【恐怖の道迷い!】川苔山
コースタイム
天候 | 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
今回の山行は、初めて本格的に道に迷い、学ぶべきところも多く、実に印象的なものになりました。切迫した命の危険までは感じませんでしたが、道に迷い行きつ戻りつしながら、日がどんどん低くなっていく状況の恐ろしさに、マイナス思考が加速し、最悪の事態が何度か頭をよぎっていました。少なくともビバーグくらいは覚悟していました。
秋の日曜日、3連休の中日ということで覚悟はしていましたが、まあ、ものすごい人でした。
7時35分のバスをねらって、奥多摩駅に30分頃に到着するものの、バス停にはすでに長蛇の列、増発便がプラス2便出ていたにも関わらず、満員で乗ることができず、タクシーも出払っているとのことで、1時間待つことになってしまいました。
登山口からは人の多さに閉口しながらも、降車停留所からの林道や細倉橋からの山道は、天気がよかったせいもあり、沢沿いでもあり気持ちよくすいすい歩を進めました。
…道迷いの恐怖を味わった今考えると、「人の多さに閉口」なんて罰当たりなことを考えていたんだな、と反省します。
百尋の滝は「大きすぎず小さすぎない滝」という印象で、山道を歩いていたらふと現れました。登山道から少し外れて、写真のように滝の直下まで近づくことができ、近づくほどに山道歩きに少しほてった体が心地よかったです。夏に縦走した南アルプスの雄大さとはまたちがう種類の自然の面白さがありました。
滝から少し登ると、川苔山山頂への道が東西に分岐します。
東の道をとったのですが、地図にない分岐が二回続いた時点で、いっしょのペースで歩いていた人と相談しながら、方角の目安をつけて登りました。途中から明らかに登山道を外れたことに気づきましたが、すぐ前方から人の声がしたので「もうすこし」と声を掛け合いながら登っていると、本来の尾根に真横から直角にぶつかり、登山道に復帰できました。
考えてみれば、これもあとに起こる嫌な出来事の前兆になっていたのかもしれません。
登山道に復帰して5分も歩くと、人でいっぱいの川苔山山頂です。
天気がよく富士山も見えました。
今回はスマホに「山カメラ」というアプリを入れていました。これは、山をファインダーに入れると山の名前が表示されるという驚きのアプリで、試すのを楽しみにしていたのでこれで遊んだり昼飯を食べて、山頂をあとにしました。
ここから赤杭(あかぐな)尾根を経由して古里駅に降りる予定でしたが、ここで道を見失いました。
山頂から10分で、十字路になっている分岐(川苔山山頂方面、川乗橋方面、古里駅方面、鳩の巣駅方面)に出るのですが、ここでまずうっかり鳩の巣方面に進んでしまいました。
そこで間違え続けていれば良かったのですが、すぐまた分岐(たしか、鳩の巣駅方面、川苔山山頂方面、赤杭山方面)があり、この標記を見て直前のミスに気付き、ここで赤杭山方面に向かいました。
…が、おそらくこのあたりで道の選択を間違ったと思われます。
ここから、「山と高原地図」には登山道の標記のない真名井北稜にズイズイ入り込んだと思われます。
しかし、上の写真のようにきれいな尾根道が続いていたので、それがまさか地図に載らない道だという発想もなく途中から徐々に道が荒れてきても、「こんなに荒れてるなら地図に注意書きがあってもいいのにな」くらいしか考えませんでした。
けれども道は荒れる一方で、(今考えると)登山道ともいえないような様子になってくる斜面をいくつか下りました。けれど、時々現れる平坦な場所を登山道と認識し「少し歩きにくいな」としか意識せず1時間ばかりも歩きました。(きれいな尾根道はすべて地図に載っていると思っており、それを疑う発想がありませんでした。)
けれどもやがて、すべるように道なき斜面を下っては「さすがにこれはおかしい、どっかで登山道から外れたか」と、登山道と思われるところまで少し戻り、また進み…戻り…修正して進み…を繰り返しました。
この時が一番怖かった!
赤リボンもついている、
道もしっかりしている、
そんな道が徐々に荒れて道でなくなってくる、
でも少し進めば整備された場所に出られると思って進む
けれどもやっぱり道は完全になくなり滑り落ちるような斜面になっている
「駄目だ」と、落ち葉と朽ち木でずるずるすべる斜面を、擦り傷だらけになってなんとかよじ登る
家族のことを考える
太陽がどんどん低くなっていく、沈んでいく…
ここで、天の助けとも思える邂逅!
自分とは全く別ルートの沢登りの帰りだけれど、自分と同じように道を見失ったらしいベテランの方の二人連れに遭いました!
人と遭えたことがこんなに嬉しかったこともなかった!
お互いのここまでの状況などの情報交換から、どうも今いる場所は真名井北稜だということがわかりました。
幸いにも、出会ったお二人は地形図とコンパス、高度計で沢登りをして、まわりの景色などからも状況判断ができるような方たちでした。
双方ともに、なんとか今日中に下山したくそのためにベストを尽くしたい点で一致したので、目的地はちがいましたが、同行を願い出ました。
もう登山地図の役に立たないこの場所から、自分1人では到底帰れないと思いました。
そして、このベテランの方二人の会話(地形や方角などの話の内容とその落ち着いた様子)を聞くにつけ、自分のような週末登山とはレベルが一つ二つちがうことを感じ、頼もしさを感じ、九死に一生をえた思いでした。
そこからは、自分が先頭を歩き、後ろからお二人に方向を指示されながら進んでいきました。林業の方々のための赤リボンをたよりに、朽ち木と落ち葉でズブズブ足が沈んだりスリップしたりする道を、ヘッドランプの明かりでなんとか進んでいくうちに、沢の音が近づいてきました。
音がすぐそこまで迫った時、目に映ったのはなんとワサビ田!そして、川より少しだけ上を通り去った車のヘッドランプ!
「人のすむ場所まで帰ってくることができた!」「助かった!」
との思いでほっとしました。
足が細かくけいれんしていることや空腹なことに、この時ふいに気づきました。
そして、家族に連絡を取りたい!との焦りも出てきました。
けれど、どれもこれも、とりあえず命の保障はされた、との安堵感からきたものだと、今は思えます。
ワサビ田の中で、二人のうち1人の方が空腹のぼくの様子を見かねて、「少し休憩して、何か食べようか」と言ってくれましたが、もう1人の方が「まだ。川まで、林道まで、もうすこし行けるとこまで少しでも早く今は進もう」と言います。月明かりが明るい機会に少しでも安全な場所へ、という判断。
まだこの人たちは気を抜いていない。
とにかく頼もしい方々でした。
ワサビ田からあぜ道(というのか分かりませんが…)を進み、視界が開けると、目の前に川。
林道と平行しているようだから、川沿いを進んで登れるところから登ろう、とのことに。
けれども林道には、運良くその場所から5分ですぐに上がることができました。
アスファルトがこんなに嬉しかったことは初めてでした!
その後、下流に向けて歩きながら、工事の看板などにより、今歩いている道は大丹波林道で、となりを流れる川は大丹波川、長くても40分歩けば百軒茶屋キャンプ場にたどり着けることを確認しました。
この時点ではまだ18時前でしたが、アスファルト道路と言えど、車もほとんど走らない林道は、月の明かりを木々が隠すと、もう1m先も見えないほど真っ暗でした。
この時点でもし山中にいたら…と考えると、ぞっとします。
本当にこのお二人は命の恩人でした。名前も聞かずに別れてしまったことが本当に悔やまれます。
百軒茶屋前には明るい自動販売機があり、3人でその明かりを囲み、アスファルトに座り込み、それぞれの非常食でディナーになりました。
ここでもお二人にはお世話になり、パン、ミカン、ビスケットなどを頂きました。
ここからしばらく歩いたところで、お二人は自分たちの車に向かわれ、ぼくは最寄りのバス停に向かいました。
バス停にもたれて座り込むと改めて気づきました。腕も足も、腹筋も背筋も筋肉痛で、腕は擦り傷だらけ。
ぐったりしましたが、帰って来れて、本当によかった!
あの時、あのお二人に遭えて、本当によかった!
本当に本当にありがとうございました。
この経験を機に、翌日(本日)から地形図の勉強を始めました。
お二人のようにならなくては。
この失敗から、多くを学んで行きたいと思います。
s-rowさん
初めまして hamburgと申します。
私も単独歩きが多いので、自分のことのように記録を読ませて頂きました。
無事に帰還できて本当に良かったです。ベテランのお二人の方に会わなかったら、捜索願いが出される状況だったかもしれませんね。
私も一度(2013/2/16)道に迷い、本当に怖い思いをしました。
こんな怖い思いをして家族からは、「もう山登りは止めなさい」と言われましたが、山歩きを止めることは出来ませんでした。
そこで、八王子市山岳連盟の夏山講習を受け地図の読み方、緊急用のシートの持参等基本的なことを学びました。
また、山登りを始めたころは「戻る」ことが嫌いでしたが、今では「戻る」決断が大事だと思っています。一昨日にも本社ヶ丸に登りましたが、ヤブで前に進めなくなり、林道を遠回りし笹子駅に下山しました。
以前の私でしたら無理矢理に進んでしまい、きっと道に迷って大変なことになっていたのではないかと思います。
お互いに気をつけて、山を楽しみましょう。
他人ごとでは思えなかったhamburgでした。
hamburgさん
はじめまして。
この経験を忘れないように、記憶の新しいうちにと、夢中で打った文章で、読みにくいところもあったと思いますが、長文を読んでくださりありがとうございます。
hamburgさんも怖い思いをされたのですね。2月ということは、雪山ですか?きっと大変だったのだと思います。お互いに生還できて本当に良かったですね!
わたしの場合は、おっしゃる通り、本当にあのお二人に会うことができて良かったです。
しかし、その出会いは本当に運によるもの。ということは、帰って来れたのも運によるものです。
一方、道を見失ったのは運ではなく、自分の実力だと思っています。
だからhamburgさんのように、もっと勉強したいと思いました。
hamburgさんのおっしゃる「戻る」という考え方も、肝に銘じようと思います。
道迷いは怖かったですけれども、しかしここで山をやめたらつまらないですよね !少し不謹慎ですが、この経験を生かさないともったいないな、と思うので、いつか、今度は地形図と高度計持参でリベンジしたいと思います。
コメントありがとうございました!
>また進み…戻り…修正して進み…を繰り返しました。
私も経験有ります。“道を間違えたときは戻れ”の教訓に従い戻ろうとしたのですが、踏み跡が薄く戻る道が分からないという…。何度も行ったり来たりして踏み跡を探すのですが見つからない。このときは非常に焦りました。結局は踏み跡を探すのは諦めて、来た方向と思われる方へ直進して何とか戻れました。
読図も必要ですが、GPSロガーなどはどうでしょうか。私は安価な携帯(アンドロイド)にGPSロガーのアプリを入れて使っています(山旅ロガー,地図ロイド)。現在地が分かるのでとても便利です。これをみんなが持てば道迷いが減るのに〜と思っています。これはホントお薦めです。
silchariさん
まずは夜中に書いた手紙のような、下手な長文を読んで頂きありがとうございます。
コメントタイトルの「誰もがいずれ経験する道迷い」に、考えさせられました。
それはきっと事実で、けれど道迷いで命を落とす人もいるのだから、やっぱり山はなめちゃいけないと、改めて肝に銘じられる思いです。
silchariさんも道に迷ったことがあるのですね。
お互い本当に帰って来れて良かったですね。
アンドロイドのGPSロガーアプリ、チェックしてみます。
現在地を把握することは何より大切ですね。
アドバイスありがとうございます。
でもやっぱり読図も勉強していきたいと思います。
機械が壊れたり、なくなったりした時のため・・・てのもありますが、やはり読図しながらぼくを助けてくれたお二人の姿は本当に頼もしく見えましたので。
silchariさんの教えてくださったGPSロガーと自分のスキル、両方を手に入れたいです。
コメントありがとうございました!
こんにちは。
「ここでおそらくすでに」の写真の時点ではまだ赤杭尾根へのルートに乗っていると思います。見覚えはあるし、真名井北稜にはこんな感じの所はないです。このさき、防火帯様の所最後で右に外せば、ちゃんと赤杭尾根ルートだったと思います。
感想を拝読し、「16時頃」の鉄塔の写真を拝見すると、真名井北稜から派生する北の支稜に更に迷い込んでいると思います。真名井北稜を降る場合、1168mピークと1002mピークの所で、尾根を外して右に降りなければならない所があるのですが、降りでは知らないと正しく外すのは難しいです。尾根筋にも明瞭な踏み跡が続きますので、知らなければそのまま行ってしまって全く不思議はないです。ここを下るなら地図読み勝負なので、1/5万図では役に立たないと思います。
送電鉄塔には、必ず東電の巡視路があります。なので、それを探し出すのは手です。但し、それ程ちゃんとした道ではない事が多いので、誤りなく追うのに経験は必要です。以前の1/2.5万図には、送電線が記載されていたので、送電鉄塔は大きな目印になりました。持っていれば略確実に現在地を割り出せたはずです。
以上、ご参考までに。
a_tomさん
コメントありがとうございます。
2.5万図(と書くのですね)を購入し、地図読みの勉強もかねて、近いうちにもう一度現地を訪れておさらいしたいと思っています。
>尾根筋にも明瞭な踏み跡が続きますので、知らなければそのまま行ってしまって全く不思議はないです。
知らないことはともかく、そういうこともある、という知識がないとまずかったですよね。
それを知れたことで、良い経験にもなったと思います。
まずは出発前に2.5万図のを読み込み、a_tomさんのコメントを解釈したいと思います。
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