白馬 ゲレンデ & 山滑走

過去天気図(気象庁) | 2008年01月の天気図 |
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3040.xls
計画書
(更新時刻:2010/07/28 08:54) |
写真
感想
▽ビーコントレ
二人同時の埋没を想定して訓練。雪が多く、ザックごと深く埋めて実施。
私が最も大切だと感じたのは、「必ずセオリー通りに探索する」という事。
ざっくり見当付け⇒ビーコン⇒ゾンデ⇒スコップ
ビーコンが間近の反応を示した時など、直ぐに掘り始めてしまいがちだが、
多少時間を割いてでも、ゾンデにて確信を得てから掘り始めるべきと実感た。
ビーコンは、大体の位置を教えてくれるが、
深さを含め半径1〜2m程度の精度であり、「この辺にいそうだ」程度しか分からない。
また、その指す方向は二転三転するため、知らずと不信感が頭の中に沸いてしまう。
ゾンデで確認せず掘っり始めた場合、その不信感が次第に大きくなってくる。
「もう少し横じゃないのか?」
「もっと深いのではないか?」
「いや、そもそもこの辺でいいのか?」
その不安から、掘る位置も散り始め、手当たり次第に掘り返してしまい、
どこを掘って確認したかすら分からない状況に、簡単に陥ってしまう。
今回は好天の中、降雪のない状況での訓練であったが、
実際の場面で降雪があれば、掘った痕跡はたちまち消されるため、
確信を持って、一気に掘り下げなければならない。
ゾンデでちまちま確認するのは、手間に感じるが、確認してしまえば、
もし外れだとしても、掘り下げる目標の深さがハッキリしているため、
ピンポイントで、一気に無心で掘り下げる事ができる。
今回は2度の訓練を行い、1度目はセオリー通り実施、短時間で掘り返す事ができた。
しかし、2度目はゾンデ未使用で掘り始めてしまった結果、半径1m弱四方を掘り返した
挙句に、結局ゾンデを使用する事となった。もちろん、1回目よりも時間を要した。
実際に雪崩れに遭遇した場合、間違いなく埋没し平常心を失うと考えられる。
その様な状況で大切な事は、
「こうすれば確実に埋没者へ近づける」
と自分の中に確信を持って行動できるかどうかだと思う。
今回の訓練で、セオリー通りにやる事が、最も確実だと納得する事ができた。
救助の手順を学ぶ目的で参加した訓練であり、こちらも十分な成果を得られたが、
それ以上に、自身に納得を得られた事は非常に大きな成果であった。
▽ ピットテスト
スコップによるピットテスト、及びスキージャンプによるピットテストを行った。
【スコップの場合の手順】
0.スコップよりも少し小さめにピットを作成
1.指で軽くたたくx10
2.拳と手首でたたくx10
3.拳と肘でたたくx10
4.3の強度を上げていく。
今回は3を5回程試したところで、深さ約70cm 辺りがずれた。
【スキージャンプの場合の手順】
0.スキーよりも少し眺め、幅1m程度のピットを作成
1.乗るだけ
2.軽く足踏み
3.ジャンプ
4.3の強度を上げていく
今回は3のジャンプで、同じく約70cm の辺りがずれた。
それほど傾斜のきつくない斜面であったにも関わらず、
どちらのテストにおいても、実に見事にずれた。
スキーのケースでは、弱層まで、縦にも亀裂が走っている。
先々週に好天で気温の高い日が続いた後、先週一気に降雪があり、
上記のように 70cm 程度の場所に弱層が発生したと考えられる。
スキーの場合、自分で思いっきり飛び上がる事は無くとも、
ちょっとしたコブ等で、それ位は簡単に飛び上がる事があり、
今回のテストと同程度の衝撃を与える事は十分に考えられる。
また縦にも亀裂が入る事が分かり、この亀裂から雪面の切断が生じ
複雑な雪崩れのメカニズムの一つを垣間見た気がした。
登山よりも遥かに慎重に状況を判断せねばと感じた。
最後に、今回は訓練であり、時間の都合もあるため、
一箇所のテストのみの実施となったが、傾斜、向き、などなど
斜面は全て条件が異なる。気になったらその都度テストを行なわねばならない。
▽ 埋没訓練
人を一人雪に埋め、声、笛等の疎通、ゾンデの感覚の確認等を行なった。
30〜40cm 位埋めてみたが、中の人は全く動けないとの事。
埋める際には、頭を覆うように 10cm 幅の空間を作ったが、
5分位で少々息苦しくなったとの事。
以前、自身がスキーで転倒し深雪に顔面から埋まった際には、
大の字で埋まってそのまま動けず、エアポケットも無いため直ぐに息苦しくなった。
雪には結晶の間に隙間があるが、人が埋没し呼吸を行なうと
息の熱気で雪が氷と化し、酸欠を加速するとの事。
ゾンデでつついた感覚としては、肉の塊をつついている様な感触。
つつかれている方は、「あ、なんかつつかれてる」程度で、あまり「痛い」とは
感じなかったらしい。
# ビーコン・トレでザックに当たったときは、布っぽい感じがした。
▽ 宿のご主人のお話について
1日目の夜、宿のご主人、その奥さんを交え、2日目の入山について議論した。
2日目の入山が大変危険であるため、入山を控えて頂きたいという、
ご主人からの説得から話が始まった。
ご主人の話の主旨としては、
・現在雪崩の危険性が非常に高い事は、ここ暫くの雪の降り方から、
地元の人間ならば誰しも判断が付く状況である。
遭対協のメンバーであり、なお更それを止めない理由は無い。
・もし、どうしても入山する場合、
「地元の遭対協には一切お世話にならない」と署名して頂く事になる。
有事が発生した場合、遭対協に説明が付けられないため。
といったもの。他にも、雪崩れの可能性について様々な見解を頂いたり、
雪崩れに限らず様々な興味深い話を伺う事ができた。
結局、2、3時間に渡って議論した結果、山に入らない事で合意した。
今回初めて遭対協の方と直接お話をする事ができた。
遭対協というと、山のエキスパートが自主参加というイメージがあったが、
ご主人の話からは、地元の有志を募って形成している「消防団」の様な感じに聞こえた。
当たり前だが、皆それぞれ家庭があり、普段は普通に仕事をしている地元の方なんだと
身にしみて感じた。
また私自身、山に対して考えが甘くなっていたなと、深く反省した。
個人的には「今回は少しまずそうだな」と思っていたにも関わらず、
特に発言をせず、全体の決定にただ従おうとしていた。
山岳会に入り、先輩方に連れられて山に入る事が多くなったが、
自分に経験が無い事を理由に、判断を彼らに任せてしまう事が大変増えた。
経験が無くとも、無いなりに考え、自分の意見を発する事は、
パーティーの一員として最も大切な事の一つだと思った。
誤っていたり、甘かったりする場合には、その都度修正をして頂く必用があるが。
入会するまでは個人山行が多かったため、「パーティー」という考えが無かったが、
今回の議論を機に、パーティーについて意識を持とうと思う。
また今回の議論からは、自身の判断をする上でも重要な要素を得る事ができた。
山での進退の判断においては、
・自分たちの目的を達成する
・自分たちの命を守る
その二つが主な基準かと思うが、
どちらも「自分たち」のものであり、これを元にした判断も内的なものである。
内的な判断は、自分の気持ち次第で、どの様にもその基準が変わってしまうため、
「自分たちの」命であるから、
「自分たち」の目的のために多少のリスクは仕方が無い
と考えているうちは良いが、
状況が切迫したり、登頂の願望が度を越える、などといった要素により、最悪
「自分たちの」目的のためならば、「自分たち」の命も惜しくない
となるのだろうと思う。
今回、自分の山行に、自分に全く関係の無い人々の命が深く関係している事を痛感した。
山行に赴く際には、いつも頭の隅に入れて置くのは当然の事であるし、
また入れておくことで、判断の要素として外的なものを含める事ができる。
山に入る事はできなかったが、より貴重な経験を得る事ができ、非常に満足している。
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