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苗場山(なえばさん)

最終更新:junyomogi

広大な高層湿原を擁する雲上の楽園


苗場山は長野県と新潟県の境界に位置しています。日本百名山、および花の百名山に選ばれており、標高は2145mです。

"山頂部:佐武流山を望む"
"山頂部:佐武流山を望む"

成層火山で、山頂部は溶岩台地です。台上には高層湿原が展開され、無数の池塘が点在しています。湿原の広さは約700haに及び、環境省によって「日本の重要湿地500」に選定されています。湖沼が発達しているのは、豪雪地で雪深く、平坦な地形から水が溜まりやすいためと考えられています。
湿原越しに周囲の峰々を見晴らすことができ、近くは岩菅山(いわすげやま)や鳥甲山、佐武流山(さぶるやま、さぶりゅうやま)、やや離れては浅間山、越後三山、谷川連峰、北アルプスなどが望めます。また、日本海が確認できることもあります。

"積雪期"
"積雪期"

お花畑と池に囲まれた中で、爽快に山上を闊歩することができます。また、春の残雪と新緑のコントラストや、秋の草紅葉も趣があります。冬は果てしなく広がる雪原に感動を覚えます。
その神秘的な美しさは、江戸時代に刊行された「北越雪譜(ほくえつせっぷ)」で"千勝万景"と表現されるほどです。北越雪譜は鈴木牧之(すずきぼくし:1770-1842年)の著作で、雪国での生活がつぶさに記された当時のベストセラーでした。

農耕の神がおわす山

"ミヤマホタルイ"
"ミヤマホタルイ"

湿原の湖沼に生えるミヤマホタルイやヤチスゲは、稲の苗を育てる苗代田を想起させ、このことを山名の由来とする説があります。もともとは新潟県側での呼び名で、かつて長野県側では「幕山(まくやま)」と呼ばれていたようです。

"伊米神社奥ノ院"
"伊米神社奥ノ院"

水田に例えられる神秘的な光景は、「神の苗代田」「御苗場(おなえば)」「天の苗代」などと呼ばれ、崇拝の対象でした。山頂に鎮座する伊米神社奥ノ院には保食(うけもち)神などが祀られ、稲作の守り神として信仰を集めています。苗場講の信者らによる参拝登山が行われ、五穀豊穣が祈願されていました。

山麓も見どころがたくさん

"ゴンドラリフト「ドラゴンドラ」"
"ゴンドラリフト「ドラゴンドラ」"

東の麓には大きなスキー場があります。日本最長のゴンドラリフトが敷設されており、"苗場"の名はスノーリゾート地としても知られています。また、春と秋はゴンドラリフトの季節運行があり、夏は大規模な音楽フェスティバルが開催されています。

"見玉公園:石落し"
"見玉公園:石落し"

一方で、西の麓は日本ジオパークに認定されており、苗場山の火山活動の痕跡をいくつか見ることができます。
「見玉公園」にある「石落し」は、約30万年前の噴火の溶岩でできた崖です。中津川の河床から聳え立つその高さは330mで、「柱状節理」が発達しています。柱状節理は溶岩が冷え固まったできる割れ目で、五角形や六角形などの角柱が規則性を持つかのように並びます。

"赤湯温泉:玉子の湯"
"赤湯温泉:玉子の湯"

いずれの麓も温泉がいくつか湧出しており、下山後の湯あみはどこを選ぶか迷うほどです。
中でも「赤湯温泉山口館」は歩いてのみ行ける秘湯で、苗場山の登山口のひとつでもあります。清津川の河原にある野天風呂は「玉子の湯」「薬師湯」「青湯」の3箇所で、それぞれ異なる泉質の湯が堪能できます。

新潟県からのメジャールート

"モデルコース(祓川コース)"
"モデルコース(祓川コース)"

7時間51分/13.3km
祓川登山口駐車場(39分)→和田小屋(34分)→六合目(45分)→下ノ芝(80分)→神楽ヶ峰(15分)→雷清水(67分)→苗場山(45分)→雷清水(26分)→神楽ヶ峰(49分)→下ノ芝(26分)→六合目(20分)→和田小屋(25分)→祓川登山口駐車場

"和田小屋"
"和田小屋"

新潟県側の祓川登山口は、関東方面からの交通の便が良く、多くの登山者が利用します。(登山口:祓川登山口駐車場
スタートは舗装路を歩きます。和田小屋でスキー場のゲレンデを横切り、樹林帯へ入ります。

"中ノ芝"
"中ノ芝"

急坂をひと登りすると、平坦な「下ノ芝」に着きます。ベンチがあり一休みすることができます。
続く先の「中ノ芝」「上ノ芝」も休憩スペースが設けられています。しだいに木々は少なくなり、田代湖などの眺望を楽しむことができます。

"股スリ岩"
"股スリ岩"

「股スリ岩」を越えると間もなく「神楽ヶ峰」に着きます。"神楽"を冠する名は、苗場山の神に奉納する神楽を舞う場所であったからだそうです。

"山頂台地を望む"
"山頂台地を望む"

神楽ヶ峰を越えると、目指す山頂台地が視界に飛び込んで来ます。ここから見る苗場山は「クジラの背」と形容されるほど、どっしりと迫るように立っています。
いったん標高を下げ「雷清水」と呼ばれる水場に出合います。勾配がきつい「雲尾坂」を登り返せば、登頂は間もなくです。

"山頂"
"山頂"

最高地点は北端にあります。木々に囲まれており、山頂標識と三角点が設置されています。

"夕日を映す池塘"
"夕日を映す池塘"

山頂部には「苗場山自然体験交流センター」が建っています。
ここに宿泊し、夕日に輝く池塘群や、満天の星空などの絶景を味わう行程もおすすめです。

長野県からの最短ルート

"モデルコース(小赤沢コース)"
"モデルコース(小赤沢コース)"

5時間24分/9km
三合目登山口(42分)→四合目(67分)→六合目(69分)→苗場山神社(23分)→苗場山(18分)→苗場山神社(42分)→六合目(39分)→四合目(24分)→三合目登山口

"樹林帯"
"樹林帯"

長野県の小赤沢コースは、最も短いコースタイムで登頂することができます。(登山口:小赤沢三合目登山口
始めはブナやヒノキが美しい森を歩きます。所々に巨木が立ち、張り出した木の根で転ばないよう注意します。

"六合目〜七合目:鎖場"
"六合目〜七合目:鎖場"

五合目を越えると、しだいに岩がごろごろとした道に変わり、鎖場がいくつも現れるようになります。六合目あたりから「胸突八丁」なる坂が始まり、傾斜はいっそうきつくなります。

"坪場"
"坪場"

八合目を過ぎると、「坪場」と呼ばれる草原です。開放的な景色へと一変し、間近にこんもり聳えるピークと、背後に鋭く立つ「鳥甲山」の対比は目を引きます。
一旦、樹林帯に入りますが、ほどなく広々とした湿原地帯へ抜けます。最高地点へと続く長い木道の散歩は、まるで別世界にいるかのような気分です。
登山口 祓川登山口駐車場
小赤沢三合目登山口
小日橋
和山登山口
小松原湿原入口
基本情報
標高 2145m
場所 北緯36度50分45秒, 東経138度41分25秒
カシミール3D
山頂

山の解説 - [出典:Wikipedia]

苗場山(なえばさん)は、新潟県南部と長野県北東部の県境に位置する標高2,145メートルの火山。日本百名山、日本二百名山、日本三百名山、花の百名山、一等三角点百名山、越後百山、新潟100名山、信州百名山の一つ。上信越高原国立公園に属し、大部分が特別保護地区に指定されている。
苗場山は主として安山岩質の溶岩・火砕岩からなる成層火山。大きく4つの噴出時期があり、現在の山体はおよそ30万年前の第4期に形成された。北方稜線の神楽ヶ峰・霧ノ塔・日蔭山は外輪山になっており、その西側は硫黄川による侵食カルデラである。山頂(最高点)から南西方向に向かって頂上部全体が緩やかに傾斜した平坦面(溶岩台地)になっており、中津川・清津川の浸食作用によって絶壁上になった外周部分と併せて一種のテーブルマウンテンのような山容をしている。深田久弥は『日本百名山』において、その姿を「クジラの背のような膨大な図体」と形容している。山頂部の平坦面は約600ヘクタール(東京ドーム約130個分)の広さがあり、高層湿原が形成され、大小の池塘が点在している。池塘にミヤマホタルイやヤチスゲが苗のように繁って苗代田のような外観を呈していることから山名を「苗場山」としたとの説があるほか、古くは地震のことを「ナイ(なゐ)」と云い、古人は地震がこの山から起こると想像したための付名との説もある。民間の間で広くから稲作の守り神としての信仰を集め、山頂一帯には伊米神社や苗場神社の他、石仏や石塔など様々な祠が祀られている。長野県側では幕山(まくやま)と呼んだが、明治期以降に現在の名称に統一された。
北東側の神楽ヶ峰の山麓には、1977年開業のかぐらスキー場(みつまたエリアは1970年、田代エリアは1983年開業)がある。なお山の名前を冠した苗場スキー場は苗場山の山麓ではなく、清津川を挟んで南東方向にある筍山の山麓にあり、ドラゴンドラによって繋がれている。西側の山麓、中津川に沿った峡谷には秘境・秋山郷が、南側山麓の清津川上流部の山間には秘湯・赤湯温泉がある。
開山は明らかではないが、近世では嘉永元年(1848年)に勇道坊一心を自称する行者が苗場山中の七つの社の勧進のため「苗場山縁起」をしたためている。その際の七社は保食神(稲成明神)、天児屋根命(春日明神)、大己貴尊(大国主命)、我勝之命(毘沙門天)、猿田彦(大歳明神)、天鈿女命(厳島神社)、事代主命(恵比寿神)で、天平年間に祀られたとして、また薬師七如来瑠璃光の霊地であるとしている。同縁起によれば、修験の道は大同元年霊雲上人によって開かれたとしている。
山中に木曽義仲の屋敷跡があったと伝わる「木曽屋敷」という地名が伊米神社の里社所蔵の絵図に記されている。
近代では、1930年(昭和5年)に山頂の新潟県側に地元の修験者によって伊米神社の奥の院を改修し宿坊とした山小屋「遊仙閣」(2008年シーズンを最後に営業休止)が作られた他、上越線開業直後の1931年(昭和6年)に慈恵医大が稲荷清水付近に宮大工の和田喜太郎の協力で慈恵大ヒュッテを創建し、その隣に一般人も利用が可能な和田ヒュッテ(初代和田小屋・現在かぐらスキー場にある和田小屋は2代目)が作られた。

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