記録ID: 1048641
全員に公開
ハイキング
オセアニア
North West Circuit, Stewart Island/Rakiura
2017年01月02日(月) 〜
2017年01月13日(金)
体力度
10
2〜3泊以上が適当
- GPS
- 46:03
- 距離
- 113km
- 登り
- 4,755m
- 下り
- 4,941m
コースタイム
1日目
- 山行
- 3:41
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 3:41
11:39
221分
Port William(campsite)
15:20
Bungaree Hut
2日目
- 山行
- 5:05
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 5:05
10:45
305分
Bungaree Hut
15:50
Christmas Village Hut
3日目
- 山行
- 6:12
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 6:12
12:33
372分
Christmas Village Hut
18:45
Yankee River Hut
4日目
- 山行
- 4:02
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:02
11:53
242分
Yankee River Hut
15:55
Long Harry Hut
5日目
- 山行
- 4:37
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 4:37
12:09
277分
Long Harry Hut
16:46
East Ruggedy Hut
6日目
- 山行
- 7:01
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:01
9:17
421分
East Ruggedy Hut
16:18
Big Hellfire Hut
7日目
- 山行
- 6:01
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 6:01
13:35
361分
Big Hellfire Hut
19:36
Mason Bay Hut
8日目
- 山行
- 3:26
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 3:26
12:32
206分
Mason Bay Hut
15:58
Freshwater Hut
9日目
- 山行
- 6:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 6:00
9:56
360分
Freshwater Hut
15:56
North Arm Hut
●はじめに
ニュージーランドのトランピングコースの一つである、North West Circuit(以下、NWC)を歩いてきたので、紹介する。本稿は、このコースを実際に歩いてみようと思っている人に対する情報提供を目的としているため、写真は掲載していない。行ってのお楽しみとしてほしい。写真が見たい人は、Department of Conservation(以下、DOC)のWebか他者の記録を参照の事。
●GPSログと日程について
Great Walk(以下、GW)区間のGPSログは採っていない。また、最終日の前日は連泊したので、実際の日取りと上記の「○日目」との対照は以下のようになる。
1/2(月) GW: Oban → Port William(campsite) 3h20'
1/3(火) 1日目
1/4(水) 2日目
1/5(木) 3日目
1/6(金) 4日目
1/7(土) 5日目
1/8(日) 6日目
1/9(月) 7日目
1/10(火) 8日目
1/11(水) 9日目
1/12(木) 連泊日
1/13(金) GW: North Arm Hut → Oban 3h30'
・NWCにはいくつかオプションのルートがあるが、それらは歩いていない。
・高潮時の迂回ルートが何か所があるが、いずれをも通っていない。
・道を間違えたところも参考としてログを残してある(一か所だけ)。
・ルートは反時計まわり。
●ニュージーランドでのトランピングについて
ニュージーランドではトレッキングの事をtrampingという。ほとんどのtramping用のトラックと小屋、キャンプサイトは政府機関であるDOCが管理・運営している。本ルートを含め詳しくはDOCのWebを参照。基本情報入手及び、小屋・キャンプの予約が行える。
一般向け(比較的容易)に設定した、良く整備されたコースをGreat walkと称している。このNWCは、それに対してbackcountry routeという位置づけで、GWよりグレードは高く、やや経験者向けという感じだ。ただ、家族づれも歩いているし、マーキングもしっかりしている。
●交通
今回は贅沢にもNew Zealand航空を使った。楽ちんだからであるが、Invercargillまで通しで手配できて便利だ。実際、帰りの荷物はInvercargillからNRTまで直行してくれた。Invercargillからはフェリーを使った。Stewart Island Expressでオンラインで予約・支払いができる。Invercargillから埠頭のあるBluffまでのバスが込みの割引切符もある。フェリーを使わない場合は、Invercargillから飛行機でObanまで行ける。往復で比べると、飛行機はそれほど割高では無い。単に時間的に短いだけでなく、Foveaux Straitで木の葉の様に揺れるフェリーに乗らなくていいのはありがたい(ゲロ寸前になった)。ただし、この飛行機は荷物15kgまでと聞いているので、多くの人は超えてしまうかもしれない。帰りは大丈夫だろう。
このほか、NWCの途中からスタートしたりするのに、以下が利用できる。中でも最初の2つは頻用されている。
・Masons Beachへの飛行機(ObanおよびInvercargillから)
※これはガスカートリッジ積めるとのこと(要確認)
・Fresh Water Landingへのwater taxi(Obanから)
・Christmas Village、Port William、North Armへのwater taxi(Obanから)
・East Ruggedy Beachへのヘリ(?)
ニュージーランドに入国する際は、アウトドア用品や食料を持っているかを聞かれる。テントや登山靴は泥が付いていないか調べられる。食料は肉を用いていないかなど根掘り葉掘り聞かれる。フリーズドドライは大丈夫。これらのチェックにしばらく時間がかかるので、国内線に乗り換える場合は時間の余裕が必要。オークランドの場合、国内線が離れているので、トランジットに最低でも2hみておいたほうがいい。私は走るはめになった。なお、靴底、テントの底やペグなどは、出発前に良く掃除しておこう。検査で余計な時間を喰わずに済む。
●DOC
DOCのWebで多くの情報が得られる。またGWの小屋及びキャンプサイトの予約と支払をオンラインで行える。キャンセル料や変更料もかかるので要確認。人気のあるGWの小屋は何か月も前から一杯になるので、まず小屋・キャンプサイトの空きを確認してから飛行機の日程を決めた方がいいかもしれない。
DOCと関連する事項は以下の通り。
・事前にGWの小屋とキャンプサイトを予約(使わない場合は不要)
※予約無くてもペナルティ料金で宿泊できるという話し
もあるが予約しておくべき。
・前日または当日にObanのDOCに行って、以下を行う
- 予約した内容のチケットを受け取る
- NWCの小屋のチケットを必要数購入する(NWC Passがお奨め)
- 必要であれば、NWCの地図を購入する
- 満干潮表をもらう(日本で調べていても一応もらった方がいい)
- 必要であれば、Personal Locator Beacon(以下、PLB)を借りる。
特に単独行の人には推奨。
- ロッカーがあるので預ける人は$10。ただしDOCが開いている
ときしか出し入れできないので要注意。
PLBの借料は$70と高価だ。しかし、これは衛星通信を使って位置情報を通知し、ヘリで救助に来てくれるという優れもので、自力でどうしようも無い時の最後の手段として使う。持っていると安心だ。重さも150g程度とスマホ程度だ。申し込むときに「PANIC日」を記入する。これはこの日までに返却されなければ、捜索が開始されるという日だ。なぜか日本では普及していない。
地図は、DOCのWeb地図で必要な部分をプリントすれば十分だと思う。ただ、NWCサーキット上では結構、購入した地図を持っている人がいた。NZ人は真面目なのだろうか。
●小屋とキャンプ場
tramping用の小屋とキャンプ場はほとんどはDOCが管理している。ルート上にはこの他、いくつかハンティング用の小屋があるが、緊急時以外は使うべきではない(実際には普通に使っている人も居るが)。GW上の小屋とキャンプ場は予約必須なので、DOCのWebから予約する。行きのPort williamは良いが、帰りのNorth Armは停滞日があると日程がずれてくるので、予約しづらい。私は、予定通りの場合と一日停滞した場合に備えて2日分、キャンプサイトを予約した。小屋は高いがキャンプサイトなら安い。結果としては予約通り、2泊した。
GW以外の小屋は予約不要だが、料金は必要。出発前にObanのDOCで小屋代を払ってチケットを受け取る。全て小屋泊まりにするなら、NWC Passという割引券がある。これがお奨め。$35。
NWC上(GWと重なっていない部分)はキャンプは自由だ。小屋の横にテントを張ってもいい(East RuggedyとBig Hellfireはあまりスペースが無い)。小屋以外の場合は水を持って行くか、近くの川の水を使う。流水は飲めるが、若干タンニンの色がついていて、味もする。今回浄水器は持って行ったが、使っていないので浄水するとどうなるかは不明。
後述もしているが、DOCのWeb地図に登場するNWC上の多くのキャンプサイトは実態が無い。無いものと思った方がいい。ただし、キャンプ不可と言う意味では無く、適当に平らで水没しない所ならキャンプしていい。
小屋にあるのは基本的に「水」、「トイレ」、「マット」だ。水は雨水だが、意外とおいしい。「心配なら煮沸等を」と書いてあるが、全く問題ない。ただ、以前、あるキャンプ場で茶色い水が出てきたことがあるので、心配な人は浄水器など持って行った方がいいかもしれない。ちなみに本島で注意すべき寄生虫ジアルディアは、スチュワート島には居ないので、沢水(流水)を飲める。
ベッドとマットは数量が決まっているので、早い者勝ち。無ければ床か外のデッキにごろ寝するしかない。私の時は全ての小屋には空きがあった。3か所は私一人だった。ただし、Masons Beachは場所も交通も良いので、そこそこ混む。
小屋に勝手にモノを残して行ってはいけないが、実際にいくつかの小屋で以下の様なモノの残置があった:塩、ろうそく、マッチ、ライター、使いかけのガスカートリッジ、雑誌。また、フードバンクのバケツがある事がある。腐るものは入れてはいけない。私は誰かが入れた紅茶のティーバッグをありがたくいただいた。
小屋では薪ストーブがあるので、ものを乾かしたりするのに良い。何と言っても時間はあるので、薪をくべながらぼんやりするのは至福のひと時だ。
私の場合の「小屋生活」は以下の通り。
・小屋に着く10分くらい前から、薪を集める。小屋至近は皆が拾うので落ちた木は少ないからだ。また、小屋に落ち着いてから薪拾いに出るのも億劫だ。
・小屋についたら、まず、靴とスパッツ等を洗う。小屋の雨水は貴重なので、できるだけ川か海で洗う。
・次に、薪づくりをする。斧か鋸で長い木を薪ストーブに入る大きさに切る。薪ストーブは何タイプかあるので、まず奥行きを確認するのが良い。作業中にサンドフライに噛まれる事が多いので要防護。鋸の切れ味は概して悪い。
・寒い日や乾かしものが多い日は、早速薪ストーブに点火する。乾いた薪から使えばよく、拾ってきた木は薪置き場に積んでおけばいい。足りなければ外で薪拾いをしてくる。翌日の宿泊者の分も必要なので多めに。
・寝床を決めて、荷物の整理、着替えをする。タオルを絞って体を拭く。何日に一回かは冷たい水に耐えながら頭を洗う。まるで修行だが実にさっぱりする。なお、原則として、体や衣類を洗ったり、歯を磨いたり、洗濯するのは外の蛇口で行う。自分しかいない場合は、小屋の中でも良いだろうと思う。
・乾かしものを干す。スパッツやカッパや靴は原則として外。ただ、靴は全く乾かないので、薪ストーブの至近に置くのがいい。お互い暗黙でO.K.としているようだ。
・小屋の掃除をする。モップとブラシで、棚、床、窓枠(虫の死骸多)、寝床などを掃除する。結構汚れている事があるので、30分くらいかけて全体を掃除すると、実にさっぱりする。灰用のバケツがいっぱいなら、近くの水場に捨ててくる(BHfHは近くに川も海も無いのでどうやって捨てるのだろう?)。
・サンドフライをやっつける。何故か、明るい側の窓ガラスに張り付く習性があるので、容易に絶滅できる。それでも夜中に噛まれる事はある。
・Intentions Bookを記入する。これは名前や行先を書く。何かあった時には捜索の手がかりになるので、キャンプの場合も、小屋通過の場合も記入しよう。
・ここでやっと自由時間になる。夕食の支度をしながら、旅日誌を書いて一日を振り返ったりする。また、他の宿泊者との歓談や情報交換も楽しい。薪ストーブでお湯はできるので、煮物は難しいが、フリーズドドライを戻すくらいは問題なくでき、燃料を節約できる。
・寝る前にもう一度サンドフライ絶滅作業を行う。
・朝は、原則として薪ストーブは焚かない。ただ、停滞する日や遅く出る時には焚くのも良い。この場合、出発時の火の始末は入念に。
・次に来る人の為に、薪ストーブに入る長さにした薪を薪ストーブの横に積んでおく。一人だと、ここまでやるのは結構大変。
・マットは立てておく。皆がやっているので見ればわかる。
・出発時はサンドフライが入らないように、ちゃんとドアと窓を閉める、或いは網戸にする。
ところで、Invercargillには街の中にキャンプ場(Central City Camping Park)がある。1人であれば$18だ。テント持参の人は宿に泊まるより安く上がる。共同の食堂は広くて良い。Wifiも無料。フェリー埠頭行きのバスもここに寄ってくれるので便利。特にピークの時期以外は予約無しでも大丈夫だと思う。
●装備
基本的には日本の夏山縦走装備。ただし、寝袋と調理用具一式は必要。逆に靴は、ハイキング用で十分。ただ、防水のしっかりしたものがいい。小屋泊まりだけならテントやマットは要らない(ピーク時期の場合は、ベッドがいっぱいで、床でのごろ寝に備えてマットはもっていった方がいいかもしれない)。留意すべき点は以下の通り。
・よく雨に降られるので、雨対策は入念に。また、私も泥や海水中で転んだが、荷物の防水対策も入念に。大きなゴミ袋でもいい。NZにはtramping用の大きな丈夫な黄色いビニール袋があり、多くのトランパーが使っていた。DOCで購入できる。
・後で思ったことだが、大きなレジ袋が2つあると、渡渉の時便利かもしれない。
・基本的にNWC上では充電は出来ないので、必要な予備バッテリーなど。唯一Long Harry小屋にコンセントがあったが、本当に使えるかは不明。私は今回はいつものNiH充電池はやめて、リチウムの単3/4を持って行った(私のGPSは単3)。高価だが軽量で長持ちして、これは正解だった。スマホは時計代わりにしか使わなかったので充電は不要だった。
・泥道対策としてスパッツは必須。夏用で良いが膝までのモノ。
・心配な人は浄水器。私は小型のSawyerを持って行ったが結局使わなかった。小屋とGWキャンプ地では不要。
・小屋履きがあると便利。トイレも外なので、兼ねたビーチサンダルなど。トランパーたちは結構普通の運動靴を持ってきていた。私は持って行かなかった。
・DOCの項で書いたPLB推奨。特に単独行の場合。
・泥の深さを見るためにストック1本。これは落ちている木の枝でもいい。私は結局ストックも杖も無しで通したが特に問題は無かった。
・人に依るが、塩分。調理用と兼ねて、一握り位塩を持って行くと塩分不足の心配が無い。なお、何か所かの小屋で、なぜか調理用の塩を置いていたので、私はそれを舐めてしのいだ。
・夜まで薪ストーブを焚いていると、結構寝床が暑くなる。寝袋は薄手で良い。寒い場合は衣服で調整する。
・サンドフライよけの頭からかぶる網。これはあったほうがいい。外での作業中や寝る時も使える。
・サンドフライよけの薬。NZのスーパーで売っている。日本製は余り効かないと聞いている。私は使ったことが無いのでどのくらい効くかは不明。ちなみに私は今回、注意していても15か所くらい噛まれた。トランパー達はさほど気にしていないようだ。
・藪でひっかき傷、転んで打撲傷などを作りやすいので、絆創膏は多めに。
・木につかまる事も多いので手袋はあった方がいい。鋸での作業時にも手の保護に使える。ボロボロになるので安物で十分。
・GPSは必須では無いが、あると心強い。特に砂丘地帯や、ビーチから山への入り口。
・耳栓、また、日が長いので目隠し。飛行機でくれる簡単なもので十分。
今回は、途中でバテて動けなくなってしまうといけないので、軽量化した。出発時のザック重量は、水や食料、燃料等全て含めて、15kg程度。これは他のトランパーに比べてかなり軽い。他のトランパーのザックを持たせてもらったが、NWCを回る人はほとんど20-25kgくらい担いでいる。理由の一つは、特に食事関係のもので、結構日用品をそのまま持ってきている。アルミのドリッパーや、フライパンなど。また寝袋もホームセンター的なものだったりする。余りガリガリに山岳専用品で固めていない。
燃料は、確実に入手できるガスにした。銘柄は違うが実質上使える(私のコンロはPrimus)。InvercargillやObanのスーパーで買える。アルコールの人は、スーパーでMethylated Spiritsを売っている。試してはいないが、NZではこれが日本の燃料用アルコールの様だ。ケロシンも売っていたが、これがガソリンコンロに使えるかは不明。小屋では、多くの人はガスで、少数がガソリンやアルコールコンロを使っていた。スーパーの営業時間は長く、日曜でも開いているので、常識的な時間帯であれば燃料や食料の購入に問題は無い。ObanにはOutdoor Adventureという店もあり、ここでも買える。DOCの向かいにある。私は、この店でガスカートリッジを2個買って出発した。結果的には11泊12日でちょうど1個を使い切り、1個は丸々余った。これは薪ストーブを使ったり、ほとんどがフリーズドドライだったために燃料の節約ができたからだ。普通の人であれば1.5個くらい使うと思う。長時間煮焚きする料理をしないのであれば、2個で十分だ。飛行機には載せられないので、帰りに買った店に持って行ったら、空カートリッジと共に快く受け取ってくれた。
●食事
私は軽量化優先のため、朝晩はフリーズドドライで通した。いろいろな種類を持って行ったので、それほど単調にならずに済んだ。昼は、現地のスーパーで買ったdutch bread。ずっしりと重いレーズンパンで、これを10切れに切って、毎日一つずつ食べた。重いがカロリーは高い。普通のパンでも良いのだが、NZには長期保存可能なものは無いようだ。ラスクの類もあまりない。賞味期限が長いものは、dutch bread、ライムギパン、クッキー類、下地的円形パン(名前忘れた)。そうでなければ、後は加工食品になる。例えば、良いと思われるものにミューズリーバーがある。ある程度栄養価もありそうで、カロリーも高い。NZのスーパーには何種類もある。
実際にはトランパーたちは、余り賞味期限を気にせずに持ってきている。チーズやサラミ、普通の食パンなどだ。小屋では下の方に置いて涼しくしておけばいいでしょ、という感じだ。大きなベーコンを持ってきて、フライパンで焼いている人も居た。塩漬けなので、普通の肉より持つそうだ。少しもらったが、おいしかった。また、重量を気にせず、液体のパンケーキミックスを持ってきている人も居た。ひとつ焼いてくれたのをもらったがおいしかった。安価で高カロリーなものとしてパスタや乾燥マッシュポテトもいい。小麦粉を持ってきて、小屋で練ってピザパンのようなものを作っている人もいた。
ゴミは全て持ち帰りなので、ゴミが出ない方がいい。例えば日本の100g入りのアルファ米などは、10袋も持って行くのではなく、一つのビニール袋に入れていき、コッヘルで作ればいい。なお、純粋な紙のゴミは燃やせるので、小屋を出る時に薪ストーブに放り込んで行ってもいい。付け火に使える。アルミ箔は燃え残るのでご法度。
私は主食以外は、若干のビタミン飴、ビーフジャーキー、フリーズドドライフルーツ、梅干し、クッキー、チョコバー、コーヒー、クリープ、スープ、乾燥野菜などを持って行った。最終日でチョコバー以外は全てを食べ尽くした。ある意味では完璧な(?)食糧計画だった。今考えると、カロリーがギリギリだったので、白米のアルファー米をいくつか持って行けば安心だったと思う。
ちなみに、後でざっくり計算したのだが、1日の摂取カロリーは1250kcalだった。中肉中背の私には、特に毎日歩いている事を考えるとかなり少ないが、意外と空腹に苛まれる事も無く、むしろ、最終日まで快調だった。次回は1500kcalくらいで計画したい。いずれにしても、食事の工夫は面白いので、出発前にあれこれ考えるのも楽しみの一つだ。多くの人は10日以上補給なしで歩いた事は無いと思うので、これだけでも、なかなか冒険的な課題だ。
●通信
携帯が入るのは、南島に面した東海岸と聞いた。確認はしていない。Port Williamには、小屋に入ると書いてあったので、ここは大丈夫だと思う。緊急時はなんといってもPLBだ。
●天候と天気予報
南緯47度の特異性を味わう事になる。気温は晴れれば暖かいが、そうでなければやや肌寒いくらい。雨がなければ、歩くのにちょうどいい。ただ風が定常的に強いので、濡れて吹かれると寒い。海洋性なので、夜は思ったよりは冷え込まない。日中格差は小さい。冬でも雪は少なく、降ってもすぐに溶けるそうだ。むしろ、夏は雨が多いので、次回は、夏以外に行こうと考えている。
一番典型的な天気は、お日様が射しているな、と思ったら、ビューと風が吹いて、ざーっと雨が降り、ものの10分もすると、また日差しがもどるという感じ。また、霰に何回も降られた。一日中雨が降らない日は少ない。逆に、一日中雨が降り続ける日も少ない。低気圧や寒冷前線が近づいていると一日雨になる。等圧線がやや寝た冬型のような感じが一番多いが、そんな時は風が強く、さきほどのように、コロコロと天気が変わる一日になる。なお、天気図で風向きを見る場合は、南半球なので高気圧も低気圧も逆回りなのでご注意を。
インターネットは入らないので、天気予報を聞く手段はラジオになる。私は、途中で何回か他のトランパーに聞いてもらった(公営のRNZ(720kHz)?)。次回はラジオを持参しようと思っている。ちなみに私は出発時に「14日予報」を持って行ったのだが、これが結構当たっていた。
●トラック
言わずと知れた泥道。泥道そのものに危険性は無いが、木の根が一番厄介だ。根が濡れていると滑って転倒しやすい。泥地帯に置いてある、足場用的な木も要注意だ。この様な場所が連続する。階段状の根が輪っか状になっている所は要注意で、輪の中に足を入れて、そのまま前のめりに転倒したら骨折する。日本の登山道と注意点は同じだが、この注意力を毎日何時間も維持しなければならない。
行先を書いた標識は原則として分岐点にしかない。後はオレンジ色の△印や木にぶら下がったボールが目印だ。△印は実に頻繁にあって心強い。これが100mほどなければ、道を外しているという事になる。そのほか、白いポールや、一部角材が立ててある所もあった。海岸ではケルンもある。日本の登山道と同じく、これらの印と踏み跡を辿っていけば普通に歩ける。藪にまかれたような道は無い。手でかき分けるような藪に入って行ったら、道を外している。ただし、ビーチから山に入っていくところは要注意で良く目印を探しながら行かなければならない。かならず標識、△印、ボールなどの目印がある。後述しているが砂丘地帯では若干目印が見にくい場合がある。
泥道は、皆が道の真ん中を避けて歩くので、幅数メール以上に広がってしまっているところがある。この場合、泥が一番深いのは必ずしも真ん中では無い。端の方が深い場合もある。見ただけでは分からない。左右の藪が薄い場合には、泥地帯を迂回して、藪を抜ける踏み跡が出来ている。この場合は、正規の道を見失わないように行く必要がある。DOCのレンジャーにも聞いてみたが、特に道の真ん中を歩かなければならないというルールはないそうだ。周囲の植生保護の観点からは、迂回路を行ったり、端の植生を踏んづけたりしないほうが良いのだが、それも大変なので、黙認、ということだと思う。
トラックはDOCの地図などに載っているが、結構実際はずれている。ここにアップしたGPXを参考にしてほしい。なお、一回だけ、GPSがしばらく狂って、実際とは大幅に異なるログを記録したことがある。私のGPSの故障かどうかはわからないが、恐らくは、密生した木が原因ではないかと思う。大木の森で上部が鬱閉しているだけなら問題ないが、ここでは、それほど太くない木が猛烈に密生している森がある。この場合、歩いているとGPSの衛星通信が秒単位で途切れる事になり、それが狂った原因のような気がする。立ち止まれば大丈夫なようだ。
NWCは反時計回りが推奨だが、逆回りをしている人も少なからずいる。特に船や飛行機で途中から入る人が多い。いきなり重い荷物でロングコースが連続するが、それで良ければ別に問題は無いようだ。
大きな倒木で道が寸断されてる場合は、踏み跡が交錯している場合もあるので、方角を見失わないように慎重に迂回しよう。
●コースの留意点
○Oban to Port William(campsite)
トラックの入り口までは車道歩きだが、若干分岐に標識が無い所もあるので地図を持参した方がいい。わざわざ車を手配する距離では無いので歩いてしまった方がいい。トラックはGWなので、良く整備されており歩きやすい。
○Port William Hut to Bungaree Hut
早くも「泥道」が登場するが、それほどひどくはない。でも、この日から最終日までスパッツはずっと必要。Magnetic Beachにでると、 ずっと先にBungaree Hutが見える。あとはとぼとぼ歩いて行くだけだ。薪を拾いながら行こう。
なお、私はObanからBungaree Hutまで2日間かけて歩いたが、多くの人は1日で歩いている。朝いちばんのフェリーでObanに着けば、余裕で行けると思う。これは、Port WilliamがGWなので、予約が必要なのと、混むので、避けられていることもある。日程と食糧に余裕のある人は、長丁場に備えて徐々に慣れていく意味で、Port Williamに泊まるのは悪くない。テン場は海に面していて眺めがいい(が、風が強い)。
○Bungaree Hut to Christmas Village Hut
順調に泥道が続く。Murray Beachは気持ちがいい。ルートを示す白いポールがぽつぽつと草地との境に立っている。ビーチ奥で草地に入っていくが、目印があるので間違えないと思う。通り過ぎてしまったらMurray Riverに突き当たってしまう。なお、DOCのWeb地図にあるMurray River Campsiteは見当たらなかった。その代わり、ビーチから少し入った所にHunters Hutがあった。水・トイレもあり、緊急時にはお世話になれる。
Christmas Village Bayにでてからはビーチをしばらく歩く。歩きにくい丸石ごろごろをしばらく歩いて、あれ、なかなか小屋が無いなあと思う頃、高台に小屋が現れる。ここも海の眺めがいい。
○Christmas Village Hut to Yankee River Hut
ここはクセもので、小屋に張り出してある地図では4-4.5hなのだが実際には6h以上かかるのでそのつもりで。途中のLucky Beach Campsiteは、これまた実際には無かった。Lucky Beachも白いポールに従っていくが、砂浜がなくなり、山沿いの大きな岩ごろごろ地帯をすり抜けていくので不安になるが、これで正しい。やがて急な草地を登って行くが、入り口がやや分かりにくいので注意。
○Yankee River Hut to Long Harry Hut
途中のSmokey Beachが最初の「潮位を気にするところ」だ。Smokey Beachにはあまり目印のポールが無いが、とにかく砂浜をどんどん歩いていけばいい。最後の渡渉については、私は低潮位時に通過したので何ら問題なかった。川が海に流れ込んでる境あたりをくるぶしくらいまでの水深でじゃぶじゃぶ行っただけだ。ここは満潮時には一面水浸しになるのかもしれない。ビーチの端までくると、山側に高潮時の迂回ルートの標識がある。入り口を見た限りでは踏み跡はしっかりしており、普通に通行できそうだ。さきほどのじゃぶじゃぶ後、少し奥の突き当りに小さな池のようになったところがり、良く見ると、ルートの標識がある。迂回ルートの場合は気にしなくて良いが、じゃぶじゃぶをした場合には、この池を乗り越えて、ルートに入らなくてはならない。わずか10mほどだが石づたいに行く。なお、Smokey Beach campsiteも、やはり無かった。
Long Harry Hutの直前で、道は一旦海岸におりる。あまり標識はないが、岩の海岸を行き、ケルンを過ぎると、すぐに山側に登って行く道がある。Long Harry Hutは高台にあり、さわやかな所だ。薪を拾うなら、ここで拾ってから登った方が後で往復しなくて済む。また靴やスパッツを海で洗ってしまってもいい。
○Long Harry Hut to East Ruggedy Hut
旧小屋のあった所を通っていくが、特になにもない。「岩海岸」も高潮時要注意だが、通れなくなるわけでは無いとの事だ。私が通った時には低潮時だったので、問題なかった。大きな岩石ごろごろの中を結構な距離歩く。高潮時には結構ギリギリかな、という所もあった。白いポールでは無く、なぜか時々角材が立っている。山側への入り口には標識がある。
次のEast Ruggedy Beachでは「やわらかい砂」の渡渉がある。確かに少しは柔らかいが、言われなければ気づかない程度。心配は不要で、単に浅い砂底の渡渉だ。深い所もあるので、少しうろうろして渡りやすい所を探そう。私が渡った時は10〜15㎠の水深だったが大雨の後は増水すると思う。渡渉の後はしばらく内陸へ向かって砂丘を越えていく。白いポールが導いてくれるが、見にくい事もあるので、そんな時は少し高い所に登って、ぐるりと見回してみよう。なお、逆回りをする人は渡渉の後、すぐに山に入っていくが、入り口の△標識が若干見にくい。
○East Ruggedy Hut to Big Hellfire Hut
高潮時要注意のWest Ruggedy Beachを通る。ここに降りていくのにしばらく砂丘地帯がある。標識は少ないが、とにかく海に向かってどんどん行けばいい。綺麗なビーチだが、一か所だけ山側から崖がせり出しており、高潮時には通れなくなる。ただし迂回ルートはあり、問題ないとの事だ。私は迂回したくなかったので早起きして、満潮の3時間前に通過したが、普通に通れた。それほどは通路に余裕が無かったので1時間後くらいには通過が難しくなるかもしれない。嵐で高波の時は注意。DOCのWeb地図によると、West Ruggedy Beach campsiteがあるはずだが、またまた見当たらなかった。この後、Waituna Bayに出て、再び山道に入る。入り口は分かりやすい。
○Big Hellfire Hut to Mason Bay Hut
まず、Little Hellfire Beachへ降りてゆく。降りたところに、Litte Hellfire Beach campsiteとHunters Hutがある。いずれも標識は無く、良く見ないと、通り過ぎてしまう。トイレはあるが水は無いようだった。キャンプする場合は前の小屋から水を持ってくるか、すぐ横の川のタンニン色の水を使うしかない。日取りによっては次のMasons Beachの干潮のタイミング調整の為にここでキャンプするのは有効だ。Little Hellfire Beachから山へ入っていくところで私は道を間違えた。GPSログにも残してある。数分で気が付いて引き返した。ビーチから少し高い所にボールが見えるが、まっすぐそれを目指して登って行くのが正解。このあと、いよいよ高潮時の一番の難関を通る。Masons Beachに降りてからしばらく(20-30分)行った所で、崖がせり出している。私は干潮の2時間前に通過したが余裕だった。干潮の前後3時間くらいは大丈夫そうだ。ただしWest Ruggedyと同じく、荒天時には要注意。DOCによると、ここが唯一「迂回路が無い」ところだ。かならず事前に干潮時刻を確認しておこう。ここの通過時が干潮になるように、飛行機から何から全日程を決めても良いと思う。ここを通過するとあとは広いビーチ歩きなので、干潮に合わせて少し遅い時間になっても、日は長いのでかまわない。干潮時にはセスナ機がビーチに着陸してくる。ビーチで薪を拾っていこう。ビーチで川に出会うと対岸に標識がある。この辺で渡った方が良さそうだが、私は川手前を小屋方向に行ってしまったため、途中でじゃぶじゃぶと渡る羽目になった。いずれにしても小屋の直前で狭いが結構深いところをもう一度渡渉する。ここで靴の中まで濡らしてしまった。すぐ先が小屋なので、靴を脱いで渡れば良かった。Masons Beach Hutは大きくて、人も多い。1km先のHomesteadという建物にはレンジャーが2名常駐している。クリスマスから、1/24までとの事だった。Port William以来の、DOCスタッフとのご対面だ。夕刻、Hutにチケットの確認にくる。その時にいろいろ相談もできる。また、飛行機やwater taxiの予約をお願いする事もできるそうだ。想定日数以上に停滞して、日程を短縮したい場合などは助かる。
○Mason Bay Hut to Freshwater Hut
ここはほぼ平らで楽ちん。唯一の問題は洪水で、大雨の後は水浸しになる。Masons Bay Hutから1時間ちょっと行った所に標識があり、赤い線より水位が高かったら、先に行くなと書いてある。そんな時は、潔く小屋に引き返そう。Freshwater Hutにはwater taxiが満潮時に発着する(海から川に入る所が浅瀬の為)。Obanまでたった40分で行く。発着場は小屋の目の前だ。席が空いていれば載せてくれるかもしれない。
○Freshwater Hut to North Arm(campsite)
この区間が最後の難関で、山越えや渡渉がある。DOCの話では10hかかった人もいたそうだ。峠越えをするが、上の方で水が流れ下ってくる道を暫く登って行くが、問題になるほどの水量では無い。また、最近橋が1つ撤去された。実際、幅5-6mくらいの比較的大きく、深い川に出てくるが、橋がなく、くるぶしくらいまでじゃぶじゃぶ水に入りながら、石伝いに渡った。確かにこの川は大雨で増水したら、ちょっと怖い。しかし、この場所は小屋を出て4時間以上歩いた所なので、恐らく引き返す気にならないと思う。テントがあれば良いが、そうでない場合には、出発前にそれまでの降雨と予報をよく吟味して行くべきかどうか判断しよう。North Arm CampsiteはNorth Arm Hutの少し先にある。
なお、Freshwater Hutから、一日でObanまで行く人も多い。かなり強行軍だが、初日のPort Williamと同じく、GWなので、予約が要るし、混むからだ。ここまで各日概ねコースタイム程度で歩いてきている人であれば、朝早く出れば最終のフェリーに十分間に合うと思う。
○North Arm to Oban
最終日はGWなので、人も多く、道も良い。ただ、ここはGWにしては結構泥道だ。Intentions Bookに文句を書いている人も多く、面白い。最後に長い長い坂道を登りきると、じきにトラック入り口にでて、そこから出発したObanのMain通りまでは、それほど遠くない。やがて見覚えのあるDOCの事務所が見えてきて、辛く、でも楽しかったtrampingは終了となる。
●おわりに
実務的な内容を書いてきたが、ここで少し違う話しを。この島はKiwiが保護されており、夜間以外でも見られることで有名だ。つまり「生Kiwi」とご対面できる。私は何回も遭遇した。Kiwiは目が悪いので、静かにしていると周りをうろうろして、じっくり観察できる。一度などは、ずっと近くにいるので、こちらから抜き足差し足で離れたくらいだ。イエローアイペンギンは残念ながら見られなかった。他のトランパーは海岸では無く、トラック上で見たと言っていた。少し遅い時間に見られるようだが、私は早々と床についてしまうので、ダメなようだ。その他、ホワイトテールディアやアザラシ、アシカがいた。Yankee Beach Hutでは、なんと夜中にアシカが小屋まで歩いてきて、デッキでごろっとしていた。朝早く海に帰って行ったようである。嘘のような本当の話だ。鳥も豊富だ。ファンテイルやNZロビンには癒される。私は見なかったが、Rakiura特有のkakaもBig Hellfire小屋に来ていたそうだ。他のトランパーが後で写真を見せてくれた。森は我々の目からは「ジャングル」に見える。ペンギンがいるような南の果てなのに、とても不思議だ。NZのシンボルがシダなのがよく分る。いずれにしても、国立公園として、そのままの自然を残している事に敬意を表したい。世界の財産と思う。日本では自然保護というと、もちろん有意義な事だが、里山保護とか、オオタカとか、分別収集とか、節電とか、CO2とか、そういうノリになる。でも、出発点となる、本当の手つかずの自然とはどういうものなのかを知った上で行えば、もっと自分のやっている事の有効性、目指すべき方向性が見えるのではないかと思う。「あっ、自然って、こうゆうことなんだ」という素朴な体感ができるNWCを是非歩いてみて欲しい。
ニュージーランドのトランピングコースの一つである、North West Circuit(以下、NWC)を歩いてきたので、紹介する。本稿は、このコースを実際に歩いてみようと思っている人に対する情報提供を目的としているため、写真は掲載していない。行ってのお楽しみとしてほしい。写真が見たい人は、Department of Conservation(以下、DOC)のWebか他者の記録を参照の事。
●GPSログと日程について
Great Walk(以下、GW)区間のGPSログは採っていない。また、最終日の前日は連泊したので、実際の日取りと上記の「○日目」との対照は以下のようになる。
1/2(月) GW: Oban → Port William(campsite) 3h20'
1/3(火) 1日目
1/4(水) 2日目
1/5(木) 3日目
1/6(金) 4日目
1/7(土) 5日目
1/8(日) 6日目
1/9(月) 7日目
1/10(火) 8日目
1/11(水) 9日目
1/12(木) 連泊日
1/13(金) GW: North Arm Hut → Oban 3h30'
・NWCにはいくつかオプションのルートがあるが、それらは歩いていない。
・高潮時の迂回ルートが何か所があるが、いずれをも通っていない。
・道を間違えたところも参考としてログを残してある(一か所だけ)。
・ルートは反時計まわり。
●ニュージーランドでのトランピングについて
ニュージーランドではトレッキングの事をtrampingという。ほとんどのtramping用のトラックと小屋、キャンプサイトは政府機関であるDOCが管理・運営している。本ルートを含め詳しくはDOCのWebを参照。基本情報入手及び、小屋・キャンプの予約が行える。
一般向け(比較的容易)に設定した、良く整備されたコースをGreat walkと称している。このNWCは、それに対してbackcountry routeという位置づけで、GWよりグレードは高く、やや経験者向けという感じだ。ただ、家族づれも歩いているし、マーキングもしっかりしている。
●交通
今回は贅沢にもNew Zealand航空を使った。楽ちんだからであるが、Invercargillまで通しで手配できて便利だ。実際、帰りの荷物はInvercargillからNRTまで直行してくれた。Invercargillからはフェリーを使った。Stewart Island Expressでオンラインで予約・支払いができる。Invercargillから埠頭のあるBluffまでのバスが込みの割引切符もある。フェリーを使わない場合は、Invercargillから飛行機でObanまで行ける。往復で比べると、飛行機はそれほど割高では無い。単に時間的に短いだけでなく、Foveaux Straitで木の葉の様に揺れるフェリーに乗らなくていいのはありがたい(ゲロ寸前になった)。ただし、この飛行機は荷物15kgまでと聞いているので、多くの人は超えてしまうかもしれない。帰りは大丈夫だろう。
このほか、NWCの途中からスタートしたりするのに、以下が利用できる。中でも最初の2つは頻用されている。
・Masons Beachへの飛行機(ObanおよびInvercargillから)
※これはガスカートリッジ積めるとのこと(要確認)
・Fresh Water Landingへのwater taxi(Obanから)
・Christmas Village、Port William、North Armへのwater taxi(Obanから)
・East Ruggedy Beachへのヘリ(?)
ニュージーランドに入国する際は、アウトドア用品や食料を持っているかを聞かれる。テントや登山靴は泥が付いていないか調べられる。食料は肉を用いていないかなど根掘り葉掘り聞かれる。フリーズドドライは大丈夫。これらのチェックにしばらく時間がかかるので、国内線に乗り換える場合は時間の余裕が必要。オークランドの場合、国内線が離れているので、トランジットに最低でも2hみておいたほうがいい。私は走るはめになった。なお、靴底、テントの底やペグなどは、出発前に良く掃除しておこう。検査で余計な時間を喰わずに済む。
●DOC
DOCのWebで多くの情報が得られる。またGWの小屋及びキャンプサイトの予約と支払をオンラインで行える。キャンセル料や変更料もかかるので要確認。人気のあるGWの小屋は何か月も前から一杯になるので、まず小屋・キャンプサイトの空きを確認してから飛行機の日程を決めた方がいいかもしれない。
DOCと関連する事項は以下の通り。
・事前にGWの小屋とキャンプサイトを予約(使わない場合は不要)
※予約無くてもペナルティ料金で宿泊できるという話し
もあるが予約しておくべき。
・前日または当日にObanのDOCに行って、以下を行う
- 予約した内容のチケットを受け取る
- NWCの小屋のチケットを必要数購入する(NWC Passがお奨め)
- 必要であれば、NWCの地図を購入する
- 満干潮表をもらう(日本で調べていても一応もらった方がいい)
- 必要であれば、Personal Locator Beacon(以下、PLB)を借りる。
特に単独行の人には推奨。
- ロッカーがあるので預ける人は$10。ただしDOCが開いている
ときしか出し入れできないので要注意。
PLBの借料は$70と高価だ。しかし、これは衛星通信を使って位置情報を通知し、ヘリで救助に来てくれるという優れもので、自力でどうしようも無い時の最後の手段として使う。持っていると安心だ。重さも150g程度とスマホ程度だ。申し込むときに「PANIC日」を記入する。これはこの日までに返却されなければ、捜索が開始されるという日だ。なぜか日本では普及していない。
地図は、DOCのWeb地図で必要な部分をプリントすれば十分だと思う。ただ、NWCサーキット上では結構、購入した地図を持っている人がいた。NZ人は真面目なのだろうか。
●小屋とキャンプ場
tramping用の小屋とキャンプ場はほとんどはDOCが管理している。ルート上にはこの他、いくつかハンティング用の小屋があるが、緊急時以外は使うべきではない(実際には普通に使っている人も居るが)。GW上の小屋とキャンプ場は予約必須なので、DOCのWebから予約する。行きのPort williamは良いが、帰りのNorth Armは停滞日があると日程がずれてくるので、予約しづらい。私は、予定通りの場合と一日停滞した場合に備えて2日分、キャンプサイトを予約した。小屋は高いがキャンプサイトなら安い。結果としては予約通り、2泊した。
GW以外の小屋は予約不要だが、料金は必要。出発前にObanのDOCで小屋代を払ってチケットを受け取る。全て小屋泊まりにするなら、NWC Passという割引券がある。これがお奨め。$35。
NWC上(GWと重なっていない部分)はキャンプは自由だ。小屋の横にテントを張ってもいい(East RuggedyとBig Hellfireはあまりスペースが無い)。小屋以外の場合は水を持って行くか、近くの川の水を使う。流水は飲めるが、若干タンニンの色がついていて、味もする。今回浄水器は持って行ったが、使っていないので浄水するとどうなるかは不明。
後述もしているが、DOCのWeb地図に登場するNWC上の多くのキャンプサイトは実態が無い。無いものと思った方がいい。ただし、キャンプ不可と言う意味では無く、適当に平らで水没しない所ならキャンプしていい。
小屋にあるのは基本的に「水」、「トイレ」、「マット」だ。水は雨水だが、意外とおいしい。「心配なら煮沸等を」と書いてあるが、全く問題ない。ただ、以前、あるキャンプ場で茶色い水が出てきたことがあるので、心配な人は浄水器など持って行った方がいいかもしれない。ちなみに本島で注意すべき寄生虫ジアルディアは、スチュワート島には居ないので、沢水(流水)を飲める。
ベッドとマットは数量が決まっているので、早い者勝ち。無ければ床か外のデッキにごろ寝するしかない。私の時は全ての小屋には空きがあった。3か所は私一人だった。ただし、Masons Beachは場所も交通も良いので、そこそこ混む。
小屋に勝手にモノを残して行ってはいけないが、実際にいくつかの小屋で以下の様なモノの残置があった:塩、ろうそく、マッチ、ライター、使いかけのガスカートリッジ、雑誌。また、フードバンクのバケツがある事がある。腐るものは入れてはいけない。私は誰かが入れた紅茶のティーバッグをありがたくいただいた。
小屋では薪ストーブがあるので、ものを乾かしたりするのに良い。何と言っても時間はあるので、薪をくべながらぼんやりするのは至福のひと時だ。
私の場合の「小屋生活」は以下の通り。
・小屋に着く10分くらい前から、薪を集める。小屋至近は皆が拾うので落ちた木は少ないからだ。また、小屋に落ち着いてから薪拾いに出るのも億劫だ。
・小屋についたら、まず、靴とスパッツ等を洗う。小屋の雨水は貴重なので、できるだけ川か海で洗う。
・次に、薪づくりをする。斧か鋸で長い木を薪ストーブに入る大きさに切る。薪ストーブは何タイプかあるので、まず奥行きを確認するのが良い。作業中にサンドフライに噛まれる事が多いので要防護。鋸の切れ味は概して悪い。
・寒い日や乾かしものが多い日は、早速薪ストーブに点火する。乾いた薪から使えばよく、拾ってきた木は薪置き場に積んでおけばいい。足りなければ外で薪拾いをしてくる。翌日の宿泊者の分も必要なので多めに。
・寝床を決めて、荷物の整理、着替えをする。タオルを絞って体を拭く。何日に一回かは冷たい水に耐えながら頭を洗う。まるで修行だが実にさっぱりする。なお、原則として、体や衣類を洗ったり、歯を磨いたり、洗濯するのは外の蛇口で行う。自分しかいない場合は、小屋の中でも良いだろうと思う。
・乾かしものを干す。スパッツやカッパや靴は原則として外。ただ、靴は全く乾かないので、薪ストーブの至近に置くのがいい。お互い暗黙でO.K.としているようだ。
・小屋の掃除をする。モップとブラシで、棚、床、窓枠(虫の死骸多)、寝床などを掃除する。結構汚れている事があるので、30分くらいかけて全体を掃除すると、実にさっぱりする。灰用のバケツがいっぱいなら、近くの水場に捨ててくる(BHfHは近くに川も海も無いのでどうやって捨てるのだろう?)。
・サンドフライをやっつける。何故か、明るい側の窓ガラスに張り付く習性があるので、容易に絶滅できる。それでも夜中に噛まれる事はある。
・Intentions Bookを記入する。これは名前や行先を書く。何かあった時には捜索の手がかりになるので、キャンプの場合も、小屋通過の場合も記入しよう。
・ここでやっと自由時間になる。夕食の支度をしながら、旅日誌を書いて一日を振り返ったりする。また、他の宿泊者との歓談や情報交換も楽しい。薪ストーブでお湯はできるので、煮物は難しいが、フリーズドドライを戻すくらいは問題なくでき、燃料を節約できる。
・寝る前にもう一度サンドフライ絶滅作業を行う。
・朝は、原則として薪ストーブは焚かない。ただ、停滞する日や遅く出る時には焚くのも良い。この場合、出発時の火の始末は入念に。
・次に来る人の為に、薪ストーブに入る長さにした薪を薪ストーブの横に積んでおく。一人だと、ここまでやるのは結構大変。
・マットは立てておく。皆がやっているので見ればわかる。
・出発時はサンドフライが入らないように、ちゃんとドアと窓を閉める、或いは網戸にする。
ところで、Invercargillには街の中にキャンプ場(Central City Camping Park)がある。1人であれば$18だ。テント持参の人は宿に泊まるより安く上がる。共同の食堂は広くて良い。Wifiも無料。フェリー埠頭行きのバスもここに寄ってくれるので便利。特にピークの時期以外は予約無しでも大丈夫だと思う。
●装備
基本的には日本の夏山縦走装備。ただし、寝袋と調理用具一式は必要。逆に靴は、ハイキング用で十分。ただ、防水のしっかりしたものがいい。小屋泊まりだけならテントやマットは要らない(ピーク時期の場合は、ベッドがいっぱいで、床でのごろ寝に備えてマットはもっていった方がいいかもしれない)。留意すべき点は以下の通り。
・よく雨に降られるので、雨対策は入念に。また、私も泥や海水中で転んだが、荷物の防水対策も入念に。大きなゴミ袋でもいい。NZにはtramping用の大きな丈夫な黄色いビニール袋があり、多くのトランパーが使っていた。DOCで購入できる。
・後で思ったことだが、大きなレジ袋が2つあると、渡渉の時便利かもしれない。
・基本的にNWC上では充電は出来ないので、必要な予備バッテリーなど。唯一Long Harry小屋にコンセントがあったが、本当に使えるかは不明。私は今回はいつものNiH充電池はやめて、リチウムの単3/4を持って行った(私のGPSは単3)。高価だが軽量で長持ちして、これは正解だった。スマホは時計代わりにしか使わなかったので充電は不要だった。
・泥道対策としてスパッツは必須。夏用で良いが膝までのモノ。
・心配な人は浄水器。私は小型のSawyerを持って行ったが結局使わなかった。小屋とGWキャンプ地では不要。
・小屋履きがあると便利。トイレも外なので、兼ねたビーチサンダルなど。トランパーたちは結構普通の運動靴を持ってきていた。私は持って行かなかった。
・DOCの項で書いたPLB推奨。特に単独行の場合。
・泥の深さを見るためにストック1本。これは落ちている木の枝でもいい。私は結局ストックも杖も無しで通したが特に問題は無かった。
・人に依るが、塩分。調理用と兼ねて、一握り位塩を持って行くと塩分不足の心配が無い。なお、何か所かの小屋で、なぜか調理用の塩を置いていたので、私はそれを舐めてしのいだ。
・夜まで薪ストーブを焚いていると、結構寝床が暑くなる。寝袋は薄手で良い。寒い場合は衣服で調整する。
・サンドフライよけの頭からかぶる網。これはあったほうがいい。外での作業中や寝る時も使える。
・サンドフライよけの薬。NZのスーパーで売っている。日本製は余り効かないと聞いている。私は使ったことが無いのでどのくらい効くかは不明。ちなみに私は今回、注意していても15か所くらい噛まれた。トランパー達はさほど気にしていないようだ。
・藪でひっかき傷、転んで打撲傷などを作りやすいので、絆創膏は多めに。
・木につかまる事も多いので手袋はあった方がいい。鋸での作業時にも手の保護に使える。ボロボロになるので安物で十分。
・GPSは必須では無いが、あると心強い。特に砂丘地帯や、ビーチから山への入り口。
・耳栓、また、日が長いので目隠し。飛行機でくれる簡単なもので十分。
今回は、途中でバテて動けなくなってしまうといけないので、軽量化した。出発時のザック重量は、水や食料、燃料等全て含めて、15kg程度。これは他のトランパーに比べてかなり軽い。他のトランパーのザックを持たせてもらったが、NWCを回る人はほとんど20-25kgくらい担いでいる。理由の一つは、特に食事関係のもので、結構日用品をそのまま持ってきている。アルミのドリッパーや、フライパンなど。また寝袋もホームセンター的なものだったりする。余りガリガリに山岳専用品で固めていない。
燃料は、確実に入手できるガスにした。銘柄は違うが実質上使える(私のコンロはPrimus)。InvercargillやObanのスーパーで買える。アルコールの人は、スーパーでMethylated Spiritsを売っている。試してはいないが、NZではこれが日本の燃料用アルコールの様だ。ケロシンも売っていたが、これがガソリンコンロに使えるかは不明。小屋では、多くの人はガスで、少数がガソリンやアルコールコンロを使っていた。スーパーの営業時間は長く、日曜でも開いているので、常識的な時間帯であれば燃料や食料の購入に問題は無い。ObanにはOutdoor Adventureという店もあり、ここでも買える。DOCの向かいにある。私は、この店でガスカートリッジを2個買って出発した。結果的には11泊12日でちょうど1個を使い切り、1個は丸々余った。これは薪ストーブを使ったり、ほとんどがフリーズドドライだったために燃料の節約ができたからだ。普通の人であれば1.5個くらい使うと思う。長時間煮焚きする料理をしないのであれば、2個で十分だ。飛行機には載せられないので、帰りに買った店に持って行ったら、空カートリッジと共に快く受け取ってくれた。
●食事
私は軽量化優先のため、朝晩はフリーズドドライで通した。いろいろな種類を持って行ったので、それほど単調にならずに済んだ。昼は、現地のスーパーで買ったdutch bread。ずっしりと重いレーズンパンで、これを10切れに切って、毎日一つずつ食べた。重いがカロリーは高い。普通のパンでも良いのだが、NZには長期保存可能なものは無いようだ。ラスクの類もあまりない。賞味期限が長いものは、dutch bread、ライムギパン、クッキー類、下地的円形パン(名前忘れた)。そうでなければ、後は加工食品になる。例えば、良いと思われるものにミューズリーバーがある。ある程度栄養価もありそうで、カロリーも高い。NZのスーパーには何種類もある。
実際にはトランパーたちは、余り賞味期限を気にせずに持ってきている。チーズやサラミ、普通の食パンなどだ。小屋では下の方に置いて涼しくしておけばいいでしょ、という感じだ。大きなベーコンを持ってきて、フライパンで焼いている人も居た。塩漬けなので、普通の肉より持つそうだ。少しもらったが、おいしかった。また、重量を気にせず、液体のパンケーキミックスを持ってきている人も居た。ひとつ焼いてくれたのをもらったがおいしかった。安価で高カロリーなものとしてパスタや乾燥マッシュポテトもいい。小麦粉を持ってきて、小屋で練ってピザパンのようなものを作っている人もいた。
ゴミは全て持ち帰りなので、ゴミが出ない方がいい。例えば日本の100g入りのアルファ米などは、10袋も持って行くのではなく、一つのビニール袋に入れていき、コッヘルで作ればいい。なお、純粋な紙のゴミは燃やせるので、小屋を出る時に薪ストーブに放り込んで行ってもいい。付け火に使える。アルミ箔は燃え残るのでご法度。
私は主食以外は、若干のビタミン飴、ビーフジャーキー、フリーズドドライフルーツ、梅干し、クッキー、チョコバー、コーヒー、クリープ、スープ、乾燥野菜などを持って行った。最終日でチョコバー以外は全てを食べ尽くした。ある意味では完璧な(?)食糧計画だった。今考えると、カロリーがギリギリだったので、白米のアルファー米をいくつか持って行けば安心だったと思う。
ちなみに、後でざっくり計算したのだが、1日の摂取カロリーは1250kcalだった。中肉中背の私には、特に毎日歩いている事を考えるとかなり少ないが、意外と空腹に苛まれる事も無く、むしろ、最終日まで快調だった。次回は1500kcalくらいで計画したい。いずれにしても、食事の工夫は面白いので、出発前にあれこれ考えるのも楽しみの一つだ。多くの人は10日以上補給なしで歩いた事は無いと思うので、これだけでも、なかなか冒険的な課題だ。
●通信
携帯が入るのは、南島に面した東海岸と聞いた。確認はしていない。Port Williamには、小屋に入ると書いてあったので、ここは大丈夫だと思う。緊急時はなんといってもPLBだ。
●天候と天気予報
南緯47度の特異性を味わう事になる。気温は晴れれば暖かいが、そうでなければやや肌寒いくらい。雨がなければ、歩くのにちょうどいい。ただ風が定常的に強いので、濡れて吹かれると寒い。海洋性なので、夜は思ったよりは冷え込まない。日中格差は小さい。冬でも雪は少なく、降ってもすぐに溶けるそうだ。むしろ、夏は雨が多いので、次回は、夏以外に行こうと考えている。
一番典型的な天気は、お日様が射しているな、と思ったら、ビューと風が吹いて、ざーっと雨が降り、ものの10分もすると、また日差しがもどるという感じ。また、霰に何回も降られた。一日中雨が降らない日は少ない。逆に、一日中雨が降り続ける日も少ない。低気圧や寒冷前線が近づいていると一日雨になる。等圧線がやや寝た冬型のような感じが一番多いが、そんな時は風が強く、さきほどのように、コロコロと天気が変わる一日になる。なお、天気図で風向きを見る場合は、南半球なので高気圧も低気圧も逆回りなのでご注意を。
インターネットは入らないので、天気予報を聞く手段はラジオになる。私は、途中で何回か他のトランパーに聞いてもらった(公営のRNZ(720kHz)?)。次回はラジオを持参しようと思っている。ちなみに私は出発時に「14日予報」を持って行ったのだが、これが結構当たっていた。
●トラック
言わずと知れた泥道。泥道そのものに危険性は無いが、木の根が一番厄介だ。根が濡れていると滑って転倒しやすい。泥地帯に置いてある、足場用的な木も要注意だ。この様な場所が連続する。階段状の根が輪っか状になっている所は要注意で、輪の中に足を入れて、そのまま前のめりに転倒したら骨折する。日本の登山道と注意点は同じだが、この注意力を毎日何時間も維持しなければならない。
行先を書いた標識は原則として分岐点にしかない。後はオレンジ色の△印や木にぶら下がったボールが目印だ。△印は実に頻繁にあって心強い。これが100mほどなければ、道を外しているという事になる。そのほか、白いポールや、一部角材が立ててある所もあった。海岸ではケルンもある。日本の登山道と同じく、これらの印と踏み跡を辿っていけば普通に歩ける。藪にまかれたような道は無い。手でかき分けるような藪に入って行ったら、道を外している。ただし、ビーチから山に入っていくところは要注意で良く目印を探しながら行かなければならない。かならず標識、△印、ボールなどの目印がある。後述しているが砂丘地帯では若干目印が見にくい場合がある。
泥道は、皆が道の真ん中を避けて歩くので、幅数メール以上に広がってしまっているところがある。この場合、泥が一番深いのは必ずしも真ん中では無い。端の方が深い場合もある。見ただけでは分からない。左右の藪が薄い場合には、泥地帯を迂回して、藪を抜ける踏み跡が出来ている。この場合は、正規の道を見失わないように行く必要がある。DOCのレンジャーにも聞いてみたが、特に道の真ん中を歩かなければならないというルールはないそうだ。周囲の植生保護の観点からは、迂回路を行ったり、端の植生を踏んづけたりしないほうが良いのだが、それも大変なので、黙認、ということだと思う。
トラックはDOCの地図などに載っているが、結構実際はずれている。ここにアップしたGPXを参考にしてほしい。なお、一回だけ、GPSがしばらく狂って、実際とは大幅に異なるログを記録したことがある。私のGPSの故障かどうかはわからないが、恐らくは、密生した木が原因ではないかと思う。大木の森で上部が鬱閉しているだけなら問題ないが、ここでは、それほど太くない木が猛烈に密生している森がある。この場合、歩いているとGPSの衛星通信が秒単位で途切れる事になり、それが狂った原因のような気がする。立ち止まれば大丈夫なようだ。
NWCは反時計回りが推奨だが、逆回りをしている人も少なからずいる。特に船や飛行機で途中から入る人が多い。いきなり重い荷物でロングコースが連続するが、それで良ければ別に問題は無いようだ。
大きな倒木で道が寸断されてる場合は、踏み跡が交錯している場合もあるので、方角を見失わないように慎重に迂回しよう。
●コースの留意点
○Oban to Port William(campsite)
トラックの入り口までは車道歩きだが、若干分岐に標識が無い所もあるので地図を持参した方がいい。わざわざ車を手配する距離では無いので歩いてしまった方がいい。トラックはGWなので、良く整備されており歩きやすい。
○Port William Hut to Bungaree Hut
早くも「泥道」が登場するが、それほどひどくはない。でも、この日から最終日までスパッツはずっと必要。Magnetic Beachにでると、 ずっと先にBungaree Hutが見える。あとはとぼとぼ歩いて行くだけだ。薪を拾いながら行こう。
なお、私はObanからBungaree Hutまで2日間かけて歩いたが、多くの人は1日で歩いている。朝いちばんのフェリーでObanに着けば、余裕で行けると思う。これは、Port WilliamがGWなので、予約が必要なのと、混むので、避けられていることもある。日程と食糧に余裕のある人は、長丁場に備えて徐々に慣れていく意味で、Port Williamに泊まるのは悪くない。テン場は海に面していて眺めがいい(が、風が強い)。
○Bungaree Hut to Christmas Village Hut
順調に泥道が続く。Murray Beachは気持ちがいい。ルートを示す白いポールがぽつぽつと草地との境に立っている。ビーチ奥で草地に入っていくが、目印があるので間違えないと思う。通り過ぎてしまったらMurray Riverに突き当たってしまう。なお、DOCのWeb地図にあるMurray River Campsiteは見当たらなかった。その代わり、ビーチから少し入った所にHunters Hutがあった。水・トイレもあり、緊急時にはお世話になれる。
Christmas Village Bayにでてからはビーチをしばらく歩く。歩きにくい丸石ごろごろをしばらく歩いて、あれ、なかなか小屋が無いなあと思う頃、高台に小屋が現れる。ここも海の眺めがいい。
○Christmas Village Hut to Yankee River Hut
ここはクセもので、小屋に張り出してある地図では4-4.5hなのだが実際には6h以上かかるのでそのつもりで。途中のLucky Beach Campsiteは、これまた実際には無かった。Lucky Beachも白いポールに従っていくが、砂浜がなくなり、山沿いの大きな岩ごろごろ地帯をすり抜けていくので不安になるが、これで正しい。やがて急な草地を登って行くが、入り口がやや分かりにくいので注意。
○Yankee River Hut to Long Harry Hut
途中のSmokey Beachが最初の「潮位を気にするところ」だ。Smokey Beachにはあまり目印のポールが無いが、とにかく砂浜をどんどん歩いていけばいい。最後の渡渉については、私は低潮位時に通過したので何ら問題なかった。川が海に流れ込んでる境あたりをくるぶしくらいまでの水深でじゃぶじゃぶ行っただけだ。ここは満潮時には一面水浸しになるのかもしれない。ビーチの端までくると、山側に高潮時の迂回ルートの標識がある。入り口を見た限りでは踏み跡はしっかりしており、普通に通行できそうだ。さきほどのじゃぶじゃぶ後、少し奥の突き当りに小さな池のようになったところがり、良く見ると、ルートの標識がある。迂回ルートの場合は気にしなくて良いが、じゃぶじゃぶをした場合には、この池を乗り越えて、ルートに入らなくてはならない。わずか10mほどだが石づたいに行く。なお、Smokey Beach campsiteも、やはり無かった。
Long Harry Hutの直前で、道は一旦海岸におりる。あまり標識はないが、岩の海岸を行き、ケルンを過ぎると、すぐに山側に登って行く道がある。Long Harry Hutは高台にあり、さわやかな所だ。薪を拾うなら、ここで拾ってから登った方が後で往復しなくて済む。また靴やスパッツを海で洗ってしまってもいい。
○Long Harry Hut to East Ruggedy Hut
旧小屋のあった所を通っていくが、特になにもない。「岩海岸」も高潮時要注意だが、通れなくなるわけでは無いとの事だ。私が通った時には低潮時だったので、問題なかった。大きな岩石ごろごろの中を結構な距離歩く。高潮時には結構ギリギリかな、という所もあった。白いポールでは無く、なぜか時々角材が立っている。山側への入り口には標識がある。
次のEast Ruggedy Beachでは「やわらかい砂」の渡渉がある。確かに少しは柔らかいが、言われなければ気づかない程度。心配は不要で、単に浅い砂底の渡渉だ。深い所もあるので、少しうろうろして渡りやすい所を探そう。私が渡った時は10〜15㎠の水深だったが大雨の後は増水すると思う。渡渉の後はしばらく内陸へ向かって砂丘を越えていく。白いポールが導いてくれるが、見にくい事もあるので、そんな時は少し高い所に登って、ぐるりと見回してみよう。なお、逆回りをする人は渡渉の後、すぐに山に入っていくが、入り口の△標識が若干見にくい。
○East Ruggedy Hut to Big Hellfire Hut
高潮時要注意のWest Ruggedy Beachを通る。ここに降りていくのにしばらく砂丘地帯がある。標識は少ないが、とにかく海に向かってどんどん行けばいい。綺麗なビーチだが、一か所だけ山側から崖がせり出しており、高潮時には通れなくなる。ただし迂回ルートはあり、問題ないとの事だ。私は迂回したくなかったので早起きして、満潮の3時間前に通過したが、普通に通れた。それほどは通路に余裕が無かったので1時間後くらいには通過が難しくなるかもしれない。嵐で高波の時は注意。DOCのWeb地図によると、West Ruggedy Beach campsiteがあるはずだが、またまた見当たらなかった。この後、Waituna Bayに出て、再び山道に入る。入り口は分かりやすい。
○Big Hellfire Hut to Mason Bay Hut
まず、Little Hellfire Beachへ降りてゆく。降りたところに、Litte Hellfire Beach campsiteとHunters Hutがある。いずれも標識は無く、良く見ないと、通り過ぎてしまう。トイレはあるが水は無いようだった。キャンプする場合は前の小屋から水を持ってくるか、すぐ横の川のタンニン色の水を使うしかない。日取りによっては次のMasons Beachの干潮のタイミング調整の為にここでキャンプするのは有効だ。Little Hellfire Beachから山へ入っていくところで私は道を間違えた。GPSログにも残してある。数分で気が付いて引き返した。ビーチから少し高い所にボールが見えるが、まっすぐそれを目指して登って行くのが正解。このあと、いよいよ高潮時の一番の難関を通る。Masons Beachに降りてからしばらく(20-30分)行った所で、崖がせり出している。私は干潮の2時間前に通過したが余裕だった。干潮の前後3時間くらいは大丈夫そうだ。ただしWest Ruggedyと同じく、荒天時には要注意。DOCによると、ここが唯一「迂回路が無い」ところだ。かならず事前に干潮時刻を確認しておこう。ここの通過時が干潮になるように、飛行機から何から全日程を決めても良いと思う。ここを通過するとあとは広いビーチ歩きなので、干潮に合わせて少し遅い時間になっても、日は長いのでかまわない。干潮時にはセスナ機がビーチに着陸してくる。ビーチで薪を拾っていこう。ビーチで川に出会うと対岸に標識がある。この辺で渡った方が良さそうだが、私は川手前を小屋方向に行ってしまったため、途中でじゃぶじゃぶと渡る羽目になった。いずれにしても小屋の直前で狭いが結構深いところをもう一度渡渉する。ここで靴の中まで濡らしてしまった。すぐ先が小屋なので、靴を脱いで渡れば良かった。Masons Beach Hutは大きくて、人も多い。1km先のHomesteadという建物にはレンジャーが2名常駐している。クリスマスから、1/24までとの事だった。Port William以来の、DOCスタッフとのご対面だ。夕刻、Hutにチケットの確認にくる。その時にいろいろ相談もできる。また、飛行機やwater taxiの予約をお願いする事もできるそうだ。想定日数以上に停滞して、日程を短縮したい場合などは助かる。
○Mason Bay Hut to Freshwater Hut
ここはほぼ平らで楽ちん。唯一の問題は洪水で、大雨の後は水浸しになる。Masons Bay Hutから1時間ちょっと行った所に標識があり、赤い線より水位が高かったら、先に行くなと書いてある。そんな時は、潔く小屋に引き返そう。Freshwater Hutにはwater taxiが満潮時に発着する(海から川に入る所が浅瀬の為)。Obanまでたった40分で行く。発着場は小屋の目の前だ。席が空いていれば載せてくれるかもしれない。
○Freshwater Hut to North Arm(campsite)
この区間が最後の難関で、山越えや渡渉がある。DOCの話では10hかかった人もいたそうだ。峠越えをするが、上の方で水が流れ下ってくる道を暫く登って行くが、問題になるほどの水量では無い。また、最近橋が1つ撤去された。実際、幅5-6mくらいの比較的大きく、深い川に出てくるが、橋がなく、くるぶしくらいまでじゃぶじゃぶ水に入りながら、石伝いに渡った。確かにこの川は大雨で増水したら、ちょっと怖い。しかし、この場所は小屋を出て4時間以上歩いた所なので、恐らく引き返す気にならないと思う。テントがあれば良いが、そうでない場合には、出発前にそれまでの降雨と予報をよく吟味して行くべきかどうか判断しよう。North Arm CampsiteはNorth Arm Hutの少し先にある。
なお、Freshwater Hutから、一日でObanまで行く人も多い。かなり強行軍だが、初日のPort Williamと同じく、GWなので、予約が要るし、混むからだ。ここまで各日概ねコースタイム程度で歩いてきている人であれば、朝早く出れば最終のフェリーに十分間に合うと思う。
○North Arm to Oban
最終日はGWなので、人も多く、道も良い。ただ、ここはGWにしては結構泥道だ。Intentions Bookに文句を書いている人も多く、面白い。最後に長い長い坂道を登りきると、じきにトラック入り口にでて、そこから出発したObanのMain通りまでは、それほど遠くない。やがて見覚えのあるDOCの事務所が見えてきて、辛く、でも楽しかったtrampingは終了となる。
●おわりに
実務的な内容を書いてきたが、ここで少し違う話しを。この島はKiwiが保護されており、夜間以外でも見られることで有名だ。つまり「生Kiwi」とご対面できる。私は何回も遭遇した。Kiwiは目が悪いので、静かにしていると周りをうろうろして、じっくり観察できる。一度などは、ずっと近くにいるので、こちらから抜き足差し足で離れたくらいだ。イエローアイペンギンは残念ながら見られなかった。他のトランパーは海岸では無く、トラック上で見たと言っていた。少し遅い時間に見られるようだが、私は早々と床についてしまうので、ダメなようだ。その他、ホワイトテールディアやアザラシ、アシカがいた。Yankee Beach Hutでは、なんと夜中にアシカが小屋まで歩いてきて、デッキでごろっとしていた。朝早く海に帰って行ったようである。嘘のような本当の話だ。鳥も豊富だ。ファンテイルやNZロビンには癒される。私は見なかったが、Rakiura特有のkakaもBig Hellfire小屋に来ていたそうだ。他のトランパーが後で写真を見せてくれた。森は我々の目からは「ジャングル」に見える。ペンギンがいるような南の果てなのに、とても不思議だ。NZのシンボルがシダなのがよく分る。いずれにしても、国立公園として、そのままの自然を残している事に敬意を表したい。世界の財産と思う。日本では自然保護というと、もちろん有意義な事だが、里山保護とか、オオタカとか、分別収集とか、節電とか、CO2とか、そういうノリになる。でも、出発点となる、本当の手つかずの自然とはどういうものなのかを知った上で行えば、もっと自分のやっている事の有効性、目指すべき方向性が見えるのではないかと思う。「あっ、自然って、こうゆうことなんだ」という素朴な体感ができるNWCを是非歩いてみて欲しい。
天候 | 晴れ、雨、霰、強風 |
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過去天気図(気象庁) | 2017年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
船 飛行機
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