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「勅許左方惣官 御鋳物師 小島左一郎藤原州英」
「勅許」はいわゆるお上からの命、「左方（なぜ１文字っぽくなってしまっているかは謎）惣官」は職人の流派のような物で、別派の右方惣官と区別するもの、現在の左官の語源ともいう。「御鋳物師」は「おんいもじ」と読み、鍋、釜や鍬鋤、果ては寺院の鐘、仏像も手がける鋳造職人の名称。
ここで鋳物師について少々。貨幣や仏像、仏具も作れる鋳造業はやはりお上が取り仕切るべきと、下っ端役人だった真継家が名乗りを上げて早々に支配。この産業ギルドがまあ面倒くさく、献上品やら見舞金やらでがんじがらめ。江戸末期には敵対する幕府側からの圧力、民間で開業しだす者もなんか現れ、自然に支配力も薄れていった。
小島家は茶湯釜の「佐野天命」などがある下野国佐野庄（現佐野市）にルーツを持つ鋳物師の家系。この地は「藤原」氏が平将門討伐の為に鉄砲の製作を依頼した場所でもある。上州を経て上田に入った小島家の末裔が分家をして宝永元年諏訪に移住。この小島家の五代目に「小島佐市郎州英」なる人物がいました。折しも真継家の支配力が弱まっている幕末、この人の作品には「勅許」やら「天命末葉」「大鋳物師」などの銘を刻んであるものが多く、動乱の時代の迷いのようなものが少し伺える。
諏訪市清水町の清稜高校近くに鍋屋小路という路地がある、この辺りにあったらしい小島家とその下請け（鋳掛職）業者群。清稜高校のグラウンドに作業場もあったらしい。とまあ、ここまでが書籍による情報。
【参考書籍】
「真継家と近世の鋳物師」笹本正治
「近世鋳物師社会の構造」中川弘泰
「近世における真継家の鋳物師支配について」小原昭二
では、現在の小島家はどうなっているかと思い軽く検索したところ、こんなサイトがあった。
【長野日報企画 マジカルヒストリーツアー】
http://www.nagano-np.co.jp/kikaku/mg/mg9.html
諏訪の機械産業の中心であった北澤工業、東洋バルブ、はたまた三協精機やヤシカも、ルーツを手繰ると鍋屋小路にあった平野屋鋳造所に行き当たるというのだ。意外な事実。
何だかざっくりな上にだいぶ脱線してしまった感は否めないが、その後の小島家に関する考察はまたの機会にゆっくりということで。国会図書館前の銀杏（写真３）、ちょうど紅葉真っ盛りでした。
otkmeさん、おはようございます！
赤岳は何度も登っていますが、竜頭峰にこんなものがあるなんて、気にしたことがありませんでした。こういうものにも関心を持ち、ここまで調べる・・・う〜ん、心底から感心しました。道祖神をはじめ日本のあちこちの路傍には江戸期と思しき年号を記した石造物がありますが、ここまでの関心を払ったことはありませんでした。調べてみると面白いものなんですね〜！ 小さなことにも、まさに現代に繋がる歴史が流れているんですね。これからも、このような投稿を期待しています。（スミマセン、一点だけ気になりました。平将門の時代に鉄砲は伝来していないんですが・・・何か別の日本古来のものがあったんですかね〜？）
＞f15eagleさん
そうですよね。鉄砲はもう少し後ですよね。
記述によれば鉄砲の鋳造は小島家が江戸時代に入ってからの話。佐野の藤原氏に仕えた鋳物師達は「軍器等」を作ったとあるので、鎧兜や刀剣でしょうか。
竜頭峰の遺構に関してはぼくも気になっていて、pasocomさんのレコで話が広がり、いろいろ話題になっているところです。本当に調べるといろいろな歴史に遭遇して、寄り道が絶えないのですがそこが面白くて。
引き続きの竜頭峰遺構調査。今回は「鋳物師」の方に着目されたのですね。
またも詳しく、私にとっても新たな発見が多く含まれており驚きました。
「勅許」というのは文字から考えると現代の「国家資格」ってところでしょうか。その一族しか仕事を許されなかったとか。
「小島左一郎藤原州英」については、私は二人の人物名かと思っていましたが「小島佐市郎州英」という鋳物師がいたなら、その人物名ですね。
台座の文字も「一」ではなく「市」と読めるような気もします。
北村宏氏によれば、諏訪市教育委員会編の「諏訪郡諸村並旧蹟年代記」の中に「清水町大鍋屋小嶋佐市郎 上田町より御呼寄せ・・・」とあるそうです。
台座の正面に大書きされている「小川郷中」を調べると、現在の諏訪市豊田の「クリーンレイク諏訪」というおそらく下水処理場と思われるあたりのことのようです。やや南の方には「小川中（こがわなか）」というバス停もあるらしい。
清水町と小川郷は3kmほど離れている。これ、悩ましいですね。
それとも小川郷の人々または誰か個人が、小嶋氏に製作を依頼して納めた「願主」なんでしょうか？
「小島」の家紋が「三つ引き」であれば一挙に解決なんですがねえ・・・。
余談ですが、ずいぶん以前に諏訪の下水処理場では汚泥から一年で数千万円ほどにもなる金（キン）が採れると聞いたことがあります。これらは皆周辺の精密機械工場から流出するのではないかと。
いまもそんな状態なんでしょうか？
＞pasocomさん
勅命。ざっくり省略しましたが、当時の鋳物師の組織は真継家による完全なる産業ギルド構造に支配されていて、悪い言い方をすれば朝廷を後ろ盾に市場を独占していたようです。
小島家はまず「下桑原」現在の四賀あたりに移住、その時の作業場は三精寺上ノ畑となっています。これは下社秋宮の脇にあったと言われる神宮寺の一つ、廃仏毀釈で廃寺になってしまった寺の辺りではないかと思われます。けっこう離れていますよね。そして小川村は確かに豊田の下水処理場の辺りです。
ここからは推測ですが、当時の鋳物師組織の主な作業は「鋳掛職」の衆が行っていたのではないでしょうか？ そして小島家の当主は今で言うプロデュース的な立場で要所要所を指示すると言った構造だと、住居と作業場が離れているのも納得がいきます。
実際に江戸からやってきた鋳掛職人が独自で鋳造業を開業をしたのを、真継家に嘆願して圧力をかけてもらっていたと言う記録もありました。この時に間に立った職人も清水町に住んでいた職人とのことです。
いろいろと寄り道が多すぎて家紋までたどり着けませんでしたが、まあゆっくり調べていこうかなと思っています。
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ぼくが住んでいた頃の諏訪湖は工業排水と家庭からの下水でとんでもなく汚い湖でした。小学校の高学年くらいの時に件の下水処理施設が建てられ、さんざん見学に行かされたのを憶えています。
ただ、だいぶましにはなったのでしょうが、一度汚れてしまった湖はやはりすぐにはきれいにはならないのでしょう。今でも諏訪湖の水は緑色ですね。
otkmeさん、はじめまして。
諏訪の精密機械産業のルーツがこういうところにあるというのは、意外というか、必然というか、歴史って面白いです。
そして、なぜその遺構が八ヶ岳のそれも竜頭峰にあるのか。そういうのも気になるところですね。赤岳に鋳物の神様がいたと考えられていたとか。。単にうれしがりのおっちゃんが近所の一番高い山に置いたのか。(それはないか(笑))
鋳物も仏具など山岳信仰に連なるものがあり、その流れからなのか。考え出すといろいろ妄想されて面白いですね。
＞s-katayamaさん
はじめまして。
ふとした疑問から始まったこの考察ですが、思わぬところにつながってしまい。面白いなあと驚いています。
幕末、朝廷vs幕府、鋳造業の変革。動乱の時代に五代目鋳物師が何を思って山に登ったのか？ もしくは登らなかったのか？
正解が出ようが出まいが、楽しい妄想が広がりますね。
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