乗鞍岳(岩井谷から)雪崩敗退



- GPS
- --:--
- 距離
- 21.7km
- 登り
- 1,317m
- 下り
- 1,311m
コースタイム
- 山行
- 10:37
- 休憩
- 0:33
- 合計
- 11:10
4.45 1630m 岩魚見小屋
6.55 1850m 林道から岩井谷へ
10.17 2350m 乗鞍 雪崩敗退
10.35 2350m 乗鞍 雪崩敗退地点発
12.05 1630m 岩魚見小屋
12.50 1070m 岩井谷集落
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
岩井谷集落で除雪終了 |
写真
感想
今日は激ラッセル覚悟で岩井谷集落から兄ちゃん、名人の三人で乗鞍岳を目指した.このコース長い長い林道と複雑な地形、穴だらけの沢の登高、2000mを超す標高差などBig Dayにふさわしい過激なコースである.
今日は焼岳の黒谷、西穂高西尾根から小鍋谷滑降など候補に考えていたが前日の大崩山北面で雪崩の危険がかなり高いと判断して緩斜面が続く岩井谷から乗鞍を選択した.
朝1時に宿泊したちろり庵を出て待ち合わせの岩井谷集落へ向かう.1時半には皆揃い、20分のフライイングでスタート.ここ数日のドカ雪でいきなり林道から厳しいラッセルとなり三人交代で回す.
気が遠くなる様な長い林道ラッセルを三時間かけてようやくこなして岩魚見小屋に着いた。ここで大休止、氷点下20度の極寒の世界だった.しかし実はまだ試練の序章に過ぎなかった。しばらくで林道を離れて岩井谷方面目向かう.複雑な地形を帰りの登り返しが無いようにルート工作する.岩井谷までの複雑な地形は僕が主に工作した.
岩井谷に入ってラッセルは一層過激になる。ポンやヘルベントでも膝から膝上当たり前だった.おまけに至る所沢に穴が開いていて落ちればただでは済まない.名人一度スリップして穴に落ちそうになるが辛うじてウィペットで引っかかった.
今日はなんて難儀だろう.時間は刻々と過ぎて行く.この分だと山頂まで12時間はかかると思った.下山も夕方になるだろう.
岩井谷は右岸は穏やかだが左岸は急斜面や崖もあり気は抜けない.当然気温が低い夜明け前に危険地帯は通過する.標高2000m付近でようやく日が射して来た.
標高2300m付近で僕が先頭を変わりラッセルを始めた.僕がラッセルしている間に仲間には休憩してエネルギー補給をしてと伝えた.歩いてしばらくでいきなり左岸の斜面が幅80m、高さ30m、破断面60cmで雪崩れた.ワーッと僕は叫んで雪崩に巻き込まれた.全く無警戒の斜面だった.僕の歩行の振動だけでこれほど大規模な雪崩が起きて驚愕した.
あっという間で逃げる事も出来ず、辛うじて首だけは雪面に出たが全く身動き出来ない.息は出来るし仲間は後方で休憩中なので心配は無かった.ただ三人並んで歩いて皆巻き込まれたらどうする事も出来ない状況だった.
手は何とか動かせたがスーパーファットを履いた足はびくともしない.一人で抜け出すのはかなり難しい.
すぐに仲間が駆けつけてくれた.単独でなくて良かった.まずは写真を、こんな写真滅多に撮れないからと写真を頼んだ。
写真の後まずザックを外してもらい、ショベルで少しずつ掻き出してもらった.ザックのシャベルも取ってもらい最後は自力で自分の板を掘り出して脱出した.
今日はヤバイ、この先同じ地形がずっと続くし敗退だな.折角だからすぐ先の曲がり角で乗鞍の写真を撮って帰ろうと思った.三人で歩き始めた途端今度は幅100m、高さ30mのさらに大きな雪崩がまた起きた.十分右岸に寄っていて雪崩を警戒していたので誰も巻き込まれなかったがもう帰るしか無い.すぐにシールを剥いで一目散にUターン、気温が高くなるともっと危なくなる.
逃げ足は速い.無事林道まで滑って安堵した.気温が上がり新雪が解け板にはダンゴが付き始めた.多分雪崩が無くてもあの先はダンゴとの闘いでかなり厳しいものだったろう.
今シーズン初敗退だが、これも勉強,生きた経験である.
山スキー時の教訓
1、単独は避ける。信頼出来る仲間と行く.
2、ビーコン、ゾンデ、シャベルの三種の神器は当たり前
3、ウィペット、ヘルメット、GPS新三種の神器も当たり前
4、危険地帯は気温の低い時間帯に通過 など
コメント
この記録に関連する登山ルート
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いいですね、仲間がいるから無茶な登山ができるんですね。うらやましいです。
僕はいつも一人なので、撤退の判断や登る前の基準がシビアで中々思うように山にいけません。この前の槍も途中で引き返しました。(30キロ近くの装備で重過ぎたというのもあるけれど)
雪崩の状況も少し詳しく知りたいです。参考にしたいので。
雪はパウダーでしたか?やっぱりゆるゆるでした?
それともカチカチにしまってました?
登山中、やばいかもとか思いました?
崩れたのは数日の新雪でしたか?
気温の低い夜なら崩れていなかったですか?
それとも、夜でもダメな感じでした?
雪崩の状況でしたが、日月快晴で雪の表面は融けて夜間凍ってカチカチになっていますからその上に火水とドカ雪が乗っていますから雪崩が起きるにはこれ以上の条件はないと言う感じでした.当然山行場所も色々候補の中から選択したつもりです.前日の大崩山でもう雪崩の危険性は察知していましが下山時はかなり雪は結合していたのでその翌日ならもっと強度は高まるかなと思っていましたが甘かった様です.
雪崩れた場所は歩行の振動だけで大規模に幅100m位二回に渡り崩れていました。
深夜1時半スタートで気温の低い時間帯に危険地帯を突破する予定でしたが思いのほか激ラッセルで時間がかかってしまい、雪崩れた危険地帯ではやはり既に日が登り気温も上がって来ていましたから少し通過時間帯が遅かったと言う事もあります.しかし夜間なら雪崩れなかったと言う保証はないです.
沢の入り口でもう前日の自然誘発雪崩跡を何カ所も見ていましたから雪崩には最警戒でメンバーはダンゴにならず誰かが一定の距離を保って危険地帯は通過する様にしていました.単独なら絶対に入らない山域だったと思います.
山スキーは危険と言う大前提の上に行動しています.少しでもリスクを減らすために仲間、時間帯、装備など完璧過ぎるほど備えていますがそれでも自然には勝てないと言う事だと思います.ただリスクは減らせます.
YSHR先生、いつも記録を拝見して勉強させて頂いております。
今回の件、今後のために伺いたいのですが、地形図では岩井谷に入る1850mあたりで右岸側に渡る林道があるように見えます。
渡った先にあるこの台地状の尾根は緩やかで登りには適しているように見えます。
下りは多少止まるかも知れませんが、シールまでは必要ないだろうと推測します。
一方岩井谷には左岸で一部高低差300mにもなる急斜面があります。
可能であれば、ここで岩井谷にルートを取った理由を伺いたく。
宜しくお願いします。
トマホークさんこんにちは YSHRです。槍ではニヤミスでした。涸沢岳西尾根をスキーで登ったのは随分昔でしたが上部は青氷で随分緊張した経験があります.涸沢も激パウだったでしょうね.
さて乗鞍岳西面には随分緩徐な台地がたくさんあり実に山スキー向きだと地図を見る限り感じます.この一体は岩井谷を含めて過去に何度も厳冬期に入ってます.しかし地図とは異なりどの台地も猛烈なジャングルとなっています.
雪の多いシーズンでさえもジャングル敗退の経験があります.岩井谷右岸台地を経由して乗鞍へ向かった事もありますが、猛烈なジャングルと凸凹でもう二度と来ないと思いました.
岩井谷はやはり厳冬期に何度か入ってます.ここはやはり左岸からの雪崩に最警戒地帯です.ただ沢を進む場合も右岸になるべく寄って左岸からの雪崩を避けれるルートも取れますし状況次第では右岸に這い上がれる逃げ道もあります。
沢のデブリを見れば危険地帯は一目瞭然でヤバイ場所は常に警戒して右岸側の安全地帯を進んでいました。
過去の記録から深夜1時過ぎに出れば気温の低い時間帯に危険地帯は抜け安全な2400m以上に抜けれると思っていました。帰りに気温が上がれば沢は避けて安全な台地を滑るつもりでした.
ただ予想外に激ラッセルで時間はかかり夜明け前に2400m以上と言う計画は大幅にずれてしまいました.気温も上がりこれはまずいとどこで引き返すかと言う事を考えながら歩いていました.ただ雪崩れた場所は樹林も多く周囲の状況から全く想定外でした.沢中にも全くデブリが無く比較的安全だろうと想定して歩いていました.ただ警戒して右岸側に寄っていたので直撃は受けなかったのが幸いです.左岸側を歩いていたら頭まで埋っていたでしょう.
さらにメンバーは決してひとかたまりにならずに距離を保ちながら歩いていました.
自然にはどれだけ気を配っていても所詮人は敵わないものです.自然は時として想定外の危険をはらんでいます.大体事故る時はこんなものです.
山は結果が全てで現場を知らない第三者からすれば何と無謀なと言う人もいるかもしれません.ただどんな状況でも最大限リスクを減らす努力と対策をしながら山に入っているつもりです.
今回あえて敗退山行を投稿したのも山は恐い場所だと言う事をこれからの若い人に知ってもらい少しでもお役に立てればと言う気持ちで恥を忍んで載せた訳です.
トマホークさんも危うい山行が多そうですから是非万全の備えで山スキーチャレンジをして下さい.
>涸沢岳西尾根をスキーで登ったのは随分昔でしたが上部は青氷で随分緊張した経験があります.涸沢も激パウだったでしょうね.
記録読みましたよ。
恐かったので、ダブルアックスを持って行きましたが、凍結はほぼ皆無で、全く不要でした。
同じ山でも登る日によって状況は全く異なりますね。
涸沢は激パウでした。
>どの台地も猛烈なジャングルとなっています.
なるほど、そういうことでしたか。
やはりかなり周到に考えられていたようですね。
>雪崩れた場所は周囲の状況から全く予想外でした.
>最大限リスクを減らす努力と対策をしながら山に入っているつもりです.
自然を完全に読み切ることはできないですね。
しかし、だからといって努力を怠ることもできません。
同意します。
YSHRさんはあえて人がいかない所を選んでいるので、
情報は少なく、リスクは高いですね。
最近ニアミスが多いようなので、気になっています。
下界でも重要なお役目なので、くれぐれもお気をつけ下さい。
釈迦に説法とはまさにこのことですが。
>トマホークさんも危うい山行が多そうですから是非万全の備えで山スキーチャレンジをして下さい.
ありがとうございます。
私も気を付けます。
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