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長野県警察山岳遭難救助隊長
岸本 俊朗
今月29日から春の大型連休が始まります。毎年、春の大型連休期間中は、県内外から多くの登山者が県内の北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳連峰等の高山に足を運んでいる一方、悲惨な山岳遭難も後を絶ちません。
期間中は、県内の主要な山域で県警山岳遭難救助隊員や各地区遭対協隊員が、登山相談活動や山岳パトロールを行い、登山者の皆さんの安全を見守り、万が一遭難が発生した際は迅速に救助活動が行えるように備えていますが、遭難はないに越したことはありません。
登山が安全で楽しいものになるかどうかは、登山者みなさんの一人一人の意識と準備によるところが大きいのです。
大型連休を前に、長野県で登山を予定されている皆さんが安全に春山登山を楽しんでいただくために、お伝えしたいことを「7つのお願い」にまとめましたのでご一読ください。
1 気象情報を確認しましょう!
低気圧の通過、前線の通過、寒気の流入・・・天気予報でこのような用語が使われたとき、標高の高い山の上は真冬並みの猛吹雪となります。毎年のように悪天候の中、行動不能になり、亡くなってしまったという事例が発生しています。必ず気象情報を確認し、悪天候時の行動は避けましょう!
2 地図と地形をよく確認しましょう!
春山は、多くの山域で雪が残り、夏の登山道が雪で隠れていたり、夏とは全く違うルートになっている場合があります。また、雪解けに伴いルートが変わる場合があり、道迷いのリスクも高くなるため、地図と地形をこまめに照らし合わせて現在地を確認し、安全なルートを選択しましょう。地図アプリも有効に活用してください。
3 雪崩に注意!
春山登山で気を付けたいリスクの一つが雪崩です。降雪直後の表層雪崩のほか、春山は急激な気温の上昇や降雨の後は大規模な全層雪崩にも警戒が必要です。土砂崩落や落石を伴う場合もあります。雪渓や谷を通過するときは十分に警戒して行動しましょう。ビーコン・プローブ・スコップなどの雪崩対策装備もお忘れなく!
4 アイゼン・ピッケルの携行
残雪期の登山に欠かせないのが、アイゼン、ピッケルなどの雪上装備です。アイゼンは、登山靴にフィットするように確実に調整をしておきましょう!雪上歩行の安全に直結するアイゼン、ピッケルは、正しく使いこなせてこそ。歩き方やグリップの仕方など基本を身に着けてから入山しましょう。
5 アイゼン装着時は慎重に
アイゼンを装着しての歩行は、普段と歩幅感覚等が違うため要注意です!前爪をズボンに引っ掛けて転倒・滑落、足首をひねって行動不能、足がもつれて前爪をふくらはぎに突き刺して負傷…。毎年アイゼンに絡む遭難事例が多発しています。また、登りや下りで前後の人と間隔が近いと、バランスを崩したり、足を振り上げた際にアイゼンを装着した足がぶつかってしまいます。慎重な行動を心掛けてください。
6 アイゼンシリセードは厳禁!
雪上技術の一つに、雪上を長座の姿勢で滑って降りる「シリセード」という技術がありますが、毎年のようにシリセード中に負傷する事案が発生しています。スピードの出るシリセードは、滑落と紙一重です。興味本位で試すのは大変危険です。特にアイゼンを装着したままのシリセードは、下肢の骨折等を招くことがあり、危険ですので絶対にやめましょう!
7 紫外線対策は万全に!
春山は、残雪の反射もあり、紫外線対策は必須です。「こんがり」を通り越し「やけど」に近い症状になることも。特に「目」の保護は重要です。角膜が紫外線により激しく炎症する「雪目」になると行動はできなくなります。曇りの日も油断大敵です!サングラスや日焼け止めなど紫外線対策をお忘れなく!
「7つのお願い」と同じ内容を県警山岳遭難救助隊のTwitterでも画像や動画を交えて情報発信をしていますので是非一度ご覧ください。
登山の鉄則はなんと言っても「無事、家に帰ること」です。皆さんが安全に長野県の山を楽しみ、素敵な思い出と共に「無事、家に帰る」ことを心から願っています。
https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/sotaikyo/sangakutusin.html
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