学習院の事故について、
・ワンマンパーティだったのではないか
・パーティー内での意思疎通が出来ていなかったのではないか
と、僕は書いた。
最近は、何か事故があると、すぐに、
原因究明とか、責任の所在とか、再発防止とか、
そういうことを騒ぎ立てる風潮がある。
事実や背景をろくに考えもせず、好き放題に騒ぎ立てる連中がいる。
そういう連中は好きではないが、
ここで、遭難事故の責任と再発防止策を考えてみる。
仮に、ワンマンパーティが事故の原因と捉えるならば、
その責任はリーダーにある。
そして、再発防止策は、
『リーダーはメンバーの意見もよく聞き、判断材料にすべきである。』
と云うことになる。
パーティ内での意思疎通の不備が原因であるとするならば、
その責任は、パーティ構成員全員にかかって来る。
一年生は一年生なりに、二年生は二年生なりに、
自分の意見や考えをLに伝える必要があったはずだからだ。
そして、再発防止策は、
『パーティたるもの常日頃から自由闊達な意見交換ができるような
意識と行動を持たねばならない』
と云うことになるだろう。
が、しかし。
そもそも、なぜ、
彼らは、４年生ひとり、１〜２年生４人というパーティを組んだのだろう。
それは彼らが望んだことだったのだろうか？
それとも、そうせざるをえない背景があり、
L１名、M４名というパーティ構成になったのだろうか？？
僕らの時代、山岳部では、このようなパーティを組むことはなかった。
必ずサブリーダー（SL）がいた。
つまり、学習院のパーティにも、
もう一人の上級生がいれば、この事故は起きなかったのではないか？？
という考え方もできる。
もう一人いれば、
Lも一人で判断しないですんだだろうし、
Mが自分の意見を言えない場合であっても、
遭難事故のリスクは減る。
だがこれが、実は、大学山岳部の実態であり、
この遭難事故の本質なんじゃないか
と、私は思う。
この記事の最初で、
『防ぎようが無かったのではないか？』
と書いたのは、この理由による。
野球部であれば、部員が７人しかいないのに、
一軍、二軍、三軍までいるようなチームと当たるようなものである。
負けたからといって、キャプテンを責めることができるだろうか。
部員を責めることができるだろうか。
だったら、野球をやめればいい。
という話にはならない。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
山岳部の部員不足と云うのは、
僕が現役だった２５年前から慢性的に続く問題である。
うちの部も、部員が１０人を切ると公認取り消しになる
という学生部や体育会のルールの下で、
なんとか部を存続させていた気がする。
当時、明治大学の山岳部が４人だか５人とか云う話だったが、
その状況で、利尻遠征を行い、部員２名を失ったと記憶する。
植村直己を輩出した明治大学山岳部が、である。
部員が１０人を切るということは。
良くて各学年２人。
悪くすると、空白の学年ができる。
そういう状況の中で、
先輩から後輩へ、登山技術と山岳部の伝統を継承させる。
それが、大学山岳部と云うものなのである。
昨日、冒頭で書いたように、
ズブの素人を２〜３年の経験で、ガイド並の能力に成長させる
というだけでも無理があるのに、
実際には、それをやるための部員が非常に少ない。
山岳部のOBに聞くと、
過去には５０人６０人といた時代があったという。
だが、今の時代、
どこの山岳部も両手で足りるほどの部員しかいない。
というのが実情だろう。
そこへ、昨今の登山ブームで、多くの新入部員が入ってくる。
数少ない上級生が山へ連れて行く。
これでは、事故が起きないほうがおかしい。
そして、だからこそ、
たとえ、ワンマンパーティであったとしても、
たとえ、パーティ内の意思疎通が不十分であったとしても、
それは、彼らの責任では無いのではないか。
と、僕は思うのである。
今の時代に、大学山岳部として山へ登り続けるには、
避けては通れない道なのだから。
もしかしたら、
『そんな状況なら、もっと簡単な山にいけばいいじゃないか』
と思う人がいるかも知れない。
が、
それを云ったらおしまいなのである。
簡単な山にしか行かないのであれば、
それは『山岳部』ではなく、
ただの『ハイキングサークル』になってしまうわけだから・・・。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
以上が、かなり大雑把になったけど、
とある山岳部に在籍したことのある４０男の考えである。
事故の責任はどこにあるのか？
と、問われれば、そんなものはどこにもないし、
問責する必要もない気がする。
あるのは、
『彼らは最後まで山岳部員らしく全力を尽くした。』
という事実だけだ。
ただし、再発防止策と云うのは、
いくらでも考えられる。
それは各山岳部の現役諸氏が自分たちで考えればいいことだ。
そして、それを常に考え続けることのみが、
再発を防止する唯一の方法でもある。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
最後に、僕がこの日記を綴った理由を書いておく。
それは、この文章を見つけたからだ。
http://www.gakushuin.ac.jp/univ/adm/daisho/oshirase/sangaku-report-1_20150220.pdf
いま、彼らは、無期限の活動停止という状況らしい。
山に登るために集まったのに活動を停止させられている。
それがどういう意味なのか。
世間の皆さんには、よく考えてほしい。
僕が山岳部に入ったのは、１９９０年の４月のことだ。
その２ヶ月前、１９９０年の２月中旬、
学習院の山岳部同様、北大山岳部は遭難死亡事故を起こしている。
にもかかわらずだ。
僕達は、山岳部に勧誘され、
先輩達にいろいろな山へ連れてってもらえた。
当時、部室に漂っていた重たい空気感は今でも覚えている。
そして、あの頃は、考えもしなかったが、
あの当時、先輩やOBの努力というものは、
相当なものだったのではないか！！
と、今にして思うのだ。
今回、学習院大学山岳部の無期限活動停止という文書に触れ、
いかに自分たちが幸運であったか、
改めて、山岳部に入部させてくれたことに
山岳部の活動を維持し続けてくれたことに、
当時の先輩やOB達に、改めて感謝する気持ちになった。
そしてまた、当時の学生部や北海道の人々、
世間の考え方は、今よりもっと寛容であったのではないか。
とも思ってみた。
冒頭に書いたように、
この事故に関するブログは、あちこちに散見される。
そしてそれが、世間一般の考え方なのだろうと思う。
だが、その多くは大学山岳部の実態を捉えてない。
僕が、この日記を綴ることにした理由は、そこにある。
学習院では、この夏に向けて報告書をまとめる作業中とのことである。
どのような形でまとめられるかは、私の知るところではないが、
その報告書が世間に認知され、
一日でも早く、彼ら現役部員たちが山登りを再開できること願います。
いはらさん、こんにちは。
大学の山岳部という視点からの考察は今まで聞いてこなかったので、とても参考になりました。
部員が少ないであろう今、昔ながらの先輩後輩の関係ではうまく回らないってことでしょうかね。
組織もその時の状況であり方を考えないとならないのでしょう。
ところで、
>原因究明とか、責任の所在とか、再発防止とか、
>そういうことを騒ぎ立てる風潮がある。
ほんとこれ、そうですよね。
もちろんこういうことは大事ですが、なんだか生きづらいなと感じることが多いです
ひろうみさん
組織のあり方は、その組織の構成員が考えればよいと思います。
生きづらいと感じるのは、世間を気にし過ぎているからでしょう。
自分の無意識の中にある羅針盤を信じて生きましょう
ひらけんさん
ご遺族の心中は大変複雑だと思います。
しかし、マスコミや世間がなんと言おうと、
お子さんが信じたもの、追いかけた夢、継続した努力、
それだけは認めてあげて欲しいと思います。
スキーやスノボは私が学生の頃から大人気でしたね。
でも、青春を賭けてまで、真剣にやる人たちは、
山岳部員同様、少数派なのではないでしょうか
遺族のことを思うと活動のある程度の休止は致し方無いかと。
マスコミも騒ぐのも世間様からすれば登山全体に不透明な部分も多いので記事になるのでしょう。
大学山岳部については当時学生の私だとしたらレアな存在と認識しています。
今の学生ならスキー・スノボのほうが興味あると思います。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する