御在所岳

天候 | 北西の風風力2/晴/25℃(9:00) |
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過去天気図(気象庁) | 2024年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
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感想
山行記録679-3 令和6年8月3日 (土)
夏…なんやろなー 〜ございしょ自然学校赤とんぼマーキング山行
単独 地図:御在所山
登路:中道 下山:裏道
猛暑続きの1週間。太平洋高気圧が二つに分断されて、日本の東に気圧の谷が居座って、西側の高気圧が西日本を覆う。その結果、四日市辺りは北西の風、つまり山越えの風が吹き下ろすためにフェーン現象が起きている。
気圧の谷は徐々に南下して、日本の南海上が低圧部になってきている。当面は湿った空気が入りやすく、陽射しによる気温の上昇で発雷しやすくなる。海水温が高いだけに、低圧部が低気圧としてまとまってくると台風にまで発達しかねない。今年もそんな心配をしないといけない時期にさしかかっているらしい。
とりあえず土・日の天気である。天気予報が毎日微妙に変わるから、金曜日に高層予想天気図を並べてみた。すると、土曜日の方が渦度がマイナス(高気圧性の回転)の範囲が日本列島付近を広く覆う。もう一つは土曜日の方が湿数の数値が大きい(ザックリ…空気が乾く)ことである。参考としてIMOCの発雷確率を見に行くと、御在所付近は土曜日の午後で約10%未満に対して日曜日午後は40%程度にまで上がっている。土曜日に決定である。
朝、湯の山に向かう。風はなく、湿気の多い空気に包まれている。曇りがちではあるが「日照りの朝曇り」かもしれない。
5:07入山届をポストに投函して中道に入る。歩き始めると、早速、山の住人のパトロール。重低音の羽音を響かせながらゆっくりと飛ぶ親指大の昆虫と言えば、言わずと知れたスズメバチ。まだ薄暗くて色合いがよくわからないが、山の中だからオオスズメバチだろう。立ち止まって様子を見ていると、目の前を2回ほど往復してから去って行った。
今日はあまり調子がよくない。少し睡眠不足気味で、今朝もまだ目が覚めきっていない感じである。こんなときにはソレナリの登り方がある。出るスピードしか出ないと割り切ってしまう。
蒸して淀んだ空気。汗が滝のように流れてくる。まあこれが夏の御在所。先週までのような風が本来ではなかったことに他ならない。
後続が抜いて行くのを涼しい顔で見送れるようなペースを守って登っていく。5:43オバレ岩到着。
すでにシャツも、沢登りか…、みたいな感じになってきた。少し水を多めに飲んで小休止。すでに雲底高を越えてガスの中に入ってきた。晴基調のガスの不思議な雰囲気を味わいながら登ることにしよう。
出発すると、すぐに風を感じるようになる。雲というのは空気の境目に発生することも多いので、空気の層が変わったと言うことかもしれない。
やがて見晴台に達する。ガスに閉ざされて全く見晴らしは効かない。さらに登って地蔵岩。ガスに包まれて怪しい雰囲気である。キレット東919m独標手前の森に入っていくと、時々陽射しが差し込むようになってきた。ガスは意外に薄く、上はよく晴れているみたいである。
6:15、919m独標に到着。見上げると、ガスを透かして青空が広がっている。しかしそれよりも、おびただしいアキアカネの群れ。風が弱く、ガスもそれほど濃いものでもなく、エサになる小さな虫が飛び立てる程度のガスなんだろう。
ヨウカンをついばんで6:25出発。鎖場を下りたらまずは取っ掛かりの急登。例によって息が弾まないペースで登っていく。このペースで登る限り、立ち止まって呼吸を整える回数がめっきり減った。ただ、今日は吹き出した汗が目に染みて立ち止まることが度々。「夏や〜」。などとボヤキながらの登りである。
岩塔を回り込んで段差の高い登りを越えて一段落。ルート脇にアキノキリンソウが咲き始めたのを目にしながら、急登の1/3地点の見晴台にさしかかる。「オ〜〜〜〜〜!」。フワフワの雲海が広がっている。ホンの3分ぐらいではあるが道草。オバレ岩ぐらいの高さが雲底で、キレット東の919m独標がほぼ雲頂に近かったから、雲の厚みは150mと言ったところか。下界の蒸し暑い空気は層雲の下。その上は、先週よりは弱いが北西の風が吹いている。空の色もソコソコ青く、水蒸気はやや少なめ…なのかな?。森の中も蒸し風呂ではない。少しは登りやすくなるだろう。溝状に掘れた登りは、何も考えずにルートの中にジグザグを拾いながら登って行く。
歩いて行くと、黒っぽいジャノメチョウが足下の岩に舞い降りる。「おはようさん」。じっとしているので、モデルになっていただいた。後で調べてみると「クロヒカゲ」。…ササがある暗い林などで樹液を吸って生活。幼虫の食草はイネ科のササ類。山地性・森林性が強い。ヒカゲチョウと競合する場合はより暗いところに、コジャノメと競合する場合はより高所にと棲み分ける…(Wikipedia)。とある。この人もササの茂みに住む仲間である。
ヒノキのラセン階段を過ぎると、少しイヤな段差を越えればやがて鎖場である。蒸し風呂状態から解放されたとは言っても、どうしたって汗は流れる。少し薄れ始めたガスを見下ろしながら、多少多めに水分を補給。汗を拭いたらソソクサと鎖場へ。
詰めにかかる。入山したときの調子の悪さも少しはマシになったようで、グイグイとは登らないが足は上がっている。出るスピードで登って行けばいいだけ。そんな感じでノソノソ登って、7:22富士見岩に到着。所要時間は1発目と全く同じ2:15。鼻で息をする登り方と調子の悪い時のソレナリの登り方は、結局いっしょか!。
北西〜西の風。先週より弱い。見上げる空の所々に巻積雲が小規模ながら群れを作っている。あまり夏場には出ない雲。下界は夏の蒸し暑さになって来たが、上空はそうはいかないのかな。それよりも、アキアカネがお食事タイムのようで、ワンサカ飛んでいる。ウスバキトンボではない。飛び方がアキアカネだと思う。
自然学校前のベンチでオニギリを一つついばんだらマーキング開始。いつものように三角点に向かおうとすると、メチャクチャ居る。いつも、トンボをあまり散らさないように移動しながら集めるが、この数だったらそんな気遣いは要らない。冠峰碑まで行かないうちに結構集まったから、「久しぶりに朝陽台の方へ行ってみよか」。そう思って自然学校前の広場に戻ってみると、まだ陽が当たっていない茂みの手前を、朝陽を浴びた翅をキラキラ輝かせて舞い飛ぶアキアカネの群れ。ちょっと見とれてしまう。
日陰に腰を下ろしてマーキング。すると、広場の方から「パカラッ、パカラッ、パカラッ」。馬?。目をやると、めずらしくもなんともないニホンジカであるが、脚が4本とも宙に浮くようにピョンピョン跳ぶ走り方しか知らなかった。スピード控えめの駆足は、馬のような足音になるらしい。そいつが、10mぐらいのところで立ち止まってこちらを見ている。臆病なくせに…。ヒトを食ったような顔をして…。目を合わせてやると、クルッとそっぽを向いて、脚を4本とも宙に浮かせてピョンピョン跳んで茂みへ消えていった、そりゃあヒトが走るスピードなんて知れたモンでしょうヨ!。
朝陽台に向かってみる。ロープウェイの始発前で観光客も居ないから気楽なものである。裏道の入口から朝陽台にかけての園路には相変わらずたくさん集まっていて、たちまちタモがいっぱいになる。登りついて適当に腰を下ろしてマーキング。ここでもおびただしい数のアキアカネが群れ飛んでいる。風はあるが強くないから、トンボも思う存分狩りをしているらしい。
トンボを集めながら自然学校へ戻る道、裏道の入口で…「お食事中や」。そ〜〜〜っとのぞいて見てごらん♪。アキアカネがカゲロウの仲間のような虫をムシャムシャ。今年初のお食事風景を写真に収める。礼儀としてモデルになってくれたトンボは採らない。
自然学校前の広場に戻る。しばらくすると、坂道から今日の担当さんの声。それからシャボンおじさんも到着である。
今日は10時過ぎに100人の団体さんが来るらしい。その団体さんを、散策班とトンボ班に分けて…、記録用紙は1家族に1組…、横で段取りを聞いていたので、頃合いを見計らって長者池入口の四阿なんかでマーキングしていたら話のネタにもなるだろう。そんな感じで回ってみようかな。
すでに9時で150を超えているから、目安としている500を午前中にクリアしてしまうかもしれない。もっとも、すべては天気次第。見上げるとすでに雲が覆ってきている。「昼までは大丈夫やと思うんやけどな〜」。
いつものように三角点方面へ歩き出す。それにしても、今日の数はスゴイ。三角点の階段下まででかなりの数になったから、そのまま長者池入口の四阿の軒に腰を下ろしてマーキング。たくさん舞い上がっているから、「さぞや♀率だいぶ高いんやろな」と思っていたが、♀が100に達するころには♂も80〜90ぐらいになって、意外に♂が多い。あまり高くは飛び上がっていないということか。天気はいいが、湿度が高くて雲が湧きやすく、小さな虫もすぐに茂みに舞い降りてしまうのかな?。
などと考えながら歩いていると、今年お初のネキトンボ。ソ〜ッと近づいて写真を一枚。空が晴れていれば翅の根元の黄色がよく映えたかもしれないが、カメラも安物なので贅沢は言わないことにしよう。
10時を回ったので、長者池入口周辺でトンボ集め。そして四阿でマーキングを始める。7割ぐらいマーキングを進めた頃に、団体さんが長者池へ。観光案内のような話だけでなく、ササがシカの食害に遭ってすっかり勢いをなくしてしまったことなど、いろんなことを話しながら歩いているようで、その声は四阿までよく聞こえてくる。
ひと網マーキングを済ませて再びトンボを集め始めた頃、団体さんが引き返してきたので、トンボ集めの実演のようになった。それならタモいっぱいのトンボを子供たちに見せてやろう。集めながら自然学校へ戻る。さすがに100人の団体さんが居るとなれば、自然学校の前はいっぱいである。時折陽も射すから、トンボが熱中症にならない場所を探してウロウロ。その間、タモいっぱいのトンボに目を丸くする子供たち。ちょっとドヤ顔してみたり…。
団体さんの班が入れ替わったタイミングでマーキングも区切りになったので、再び園路を歩き始める。今度は三角点に登ってみる。陽が射すとトンボがウジャウジャ飛び上がる。数がハンパではない。天気も悪くないので高い場所に集まっているのかもしれない。ただし、三角点に居るトンボはいつでも獲物を追って飛び立てるように臨戦態勢なんだろう、概して落ち着きがない。だからタモには集まりにくいということになる。
そんな三角点にキアゲハの姿があった。「コイツ、山に居ることもあるんやろか」。気になったので検索してみる。
…海岸植物から高山植物までを含むセリ科植物を食草とするため生息地も幅広く、海岸から市街地、農村、山地、さらには高山帯までと、いろいろな場所で見られる…(Wikipedia)。
とある。だから別段珍しくもなく、目の前にタマタマ現れただけ、のようである。
11時過ぎ、少しどす黒い雲が空を覆っている。今のところ雨が降る様子はないが「今日は雷があるかもわからんね〜、と○○さんが言っていた」と担当さんが言う。こればっかりはどうしようもないことなので、とにかく様子を見ながらマーキングを続けることにする。雲の向こうに太陽の姿が見えることもあるし、雲もそれほど発達する気配ではない。しかし、下界の気温がさらに上がって上昇気流が強まれば、雲が湧き始めてから15分ぐらいで発雷してしまう。一つ言えることは、強くはないが北西の風が吹いていて、永源寺〜日野方面の雲行きさえ気にしていれば間違いなかろうということ。それに、ガスではなく雲であるから、ある程度の視程が利くというのも大助かりである。すでに500を超えているから、午前中でお開きになっても「まあええは」。それでも12時頃になると少し雲が切れて陽ものぞくようになってきた。
自然学校の受付脇の日陰で午前最終のマーキング。午前の部:♂…264、♀…337、合計611。あれま〜、600超えてしもたがな。
先週辺りからウスバキトンボが山の上にも現れて、今週は群れとなってフワフワ飛んでいる。そこに陽が射すと、アキアカネが混じってものすごい数になる。日が陰るとアキアカネが翅を休めるからウスバキトンボだけが残る。その数というか濃度というか、陽が射したときと陰ったときとの変化を見ながら昼メシ。
雲が少し取れてきた。風上側も比較的雲が少ないように見える。午後になってもアキアカネは多い。なるべくトンボを散らさないように移動しながら集めて回る。三角点の階段や、国定公園の記念碑前も、いつも集まるところに順当に集まっている。暑くなってきたから、茂みの日陰で翅を休めるヤツや、尻尾を縦に突き上げて陽射しを受ける面積を最小限に抑えるヤツもたくさん居る。中にはウスバキトンボも枝にぶら下がるようにして翅を休めている。鮮やかな山吹色なので、まるで色鉛筆がぶら下がっているみたいにもみえる。
鎌の上空に浮かぶ、少し濃厚な綿雲を眺めながらマーキングを進めると、最後のひと網開始前の数が900を超えている。3時の時点で集めているひと網で打止めと決めているから1000には届かないと思うが、どのぐらい伸びるんだろう?。いずれにしてもこんな数は初めてである。
最後のひと網を集めて自然学校に戻る。マーキングを済ませて数を確認する。♂…410、♀…559、合計969。まさかまさかの数となった。「もう一回りしたら1000行きますよ」と言う声もあるが、3時までと決めているし、トンボにも迷惑かけっぱなしなので、これ以上はやらない。それよりも、今日の参加者が多かったので、集計に手こずっている様子。そちらを手伝うことにする。今日の全体の合計は2412頭となった。
4時近くになった。遅い時間まで山の上にいる不良山屋もそろそろ下山を開始する。先週に引続き裏道をとる。下り出すと、少々ヒザの調子がよくない。ただし、「縦走中にヒザが疲れて多少辛くなったとしても歩かないわけにはいかない」と言った感じの調子の悪さである。こんな時は、いたわりつつ甘やかさず、ヘンな力や衝撃が加わらないように注意しながらノソノソと降りていく。それでも国見峠までの時間はいつもと変わらない。
日照りの猛暑が続いているから、7合目の水場もどうにか水を手ですくえるぐらいの水量になってきている。真夏の常ではあるが、一番水が欲しい時期だけに、少しぐらいは手加減してほしいものである。
ウサギの耳の上の水場に到着。今日も強烈に日焼けしたので、シッカリ冷やし、冷たい水をいただく。生き返った感じである。
ウサギの耳の岩場にさしかかると「ガードレールのつもりか!」、岩場のルートの谷側に、20mもあろうかと見られる丸太がボルトとザイルで固定されている。どうやら下から引きずり上げたようで、材がこすれたカケラが岩に積もっている。土石流で藤内小屋がやられた時、杉の幹を輪切りにしたヤツを4人ぐらいで引きずり下ろしたことがあるが、あの重さを考えると「引き上げるの相当難儀やったんとちゃううんか」とか、「チルホールか何かで引き上げたんかな〜」とか想像してみる。なお、下の川原に丸太が3本ぐらい置いてある。このあと何が始まるんだろう?。
17:00藤内小屋に到着。例によって「ビール飲んでかへん」「車やであかんは」「泊ってったらええやんか」「ヨメに叱られるであかん」。すると大将がビニール袋を持ってきて、「ガバッとつかんで」。中身はミニトマト。「めっちゃごっつぉおやは」。恒例の駄弁り大会が始まる。しかし、ケツに根っこが生えるといけないので適当にに切り上げることにする。
今日はアキアカネもたくさんいて、ソレナリに雲も湧いて、夏らしい山になってきたような…。それでも西〜北西の風が吹いていて、普段の夏の風ではない。暑いから夏、なんだろうと思うけど…。
帰り道で振り返って眺める鈴鹿の山に、今日は雲がない。水蒸気で少し濁った空が太陽のバックライトを受けて、少しずつ黄色から赤みを増す夕暮れである。
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