図・ルート・地名)への対応
らくルートで計画を作るためには、事前に海外のルートを入れておく必要があります。
アメリカはトレイルごとに管理がしっかりされており、国立公園などの公式サイト上で地図を見ることもできます。
公式サイトで見られる地図(一部)
今回はそれらの情報を参考にしながら、らくルートの管理画面からルートを入力しておきました。
らくルートのデータ入力画面
データを入れていて気づいたこととしては、アメリカは分岐や峠、ピークには名称がほとんどついておらず、登山道(トレイルに)名称がついていることです。
到着予想時刻の表示などは、地名を表示できないので表示方法は考えないといけなさそうです。
ベースになる地図も、国土地理院の地図は使えません。
今回はOpenTopoMap、MapTiler、USGS Topoの3種類の地図を使えるようにしてテストをしてみました。
USGS(米国地質調査所)の地図を表示したアプリの地図画面
3.海外の文化への対応
アメリカはヤード・ポンド法と呼ばれる単位が使われています。
距離は「マイル」や「フィート」表示ですし、山の標高も「フィート」表示が前提です。
日本人としてはイメージが捉えられなくなるのですが、現地の看板も何もかもその表示なのでメートル表記ではないほうが分かりやすい場合もあります。
こちらも渡米前に設定画面から変更できる機能を作ってテストをしてみました。
これ以外にも、例えばアメリカは日本と違って「タイムゾーン」が国の中で異なったり、夏時間を使ったり(今は夏時間で固定する方向で議論されていますが)、日本では考えなくてもいい仕組みも考慮しないといけなさそうです。
テストをしてみて
こんな感じで色々と課題が見えてきたので、午前中に登山をして、午後はアプリを改修して、また次の日の朝に登山をして、という繰り返しをしてみました。
山行記録も残してありますので、よろしければ御覧ください。
6/4 St. Joseph’s Hill Open Space Preserve
6/5 Pinnacles National Park
6/6 イベント参加のためお休み
6/7 Tilden Regional Park – Grizzly Peak
6/8 Mission Peak
これらのテストを通じて、
「英語は文字が長くなってしまうので、どこかで文字を折り返す表示が必要そうだ」
「標高のデータが正確に取れていないので、不具合がないか改めて確認してみる」
「みんなの足あとがないので、らくルートの登山道は画像ではなく線で別途表示したほうが良さそう」
などなど、見えてきた課題に対処して、また山に行って、を繰り返しました。
今回のテストを通じて、課題は色々と見えてきたので、必要なものから順次時間を取って実装をしていきたいと思います。
直近では、iOS版アプリで地図上の登山道を線でくっきりと表示する機能をリリースしました。
Android版も直近のアップデートでリリース予定です。
先日リリースした新しい地図画面
海外対応は今のところ開発の優先度が低いのですが、コロナが落ち着いて海外との行き来がより楽にできるようになったときに、日本に住む皆さんや海外の登山者の方々もヤマレコのアプリを便利に使えるように、仕事の空いた時間を使っていまから準備を仕込んでいきます!
では、引き続き開発がんばります!
番外編: 渡米と帰国手続きについて
アメリカに行く際には、ワクチンの接種証明や、コロナ陰性の検査証明が必要であったり(現在は不要)、宣誓書というフォームの提出が必要だったります。
このあたりはVeriFLYというアプリを入れておくと、事前の審査も含めてやってもらえます。
空港に行くまでにすべてのチェックが終わっているとチェックインが簡単になります。
VeriFLYのチェックリスト画面
アメリカから日本に帰国する際には、同様に陰性証明やワクチン接種証明が必要になります。
日本に入るときにはMySOSという別のアプリに登録しておくと、同じように事前審査をしてもらえます。
MySOSアプリの審査結果画面
このアプリは緊急時のAEDの場所検索とか救命救急に関する情報なども入っているので、海外に行く予定がない方も入れておくと便利だと思います。
帰国時のPCR検査については、海外で受ける必要があるのでやはりハードルは高いのかなと思います。
私はCarbon Healthというアプリで予約をして、検査を行いました。
検査費用は自己負担で$200(約27,000円)もかかってしまったので、出国や入国のたびにPCR検査を受けるというコスト的なハードルはまだ高いですね。
検査はすぐ終わって、アプリでPDFを発行してくれるので待つ必要もなく便利でした。
PCR検査の要件が緩和されれば、(安い抗原検査などでもOKになるなど)もう少し海外渡航もやりやすくなるのかもしれないと思います。
飛行機も海外の方が多く、日本人の割合はまだまだ少ない状況でした。
そして、円安と米国のインフレでメチャクチャ値段が高く感じました。
ちょっと高いスタンドでガソリンを入れるとリッター238円!
そして街中のIke’s Placeというお気に入りのサンドイッチチェーンでちょっと良さげなサンドイッチを注文したら、ボードの価格に消費税が乗って日本円換算で2,000円ぐらいしました・・・。サイズは大きいんですけどね。
海外に行くハードルはまだまだ高いですが、徐々に制限は緩和されつつある状況です。
早く気軽に海外に行ける世界が戻るといいなと思います。
お手伝いさせていただきます。
よろしくえ♪
アメリカ、CA州在住です。Pinnacleとか行かれたのですね!
ヤマレコのApple Watchアプリがすごくよさそうなので、是非試したいとおもったのですが、他アプリで作った地図の読み込みなどもうまくいかずに断念しました。
私の周りではGaia GPSやAll Trailsというスマホアプリが人気ですが、Apple Watch対応がほんといまいちです。Topo Map+というアプリは行程がグラフィカルに見られるのがお気に入りで、ベータ版のテストユーザとして参加しています。
良かったら人柱になりますので声をかえてください笑
PS:Tidenではなく、Tildenかもしれないですよ笑