瑞垣 春うらら、ベルジェエール 何気ない一手と一歩
天候 | 小雨 はれ |
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感想
広島から来たNさんが入会し何度か周辺を一緒に登った。
十一面岩のすぐ下には楽しそうな秘密基地の様なものもあって
開拓期を忍ばせていた。
これ以前83年ころから此処には来ていたが、まるで歯が立たなかった。
春うらら、11bとはいえ、長さ傾斜がやはり厳しく自分には相当のリハーサルで
カム位置とレスト位置を決めないと難しい、明らかに蜘蛛糸よりムズイ。
小川には一緒に行ってくれても
此処に付き合ってくれる人はなかなかいなかった。
登れるルートは登れるが登れないものはぐっと難しくなってしまう。
左右の優しめルートとはるうらら、春一番だ。
終了点は良いテラスでRPした時の気分は最高だろうな。
と夢想した。
そして、やはり厳しかった。はるうらら。
余り登り過ぎると次の日にこたえるので右の優しいルートを登る。
翌日は、ベルジェエル下部もフリーをトライするが、全然ダメ。
今はフリー化されているのだろうか?
このルートはなんといっても中間にある大フレークのチムニーだろうか?
#4フレンズでは効かない。
Nさん「登っていいよ」と来たので、
行かせていただく。3回くらい体の向きを確かめて抜ける。
ちょっと怖かった。
ノーズのチムニーピッチより怖い。
上のピッチは傾斜も落ちてしまうがすっきりしており大いに気に入った。
二人で爽快感に酔う。そして握手。
当時はよく終了点で握手をした。
悲しい回想
パートナーのNさん、とは雲稜のフリートライにも行った。
扇岩からのピッチで抜けた!と思ったら吹き飛んできた。
テラスのすぐ右上まで来て止まった。目が合う。
「いやー、ごめん、落ちてしまいましたか?」
全然動じない。
「死んだと思いました。」
「どこもなんともないようです。」
「頭も打っていません」
けろっとして登りだす。
いつも沈着冷静なクライマーだったのに
ブランクの後、
久しぶりの春の前穂高で亡くなってしまった。
遭難の知らせを朝3時に受け、
私は電話を切り眠くてまた寝たのだ。
そして仕事に出かけて
弔辞を頼まれ、私はその時泣いてしまいうまく読めなかった。
奥さまに、おそらくお持ちでは無いような彼と行った
冬壁の写真を見てもらった。
「こんな厳しそうな山に行っていたんですね。」
「知りませんでした」
「こんなに山の好きな人だったんですね」
「家の近くで飛べるパラグライダーしか知りませんでした」
「ホントは山に行きたかったのかな」
「行かせてあげればよかった」
写真をお渡し彼女が少し吹っ切れたような顔を
見せてくれたおかげでわたしは救われたが
彼女はどうか?
つくづく人は儚い存在だと思う。
みんなの教訓がわたしを生かしてくれているのかもと思う。
事故原因は何気ない1歩、何気ない1ホールド、エイト環のすっぽ抜け
ほとんどは何気ない一手と一歩だ。
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