最近Voicyという音声サービスにハマっているヤマレコ代表のmatoyanです。
Voicyはスマホのアプリでパーソナリティの発信する様々な音声番組を聴けるアプリで、最近7億円を調達したニュースも出ていた、いま注目のスタートアップです。
調達おめでとうございます!
今日は「ギブからはじめるKサロン」というオンラインサロンの放送を聞いていて、サービスを今まさに作っている皆さんの熱い想いを聞いて懐かしく思ったので記事を書いてみることにしました。
放送の内容は「男をモテさせる」をキャッチフレーズにした横並びの席があるお店だけを紹介するサービスなのですが、底にあるのはもっと意外な熱い想いからできているという話でした。ぜひ放送も聞いてみていただければと思います。
ギブからはじめるKサロン 第20回 突撃!「男をモテさせる」greddy
https://voicy.jp/channel/786/40125
さて、上記の放送で気になったのはサービス名の成り立ちについての話だったのですが、今回は同じような話でヤマレコのキャッチコピーについて書いてみようと思います。
ヤマレコのキャッチコピーを考えるきっかけ
ヤマレコを作るときはただただ自分が作る行為が楽しいから作り続けていてそれで満足していて、あるときにふと「ヤマレコが目指す方向を一言で示す言葉が必要なんじゃないか」と考えるようになりました。5周年記念の記事を見る限り、2009年ごろ、もう10年前の話になると思います。
過去の私のような一人でサービスやアプリを作るという作業はとても孤独なもので、(相手は良かれと思っているのですが)こちらからすると心ないコメントを面と向かって投げつけられることも少なくありません。
現在だと他のスマホアプリのレビューを見ていると、「無料で使っていてここまで文句を言うか?」と思うコメントを見かけることも多いですよね。そういったコメントを目にしたり面と向かって言われ続けると、心にダメージが蓄積されてすべて投げ出して辞めてしまいたいと思ってしまうことも何度もありました。長年やっていると、様々な理由で開発をやめてしまった個人の方も目にしてきました。
そんな眼の前が真っ暗になってしまったときに自分を支える一条の希望の光として、何をすればいいか迷ったときの道標として使えるものがサービスのキャッチコピーだと考えています。
そのキャッチコピーを作るきっかけが、あるときにヤマレコを作りつつサービスを成長させ続ける一方で、それ以上に「もっと多くの人に山を楽しんでもらいたい」と考えるようになったことです。
ですが、
難しい問題です。登山に関わる仕事をするすべての人が抱える問題だと思います。私が抱える問題としては大きいテーマですが、たぶん目指す場所としては間違っていないはずです。
そこで悩んでできたヤマレコのキャッチコピーは
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です。
このメッセージは、10年前からずっと、ヤマレコのトップページの左上に書いてあります。
あと私の名刺にも書いてあります。
このメッセージの中には3つの想いが込められています。
今回はその紹介をしてみたいと思います。
1つ目の想い
私がヤマレコを作ったり当時入っていた山岳会の活動をしていく上で思っていたのは、まず最初にとても高いハードルがあるということです。小さい頃に学校登山で嫌な思いをした人などは、山なんて自分とは全く関係がないというトラウマまで埋め込まれていてマイナスからのスタートです。ハマる人は山にどんどんハマっていくのですが、一回体験しただけでもうしばらくいいや、という方もいたりします。
この差は何なのかというときに「一番最初の体験がどうだったのか?」そしてその後のフォローを周りができていたのか?ということが大きいのではないかと考えています。
苦しい体験だけだった、景色も何も見えなかったという山だとしても、きちんと振り返ってみると、寒く苦しい思いをしたときに飲んだココアが美味しかったり、朝の雲の中で感じる凛とした空気が気持ちよかったり、その人が自然の中で体験した「良かったこと」が見えてきます。それを話がわかってもらえる相手に伝えることで、「ああ、良い登山だったな」と思う心が芽生えます。
その芽が育つと「次は別の山に行ってみたい」という欲求がでてきます。山仲間や他の人の記録を見たりして、次はここに行きたいな、という目標が見えてきます。
山に行って普段とは違うワクワクしたりドキドキしたり苦しかったりする体験をする、そしてそれを他の人に聞いてもらうことで「ああ、良い登山だったな」と思い、「また山に行きたい」と思う、こんな流れを作れるサービスにしたい、という点が1つ目の理由です。
2つ目の想い
2つ目は「また山に行きたくなる」の「また」に込められています。
一度山に行くだけではななく、何度も山に行ってもらいたい。そのためには、五体満足で帰ってくる。ちょっと怪我をするかもしれないし、体調を崩すかもしれないけれど、「また」山に行けるように無事に家に帰ってくることが必要になります。
そのために安全登山に関わることもヤマレコでは重要視することにしました。現在みなさんが使っていただいているヤマプラなどの計画書を作る機能や、第三者に登山計画を共有する機能などが該当します。
登山口でおいてある登山届の用紙にざっくりした予定を書いて届出を出すのではなく、山に行く前に地図を見ながら「計画を作る」という行為を通じて、次に登る山はどんな山で、どのような危険があり、どの場所で何時のリミットを超えたら引き返すのか、何を持っていくべきなのか、などの安全に登山をする準備ができるわけです。
そして山岳保険についても実は安全登山につながっています。厳しい気象条件のもとで遭難をしてしまって一刻一秒を争う状況でも、山岳保険に入っているかどうかわからない場合、「民間の救助隊が出動して費用が発生してもいいか」家族や本人に確認をしなくてはいけません。確認が取れない場合は民間の力を借りることなく、少ない人員で対応せざるを得なくなります。山岳保険に入っているということが分かっていれば、より迅速に動けて救助される確率が上がるという側面もあるわけです(すべてのケースがそういう状況になるわけではないですが)。
3つ目の想い
最後は「自分にとっての新しい学び」についてです。
新しい技術だったり知識だったりを知ったとき、また新しい装備を買った時に、実際の登山で体験して、納得をする。そういった学びのサイクルも、山を続ける上でとても重要だと思います。
疲れないための歩きかたから始まり、ストックの使い方、読図、装備、観天望気など、山で学ぶことは多岐に渡ります。
ハイキングから始まり、泊まりや縦走登山、沢登り、クライミング、トレイルランニング、雪山の登山からバックカントリーなどなど、山の遊び方も様々です。
こういった広がりを認識すると学べば学ぶほど奥が深く、自分が成長していくことを実感できるのも山の楽しみの一つだと思います。ヤマレコがこのような学びができる場になれば、「また山に行きたくなる」モチベーションの一つになるのではと考えています。
皆さんで山の知識を共有する「ヤマノート」の機能や、最近配信を始めたYoutubeの登山講座などもその位置づけで作ってきています。
最後に
こんな感じで、「また山に行きたくなる」というフレーズがヤマレコのサービスを形作る一つのメッセージになっています。
ふと思いついた言葉でしたが、思いついたときには「これしかない」と思った、思い出の言葉です。
メッセージに込める想いはこれからも徐々に変わるかもしれませんが、少なくともここ10年間ヤマレコのサービスを作り続けてこれたのは「このメッセージに込められた想いを実現したい」とフツフツと湧いてくる情熱もあったからです。
さて、今回はサービスに関する想いとキャッチコピーについて紹介しました。
普段はそこまで気にしていなくても、行き詰まったり迷ったりした時に、キャッチコピーというのは安心できる支えになるものだと実感しています。(その割に名刺やWebサイトの上の方にこっそり書いているだけだったりするのですが)
一般的な会社組織としてはミッション・ビジョン・行動規範などがその役割を果たしているのかなと思いますが、サービスの運営でも同じことが言えるんじゃないかなと思います。
ではまた。
by matoyan
matoyanさん、初めてコメントさせていただきます。
いつもこの素敵なサイトの運営にご尽力いただいてありがとうございます。
苦しい体験だけだった、 景色も何も見えなかったという山だとしても・・・
ここの一節に共感、というより、自分が山に向き合う気持ちそのものと感じています。
私がヤマレコに感じている居心地の良さは、その背景に流れるmatoyamさんの純粋さや優しさあってこそです。
自分の心は些細なことで揺らいだりして情けない限りですが、ヤマレコに帰ってくることでまた心がリセットされ、山と仲良くなれる気がしています。
恩恵を受けるばかりでお返しができていないのは恥ずかしいことですが、その心をいつも感じ取れるような自分であり続けるよう努力を重ねます。
これからもよろしくおねがいします。
matoyanさん
ヤマレコの場の提供ありがとうございます。
私、ものの見事にはまっています(笑)
その三についてももっと極めて行きたいと思います。
やっと登山歴5年を超えたばかりのアラ還ですが、ヤマレコでの計画段階の情報収集に助けられています。
登山届けの作成やパーティーへの共有も確実に行え、助かっています。
今後とも、運営よろしくお願いいたします。